~ ご家族の方はこちら ~ いじめ問題で相手の親と話し合う前に知っておくべき9つのポイント
はじめまして!いじめ撲滅委員会代表、公認心理師の栗本顕です。私の専門は「いじめ」です。心理学の大学院で研究もしてきました。現在はいじめの問題を撲滅するべく、研修やカウンセリング活動を行っています。
今回のテーマは「いじめ問題で相手の親と話し合う方法」です。
お子さんがいじめに関わってしまったとき、相手の親御さんとどう話し合えばよいか悩んでいませんか。感情的になってしまったり、うまく伝えられなかったりして、問題がさらに大きくなることも多いのです。
目次は以下の通りです。
相手の親との効果的な話し合い方法
話し合いで起こりがちな問題と対策
いじめの法的責任と損害賠償
いじめ発覚時の適切な初期対応
学校への相談と報告の手順
話し合い前の入念な準備
この記事では、いじめ問題を解決するための親同士の話し合いについて、準備から実行、その後のフォローまでを分かりやすく解説していきます。お子さんを守るために、ぜひ最後までお読みください。
話し合い前の入念な準備
相手の親との話し合いを成功させるためには、事前の準備が何よりも大切です。
目的と落としどころの明確化
話し合いをする前に、何を目的にするのかをはっきりさせましょう。謝罪してもらいたいのか、いじめをやめてもらいたいのか、それとも損害の賠償をしてもらいたいのか。目的が曖昧だと、話し合いがうまくいきません。また、どこまで譲歩できるかも考えておきます。
完璧な解決は難しいかもしれませんが、最低限これだけは守ってほしいという線を決めておきましょう。現実的な目標を設定することで、建設的な話し合いができます。
話し合いの目的は以下になります。
謝罪を求める
いじめをやめる
損害の賠償
再発防止策
関係の修復
目的を明確にすることで、話し合いの方向性が定まり、相手にも伝わりやすくなります。
必要書類と証拠の整理
話し合いには、必要な書類や証拠を持参しましょう。いじめの記録、写真、医師の診断書、学校とのやり取りの記録などです。これらの証拠があることで、相手も事実を認めやすくなります。
書類は時系列に整理して、分かりやすくまとめておきます。コピーを取って、原本は大切に保管してください。また、話し合いの内容も録音できるようであれば、許可を得て録音しておくと良いでしょう。
準備すべき書類は以下になります。
いじめの記録
写真や動画
診断書
学校との記録
メールや手紙
証拠がしっかりしていれば、相手も真剣に話を聞いてくれるようになります。
第三者立会いの検討
話し合いには、第三者に立ち会ってもらうことを検討しましょう。感情的になりやすい問題だからこそ、冷静な第三者がいることで、話し合いがスムーズに進みます。学校の先生、PTA役員、民生委員、親戚など、両方の親が信頼できる人が理想的です。
ただし、相手が第三者の立会いを嫌がる場合もあるので、事前に相談しておくことが大切です。第三者がいることで、お互いに冷静になりやすくなります。
立会いを依頼できる人は以下になります。
学校の先生
PTA役員
民生委員
親戚や知人
専門カウンセラー
第三者がいることで、公平で建設的な話し合いができるようになります。
相手の親との話し合う時のコツ
実際の話し合いでは、相手の立場も理解しながら、建設的に進めることが大切です。
建設的な対話の進め方
話し合いは、相手を責めるためのものではありません。問題を解決するためのものです。最初に「お互いの子どものために、良い解決方法を見つけましょう」という姿勢を示しましょう。相手の話も最後まで聞いて、理解しようとする姿勢を見せることが大切です。
自分の主張だけでなく、相手の気持ちも受け止めてください。そうすることで、相手も心を開いて話してくれるようになります。最終的には、双方の子どもにとって良い結果になることを目指しましょう。
建設的な対話のコツは以下になります。
相手を責めない
最後まで聞く
気持ちを受け止める
解決策を一緒に考える
子どものことを最優先
お互いが敵対するのではなく、協力して問題を解決するという姿勢が大切です。
感情的な対立を避けるコツ
いじめの話し合いでは、どうしても感情的になりがちです。でも、感情的になってしまうと、話し合いがうまくいきません。相手が感情的になったときは、こちらは冷静を保つことが大切です。
「お気持ちはよく分かります」といった言葉で、相手の感情を受け止めてあげましょう。また、話が行き詰まったときは、少し休憩を取ることも効果的です。時間をおくことで、お互いに冷静になれます。
感情的な対立を避ける方法は以下になります。
冷静を保つ
相手の感情を受け止める
休憩を取る
深呼吸をする
建設的な言葉を使う
感情的にならないことで、問題の本質に集中して話し合いができるようになります。
具体的な解決策の提案
話し合いでは、具体的な解決策を提案することが大切です。「いじめをやめてください」だけでは、相手もどうすればいいか分からないからです。
例えば、
「お子さんに謝罪してもらいたい」
「今後は一人でいるときには近づかないでほしい」
「保護者同士で定期的に連絡を取り合いたい」
など、具体的な行動を提案しましょう。また、提案するときは、相手にとっても受け入れやすい内容にすることが大切です。無理な要求をすると、話し合いが決裂してしまいます。
具体的な解決策の例は以下になります。
謝罪をしてもらう
接触を避ける
定期的な連絡
親の見守り
専門家の介入
具体的な提案をすることで、実際に問題が解決に向かいやすくなります。
話し合いで起こりがちな問題と対策
話し合いでは、さまざまな問題が起こる可能性があります。事前に対策を考えておきましょう。
相手が事実を認めない場合
相手の親が「うちの子はそんなことをしていない」と言って、事実を認めない場合があります。このときは、感情的にならずに、証拠を示しながら説明しましょう。
写真や記録、第三者の証言などがあれば、それを提示します。ただし、相手を追い詰めるような言い方は避けてください。「事実を確認したいので、お子さんにも話を聞いてみませんか」といった提案をしてみましょう。相手にも調べる時間を与えることで、後日改めて話し合いをすることもできます。
事実を認めてもらうための方法は以下になります。
証拠を提示する
冷静に説明する
子どもに確認する
時間を与える
第三者の証言
相手を責めるのではなく、一緒に事実を確認するという姿勢が大切です。
責任転嫁される場合の対応
「いじめられる方にも原因がある」「うちの子も被害者だ」といって、責任を転嫁される場合があります。このような発言には、はっきりと反論する必要があります。
「いじめは、どんな理由があっても許されません」「問題があるなら、いじめ以外の方法で解決すべきです」と伝えましょう。ただし、感情的にならずに、冷静に対応することが大切です。相手の言い分も一度は聞いた上で、それでもいじめは良くないということを伝えてください。
責任転嫁に対する対応は以下になります。
はっきりと反論する
いじめは悪いと伝える
冷静に対応する
相手の言い分も聞く
建設的な解決を求める
責任をあいまいにせず、きちんと向き合ってもらうことが大切です。
関係悪化を防ぐ方法
話し合いがうまくいかないと、親同士の関係がさらに悪くなってしまうことがあります。これを防ぐためには、相手の人格を否定するような発言は避けることが大切です。「お子さんのしたこと」について話すのであって、「お子さんの人格」や「親としての責任」を責めるのは逆効果です。
また、話し合いの最後には、「今日はお時間をいただき、ありがとうございました」といった感謝の言葉を伝えることも大切です。問題は解決していなくても、話し合いができたことには感謝を示しましょう。
関係悪化を防ぐ方法は以下になります。
人格否定をしない
行為だけを問題にする
感謝の言葉を伝える
相手を尊重する
建設的な姿勢を保つ
相手との関係を保つことで、今後の解決にもつながりやすくなります。
いじめの法的責任と損害賠償
いじめには法的な責任が伴う場合があります。正しい知識を持っておくことが大切です。
加害者と保護者の法的責任
いじめをした子どもと、その保護者には法的な責任が生じる場合があります。子どもが小学校高学年以上であれば、本人にも責任能力があると判断されることが多いです。
ただし、実際に賠償金を払うのは保護者になります。保護者には「監督義務」があり、子どもがいじめをしないように見守る責任があるのです。いじめによって被害者がけがをしたり、心の病気になったり、物を壊されたりした場合は、その損害を賠償する責任があります。
法的責任の内容は以下になります。
子どもの責任能力
保護者の監督義務
損害賠償責任
慰謝料の支払い
治療費の負担
法的責任があることを知っておくと、話し合いでも説得力が増します。
損害賠償請求の可能性
いじめによって受けた被害については、損害賠償を請求することができます。治療費、薬代、通院のための交通費、精神的な苦痛に対する慰謝料などです。また、いじめが原因で転校することになった場合は、その費用も請求できることがあります。
ただし、損害賠償を請求するためには、いじめと被害の因果関係を証明する必要があります。医師の診断書や詳細な記録が重要な証拠になります。金額については、被害の程度によって変わりますが、数十万円から数百万円になることもあります。
請求できる損害の例は以下になります。
治療費と薬代
交通費
慰謝料
転校費用
精神的苦痛
損害賠償の可能性を知っておくことで、適切な記録を残すことができます。
民事責任と刑事責任の違い
いじめには、民事責任と刑事責任の両方が関わることがあります。民事責任とは、被害者に対してお金で償うことです。刑事責任とは、社会に対する責任で、警察や検察が関わります。暴力をふるった場合は暴行罪、お金を奪った場合は恐喝罪、物を壊した場合は器物損壊罪などの犯罪になることがあります。
ただし、14歳未満の子どもは刑事責任を問われません。でも、民事責任は年齢に関係なく発生することがあります。重大な事件の場合は、警察に相談することも検討しましょう。
民事責任と刑事責任の違いは以下になります。
民事はお金の問題
刑事は犯罪の問題
民事は被害者が相手
刑事は社会が相手
年齢制限が異なる
両方の責任があることを理解しておくと、適切な対応ができるようになります。
いじめ発覚時に始めにやること
いじめが発覚したとき、最初の対応がその後の解決に大きく影響します。感情的にならず、冷静に状況を把握することが重要です。
子どもの話をしっかり聞く
まず大切なのは、お子さんの話を最後まで聞くことです。途中で質問したり、意見を言ったりせずに、まずは全部を聞いてあげましょう。お子さんは勇気を出して話してくれているのですから、その気持ちを大切にしてください。
話を聞くときは、お子さんの目を見て、うなずきながら聞きます。「つらかったね」「よく話してくれたね」といった言葉をかけて、お子さんを安心させてあげてください。
話を聞くときのポイントは以下になります。
最後まで聞く
途中で口を出さない
目を見て聞く
うなずいて聞く
気持ちに共感する
お子さんが安心して話せる環境を作ることで、正確な情報を得ることができます。この最初の対応が、その後の問題解決の土台となるのです。
事実関係の記録と証拠保全
お子さんから話を聞いたら、すぐに記録を残しましょう。いつ、どこで、誰が、何をしたのかを詳しく書いておきます。後で話し合いをするときや、学校に相談するときに、この記録が重要な証拠になります。
写真やメールなどがあれば、それも保存しておいてください。記録は日付と時間も忘れずに書いておきます。また、お子さんがけがをしていたら、病院に行って診断書をもらうことも大切です。
記録すべき内容は以下になります。
いつ起きたか
どこで起きたか
誰が関わったか
何をされたか
けがや被害の程度
証拠があることで、相手の親や学校に対して、具体的に話を進めることができるようになります。感情論ではなく、事実に基づいた話し合いができるのです。
感情的にならない冷静な判断
お子さんがいじめられたと知ったら、怒りや悲しみで頭がいっぱいになってしまいます。でも、その気持ちのまま行動すると、問題がより複雑になってしまうことがあります。
まずは深呼吸をして、冷静になりましょう。お子さんを守るためには、感情ではなく、冷静な判断が必要です。家族や信頼できる人に相談して、客観的な意見をもらうことも大切です。一人で抱え込まずに、周りの人の力を借りてください。
冷静になるための方法は以下になります。
深呼吸をする
時間をおく
家族に相談する
信頼できる人に話す
客観的に考える
感情的になってしまうのは当然のことです。でも、お子さんを本当に守るためには、冷静に対応することが一番大切なのです。
学校への相談と報告の手順
いじめ問題では、学校との連携が不可欠です。適切な手順で相談することで、学校からの協力を得やすくなります。
担任教師への相談方法
まず最初に相談するのは、担任の先生です。電話ではなく、直接会って話をしましょう。お子さんから聞いた話を、記録を見ながら正確に伝えます。
感情的にならず、事実だけを伝えることが大切です。先生に対して「なぜ気づかなかったのか」と責めるのではなく、「一緒に解決していきましょう」という姿勢で話しかけてください。先生も味方につけることで、問題解決がスムーズになります。
相談するときのポイントは以下になります。
直接会って話す
記録を持参する
事実だけを伝える
責めない姿勢
協力を求める
担任の先生との信頼関係を築くことで、学校全体での対応も期待できるようになります。
いじめ防止対策推進法の活用
2013年に「いじめ防止対策推進法」という法律ができました。この法律では、学校にいじめ問題への対応を義務づけています。学校は、いじめの相談を受けたら、必ず調査をして、対応しなければならないのです。もし学校が対応してくれない場合は、この法律があることを伝えてください。
学校には「いじめ対策委員会」を作る義務もあります。重大な事態になった場合は、第三者による調査も行われます。
この法律で決められていることは以下になります。
学校の調査義務
対策委員会の設置
第三者調査
再発防止策
情報提供義務
法律があることで、学校も真剣に対応せざるを得なくなります。この法律を知っていることで、学校との話し合いも有利に進められるのです。
学校側の対応義務と責任
学校には、子どもたちが安全に学校生活を送れるようにする責任があります。これを「安全配慮義務」と言います。いじめが起きた場合、学校は必ず対応しなければなりません。対応しなかった場合は、学校に責任が生じることもあります。また、いじめを知っていながら放置した場合も、学校の責任が問われます。このことを知っておくと、学校との話し合いでも、しっかりとした対応を求めることができます。
学校の責任は以下になります。
安全配慮義務
いじめ調査義務
再発防止義務
情報提供義務
被害者保護義務
学校の責任を理解することで、適切な対応を求めることができるようになります。
まとめ
いじめ問題で相手の親と話し合うことは、簡単なことではありません。感情的になりがちな問題だからこそ、事前の準備と冷静な対応が何よりも大切です。お子さんを守るという共通の目標を持って、建設的な話し合いを心がけてください。
一人で抱え込まずに、学校や専門機関の力も借りながら、問題の解決に取り組んでいきましょう。時には弁護士などの専門家の助けも必要になるかもしれません。大切なのは、あきらめずに続けることです。お子さんが安心して学校生活を送れるまで、しっかりとサポートし続けてください。
そして、問題が解決した後も、再発防止に向けた取り組みを続けることが重要です。いじめのない環境を作るために、家庭、学校、地域が一体となって努力していきましょう。
相談をご希望の方へ
いじめ撲滅委員会では、全国の小~高校生・保護者のかた、先生方にカウンセリングや教育相談を行っています。カウンセラーの栗本は、「いじめ」をテーマに研究を続けており、もうすぐで10年になろうとしています。
・いじめにあって苦しい
・いじめの記憶が辛い
・学校が動いてくれない
・子供がいじめにあっている
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