>
>
>
あがり症の薬物療法⑪

あがり症の薬物療法⑪

あがり症の治療には大きくわけて、「認知行動療法」と「薬物療法」の2つがあります。最近では、認知行動療法が注目されていますが、薬物療法以上に、効き目があるというわけではなく、症状によって使い分ける必要があります。そこで、今回はあがり症の病院での薬物療法について詳しく解説していきます。

あがり症治療と「薬物療法」

薬物療法は、1952年のフランスの精神科医 Delayと Deniker が初めて抗精神病薬を発見したことが始まりになります。この1950年代には抗うつ薬が発見されたり、リチウムの抗躁作用も確認されました。

以来、半世紀に渡り研究が進み、薬物がどのように脳に作用するかが明らかとなりました。作用機序が研究され、副作用が少なく効果が大きい薬物が誕生し、臨床に用いられるようになりました。現在では、あがり症の治療でも広く活用されています。それでは現在、薬物療法は精神科においてどのような役割があるのでしょうか。

精神疾患には、以下の3つの要因があり、それぞれの治療内容があります。

1.生物学的要因
⇒薬物療法や電気療法などが含まれます。基本的に医師の処方が必要になります。

2.心理的要因
 ⇒カウンセリングや精神療法などが含まれます。医師が行うときもありますが、医師の指示の下に心理士やその他の医療スタッフが行うこともあります。

3.社会的要因
 
⇒社会復帰に向けてのプログラムが中心です。

時には医療のみならず、福祉の制度なども利用しながら社会復帰が進められます。

その中でも、薬物療法は最もベースとなる治療法であり、統合失調症や気分障害においては、薬を処方せずに治療を進めることはほぼありません。

また、薬物治療による症状の改善により、介護や看護が行いやすくなります。このように、薬物療法は精神療法や社会復帰プログラムの導入をスムーズにつなげることができAる大きな意味をもっているのです。

あがり症は社会不安障害と診断されることがあり、服用する薬がほぼ一致しています。そのため、ここでは社会不安障害でよく用いられる薬をご紹介します。

「SSRI・SNRI」とあがり症

まず、一番あがり症治療でメジャーなのが、以下の2つになります。

1.選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
2.セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)

「1」は精神を安定させるセロトニンのみを阻害する働きがあります。さらに、「2」はセロトニンに加えて、意欲を高めるノルアドレナリンを阻害します。

「阻害する」と聞くと、逆にあがり症が悪化しそうなものですが、意図的に働きを抑えることで、脳が異常事態に感じて「もっと増やせ!」という司令を促します。その結果、セロトニンやノルアドレナリンの分泌量が増加し、精神疾患の改善が期待でき、あがり症も軽減できます。

SSRIやSNRIはもともとうつ病の治療薬だったのですが、2005年の10月より社会不安障害への治療薬としても追加されました。その事がきっかけで、現在は、あがり症治療による薬物療法が以前よりもスムーズに行うようになりました。

ただし、保険適応はSSRIの「エスシタロプラム、パロキセチン、フルボキサミン」のみでそれ以外は保険対象外ですので、精神科を受診する際は確認しておきましょう。

SSRIやSNRIの副作用は?

①精神神経系症状
めまいやふらつき、頭痛、眠気、不随意運動などの症状があらわれることがあります。
運転などの危険をともなう機械作業は控えましょう。

②セロトニン症候群
不安、いらいらする、混乱するなどの症状があらわれる場合がまれにあります。

③消化器症状
便秘、下痢、食欲不振、口渇、吐き気、嘔吐などの症状があらわれるケースがある
上記の症状は服用初期にあらわれることが多いが、2〜3週間前後で治まる傾向にあります。

④性機能障害
勃起障害、射精障害などの性機能異常も確率は低いですが、考えられます。

ベンゾジアゼピン系の精神安定剤

次に、対人不安やあがり症で用いられるのは、「ベンゾジアゼピン系抗不安薬」と呼ばれる薬です。この薬には、「GABA」という精神安定効果を高める物質の働きが関わっています。GABAは中枢神経の中で興奮を抑制させる働きがあります。

ベンゾジアゼピン系薬物にはこのGABA作用を強化する働きがあるため、不安を鎮めを精神の安定につながるのです。ベンゾジアゼピン系抗不安薬の種類は、服用した薬の濃度が体内で薄まったことを示す「半減期」によって変わります。半減期が短いほど、急速に血中濃度がピークに達し、血中からなくなっていきます。

あがり症などの急激に起こる不安に対しては、以下の抗不安薬が処方されることが多いです。

クロチアゼパム(リーゼ)
エチゾラム(デパス)
フルタゾラム(コレミナール)

この3つ半減期が短いため、精神安定効果がすぐに現れます。そのため、あがり症の治療でも用いられることがあります。SSRI・SNRIほど一般的ではありませんが、症状によってはベンゾジアゼピン系抗不安薬の方が、症状が和らぐ場合があるため、精神科で処方されることあります。

ベンゾジアゼピン系抗不安薬の副作用は?

①強い眠気

ベンゾジアゼピン系抗不安薬は脳内の活動を緩める薬なので、人によって日中に強い眠気に襲われたりと強い副作用が表れることもあります。

②依存性

薬の種類やどれだけの頻度で服用するかなどによって変動がありますが、数週間以上、毎日服用していると、薬に対する依存が形成される恐れがあります。例えば、用量を今まで以上に多くしないと、これまで得られていた薬の効果が得られなくなります。

一旦、依存が形成されると、服薬を中止することで退薬症状が表れます。日常生活に支障が出るほどイライラしてしまったり、場合によっては、てんかん発作などの深刻な病を発症する可能性もあります。こうして依存へ対策するためには、ベンゾジアゼピン系抗不安薬の服用は、できるだけ短期間にとどめることが重要になります。

ベンゾジアゼピン系はその強い依存性から、最近ではあまり使われなくなってきているようです。

「インデラル」でリラックス

あがり症・スピーチ恐怖などの手足のふるえや動悸などが起こる原因としては、交感神経が過剰に働いていることが1因として挙げられます。この交感神経の働きを抑えるのが、インデラル(βブロッカー)という薬物です。

インデラルは、交感神経の1つであるβ受容体を遮断する働きがあります。β受容体がノルアドレナリンと結合することで、心拍数・血液量を高めるため、体が緊張状態になります。そこでβ受容体にフタをすることで、ノルアドレナリンとの結合をブロックし、落ちつきをキープするのです。保険適応外なため、精神科を受診する際はどれだけ費用を充分に確認しておきましょう。

インデラルの副作用は?

主に徐脈、めまい、発疹、蕁麻疹、視力異常、霧視、涙液分泌減少などが報告されています。こうした症状が現れたら、担当の医師または薬剤師に相談してください。

ここまで、あがり症治療における3つの薬物をご紹介しましたが、もっと学術的な効果がしりたい!という方は以下の記事がグラフ付きで詳しく解説していますので、参考にしてみてください。

社会恐怖の薬物療法

コラムだけでなく心理の専門家の講義を受けてみたい!という方は下のお知らせをクリックして頂けると幸いです。私たちが講義をしている講座となります。

目次

①あがり症とは? ​
②あがり症になりやすい傾向とは?
③あがり症の生理的なメカニズム
④あがり症の心理学的な研究
⑤あがり症の無料診断
⑥克服方法「認知の歪み」を改善
⑦克服方法「自己意識」を改善
⑧克服方法「森田療法」を活用
⑨克服方法「段階的に不安を解消」
⑩克服方法リラックス上手であがりを改善
⑪あがり症の治療ー薬物療法
⑫あがり症の治療ー漢方

コメント

コメントを残す

コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士
  • 社会心理学会会員

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


ブログ→
YouTube→
Twitter→