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自己愛性パーソナリティ障害とは?問題・診断チェック

自己愛が強い問題と特徴!パーソナリティ障害を診断⓵

みなさんこんにちは、はじめまして臨床心理士の加賀です。私は、これまで臨床心理士として精神科・心療内科クリニックでカウンセリングを行ってきました。その経験や学んできた心理学の知識の中から皆さまのお役に立てられるような情報をお伝えしていきたいと思います。本コラムでは「自己愛」について詳しく解説をしていきます。目次は以下の通りです。

  • 研究のはじまり
  • 自己愛とは?定義・意味
  • パーソナリティ障害とは?
  • 診断・チェック
  • 自己愛が強い問題
  • 研究①:対人関係への影響
  • 研究②:他者操作が強くなる
  • 3つの上手な付き合い方

しっかりその問題、これまでの研究結果や解決策についてお伝えしたいので少しお時間を頂きます(^^;)ちょっと大変かもしれませんが、是非お付き合いください。

自己愛のはじまり

自己愛と古典的定義

自己愛について、詳しく研究した3人の研究者を紹介します。

・ハインツ・コフート
精神科医・精神分析学者のハインツ・コフート(Heinz Kohut)は、精神的自己心理学を体系化した人物です。コフートは心理的な不安定さは、自己愛の弱さや偏りが原因ではないか?と考えました。コフートは、心理的問題と自己愛の問題に焦点を当てた先駆けとなる人物であると言われています。

・オットー・カーンバーグ
ウィーン出身の精神科医・精神分析家のオットー・カーンバーグ(Otto Friedmann Kernberg )は、自己愛病理に関する精神分析理論で広くされれる人物です。自己愛障害の本質は、強い愛情飢餓と関連した攻撃性や羨望を否認するために発生する誇大的自己像(誇大自己)にあると説明しました。

・Pulver(1970年)
自己愛を以下の2つに分けて説明しています。

健康的な自己愛
防衛的でない人間本来の自尊感情、自分をありのままを愛する、大切にする状態
不健康な自己愛
ネガティブな自己評価から自分自身を防衛する防衛的自尊感情、マイナスの自己評価を感じないよう防衛する状態

2種類の自己愛を解説

問題となる自己愛

自己愛には様々な定義がありますが、自己愛とは、文字の通り、自分を愛する感情と考えるといいでしょう。これは極めて健康的な感情です。しかし、自己愛が過剰になるとき問題が起こります。

例えば自己愛が過剰になると、自分を過剰に大きく強く見せ、特別であると思い込んでしまいます。その結果、他者を下げずんだり、軽視するという心理状態になることもあります。

カーンバーグは、これらの病態をまとめ、日常生活で重篤な自己愛の問題がある人を自己愛性パーソナリティ障害と発表しています。このように、自己愛には様々な定義がありますが、問題となる不健康な自己愛を中心に解説していきます。

自己愛性パーソナリティ障害とは?

不健康な自己愛が強くなると、「自己愛性パーソナリティ障害」と診断されることがあります。パーソナリティ障害とは、性格傾向の著しい偏りによって日常生活に障害をもたらしている状態を指します。自己愛性パーソナリティ障害の場合は、自己愛の問題が著しく偏っているということになります。

自己愛性パーソナリティ障害の特徴と診断

診断とチェック

自己愛性パーソナリティ障害の診断には、アメリカの精神医学学会が出版している精神疾患の診断と統計マニュアル第5版(DSM-5)が使用されます。診断基準を概観していきます。

①3つの症状
「誇大性」「賞賛への欲求」「共感性の欠如」の症状が持続的に示される

誇大性
自分の能力や業績を過大評価する/自分は特別であると考えているなど
称賛への欲求
大きな業績な他者からの称賛、名声、影響力を求める/有名な人や権威のある人との付き合いを求めるなど
共感性の欠如
自分の価値や業績の過大評価し、他者の価値や業績を過小評価するなど

②以下の症状が5つ以上認められる
 精神疾患の診断と統計マニュアル第5版(DSM-5)の診断基準は以下の図の通りです。

自己愛性パーソナリティ障害の診断とチェック

③時期
成人早期に始まっていることが条件になります。

性格特性・問題

自己愛性パーソナリティ障害の有病者は一般人口の0.5%と言われており、女性よりも男性に多い傾向があります。また、以下のような特徴があるとされています。

・病気を併存する
自己愛性パーソナリティ障害の人は、複数の病気を発症する傾向があります。特に、うつ病や物質障害(アルコール依存、薬物依存など)の併存が多いことが分かっています。

・自尊心の調節が困難
自己愛性パーソナリティ障害の人は、自尊心が非常に弱いといわれています。そのため他者からの批判に非常に敏感で、失敗すると他者に悪意を持って反撃することもあります。

このように不健康な自己愛が著しく偏ってしまうと日常生活が困難になるほど、深刻な問題に発展するのです。

問題・対人関係に及ぼす影響

自己愛の問題は、日常生活でどう困難となってくるのか?これまでたくさん研究されてきました。ここで自己愛についての研究を2つご紹介します。

自己愛が強い問題を研究で解説

研究①対人トラブルが増大

青年期には、自己愛傾向が強まるのが一般的です。その際、その傾向が対人関係にも変化が出てくることがわかってきました。その対人関係を考える時には葛藤場面についてどのような方法を使うのか?によって適応度が決まって来ると言われています。

根岸・山口(2017)は、青年期にある18歳から25歳までの420名を対象に、自己愛のタイプによって葛藤場面でどのような行動を取るのか?について研究を行いました。研究では、自己愛を2つのタイプに分け、対人葛藤方略(葛藤を解決するために使う行動)との関係を検討しています。

2つの自己愛タイプ
過敏型自己愛
・他者の言動や反応に敏感
・批判や軽視に傷付きやすい
誇大型自己愛
・他者の感情や反応に鈍感
・周囲を気にかけない

対人葛藤方略
結合・相互妥協
お互いが受入れられる形で解決を目指す
強制
相手を犠牲にしてでも自分の欲求を満たす
回避
直接的な葛藤を避ける
自己譲歩
相手の要求や意見に服従する

対人葛藤方略の中で、強制、回避、自己譲歩は、ストレスが高いことがわかっています。そしてこの研究では、公私2種類の場面が設定されています。

2つの場面
私的場面
家族、友人、恋人などに自分の欠点を指摘される場面。
公的場面
サークル活動での部費の使い道に関する会議であなたは、先ほど発言した意見に自信があります。しかし、仲間は全く違う意見を言う場面。

この公私場面ごとに、各自己愛タイプに分類された人々は、葛藤場面でどのような行動を取るのでしょうか?結果を見ていきましょう。まずは、過敏型自己愛の結果です。

自己愛尺度と対人葛藤方略スタイル尺度過敏型の男女差

過敏型の自己愛タイプは、他人の言動や批判に敏感で傷つきやすいのが特徴です。

その男女差を見ると、
男性
・強制や回避が高い
・対人関係で不適応が生じやすい
女性
・強制や回避が低い
・相互に妥協し合い適応的に対応しやすい
などの差が出ています。

つまり自己愛が傷つきやすい男性は、関係を避けようとしたり一方的な要求を押し付けようとするなど、対人関係の不器用さが目立っていることが考えられます。その一方、女性は傷つきやすさがある反面、妥協点を見つけて適応的に振舞おうとする特徴があることが考えられます。

では、次に誇大型自己愛の結果を見てみましょう。

自己愛尺度と対人葛藤方略スタイル尺度誇大型の男女差

誇大型の自己愛タイプは、他者の感情や反応に鈍感で周囲を気にかけないのが特徴です。

その男女に差はなく、男女共に
・結合・相互妥協や強制が高い
・相手の状態に合わせ自己主張を実現する
相手側が不満を抱える可能性が高い
などが出ています。

つまりどの場面でも相手次第で強制というストレスフルな行動を取る傾向にあります。強制スタイルをとることで、相手に負担をかけるばかりでなく、結局対人関係がうまくいかず自分の精神的健康を低下させてしまう可能性も考えられます。

以上の結果から、各自己愛タイプに予想される対人関係や巻き込まれやすいトラブルは、以下などが考えられます。

過敏型と誇大型の男女差のまとめ

自己愛タイプの違いで、対人関係にも大きな影響が起こることが分かりました。対人関係の良し悪しは、自分の精神的健康にも関わってくる大切な要因です。自分の自己愛タイプと起こりがちな問題を振り返ってみることもおすすめです。

研究②他者操作が強い?

下司・小塩(2019)の研究では、大学生 210 名を対象に、Dark Triadと他者操作方略との関連が検討されています。Dark Triadとは、他者に苦痛を与える行動傾向を特徴とするもので、以下の3つの性格特性があると言われています。

マキャベリズム
合理的な道徳観をもち、冷笑的に世界を捉えて他者操作的に行動する傾向性を表す特性
自己愛傾向
過大評価して主導的にふるまい、誇大感を維持しようとする自己中心的な傾向性を示した特性
サイコパシー傾向
罪悪感や共感性に乏しく、利己的かつ半社会的な行動をする傾向性を表した特性であり、この特性も他者操作性をその重要な特徴とした

Dark Triadの性格特性の一つ「自己愛傾向」の結果を中心に、他者操作方略との関連を見ていきたいと思います。

Dark Triadと他者操作方略との関連研究では、自己愛傾向と他者操作方略の項目「自己優越感感情操作」との間に正の相関が認められました。自己優越感感情操作とは、「ことわりにくくさせ、都合が良いことを確認した後に頼み事をする」などが問われる項目です。

自己愛傾向と自己優越感感情操作の関係

つまり自己愛傾向が強いほど、自分の都合が良いように相手の感情を操作する方法を使う傾向にあるということです。

自己優越感感情操作が高い人は、
・自己中心的に話を進める
・相手の話を聞かない
・自分の要求を断らない人に仕事を任せる
などの傾向があります。そのため、「周囲から浮いた存在になる」「自分のいないところで悪口を言われる」などの対人関係トラブルを起こしやすくなります。

またDSM-5の自己愛性パーソナリティ障害の定義では、自己愛傾向と他者操作性との間に正の相関があることが確かめられています(小西・田中,2010)。この日本人大学生を対象にした研究においても同じような傾向が認められ、とくに他者の感情操作に影響を与えることが分かっています。

自己愛は人間にとても大切なものです。しかし偏りが生じると、とくに対人関係が不安定になることが上記の2つの研究からわかりました。

自己愛が強い人との付合い方

自己愛が強い人は、自分の愛を満たすために他人を操作しようとしてきます。そのため付き合いが長くなると、自分を犠牲にしてまで尽くし続けてしまう事につながり、自分のためにも相手のためにもなりません。そこでここでは、自己愛が強い人との上手な付き合い方を3つ提案させていただきます。まずは全体を概観して、気になるリンク先をクリックしてみてください。

対策①限界設定をする

自己愛が強い人と付き合うときには「限界設定」が必要です。限界設定とは、自分の余裕を考えて「できること、できないことを明確にする」というものです。自分の限界を明確にすることで、自己愛が強い人の要求に、過剰対応し無くなります。相手の要求を何でも引き受けてしまい疲れてしまいがち…という人は、「できる」「できない」の線引きを明確にして、健康的な人間関係で付き合うようにしましょう。

限界設定について、より詳しく理解したい方はこちらのコラムを参照ください。

対策②アサーションで主張する

自己愛が強い人と上手に付合うときには「アサーション」が役立ちます。アサーションとは、「自他自尊のコミュニケーションを大切」にする考え方で、3つの自己表現があるとしています。

1:攻撃的自己表現
自分を主張を最優先に考えて行動します。そして時には他人を傷つけたり踏みにじるようなこともあります。
2:非主導的自己表現
自分より他人の主張を優先して行動するため、自分の気持ちを伝えないなかったり言い損ねたりします。
3:アサーティブな自己表現
自分の気持ちを正直に、その場にふさわしい方法で表現し行動します。 

自己愛が強い人の対処法相手の自己中心的な言動に振り回されがち…という人は、

・自分もOK、他人もOK
・自分の感情を大切に権利
・他人の感情を大事にする心がけ
・折り合いをつけることを大事にする精神
・過剰な要求は断る

など、アサーティブな考え方を取り入れて気持ちを軽くしていきましょう。

もっと詳しくアサーションの学びたい方は、こちらのアサーションコラムを参照ください。練習問題もありますよ。

対策③専門機関で練習する

独学で学ぶことに不安や限界を感じた場合は、専門家の元でしっかり学ぶこともおススメしています。 私たち臨床心理士・精神保健福祉士は、メンタルヘルスの向上を目指し、心理学講座を開催しています。独学に限界を感じた方、体系的に勉強されたい方のご参加をぜひお待ちしています。

執筆者も講師をしています(^^)
 ・自己主張、アサーション練習
 ・人の目を気にする状態を改善‐認知療法
 ・リラックスした人間関係を築く会話練習
初学者向けコミュニケーション教室を開催しています

コミュニケーション講座の様子

自己愛被害にあわない対策を

自己愛」コラムでは、自己愛とは何か?自己愛についての研究結果、そして自己愛の強い人との付き合い方などを解説してきました。

コラムを読み終えて「明日から何かひとつやってみよう」と思って頂けると嬉しいです。また、ご紹介した解決方法を実践する中で、あなたが悩んでいた問題が少しずつ解消されることを実感して頂けたら幸いです。

最後に、これまで「自己愛」コラムにお付き合いして頂き、ありがとうございました。新しいことを生活に取り入れ、これまでの習慣を変えるのはなかなか大変なことです。焦らず、できそうなことから根気強く取り組んでみて下さい。

まずは、ご紹介したワークを使って実践してみてください。そして、もう少し深く学びたい!という方は、弊社のコミュニケーション講座への参加してみませんか。弊社では年間500人が参加されるコミュニケーション講座を開催しています。気軽な気持ちで足を運んでみてくださいね、お待ちしております。

★自己愛が強い人の特徴と問題を理解して、上手く付き合っていこう!

 

人間関係講座

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士
  • 社会心理学会会員

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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*出典・引用文献
・ファンデンボス,G.R.(2013)APA 心理学大辞典 p343
・小此木啓吾. (1981). 自己愛人間. 現代ナルシシズム論.
・水島広子(2015). 困った感情のトリセツ,PHP新書.
・下司忠大, & 小塩真司. (2019). Dark Triad と他者操作方略との関連. パーソナリティ研究, 28-2.
・根岸優稀, & 山口一. (2017). 大学生の自己愛類型と対人葛藤方略の関連性について. 心理学研究: 健康心理学専攻・臨床心理学専攻, 7, 1-16.
・Pulver, S. E. (1970). Narcissism: The term and the concept. Journal of the American Psychoanalytic Association, 18(2), 319-341.