対人恐怖症克服記100 就職活動編16 部長がっつりくいつく
引きこもりから脱出した私は就職活動をはじめ、環境系の会社の面接に行くことになりました。
面接官は英語訛りの30代の女性と、サンタクロースのような風貌をした部長でした。「独立する」というキーワードを女性面接官に話すと、明らかに無関心だった部長が前のめりになりました。
女性面接官
「独立を希望されているのですね。なるほど。環境にも興味があると・・・フムフム・・・」
川島
「はい。高校生の頃から、自分で仕事をすることに憧れていました。数年後には独立したいと考えています。」
女性面接官
「若いのにめずらしいですね・・・
独立を公言する方ははじめてですね。
どうですか?・・・部長」
すると今まで押し黙っていた部長が、話し始めました。
部長饒舌に語り出す
部長
「実は私も25歳の頃に独立をしたんだ。最初はワゴン車で全国をまわったもんだよ。精密機械を積み込んで全国に売りに行ったんだ。」
川島
「ええ!そうなんですか!すごいですね!」
部長
「そうだよ。いろいろあって30億ぐらいの会社になって、フランチャイズ店を経営したりしたもんだ。あの有名なD社も、実は合併できるか?というところまで行ったんだ。最終的には、うまく出し抜かれちゃったけどね。」
川島
「はあああ・・・25歳の時に独立して、成功されるなんて、本当に羨ましいです。
失礼ですが、最初は資本金おいくらぐらいではじめたのですか??」
部長
「最初はねえ・・・」
部長と私は、就職の面接に来たはずなのに「独立」というキーワードで話がピタリとあったのでした。
自分自身を疑う
私は高校生の頃から独立したい(とは言っても自営業レベルですが)と考え、勉強をしてきましたが、モラトリアム状態の若者の決まり文句なようなもので、実体がない妄言だとうすうす感じていたのです。
私にとって「独立」というワードは引きこもりであった事実を覆い隠すための、防衛的な手段だったのです。
そのため、
「どうせ独立するなんて言っても、できっこないだろ」
「自分を誤魔化すために都合よく使っているだけだろ」
そう自分の奥底で感じていました。要は自分自身に疑いを持っていたのです。
私は独立についての勉強を確かに続けていました。会社の創り方という本を高校生の頃に読み始め、大学時代は会計学を勉強しました。しかし、それらの勉強をしていても、どこかおとぎ話の世界を見ているような気がしていたのです。
そこにリアルな匂いを感じることはなかったのです。
はじめてのリアルな起業家と遭遇
そんな疑り深い「独立」というファタジーを具現化したのが部長だったのです。「独立」というキーワードで、はじめて実績を出された方と話をすることができたのです。
私からすれば、独立できる=神様 ぐらいの存在だったので、目の前にいる小汚い中年太りをしたおっさんが「お釈迦さま」のように見えたのです。私は心から目の前にいる部長に尊敬の念を頂いたのでした。
部長は部長で、異様に目を輝かせて話を聞いてくれる若者に気をよくしたようでした。独立の話を楽しそうに聞いてくれる若者がいないのか、堰を切ったように過去の話をしてくれるのでした。
奥の手を出す
私は部長と話をしていくうちに、ますます、この会社で働きたい!と感じるようになったのです。30分ぐらい話が盛り上がると、私はついに、「精子量分析測定器」の企画書を出すことを決意しました。
「あ・・・あの・・・実は面接にあたって用意してきた企画書があるのです。見ていただいてもよろしいでしょうか?」
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・川島達史 1981年生まれ
・公認心理師 精神保健福祉士 心理学大学院修了
・社交不安症専門カウンセラー
・ご相談はこちらからお待ちしています
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