フェネアス・ゲージ(Phineas Gage)[1823-1860]
フェネアス・ゲージとは、1848年に鉄道工事中に前頭連合野を損傷した人物で、その事故そのものは痛ましいものであったものの、その後の脳科学研究に図らずも間接的に貢献する結果となった人物です。
アメリカのキャンベティッシュと言う町でその事故は起きました。当時25歳のゲージは鉄道工事の仕事をしていました。その作業中に誤って火薬が爆発し、太い鉄の棒がゲージの頭蓋骨を貫通しました。ゲージは奇跡的(脳を貫通して生きているなど信じられない話ですが)に一命を取り留めたものの、その後、彼の性格は一変してしまいました。
事故前は、温厚で他人を思いやる気持ちが強かったゲージですが、事故後は粗暴で協調性にかける性格へと変ってしまったのです。性格が変ってしまったゲージは事故後、まともな職につく事ができず、サーカスの見世物になったりと職を転々としました。そしてゲージは38歳の若さで亡くなりました。
ゲージの死後、ハナとダマシオ夫妻を中心とする、アイオワ大学のチームは、死後のゲージの頭蓋骨を3次元座標上に再構成しました。その結果、ゲージは前頭連合野の前方、下側を損傷していたことが解りました。
皮肉にもゲージの事故はその後の前頭連合野が高度な思考を司る脳であることを解明する研究に貢献することになったのです。