対人恐怖症克服記44 吃音の悪化,声がでなくなる
劣等感の塊で対人恐怖症になった私は、一発逆転をすべく大学2年の頃から会計士受験生になりました。2年間の猛勉強の末、試験を受けましたが、爪痕を一切残すことなく圧倒的敗北を期しました。
私は敗北感と自己嫌悪に陥り、現実逃避をするために、封印していた雀荘通いを再発してしまいました。朝起きると、専門学校に行くふりをして家を出ます。そして、そのまま場末の雀荘に直行して、夜まで打つような生活に戻ってしまったのです。
雀荘という安全地帯
もちろん私の中では、罪悪感がありました。専門学校代を払ってもらっているに、授業に出席しないどころか、昼食代などをすべて雀荘で使ってしまっていたのです。当然、親に迷惑をかけている感覚はあったのですが、その感覚すらストレスになり、それを一時的な興奮で解消しようと、雀荘に通うという悪循環に陥っていたのです。
雀荘には不思議な魔力がありました。雀荘では、ああだこうだ詮索しないのが暗黙の了解になっています。お互いの仕事や、家族歴、収入など、そういったプライベートの話は基本ありません。賭け事をしている環境なので、その辺は伏せておくのがマナーだったのです。会計士試験に落ちていようが、不細工だろうが、就職活動が絶望的だろうが、関係ないのです。
また、麻雀というゲームは「今ここ」に精神を取り戻せるゲームでもあります。およそ人の悩みは、過去の回想か、未来への不安に集約されます。「今ここ」に精神を戻すと、それらの雑音は消し飛び、悩みを忘れることができます。牌を開けば、どうあがるかに、脳が集中してくれます。その瞬間だけはすべての悩みを忘れることができました。
そうした絶妙のバランスにより、私は精神科デイケア「雀荘」に最後の居場所を見出していたのです。
父親の財布から戦費を調達
一方で、1か月もすれば、必然的な問題が起こります。それは戦費の捻出問題です。ギャンブル的な勝ち負けは、とんとんぐらいだったのですが、お店に払う麻雀の場所代で削られていき、専門学校に通うためにもらっていた、昼食代など使い果たしてしまいました。
当然、親に「精神的につらいので忘れるために麻雀代をくれ」などと言うことはできません。私に残された最後の金脈は、父親の財布でした。私はさすがに逡巡しつつも、もはやまともな自我を保つことはできない状況になっており、フラフラと父親の財布からお金を盗む癖を再発してしまったのです(対人恐怖症克服記26 父親の財布から金を盗んで賭麻雀)。
つい2か月前までは、毎日10時間勉強できていたのに、試験に落ちてから、私は人が変わったように堕落していきました。地獄から這い上がるために、蜘蛛の糸を頼り、どうにかつかみ続けていたのに、一次の苦しみから手を離すと、あっという間に地獄へ真っ逆さまという感覚でした。
吃音重症化
没落した餓鬼には当然天罰が下ります。対人恐怖症はさらに重症化し、様々な症状が深刻化していきました。このころは人と一切目を合わせることができなくなっていました。自分の醜態をさらしたくないので雑談は当然できません。
声を一切発しないので、吃音も重症化していきました。雀荘通いが続くと「ポン」とか「ロン」とかそんな簡単な単語ですらうまく出てこなくなっていました。これは難発と言います。例えば、「ポン」という単語を言おうとしてもその言葉が出てこないのです。これは吃音の方でないと感覚的に理解は難しいと思いますが、自分が頭に描いた簡単な言葉すら発することが難しくなっていました。
さらには、どうにか単語を言えたとしても
「ポ、ポ、ポ、ポ、ポン」
「ロ、ロ、ロ、ロ、ロン」
というような感じで、同じ言葉を繰り返す症状も深刻化していました。これは連発という症状です。この連発は、吃音をよくわかっていない人からすると、イライラさせる症状でもありました。手から「ちゃんと言えよ」と怒られることもしばしばでした。
このような吃音症状も相まって私は、社会の底辺である雀荘のヒエラルキーの中でも、さらに底辺に属するようになり、格下扱いされるようになっていきました。
唯一の居場所であった雀荘ですら、どもって声すら出せない自分、私はどこに行っても社会に適応できない気持ちになりました。しかし、まだそのどん底はそこではありません。私はさらに人生の最深部へと落ち続けることになるのです。
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・川島達史 1981年生まれ
・社交不安症専門カウンセラー
・公認心理師 精神保健福祉士
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