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パワハラの定義・意味。上司の特徴や事例

パワハラの定義・意味。事例と被害を受けた時の対処法①

みなさんこんにちは、はじめまして臨床心理士の加賀です。私は、これまで臨床心理士として精神科・心療内科クリニックでカウンセリングを行ってきました。その経験や心理学の知識の中から皆さまのお役に立てられるような情報をお伝えしていきたいと思います。

皆さんは「パワハラ」についてどのような印象を持っていますか?自分の身に起こったことがある、目撃したことがあるなど、様々な場合があるかもしれません。今回は「パワハラ」について詳しく解説をしていきます。

  • パワハラの定義と意味
  • 判断する6つの基準
  • 被害相談の事例
  • 防止法とは?実施時期・概要
  • パワハラが深刻する問題
  • 被害を受けた時の解決策

しっかりとその問題や最近の研究結果についてお伝えしたいので少々お時間がかかります(^^;ちょっと大変ですが、ぜひお付き合いください。

パワハラの定義・意味

パワハラとはどのような意味でしょうか。パワハラとは、一般的に職場のパワーハラスメントのことで、以下のように定義されています。

・厚生労働省(2020)
「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」

少し難しいですね。パワハラとは「権力や立場を利用した嫌がらせ」と捉えるとおいでしょう。

たとえば、
・新人に責任が伴う難しい仕事を依頼する
・人前で怒鳴り声をあげて、何度も注意をする
・上司に丸めたポスターで頭をたたく

パワハラ上司の対処法このような職務上の優位的な地位を利用した上司からの攻撃は、パワハラと言えるでしょう。しかしパワハラは、業種や企業文化の影響も受けるため、上司の行為がパワハラかどうか判断するのは、難しい問題と言われています。

パワハラを判断する6つの基準

厚生労働省では、パワハラを判断をする一定の基準を設けています。

①身体的な攻撃

パワハラに該当する
・暴行
・傷害

パワハラに該当しない
・誤ってぶつかる

②精神的な攻撃

パワハラに該当する
・脅迫
・名誉毀損
・侮辱
・ひどい暴言

パワハラに該当しない
・マナーを欠いた言動を再三注意しても改善されない場合に強く注意する

③人間関係からの切り離し

パワハラに該当する
・隔離
・仲間外し
・無視

パワハラの事例

④過大な評価

パワハラに該当する
・仕事の妨害
・業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制

パワハラに該当しない
・育成のために現状よりも少し高いレベルの業務を任せる

⑤過小な要求

パワハラに該当する
・業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えない

パワハラの基準

パワハラに該当しない
・労働者の能力に応じて、業務内容や量を軽減する

⑥個の侵害

パワハラに該当する
・私的なことに過度に立ち入る

パワハラに該当しない
・労働者への配慮が目的で、家族状況などをヒアリングする

パワハラに該当する6項目から、パワハラの判断基準は「業務上必要」「行為が故意か否か」と言う2点がポイントと言えそうです。

被害の相談は増加傾向

厚生労働省(平成28年度)は、全国の企業や団体に勤務する男女9,000名を対象に、パワハラに関する実態調査をインターネットで行いました。その結果、過去3年間にパワハラを受けたことがあると回答した従業員は32.5%でした。平成24年度実態調査では25.3%でしたから、パワハラ被害が増加傾向にあることが分かります。

またこの調査では、企業内の従業員向け相談窓口で、従業員から相談の多いテーマをまとめています。以下のグラフは、相談の多いテーマ上位3項目です。相談内容では、パワハラが最も多いことが分かりました。

パワハラ被害の相談が増えている

被害相談の事例

パワハラ被害相談の具体的な内容を見ていきましょう。

事例①
部下が出した良い結果については自分の手柄し、自分の失敗は部下の責任だと押し付けてくる。

パワハラ事例事例②
部下に簡単な仕事ばかり与え、結果を見てほしいと上司にアポをとっても一向にみてくれない。他の同僚には適切に対応している。

えこひいきのパワハラ事例

事例③
上司の確認不足で納期が遅れ、部下が不利な状況になったことを上司に報告したところ、感情的に攻撃するメールを送り続けてきた。パワハラの事例を紹介

パワハラかどうか判断ができない…と言うときには、事例情報をチェックしてみるのもいいでしょう。

パワハラ防止法の成立

このようなパワハラ被害の増加を受け、パワハラ防止法が2019年5月29日に成立しました。この法案の実施は、早ければ大企業が2020年4月、中小企業が2022年4月になるといわれています。法案を簡単にまとめると、以下の内容が規定されています。

・パワハラ行為があったことを従業員から相談を受けた企業側は、適切に対応できるような体制等を整える。

・パワハラを防止することに従業員に事業主も努力をしていく。

つまりパラハラ防止法は、あくまでも努力義務です。そのため、パワハラ防止法を破った場合の罰則は現在ありません。

問題①心理的ストレスが高まる

永冨(2016)の研究では、職場でハラスメントを受けたときに、どのようなプロセスで高いストレスになっていくかをモデル化しています。まずは、以下の図を眺めてみてください。

ハラスメントがストレッサー、ストレス反応に及ぼす影響

ハラスメントを受けた人は、以下のプロセスを経て、イライラ感、疲労感などの心身の問題を感じます。

パワハラの心理面への影響プロセスこの研究結果で報告されたように、ハラスメントにより仕事上の人間関係、仕事そのものに影響を受け、その結果ストレス反応が出てくることがわかります。

問題②PTSD・回復に時間がかかる

パワハラによるストレス状態は、短期間でも心身に負担をかけることが予想されます。しかしストレスが長期化、また重篤な場合に心的外傷後ストレス障害(Post traumatic stress disorder; PTSD)につながることもあるため、注意が必要です。

PTSDとは、強烈なショック体験、強い精神的ストレスが、こころのダメージとなり時間がたってからも、その経験に対して強い恐怖を感じるものです。また日常生活で似たような場面に遭遇したときなどに強い恐怖を感じたり、別の状況にも関わらず、自分のショック体験に結び付けてしまうことがあります。

たとえば、
・上司からの叱責の場面を思い出してしまう。
・職場に近寄れなくなる。
・仕事のことを考えるだけで腹痛や頭痛がする。
などが起こることがあります。

パワハラによる問題

小西, 金子, 大塚(2018)では、パワハラによりPTSDなどの症状が出た労働者の回復には、長期間かかる可能性があることを報告しています。

回復に時間がかかる

パワハラ被害で休職となった場合には、心身の治療以外にも取り組まなければいけない問題がさまざまあります。たとえば、

・環境的な問題の解決
会社とのパワハラ問題の解決に向けた取り組みです。パワハラと休職の因果関係を認めてもらう、復職に関する相談を行います。

・心身の治療
現在の状況を改善する取り組みです。身体的な症状や精神的な症状が出た場合には、体調を整えます。加えて、復帰してから自分らしく働けるようになるまでのフォローアップを行います。

・経済的な問題
今後の生活に対する不安を軽減する取り組みです、休職期間の経済的な問題や、復職にあたり経済的な状況を話し合います。

パワハラ被害は、環境・心身・経済状況などの領域に支障をきたす問題です。今後の生活に向けた不安も大きいことから、本来の自分自身の心身の健康を取り戻すには時間がかかると言えるのかも知れません。

研究①パワハラ被害は男女で違いがある

金森(2019)は、1,006名(男性503名、女性503名)の社会人を対象に、インターネット調査を行いました。その結果、パワハラ被害の特徴には男女差があることを報告しています。

まずは「パワハラを受けたことがあるか?」の問いの結果です。男女とも8割以上の人が該当すると回答しました。パワハラ被害は、男性女性問わず起きている問題と捉えることができそうです。

続いて、パワハラを受けた人がどのような被害を受けたかを見ていきましょう。この調査では、パワハラを受けたことがある人に、パワハラ6項目(身体的な攻撃/精神的な攻撃/人間関係からの切り離し/過大な評価/過小な要求/個の侵害)のうち何に該当したか?を尋ねています。その結果、男女ともに精神的な攻撃が大半を占めることが分かりました。

以下の図は、パワハラ6項目の上位3つを図に示しています。

パワハラ被害の内容の男女差

特に悪口、陰口などの精神的な攻撃は、男女共通で第1位です。2位以下では男性間と女性間ではパワハラの内容に違いがあることが分かります。

男性は、
「理不尽なことの強要、暴言や高圧的な態度」の表立ったパワハラ行為が多い。
女性は、
「仲間外しや無視」などの影でのパワハラ行為が多い。

このように、男性間と女性間ではパワハラの内容が異なる結果が出ています。パワハラの質に男女差があるということは、症状の出方や解決方法にも違いがあることが予想されます。

たとえば、男性は、被害をだれにも相談せず限界まで我慢して症状や状況が重症化する。女性は、「人間関係の問題」として扱われ、結果として被害者が職場を退職することで解決が図られることが多い(厚生労働省,平成28年度報告より)。

以上のように、男女ともに多くの人がパワハラを受けたことがある点は共通でしたが、その受ける被害内容やその後の症状の出方や解決方法に関しては男女差が認められています。

研究②被害者の性格特徴

パワハラ被害者の性格特徴をビッグファイブで見た研究をご紹介します。ビッグ・ファイブとは、基本的な性格の次元を

・外向性
社交性や活動性、積極性
・情緒安定性
環境刺激やストレッサーに対する敏感さ、不安や緊張の強さ
・協調性
利他性や共感性、優しさ
・良識性
自己統制力や達成への意志、真面目さ、責任感の強さ
・知的好奇心
自分の興味関心を深めていく 

以上で類型化して特徴を捉える方法です。

Nielsen(2017)らの研究では、パワハラ被害者の性格特徴を36の研究論文を分析してビッグファイブで説明しました。その結果、ビッグファイブの情緒安定性のみ正の相関がみられ、外向性、協調性、良識性が負の相関という結果になりました。


パワハラ被害者とビックファイブこの結果から、ハラスメント被害者は、
”周囲と騒ぐタイプではなく、おとなしく穏やかに過ごすことを好む性格特性がある”ことがわかりました。

被害者の性格特性から考えられることは、パワハラ加害者に理不尽なことを言われたりされたりしても自己主張をせず、仕事だと思って加害者に黙って従おうとすることが多いのかもしれません。

パワハラ被害の裁判事例

 近年パワハラ被害に関する裁判も多数存在します。ここでは、裁判になるようなパワハラ被害例をいくつか見ていきましょう。(厚生労働省明るい職場応援団裁判例を参考に作成)

被害例①
「違法な暴行として不法行為への該当が認められた事例」
上司は、以前から怒ると部下を怒鳴りつけたり、物に当たる人だった。ある日激昂した上司が投げたものが部下の顔に当たり、通院が必要となるケガをした。上司からは謝罪もなく治療費などを請求しても自分の行為は指導の一環であると正当化された。パワハラ被害で怪我をした事例裁判では、何ら正当な理由もないまま、その場の怒りにまかせた行為であることから、違法な暴行として不法行為に該当すると認定されました。

部下のミスであったとしてもミスを指摘する際に個人や個人の人格を傷つける行為は行き過ぎた指導であるとして、違法行為であったと認められたパワハラの事例です。

被害例②
「労働契約や就業規則を超えた命令であると認められた事例」
上司から交際を迫られ、断わったところ職場で自分の不利になるような根も葉もない噂を流された。さらに自分のやった仕事のみ何度もやり直しを命じられ、残業が続いたため体調を崩して休職せざる負えなくなった。

パワハラ被害裁判の事例   労働者は、労働契約や就業規則に定められた範囲内で労務の内容及び労働時間・場所等を裁量により決定し、業務命令によってこれを指示することができる。しかし、それらを超えた命令だったと裁判で認められられました。

外形的には業務命令により指示できる範囲だったとしても不当な動機・目的で発せられ、労働者が不利益を与える場合には、そのような命令は違法であるとされます。

どの被害がパワハラと呼んでいいのか、訴えてもよい事例なのかなど迷う際には過去の裁判事例や判決のポイントなどを調べて自分の被害事例と比較することもよいかもしれません。

自分の身を守る方法

ここでは、パワハラスのトレスから身を守る方法をご紹介します。

同じ会社で働く太郎さんと花子さんには、共通の上司がいます。

<上司の特徴>
・大声で怒鳴る
・仕事は早い
・不安が高い
・感情の起伏が激しい

対処例①
太郎さんは、勤務中に上司から進捗報告を何度も求められます。同じ事を何度も伝えているにも関わらず伝わっていないようです。上司は太郎さんの仕事が遅いとメールを送ってきます。太郎さんは、上司との関わりが苦痛で仕方ありません。こんなとき、どのように対処したらいいでしょうか。

パワハラ上司の攻略法

〇メールで迅速な進捗報告をする
× 聞かれたときに口頭で答える

活動的なパワハラ上司には、迅速なレスポンスが好まれます。ちょっと多すぎるかなと思うくらいでも良いかも知れません。口頭ではなく、文字で示すと仕事が進んでいることに安心を持ちやすいと考えられます。

対処例②
太郎さんがミスをしたとき上司は、周囲に人がいるにも関わらず、大声で叱責します。周囲の雰囲気は悪くなり、太郎さん自身も萎縮してしまいます。こんなとき、どのように対処したらいいでしょうか。

パワハラ上司の対処法

〇一呼吸置いて冷静に話す
×ひたすら謝罪する

大声で叱責されると萎縮してついつい謝ってしまうのは当然です。しかし、これでは怒る人↔怒られる人という構造に巻き込まれ悪循環になってしまいます。この場合、自分が話す順番が来たときにわざと一呼吸置いて冷静に話すと会話のテンポが崩れて収束に向かいやすくなります。感情的に叱責され、自分の話すときには「1,2,3」と数を数えてから話し始めるのがおすすめです。

対処例③
育児中の花子さんは、時短で勤務をしています。花子さんの退社時間になると上司は、仕事を依頼してきます。花子さんは断り辛いため、引き受けているのですが、いつも退社時間が伸びて困っています。こんなとき、どのように対処したらいいでしょうか。時短勤務中のパワハラ事例

〇きちんとした自己主張をする
×我慢して自分の方で調整する

上司から指示されたことといっても自分自身が困っているのであれば、時短勤務になっていることを主張してことわりましょう。自己主張が苦手な人は、アサーショントレーニングもおすすめです。ことわるときには少しオーバーに感じても意欲を見せ、「翌日の勤務時間内に終わらせます」と伝えるなどやる気があるという姿勢をみせることも大切です。

対処例④
花子さんは、上司からたびたび「仕事が遅い」と感情的に言われることが非常に苦痛に感じています。そのためか最近は、出社時に腹痛を感じるようになってきました。こんなとき、どのように対処したらいいでしょうか。

パワハラで体調不良

〇自分で抱え込まず、相談する
×上司の応えられるようさらに努力する

この心身に不調を感じている状況は、自分が思った以上に体に負担をかけていると考えられます。この場合、自分ひとりで何とかしようとせず会社内の相談機関や外部の相談機関などに相談し、具体的に改善させて行く方が良いでしょう。

一人で抱え込まない!安心して働こう

 「パワハラ」コラムでは、パワハラとは何か?国内外で分かっているパワハラについての研究結果、そしてパワハラ被害の事例や上司との付き合い方などを解説してきました。

パワハラ問題は従業員からの被害報告が増加するにつれ、年々注目度が高くなっている問題です。我慢が限界に達するまでひとりで抱えるのではなく相談しながら解決するのもひとつの方法です。コラムを読み終えて「明日から何かひとつやってみよう」と思って頂けると嬉しいです。

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


ブログ→
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*出典・引用文献
明るい職場窓口 厚生労働省https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/
原昌登. (2019). パワハラ防止措置の法制化の意義.平成28年度厚生労働省委託事業職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書(概要版)
金森史枝. (2019). 職場における女性間ハラスメントの特徴. 現代ビジネス研究所紀要, 4.
小西聖子, 金子雅臣, & 大塚雄作. (2018). ハラスメント被害者の心理的回復. 教育心理学年報, 57, 309-328.
Lutgen-Sandvik, P., Namie, G., & Namie, R. (2010). Workplace bullying: Causes, consequences, and corrections. In Destructive organizational communication (pp. 43-68). Routledge.
Mordukhovich, I., Gale, S., Newlan, S., & McNeely, E. (2019). The impact of workplace harassment on health in a working cohort. Frontiers in psychology, 10, 1181.
永冨陽子. (2016). 職場のハラスメント状況下におけるストレッサ―の生起過程. 大阪経大論集, 66(5), 243.
Nielsen, M. B., Glasø, L., & Einarsen, S. (2017). Exposure to workplace harassment and the Five Factor Model of personality: A meta-analysis. Personality and individual differences, 104, 195-206.