知的障害の特徴や原因,診断基準

皆さんこんにちは。心理学講座を開催している、公認心理師の川島達史です。今回のテーマは「知的障害」です。

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目次は以下の通りです。

①知的障害とは何か
②知的障害の診断基準
③合併しやすい障害
④知的障害の治療法
⑤精神保健福祉制度
⑥支援者の関り方

当サイトの特色は、臨床心理学、精神保健福祉の視点から心の病気を解説している点にあります。心の病気の解説サイトは多いですが、精神科医の先生が監修されていることが多く、心理師の専門サイトは多くはありません。

お薬以外での改善策を詳しく知りたい方に特にお役に立てると思います。ご自身の状況にあてはまりそうなものがありましたら是非ご活用ください。

①知的障害とは何か

意味

知的障害とは厚生労働省によると以下のように定義されています。

知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に支障が生じているため、何らかの特別の援助を必要とする状態にあるもの

歴史

知的障害を理解する上では歴史を知っておくことがとても大事です。江戸時代までさかのぼると、ご家族や寺の僧侶と一緒に過ごされていたようです。一方で、昔は農業が仕事の中心だったので、軽度の知的障害であれば、働き手として活躍されていた方も多かったと推測されます。

明治時代に入ると、様々な制度が近代化されていきますが、知的障害の制度は確立されません。それどころか、1948年に優生保護法が制定され、知的障害者は強制的に不妊手術を受けさせられるケースもありました。例えば16歳の軽度知恵障害で不妊手術を強制された女性もいます(*飯塚さんのケース

その後1960年に精神薄弱者福祉法が成立し、やっとのことで知的障害を持つ方の福祉の基盤ができてきました。現在では、知的障害を持つ方については、教育的な制度、成人してからの福祉的な制度、就労支援まで一通り基盤ができていると言えます。

②知的障害の診断基準

知的障害はDSM-5という診断基準で大きく3つの特徴を挙げています。

①知的機能の欠如

知的障害は、計算能力、言語能力など知能の低下がみられます。重症度は知能指数(IQ)によって分類がされています。この重症度は療育手帳の判定の基準になるなど、行政手続きでも用いられています。

②適応機能の欠如

適応機能とは、社会的にその年齢に相応しいとされる様々な能力のことです。日常生活で必要とされる基本的な能力が含まれます。知的障害としては以下の項目で2つ以上で欠如、不全がみられます。

コミュニケーション 自己管理 家庭生活 社会的技能 地域社会資源の利用 自己管理能力 学習能力 仕事 余暇 健康 安全

③発達期の発症

発症は18歳未満に限られます。そのため、18歳以降の発症は知的障害の対象にはなりません。例えば、高齢になり交通事故にあって知的能力を失った場合は、高次機能障害として、知的障害とは区別されます。

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③合併しやすい障害

知的障害は様々な精神疾患を併発しやすいです。代表的なものは以下になります。

ダウン症

ダウン症とは染色体異常の先天的な病気です。常染色体の21番目が1つ多く複製されることで起こる障害です。特徴として、ダウン症特有の顔貌があります。中等度~重度の知的障害を伴うことが多くなります。

てんかん

乳幼児期のてんかんは知的障害を伴いやすいといわれています。特にてんかん発作が頻発し、難治性のものであるほど、知的障害も重度になりやすいです。

脳性まひ

脳性まひは脳の病変による、運動や姿勢の障害を伴う病気です。高い確率で知的障害を伴いやすいです。知能と運動の障害がともに重度に障害されている場合を、重症心身障害児と呼ばれ、専門的な治療が必要になります。

発達障害

知的障害の方は、発達障害を併発していることもあります。自閉症スペクトラムの研究では、ASDの児童の50%前後が知的障害を持っているという報告もあります(Myers,2007)

 

④知的障害の治療法

知的障害は遺伝の影響が強いため、治療というよりも、うまく付き合っていくことが大事になります。当コラムでは、臨床心理学や精神保健福祉の観点からよく使う対策を紹介します。

①心理教育
②個別指導とスモールステップ
③感覚統合論
④代替機器の活用
⑤SST

①心理教育

知的障害に対しては、自己理解を深めることは何より大事です。障害の特性を理解すると、混乱することが減る、人間関係の失敗が減る、自分を受け入れるきっかけになる、という効果があります。具体的には専門家から説明を受ける、書籍を読む、知的障害の当事者の動画を見るなどが挙げられます。

②個別指導

知的障害の方は集団の講義ではおいていかれることが多く、個別指導で丁寧に成長を促すことが大事です。また個人指導はスモールステップで、挫折感の内容に充分配慮しなくてはなりません。

③感覚統合論

感覚統合理論とは、感覚と脳の処理過程を促進することで、学習能力をの向上を促す方法です。感覚統合理論では、感覚入力と脳の処理能力が低下が学習の困難さにつながると仮定しています。

具体的なやり方の一例を知りたい方は以下の折り畳みを参照ください。

フラミンゴのまね⇒バランス感覚

 

積み木⇒目と手の協調性

 

同じ絵探し⇒視知覚

これらは対象者自身が主体的に取り組めるように、遊びを通して感覚の反応を促すことが大事です。

④代替機器の活用

機器で能力を補える場合は、その使用法を教えることも大事です。電卓を使う、音声読み上げ機能、ワープロなどが挙げられます。現在ですが。テキストをスキャンすると読み上げてくれるソフトもあります。このような機器を積極的に活用していきましょう。

⑤SST

SSTはソーシャルスキルトレーニングの略で、社会性を身に着ける様々なトレーニングの総称です。例えば知的障害の方の中には、言いくるめられるとうまく断れない方がいます。このような場合は、断る練習を援助者と行うなどして、ストレスをためないように練習をしていきます。

 

⑤精神保健福祉制度

知的障害については様々な使える制度や支援機関があります。サポート体制を充実させるためにも参考にしてみてください。

療育手帳
知的障害の福祉手帳は療育手帳と呼ばれています。区分がAとBに分かれており、AはIQ35以下の重度知的障害で、Bはそれ以外が含まれています。療育手帳によって、公共交通機関の割引などのサービスが受けられます。

通級,特別支援学級
軽度知的障害児の学校での支援として、「通級」「特別支援学級」という教育体制があります。通級とは、通常の学級とは別に、それぞれの生徒に応じた指導・支援を受けるものです。国の調査(2020)の調査によると児童数は増加傾向にあります。

特別支援学校
中程度~重度の知的障害の方は専門の学校に通うことができます。特別支援学校では、1学級15名程度できめ細かい指導を受けることができます。

相談支援事業
相談支援事業は生活全般についてのあらゆる相談に乗ってくれる支援事業です。専門の支援員がついてくれるので物理的にも精神的にも大きな心の支えになってくれます。是非利用してみてください。

障害者就労支援
知的障害の方は大きくわけて、一般就労をされる方と、障害者向けの就労支援を利用される方がいます。一般就労で活躍している方もたくさんいらっしゃる一方で、理解をされず苦しむ方もいらっしゃいます。障害者就労支援制度では、症状を理解する支援員のもと、健康的に仕事を続けることができます。

障害福祉サービス
知的障害者のための、居宅支援、グループホーム、行動援護など様々なサービスを受けることができます。

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⑥支援者の関わり方

松山(2010)は、知的障害者施設の職員に対して、知的障害のある自閉症者との関わり方について調査をしています。その結果を参考にしながら、支援者知的障害者と関わるうえで心がけることを4つ紹介します。

①受容的配慮

話しやすい雰囲気を作る、何かを伝えようとしているときに最後まで聞くことなど、相手の気持ちを受容することに重点を置くことが大事です。

②言語的配慮

言語理解の程度を踏まえて話す、短い言葉(単語~3語文)で話をするなど、相手の理解力や発話能力に合わせてコミュニケーションを取るよう配慮する。

③動作的配慮

言葉に頼りすぎず、身振りを用いて示したり、指でさして示したりと、動作で示すことも大事にする。

④視覚的配慮

絵や写真で示す、文字に書いて示すなど、視覚的な情報でコミュニケーションを取る。

知的障害を持つ方にとって、温かい支援者と巡り合えるかは人生を左右する、重要な出来事です。大事なことは、健常者と同じく一人の人格をもった尊厳のある存在として台頭に接することだと考えています。皆さんが温かい支援を元に、知的障害を持つ方と一緒に成長されることを願っています。

 

コミュニケーション講座のお知らせ

公認心理師,精神保健福祉士など専門家の元で心理学や温かい人間関係の築き方を学習したい方場合は、私たちが開催しているコミュニケーション講座をオススメしています。講座では

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・悩みの相談の受け方
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・アサーティブコミュニケーション

など練習していきます。興味がある方はお知らせをクリックして頂けると幸いです。是非お待ちしています。

コミュニケーション講座,心理療法の学習

監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 元専修大学人間科学部教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

松山郁夫(2010) 青年期・成人期の自閉症者とのコミュニケーションをとるための生活支援員の認識
佐賀大学文化教育学部研究論文集 14,2,321-327

Myers SM, Johnson CP (2007). “Management of children with autism spectrum disorders”. Pediatrics 120 (5): 1162–82.