ストレスコーピング「一次評価の意味・対策」②
コラム①では、ストレス理論の基礎を紹介しました。ストレスコーピングコラムは「①ストレス理論の基礎」「②一次評価の対策」「③コーピングスキル」「④診断・チェック」の4回シリーズです。
今回はストレスコーピング「②一次評価の対策」を解説します。
一次評価とは?意味
コラム①で解説した、ストレス理論モデルから一次評価について簡単に復習しましょう。
私たちは心理的負担(ストレッサー)を感じると、一次評価をします。一次評価とは、感じたストレッサーは「自分にとって脅威となるか?」を判断していくことです。
楽観的な人は、ストレッサーに「何とかなる」と考える傾向があります。一方でストレスを溜めやすい人は、ストレッサーが自分に害がある、関連が深いと考える傾向があります。
ストレスを溜めやすい人の特徴はこちらです。
①遺伝的脆弱性
②認知の歪み
③自己効力感の欠如
コラム②では、ストレスを溜めやすい人にある3つの特徴から、ストレスコーピング「一次評価の対策」を解説します。
対策①遺脆的脆弱性
性格とストレス
性格は、先天的に作られたものと遺伝的に作られたものとに分かれますが、性格の3割~7割は先天的に作られるといわれています。先天的に作られたもののなかには、ストレスをためやすい性格があります。
タイプA
フリードマン医師とローゼンマン医師によって提唱された性格です。
特徴は、慢性的な競争心、達成動機の高さ、敬意などで、イライラする性格傾向があることが分かっています。
Friedman, Mら(1959年)よると、せっかちでイライラするなどの性格傾向がある人は、冠状動脈性心臓病のリスクが2倍以上になることが分かっています。
タイプAについては、タイプA・タイプBコラムで詳しく紹介しています。
メランコリック
ドイツの精神科医であるテレンバッハが提唱した性格です。
特徴は、几帳面で良心的、まじめで優しいという点があげられます。一方で、思い悩む性格からストレスをためやすくなります。
HSP
Aron&Aronによって提唱された概念で、Highly Sensitive Person(ハイリーセンシィティブパーソン)の略称です。
HSPの人は、感受性が強く、中枢神経が敏感なため小さなこともストレスと感じやすいため、とても疲れやすい傾向にあります。
HSPについては、HSPコラムで詳しく紹介しています。
精神疾患
パニック障害、うつ病、統合失調症、人格障害などがあげられます。
対処法
ストレスの感じ方は性格によるところが大きいです。そのため性格によるストレスを軽減するには、うまく付き合うことが大切です。性格のポジティブな側面にも目を向けて、自分の強みとして活用することもいいでしょう。
性格診断で自分の特性を確認したり、問題が大きい場合には、心理療法を学んだり医学の力を利用することもおススメです。コラム④のストレス診断・チェックも試してみてくださいね。
対策②認知の歪み
意味
認知の歪みとは、不合理な考え方、自分や周りに対する偏見、非現実的な思い込みなどを意味します。
認知の歪みには、代表的な10のパターンがあり、その中にはストレスとかかわりが深い、2つの認知の歪みがあります。
自己関連付け
マイナスな出来事を、すべて自分の責任と思い込む捉え方です。
色々な問題を自分のことと考えてしまうため、災害や事件で人の痛みを自分のことと感じてしまう傾向が強いです。
たとえば、コロナウイルスの問題では、高齢者の死亡率は5~10%という説があり、若者は1%未満という統計がありました。
このとき、若者が10%も死ぬ!というような感覚に陥るのは自己関連付けが強すぎることになります。もちろん、予防は正しくすべきです。しかし脅威を必要以上に大きく考えないということが大事になります。
拡大思考
実際の出来事より大きく評価する捉え方です。
たとえば、失恋した女性が「男性なんてみんな信じられない、私はもう一生恋愛なんてできないと考える。
拡大思考は、ひとつの失敗をより大きく捉えてしまう考え方です。
認知の歪みは、認知療法の現実検討力をつけていくと、鍛えることができます。「冷静に考える事が苦手…」という人は、以下のコラムをチェックしてみてください。
③自己効力感の欠如
意味
自己効力感の欠如とは、自信がない状態です。そのため、自己効力感が欠如している時は、問題を乗り越えるパワーがなくなってしまいます。
たとえば、失恋した後に同僚から婚活パーティーに誘われても、前向きにはなれないものです。
自己効力感を高めていくには、小さな成功体験を積み重ねていく事が大切です。目標を大きくせず小さな目標からクリアしていくといいでしょう。
「ストレスが溜まっている…」と思ったら、自己効力感を高める方法「スモールステップ」を取り入れてみてください。
まとめ・お知らせ
仕上げ動画
動画でも解説しています。仕上げとしてご活用ください。
おしらせ
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是非お待ちしています。それでは先に進みましょう!
コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科修士
取材執筆活動など
- AERA 「飲み会での会話術」
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
- TOKYOガルリ テレビ東京出演
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*出典・参考文献
・松浦 元貴 2015 スポーツ観戦によるカタルシス効果 高知工科大学 1-7.
・城 佳子,2013,大学生の自己開示・ソーシャルサポートが非受容感に及ぼす影響の検討:被開示スキルとの関連を通して 人間科学研究 34、63-72
・甲斐 裕子 永松 俊哉 山口 幸生 徳島 了 (2011)余暇身体活動および通勤時の歩行が勤労者の抑うつに及ぼす影響. 体力研究, 109, 1-8.