コンプレックスを克服「周りの評価に左右されない」④
コラム③では、コンプレックスを克服する方法として「本棚セラピー」をご紹介しました。自己肯定感を育てコンプレックスを軽減するためにぜひ活用してみてくださいね。今回は、コンプレックスを克服する方法の3つ目「批判に過剰反応NG→現実検討力UP」についてお話していきます。
コンプレックスが強い人の特徴
コンプレックスが強い人は、人からの評価にとても敏感です。
例えば、西村・井上(2008)の研究では、対人恐怖における優越コンプレックスについて検討しています。優越コンプレックスとは「私は絶えず優れていなくてはいけない!」とするコンプレックスです。
西村・井上の研究によると優越コンプレックスが高い人は、常に他人を意識し、自分が他人の目にどう映っているかを気にすることがわかっています。そして優越コンプレックスが強い方は同時に対人恐怖心性も高いことがわかっています。
整理をすると、
→周りの目を気にする
→人より優れていなくてはならない
→人より劣っていると大変なことになる
→人が怖い
という悪循環に陥ると言えるのです。コンプレックスは周りの目を気にすることで大きくなりやすい性質があります。過剰になると、病的なところまで進んでしまうので気を付けなくてはなりません。では、人からの評価に左右されないためにはどうしたらよいでしょうか?
コンプレックスが強い人と過剰反応
他者からの評価に弱い人は「自分の人格まで批判された」と過剰反応しがちです。コンプレックスを刺激されたような気がして、ちょっとした批判をどんどん頭の中で大きくしてしまい、非現実でネガティブな自己評価につながっていくのです。
例えば、職場でのプレゼンで上司から批判されたとします。
「プレゼンの内容が伝わりにくいので、改善してほしい」
「資料の数が不足していたので、正確な数を確認してほしい」
こんな形で批判されたとします。このときコンプレックスが刺激されていると、
この場合
「お前は仕事ができない」
「ダメ人間だ」
「劣った人間だ」
と言われたように、どんどん頭の中で拡大解釈してしまうのです。しかし、現実的に冷静になってみれば、人格まで批判されているわけではなく劣等感を覚える必要などないのです。このように現実的に考えられる力を心理学の世界では「現実検討能力」ということがあります。現実検討をしっかりと行うことで、冷静にどこの部分に悪い評価を受けたのか焦点を絞って考えてみるのです。
現実検討(例)
例えば以下のような形で評価を「現実検討」してみましょう。
<検討前・非現実>
プレゼンの資料を上司に見せたら、上司にひどく怒られた。周りに比べて劣っていると言われたような気がしてとても落ち込んでいる。
<現実検討後>
あくまで資料に不足する点があり、わかりにくかっただけ。改善すればいいだけだ。実際にも、今後の担当を外されたわけではない。自分には次も期待してくれている。
このように人格批判まで広げられていた批判を現実的なレベルに小さくしていくのがコツです。
現実検討(練習問題)
それではここで、Aさんの事例で評価の焦点化の練習をしてみましょう。
Aさんは、部活の練習試合の後コーチから「しっかり走れていれば負けなかった。持久力をつけるトレーニングをしっかりやって欲しい」「単調な動きが多い。しっかり考えて動こう」といわれました。このことで、Aさんは「自分のせいで負けてしまった」「自分はチームには必要ないダメな人間だ」と非現実的に感じています。
<現実検討後>
→
→
→
解答例
→コーチは練習試合の反省点を伝えただけ
→Aさんは更に良くなる選手だから、改善アドバイスをしてくれた
→次回も出て欲しいから指導してくれた
イメージできましたか、それでは自分に置き換えてもう一度考えてみましょう。
実践!自分の問題でチャレンジ
質問①
最近何か批判をされたことはありますか?
→
質問②
そのとき必要以上に批判された感覚がありませんでしたか?
→
質問③
批判を過大評価せず、現実検討をしたらどのような回答になりますか?
→
批判など、自分にとってよくない評価をされた時は、コンプレックスを刺激され落ち込む事があると思います。なかなか立ち直れない場合は、一度立ち止まって冷静に見てみるとそこまで批判を受けたいないこともよくあります。他人の評価を過剰に気にしないように焦点を絞るように心がけましょう。
人の評価はほどほどに!
人の評価に左右されないための方法として「現実検討」を紹介してきました。コンプレックスが強い状況ですと、他人の一言に過剰反応してしまうことがあります。ですがよくよく考えてみると、小さな批判だったりするのです。冷静に判断して評価の焦点化をするようにぜひ実践してみてください。次回は、コンプレックスを克服する方法の4つ目「自分の価値観を大切にする」についてご紹介します。
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コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科修士
- 社会心理学会会員
取材執筆活動など
- AERA 「飲み会での会話術」
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
- TOKYOガルリ テレビ東京出演
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*出典・参考文献
西村美咲・井上健(2008) 対人恐怖における優越コンプレックスについて 関西学院大学臨床教育学研究 34号 1-6