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パワハラの定義・意味。上司の特徴や事例

パワハラの定義・意味。事例と被害を受けた時の対処法

こんにちは!公認心理師の川島です。
今回のテーマは
「パワハラ」
です。

はじめに

・上司からパワハラを受けている
・職場でサービス残業が横行している
・パワハラが相談できる機関を知りたい

こんな悩みをお持ちではないでしょうか。

パワハラの相談事例は年々増しており、社会的にも深刻な問題となっています。そこで当コラムではパワハラの定義や現状、対処法など解説していきます。

目次は以下の通りです。

・パワハラの定義・意味
・パワハラの6つの基準
・様々な研究事例
・実際に起きた実例と裁判
・身を守る6つの方法

パワハラで悩む方に全員にお役立ていただける内容となっています。ぜひ最後までご一読ください。

パワハラの定義・意味

まずはじめにパワハラの意味を抑えていきましょう。

・厚生労働省(2020)
「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」

少し難しいですね。パワハラとは仕事で優位に立つ人が、弱い立場の人を、心理的、物理的に苦しめる行為と言えます。

一方で、パワハラは、業種や企業文化の影響も受けます。上司の行為がパワハラなのか?その判断基準が難しいとも言われています。

また告発をすると社内での評価が下がるリスクもあり、パワハラの被害者を2重で苦しめる状態にもなっています。

パワハラはこれまでたくさんの被害者を生んでいます。最悪の場合は命を落とすケースもあります。

パワハラ防止法の成立

パワハラ被害については、パワハラ防止法が2019年5月29日に成立し、大企業は2020年6月、中小企業が2022年4月から実施されることになりました。

特徴は以下の通りです。

・企業側は適切に対応できる体制等を整える
・防止することに従業員も事業主も努力をする
・行政の勧告に従わない企業は公表

パラハラ防止法は、あくまでも努力義務ですが、企業名を公表されるなどの比較的強い処置が検討されていて、抑止力が期待されています。

もしあなたがパワハラ被害にあっているとしたら、法律が味方に付いてくれることも抑えておきましょう。

パワハラ,上司

パワハラを判断する6つの基準

厚生労働省では、パワハラを判断をする一定の基準を設けています。具体的には以下の6つです。

①身体的な攻撃

物理的に体を傷つける行為です。

パワハラに該当する
・暴行
・傷害

パワハラに該当しない
・誤ってぶつかる

②精神的な攻撃

相手な精神的な傷を負わせる行為です。

パワハラに該当する
・脅迫
・名誉毀損
・侮辱
・ひどい暴言

パワハラに該当しない
・理由を明確にして注意する
・人格ではなく行動を注意する

パワハラ上司の対処法

③人間関係からの切り離し

相手を孤立させる社会的な攻撃です。

パワハラに該当する
・隔離
・仲間外し
・無視

パワハラに該当しない
・忙しくて無視してしまった
・たまたま一人にさせてしまった

④過大な評価

相手を過大評価することで過剰に責任を負わせる行為です。

パワハラに該当する
・仕事の妨害
・大量の仕事を要求する

パワハラに該当しない
・現実的なレベルの仕事を要求

パワハラの基準

⑤過小な要求

相手を過小評価することで精神的ダメージを与える行為です。

パワハラに該当する
・仕事を与えない
・雑用ばかり要求

パワハラに該当しない
・体調が悪いので簡単な仕事を任せる
・育成のために簡単な仕事から任せる

⑥個の侵害

相手のパーソナルな部分を追求することで精神的負担をかける行為です。

パワハラに該当する
・私的なことに過度に立ち入る

パワハラに該当しない
・配慮が目的で家族状況などをヒアリングする
・人間関係を深める目的で雑談をする

パワハラに該当する6項目から、パワハラの判断基準は「業務上必要」「行為が故意か否か」と言う2点がポイントと言えそうです。

パワハラと様々な研究

ここでは、パワハラの様々な研究をご紹介していきます。以下折りたたんで記載しましたので気になる項目を展開してみてください。

厚生労働省(平成28年度)は、全国の企業や団体に勤務する男女9,000名を対象に、実態調査を行いました。

その結果、

「過去3年間にパワハラを受けたことがある」

と回答した従業員は32.5%でした。平成24年度実態調査では25.3%でしたから、パワハラ被害が増加傾向にあることが分かります。

またこの調査では、企業内の従業員向け相談窓口で、従業員から相談の多いテーマをまとめています。以下のグラフは、相談の多いテーマ上位3項目です。

相談内容では、パワハラが最も多いことが分かりました。

パワハラ被害の相談が増えている

永冨(2016)の研究では、職場でハラスメントを受けたときに、どのようなプロセスで高いストレスになっていくかをモデル化しています。

まずは、以下の図を眺めてみてください。

ハラスメントがストレッサー、ストレス反応に及ぼす影響

ハラスメントを受けた人は、以下のプロセスを経て、イライラ感、疲労感などの心身の問題を感じます。

パワハラの心理面への影響プロセスこの研究結果で報告されたように、ハラスメントにより仕事上の人間関係、仕事そのものに影響を受け、その結果ストレス反応が出てくることがわかります。

パワハラによるストレス状態は重篤な場合には、心的外傷後ストレス障害(PTSD)につながることもあるため、注意が必要です。

PTSDとは、強烈なショック体験が、こころのダメージとなり、時間がたっても回復せず、恐怖を感じるものです。

日常生活で似たような場面に遭遇したときなどに強い恐怖を感じたり、別の状況にも関わらず、自分のショック体験に結び付けてしまうこともあります。

たとえば、
・上司からの叱責の場面を思い出してしまう。
・職場に近寄れなくなる。
・仕事のことを考えるだけで腹痛や頭痛がする。
などが起こることがあります。

小西, 金子, 大塚(2018)では、パワハラによりPTSDなどの症状が出た労働者の回復には、長期間かかる可能性があることを報告しています。

パワハラによる問題

金森(2019)は、1,006名の社会人を対象に、インターネット調査を行いました。その結果、パワハラ被害の特徴には男女差があることを報告しています。その結果の一部が下記の図です。

*ブルーは男性
*オレンジは女性です

パワハラ被害の内容の男女差

特に悪口、陰口などの精神的な攻撃は、男女共通で第1位です。2位以下では男性間と女性間ではパワハラの内容に違いがあることが分かります。

男性は、
「理不尽なことの強要、暴言や高圧的な態度」の表立ったパワハラ行為が多い。
女性は、
「仲間外しや無視」などの影でのパワハラ行為が多い。

このように、男性間と女性間ではパワハラの内容が異なる結果が出ています。パワハラの質に男女差があるということは、症状の出方や解決方法にも違いがあることが予想されます。

パワハラ被害者の性格特徴をビッグファイブで見た研究をご紹介します。ビッグ・ファイブとは、基本的な性格の次元を

・外向性
社交性や活動性、積極性
・情緒安定性
環境刺激やストレッサーに対する敏感さ、不安や緊張の強さ
・協調性
利他性や共感性、優しさ
・良識性
自己統制力や達成への意志、真面目さ、責任感の強さ
・知的好奇心
自分の興味関心を深めていく 

以上で類型化して特徴を捉える方法です。

Nielsen(2017)らの研究では、パワハラ被害者の性格特徴を36の研究論文を分析してビッグファイブで説明しました。その結果、が下図となります。


パワハラ被害者とビックファイブこの結果は全体的に、相関が弱いのであくまで参考程度となりますが、以下の傾向が浮かび上がります。

・外向性が低い
→助けを求められない
→パワハラに合いやすい

・情緒不安定
→落ち込みやすい
→冷静な対処ができない
→パワハラに合いやすい

・協調性がない
→上司から嫌われる
→パワハラに合いやすい

・良識がない
→上司から嫌われる
→パワハラに合いやすい

ややなまなましい内容ですが、現実的にパワハラを防止をする上で参考になるかもしれません。

パワハラ被害裁判の事例

パワハラの具体的な事例

ここでは、パワハラの具体的な事例や裁判の事例をご紹介していきます。以下、折りたたんで記載しましたので気になる項目をチェックしてみてください。

2016年、広告代理店最大手「電通」の新入社員だった高橋まつりさん(当時24歳)が自殺に追い込まれた事件があります。高橋さんは残業時間は月100時間を超え、過労に日々苦しんでいました。

高橋さんのSNSには、

「もう4時だ 体が震えるよ… しぬ もう無理そう」

「1日の睡眠時間2時間はレベル高すぎる」

「土日も出勤しなければならないことがまた決定し、本気で死んでしまいたい」

と投稿していたことが分かりました。

また、電通では飲み会の時に新入社員の服を脱がしたり、思い切り平手で顔を殴るなど行為をされたという報告もあります。このように電通の労働環境は、近年の大きなパワハラ事例として挙げられるでしょう。

電通のパワハラ事例について詳しく知りたい方はこちらの記事を参照ください。

電通社員、「殺人的」長時間残業&パワハラ蔓延を告発…入院者続出、部下を平手打ち

2019年8月、三菱電機の男性社員(20代)が数々の暴言により自殺に追い込まれました。

男性社員の遺書には、

「家族との別れがつらいですが、人格を否定してくる三菱と(ソフトウェア製造技術課の先輩社員)と一緒に働き続けるほうがツライので私は死を選びます」

と記されていました。上記の内容から分かるようにパワハラが自殺の原因であることを示唆しています。三菱電機で行った事件は、近年の大きなパワハラ事例の1つとして挙げられるでしょう。

電通のパワハラ事例について詳しく知りたい方はこちらの記事を参照ください。

三菱電機「8年で自殺5人」何とも異常すぎる職場

 近年パワハラ被害に関する裁判も多数存在します。ここでは、裁判になるようなパワハラ被害例をいくつか見ていきましょう。(厚生労働省明るい職場応援団裁判例を参考に作成)

被害例①違法な暴行

被害の状況
・上司は怒ると部下を怒鳴るタイプ
・ある日上司は部下に暴行した
・部下は通院を要するケガした

上司からは謝罪もなく治療費などを請求しても自分の行為は指導の一環であると正当化された。

パワハラ被害で怪我をした事例裁判では、上司の暴行は、

・正当な理由がない
・その場の怒りにまかせた行為

の2つの理由から、違法な暴行に該当すると認定されました。部下のミスであったとしても、人格を傷つける行為は過剰な指導であると認められたのです。

被害例②契約や規則を超えた命令

被害の状況
・上司から交際を迫られ部下は断る
・すると不利な噂を職場内で流される
・部下の仕事だけ何度もやり直しさせる
・残業が続き体調を崩して休職

部下の置かれた労働状況は、労働契約や就業規則に定められた範囲内を超えるものでした。そのため、裁判では上司に有罪判決が下されました。

もし業務命令により指示できる範囲だったとしても、

・不当な動機
・不当な目的

で発せられ、労働者が不利益を与える場合には、そのような命令は違法であるとされます。

どれだけの被害でパワハラと呼ぶのか、訴えてもよい事例なのかなど迷うこともあると思います。その場合は、過去の裁判事例などを調べてご自身の状況と比較することもよいかもしれません。

 

パワハラから身を守る方法6つ

ここからはパワハラから身を守る5つの方法をご紹介します。

・アサーティブな精神を持つ
・アイメッセージ→YOUメッセージ
・証拠を残す
・助けを求める
・外部機関を頼る

以下それぞれ詳しく解説します。

①アサーティブな精神を持つ

アサーティブとは自他尊重の精神を大切にするコミュニケーション技術です。いくら上下関係があったとしても、あなたにはちゃんと慎重される権利があります。

上司があなたに対してに命令するように、あなたにも自己主張する権利はあるのです。まずは自分自身を大事にする気持ちをアサーティブで育てていきましょう。

アサーションについてより深く知りたい方は下記をご覧ください。

アサーティブコミュニケーションの意味

②Iメッセージ→YOUメッセージ

Iメッセージとは「私(わたし)」を主語にしたメッセージのことです。「私は○○に思う」と、個人的な見解であることを示すことで、角が立たないように自己主張することができます。

また、Iメッセージを活用して主張しても状況が改善されない場合は、「あなた」を主語にしたYOUメッセージで伝えていきましょう。「あなたは○○した方が良い」と相手の行動に対して言及することで強い表現になります。

Iメッセージ→YOUメッセージをより深く知りたい方は下記をご覧ください。

Iメッセージとは?意味

③証拠を残す

パワハラを訴える場合や、労働基準監督署などの外部機関に相談する場合は必ず「証拠」が必要になります。証拠がなければ相手は何とでも言い逃れできてしまうので、しっかりと証拠は残しておきましょう。

例えば、
・メールなどは削除しない
・ケガの状態を写真に記録
・悪質な場合は録音

などが挙げられます。

また信頼できる同僚や部下、上司がいれば証人になってもらうことも考えておきましょう。

④助けを求める

周囲に信頼できる相手がいれば、相談に乗ってもらいましょう。同僚、人事、社内カウンセラーなど。また、上司からパワハラを受けている場合、その上司の上司に相談することで解決する可能性もあります。

例えば、課長からパワハラを受けているなら、部長に訴えるなどです。このように相談できる相手に助け求めることは心理学ではソーシャルサポートと呼ばれています。悩みを聞いてもらうだけも精神的にプラスの働きがあります。

ソーシャルサポートをり深く知りたい方は下記をご覧ください。

ソーシャルサポートとは?

⑤外部機関の利用

職場内に相談できる人がいない場合は、外部機関に相談を持ち掛けるようにしましょう。職場環境や労働規則に関する相談できる機関は以下の通りです。

労働基準監督署
あかるい職場応援団
NPO法人 労働相談センター
法務省 みんなの人権110番
厚生労働省 総合労働相談コーナー

あなたがパワハラや不当な労働を強いられている場合は、上記の機関に相談してみるのも1つの方法です。また法律の相談をする場合には、③でご紹介した証拠資料も持参すると良いでしょう。

まとめとお知らせ

まとめ

人間は一人では何もできない生き物です。弱いからこそ私たちは一人一人が寄り添い、助け合っていかなくてはなりません。

パワハラをする人はとても恥ずかしいことをしていることに気が付いていません。そんな人に人生を壊されてはいけないのです。

もし今とてもつらい状況であるならば、自分を大事にして、全力で自衛するようにしましょう。必要であれば第三者に助けを求めましょう。

応援しています。

お知らせ

もし公認心理師,精神保健福祉士など専門家の元でしっかり心理学を学習したい方場合は、私たちが開催しているコミュニケーション講座をオススメしています。講座では

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人間関係講座

助け合い掲示板

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


ブログ→
YouTube→
Twitter→

*出典・引用文献
明るい職場窓口 厚生労働省https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/
原昌登. (2019). パワハラ防止措置の法制化の意義.平成28年度厚生労働省委託事業職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書(概要版)
金森史枝. (2019). 職場における女性間ハラスメントの特徴. 現代ビジネス研究所紀要, 4.
小西聖子, 金子雅臣, & 大塚雄作. (2018). ハラスメント被害者の心理的回復. 教育心理学年報, 57, 309-328.
Lutgen-Sandvik, P., Namie, G., & Namie, R. (2010). Workplace bullying: Causes, consequences, and corrections. In Destructive organizational communication (pp. 43-68). Routledge.
Mordukhovich, I., Gale, S., Newlan, S., & McNeely, E. (2019). The impact of workplace harassment on health in a working cohort. Frontiers in psychology, 10, 1181.
永冨陽子. (2016). 職場のハラスメント状況下におけるストレッサ―の生起過程. 大阪経大論集, 66(5), 243.
Nielsen, M. B., Glasø, L., & Einarsen, S. (2017). Exposure to workplace harassment and the Five Factor Model of personality: A meta-analysis. Personality and individual differences, 104, 195-206.