対人恐怖症克服記42 コミュ障‐校舎を変える
劣等感の塊で対人恐怖症になった私は、一発逆転をすべく大学2年の頃から会計士受験生になりました。2年間の猛勉強の末、試験を受けましたが、爪痕を一切残すことなく圧倒的敗北を期しました。
そして現実と向き合わざるを得ない状況になりました。試験に落ちた私には
①試験勉強地獄
②就職活動地獄
③起業地獄
この3つの地獄への道が残されていました。どの選択枝も、地獄への道でした。
①の試験勉強を続け、来年合格すれば、すべてがチャラになります。ただし、1年間再び悪夢にうなされる日々を過ごさなくてはなりません。また来年合格するという保証はどこにもなく、ズルズルと3年、4年とかかる恐れもありました。不合格を永遠と繰り返し、年齢だけ重ねる恐れが大いにありました。
②の就職活動をしてしまえば、これまで勉強してきた2年間の知識が無駄になってしまいます。また、就職活動をするとしてもコミュ障の自分を雇ってくれる会社がある気がしませんでした。万が一、面接にたどり着けたとしても、会計士試験に落ちたという敗者の烙印を押されたまま進めなくてはなりません。
③起業願望はありました。しかし、会計士試験に落ちた人間が、もっと難易度が高い起業にチャレンジしたところでうまくいくわけがありません。なんのノウハウもないですし、お金もありません。「起業する」という自我を保つための虚言を吐き続ける気力はもはや残されていませんでした。
どの選択肢も最悪でしたが、気が付けば「時間」という日が背後に迫っていました。そして私は、きわめて消極的な気持ちで①試験勉強地獄を選択しました。
父親に学費のおかわり
試験勉強地獄に進むには、通行手形が必要でした。すなわち、受験を続けるということは、もう1年分の学費が必要になってしまいます。生活費も含めれば、100万近くはかかります。
当然自分でそんなお金を出せるわけがありません。私は最初の試練として、ここ8年近くまともに会話をしていない父親に「おかわりください」と意さざるを得ない状況になっていました。当然すぐに、そんなことを言えるわけもなく、散々先延ばしにしました。
しかし、もはや申し込み期限の2日前というところまで追い込まれ、徹底的に避けていた、父親の部屋をノックしました。部屋に入ると父親は険しい顔で私を見ました。私は、雑談も、挨拶もなく、
「試験に落ちた…もう一年やりたい…」
と告げました。父親は、
「そうか…わかった…」
と理由も聞かず許可を出してくれました。私はお礼もいわず部屋を後にしました。とりあえずあと1年、猶予ができたことを安堵しました。父親は愛情表現が苦手でしたが、好きなようにさせてくれました。感謝の気持ちが芽生えるとともに、大学4年にもなって親のすねをかじり続ける自分が嫌になっていました。
コミュ障,校舎を変える
彼女も私と同様、試験を不本意な形で終えていました。彼女は迷うことなく、会計士試験の続行を宣言していました。私と違い、意志は固いものでした。彼女はウサギと亀でいうところに完全な亀タイプでした。
食べるのも遅いですし、しゃべる速度も遅いです。せっかちな私と全然真逆です。しかし、一度決めたことは、どんなにかかっても絶対に曲げない強さを持っていました。私はよくもまあ悩まずに続けるなんて即答できるなあ…とあきれていました。
なんやかんやと、彼女と再び、勉強を始めることになったのですが、1つ問題がありました。それは水道橋の校舎に行きたくないという点でした。彼女と私は水道橋TACの中でも勉強しているほうでした。クラスの仲間(顔見知り程度ですが)もそれを知っていました。もし水道橋に再び通うことになれば、
「あんなに勉強したのに落ちるなんて」
と馬鹿にされる気がしました。これは大型試験あるあるで、試験に落ちたものは、敗残兵同士で、お互いの醜態をさらさなくてはならないという通過儀礼があるのです。ただ私にはその通過儀礼を乗り越えるだけの、メンタルが残されていませんでした。
そこで私は、彼女にお願いして、水道橋の校舎から池袋の校舎へと移りました。池袋の校舎は本稿ではないので、いくばくか殺伐とした雰囲気は緩んだものでした。
勉強は夏の終わり頃から再開しました。しかし、あれだけできた勉強がなぜか捗りません。30分も勉強すると、電卓を叩くのが嫌になってきます。鉄の意志で我慢強く勉強を続ける彼女を遠く眺め、次第に会計士試験の勉強を投げ出すようになっていきました。
私の中で、何かが壊れていくのを感じました。
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・川島達史 1981年生まれ
・社交不安症専門カウンセラー
・公認心理師 精神保健福祉士
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