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堪える状況を乗り越える意味は?

堪える状況ばかり…苦しい時の対処法①

はじめまして!臨床心理士の森、精神保健福祉士の川島です。私たちは現在、こちらの初学者向けコミュニケーション講座の講師をしています。コラムを読んで興味を持っていただいたら、是非お待ちしています。

今回は「堪える状況の乗り越え方」についてお話していきます。目次は以下の通りです。

  • 堪える状況は避けて通れない
  • レジリエンスとは?
  • 心には立ち直る力がある
  • ストレスへの対処は2段階
  • 逆境に強くなる考え方
  • 診断とチェック

各コーナーにはもっと深く知りたい!という方のためのリンクがあります。まずは全体を読んでみて、気になる場合はリンク先をクリックしてみてください(^^)それでは早速、堪えるについて解説させて頂きます。

堪える状況を乗り越える意味

皆さんは「堪える(こたえる)」と聞いて、どんなイメージを持ちますか?堪えるの意味には、

・苦痛をがまんする
・欲求を抑える
・感情を外にださない

などがあります。つまり堪えるとは、苦しさや悲しさに屈することなく我慢するさまざまな行動を指します。長い人生においては、辛く苦しい試練を味わうこともあるでしょう。そんな時には、堪える状況から立ち直る力が必要です。堪える意味とは

レジリエンスとは?

心理学の世界では、 堪える状況を乗り越える力が、人の心に備わっていると考えられています。人生での様々な試練で心が折れないためには、強くしなやかな心が必要です。この人生での試練を乗り越えていく、心の柔軟性を心理学の用語で「レジリエンス」といいます。

レジリエンスは、元々は19世紀の西欧で物理学の世界で「弾力」や「反発力」を意味する用語として使用されていました。その後1980年代に、精神疾患に対する用語として成人の精神医学に導入され始めました。レジリエンスは次のように定義されています。

・アメリカ心理学会の定義
「逆境,心的外傷,悲劇,脅威,人間関係問題,深刻な健康問題などから起こるストレスにうまく適応する力」

簡単にまとめると、レジリエンスは「跳ね返して元に戻る力」と捉えると良いでしょう。心にも「元に戻る力」「立ち直る力」「堪える状況から立ち直る力」があると考えられているのです。

堪えるの意味を解説

レジリエンスモデル

加藤(2006)は、レジリエンスの過程を以下のようにモデル化しています。やや難易度が高いと思いますが、まずはご覧ください。

自然災害とPTSDこころの科学より解説

図を見ると、レジリエンスには2段階あることがわかると思います。

1次的レジリエンス
堪える状況で最初に必要となるレジリエンスです。ここで堪える状況を乗り越える力が十分機能すれば、すぐに対処できますが脆弱な人は、ちょっとした出来事を悲観的に捉える傾向があります。具体的には、

遺伝的要素
元々備わっている堪える状況を乗り越える心の強さです。遺伝研究によると、日本人にはやや不安になりやすい遺伝子が備わっているいることが分かっています。

認知的評価
出来事を必要以上に過大視しない力です。認知的評価が適切にできると、不安を軽減できます。

1次レジリエンスで堪える状況を乗り越えることができないと、心理的な問題なども表れ、現実場面でさらなる危機へと発展していきます。

2次的レジリエンス
1次レジリエンスに失敗し、次に生じたストレス反応に対して働くのが2次的レジリエンスです。具体的には、

ソーシャルスキル
人と上手に関わっていくための技能です。ソーシャルスキルがあると、人に助けを求めたり、会話をする中で堪える状況を乗り越えることができます。

コーピングスキル
ストレスに対しての対処力です。コーピングスキルがあると、情緒的な問題にも堪えることができます。

2次的レジリエンスでも堪える状況を乗り越えることができないと、さらに問題は重篤化し、悪化した場合には精神疾患につながることもあります。

堪えることができない問題

心が折れやすい原因・対処法

本コラムでは、堪える状況を乗り越えるときに役立つ「①フィンクの危機理論」「②リフレーミング技法」「③ABC理論」「④正のストローク法」「⑤ソーシャルサポート」の5つの方法を解説します。自分に合いそうな方法から、取り組んでみてくださいね。 

①フィンクの危機理論

・解決を急ぐのはNG
堪えがたい辛い状況に対して、解決を急いでしまうと立ち直りが遅くなってしまう事もあります。解決を急ぐと、本来の感情を押し殺して過ごすことになるため疲れやストレスが溜まってしまうのです。堪えるような危機的状況に対して、健康的な範囲でじっくりと辛抱することも必要なのです。

・時間が解決してくれる
心理学には、危機を乗り越える仕組み「フィンクの危機理論」があります。フィンクの危機理論とは、危機を経験した本人が状況を受け入れて乗り越えていく過程を示した理論です。具体的には、「危機」を乗り越えていく過程を4段階段階で示しています。その流れを知り、自分が今どのような段階にいるのかを意識しながら、立ち直っていくことが大切です。私たちの心には、自然と回復する機能があります。「無理やり明るくする」「解決を焦る」など、自分の気持ちを抑える必要はないのです。

フィンクの危機理論をより深く知りたい方は下記をご覧ください。
・心は4段階で回復する
・使い方を知ろう
・練習問題
堪える状況を乗り越える「フィンクの危機理論」②

②リフレーミング技法

・要注意!マイナス面に注目
堪えるような辛い状況では、何事もネガティブに捉えてしまいがちです。このような考え方の癖を心理学では「認知の偏り」と言います。認知の偏りには、10種類ほどあり「物事のマイナス面に注目する」ことを、マイナス化思考と言います。

たとえば、
部活の代表選手に選ばれたのは「自分の実力ではない」と捉えてしまうような考え方です。

しっかり練習をして実力を付けたにも変わらず、他の選手がケガをしたから…と、物事を考えてしまうのです。マイナス化思考がつづくと、不安が消えずなかなか立ち直ることができません。

・捉え方を変えよう!
認知の偏りを修正する方法として、心理療法の「リフレーミング技法」が頻繁に使われます。リフレーミングは、近年ではうつ病の治療や自己啓発など幅広く取り入れられています(ホール, ボーデンハマー,2009)。リフレーミングとは、枠組みを変えることで意味や印象、捉え方を変える方法です。ネガティブな思考が浮かんだ時に、そのフレームを変換してポジティブ思考にすることができれば、堪える状況からでも、立ち直ることもできます。

リフレーミングをより深く知りたい方は下記をご覧ください。
・マイナス化思考はNG
・フレームを変えてみよう
・5つのリフレーミング
堪える状況ではポジティブに!5つのリフレーミング③

堪えるを鍛えるリフレーミング

③ABC理論

・極端な考え方はNG
堪えるような場面では、物事の一部だけを強調しがちです。そのため置かれている状況を破滅的に考えたり、ものごとを良いか悪いかなどと極端にとらえてしまう白黒思考で考えてしまいます。

たとえば、
ちょっとしたミスをして上司から注意を受けた時に「完璧にできない自分がダメだ…」と捉えてしまうような考え方です。

曖昧な状況から結果を急ぐため、解決策があっても気づけなくなってしまうことがあります。

・ABC理論で前向きに
現実的で前向きな考え方ができる、論理療法の「ABC理論」をご紹介します。ストレスが強い状況こそ、適応的で現実的な状況把握をして、堪える場面を乗り越えることが大切です。ABC理論を学ぶことで柔軟な捉え方をすることができるようになります。ABC理論では、出来事をどのように捉えるかで、沸き起こる感情が変わってくると説いています。ABCの意味は、以下の通りです。

A:Activating event
出来事
B:Belief system
信念(捉え方)
C=Consequence
結果(沸き起こる感情)

出来事を変えることはできなくても、信念を変える事はできます。どんなに辛い状況でも捉え方次第で、沸き起こる感情は全く別のものになるのです。

ABC理論を、もっと詳しく知りたい方は下記をご参照ください。
・ラッショナル・ビリーフとは
・ポジティブ思考とは
・自分の信念を変える方法
堪える状況を「ABC理論」で乗り越える④

ABC理論で心を強く

④正のストローク法で自分を励ます

・ネガティブに注意
堪える状況では、何事もネガティブに考えがちです。ストレスが大きな状況では、否定、自責、他罰、落ち込み、諦めなど、ネガティブな考えに囚われて苦しくなってしまう事もあるかもしれません。

・無条件に自分を肯定しよう
つい自分に対して否定的になってしまう…という自分を応援する方法として「正のストローク法」をご紹介します。ストレスが強いとき腰、少し落ち着いてあたたかみのある言葉を自分に向けてみることが大切です。ストロークとは、エリックバーンという心理療法家が提唱した理論で、落ち込んだ心を回復させる時に有効が方法です。正のストロークは、「頑張っているね」「すごいよ」など、褒めたり励ましたりする言動です。こうして自分を励ますことで、堪える状況を平常時に戻すことができるのです。ポイントは無条件に自分を肯定することです。

正のストローク法をより詳しく知りたい方は下記をご参照ください。
・抑うつにも効果あり
・「無条件」を大切にしよう
・自分の応援をしてみよう
堪える時には自分を応援「ストローク法」⑤

⑤ソーシャルサポートを増やす

・1人で解決はNG
悩みや問題を、一人で抱え込む必要はありません。堪える状況では、周囲のサポートを頼ることも大切です。このような支援を得るには、人とのつながりを増やす必要があります。

・コミュニティを増やそう!
本コラムでは、コミュニティを増やす方法をご紹介します。人をなかなか頼れない…と言う方でも取り入れやすい方法です。支えてくれる仲間が増えると、堪える状況での心の負担が軽減でき、立ち直りも早くなることが研究でもわかっています。

大坪(2017)は、大学生254名に対して、レジリエンスとソーシャルサポートの関係について調査を行いました。その結果、大切な人(親友、恩師など)のサポートと獲得レジリエンス(後天的に高まるレジリエンス)は関係が深いことがわかりました。

青少年のコミュニケションとソーシャルサポート辛い時は自分をよく知っている深い関係の人と時間を過ごすことで、堪える状況から健康的に立ち直ることができるのです。

ソーシャルサポートをより詳しく知りたい方は下記をご参照ください。
・心を安定させる社会的支援
・コミュニティは数が重要
・3つのコツで所属しよう
堪える状況から立ち直る「ソーシャルサポート」活用しよう⑥


ここで30秒だけお知らせをさせてください♪ 私たち臨床心理士・精神保健福祉士は、暖かい人間関係のある社会を創ることを目的として、コミュニケーション講座を開催しています。

コミュニケーション講座の様子

心理療法やソーシャルスキルの練習を勉強したい方はぜひお待ちしています。もしコラムを読んでみて、もっと心理学を学習したいと感じたら、こちらの心理学教室のページを参照ください。それでは先に進みましょう!

診断・チェック

自分のストレス耐性を、客観的な状況で知りたい方に、簡易診断をご利用しました。堪える状況を乗り越える力がどの程度不足しているかで、対応が異なります。まずは一度診断してみることをお勧めします。
堪える診断!ストレス耐性・立ち直り力をチェック⑦

逆境に立ち向かう心を

「堪える状況を乗り越える方法」をテーマに、心が折れそうな時に役立つ「①フィンクの危機理論」「②リフレーミング技法」「③ABC理論」「④正のストローク法」「⑤ソーシャルサポート」の5つの方法をご紹介しました。コラムでは、それぞれの方法をより詳しく解説していきます。堪える状況を乗り越える力を伸ばして、逆境に強くなっていきましょう。1日では難しいと思うのでブックマークしてゆっくり取り組んでみてくださいね(^^)

次回は、「フィンクの危機理論」についてご紹介します。お楽しみに!(もう少し下に次のコラムボタンがあります)

★ 5つの方法で堪える状況を乗り越える!逆境に強くなろう

コラムだけでなく心理の専門家の講義を受けてみたい!という方は下のお知らせをクリックして頂けると幸いです。私たちが講義をしている講座となります。

心理学講座

目次

苦しさが堪える人へ
フィンクの危機理論
5つのリフレーミング
ABC理論で堪える場面を減らす
ストローク法で自分応援!
3つのコツでコミュニティを増やす
ストレス耐性をチェック

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士
  • 社会心理学会会員

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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*出典・参考文献
・藤澤隆史 小島雅彦 2015 逆境経験からの精神的成長を規定する要因の発達学的検討. 発達研究, 29, 95-108.
・Barbara, L. F. et al. 2003 What good are positive emotions in crises? A prospective study of resilience and emotions following the terrorist attacks on the United States on September 11th, 2011. Journal of Personality and Social Psychology, 84 (2), 365-376.
・The American psychological Association : The Road to Resilience on-line,
http://helping.apa.org/ resilience.06.3.2011
・レジリエンスの資質的要因・獲得的要因の分類の試み――二次元レジリエンス要因尺度(BRS)の作成
・平野 真理 2010 パーソナリティ研究
・枝廣淳子 2015 「レジリエンスとは何か─何があっても折れないこころ,暮らし,地域,社会をつくる─」東洋経済新報社
・長内ら(2004)レジリエンスと日常的ネガティブライフイベントとの関連 Annual bulletin of Institute of Psychological Studies, Showa Women’s University 7, 28-38, 2005-03-31
加藤 寛(2006).自然災害とPTSD こころの科学,129,61-65.