~ いじめ被害者の方、ご家族の方 ~ いじめ保護者,両親ができる9つの対策
はじめまして!いじめ撲滅委員会代表,公認心理師の栗本顕です。私の専門は「いじめ」です。心理学の大学院で研究もしてきました。
現在はいじめの問題を撲滅するべく、研修やカウンセリング活動を行っています。また全国の小~高校生、保護者や先生へのカウンセリングや教育相談も行っています。
今回のテーマは
「両親ができる9つの対策」
です。
①子供の心理を理解する
②家庭を安全基地にする
③毎日コミュニケーションする
④いじめのサインを見抜く
⑤味方である宣言
⑥証拠を集める
⑦スクールカウンセラーと話す
⑧学校と話しあう
⑨公的機関へ相談する
いじめの事実を知った時には、怒り、悲しみ、不安、戸惑い、様々な感情が交差すると思います。保護者、家族だけで抱え込まず、解決の手掛かりにしていただければと思います。
①子供の心理を理解する
大人が気づきにくい
「なぜ気づけなかったのだろう…」
我が子がいじめられていることに、気づけなかった自分を、強く責めている保護者もいらっしゃるかもしれません。
自分を自分を責める必要はありません。なぜなら、子どもはいじめ問題を一人で抱え込む傾向があるため大人が気づきにくいという特徴があります。
以下は深谷(1996)が、いじめ被害を受けた子どもに対して行った調査をまとめたものです。
グラフから、子どもの年齢が上がるにつれて
・いじめ被害を話さなくなる
・特に保護者に相談しない
ということがわかります。
子どもは、いじめ被害を誰にも相談できず一人で抱えこんでしまうのです。
いじめ被害を話さない理由
では子どもはなぜいじめ被害を相談しないのでしょうか。
主な理由について深谷(1996)は次の6つを挙げています。
1.自尊心が傷つくから
2.子どもの問題だから
3.解決しないと思った
4.いじめがエスカレートする
5.チクリはカッコ悪い
6.自分が悪いと考える
いじめに合っている子どもは、不安や悲しみから、正しい判断ができず問題を隠してしまうのです。
いじめ問題に気づけなかった自分を責める必要はありません。まずは、いじめ被害を相談できないほど、不安を抱えている子どもの気持ちを受け止めてあげてください。
②家庭を安全基地にする
安心して休める場所を
子どもの心のケア・いじめ問題の解決で、最初にやるべきことは、子どもの心身の安全確保です。子どもが安心して休める場所「安全基地」を作ってあげましょう。安全に、心身を癒せる環境があることで、子どもの心のケアがスムーズに進みます。
安全基地とは、自宅や子ども部屋、さまざまな場所や機関も検討できます。また家族や友人といった人も、子どもが安らぐのであれば安心できる環境といえます。
安全基地の例
安全基地の具体例をご紹介します。
具体的には、
・自宅
・家族
・親戚
・友人、友人の家
・相談室
・適応指導教室
・習い事・塾
・教育相談室(教育事務所)
・スクールカウンセラー(SC)
・教職員
・公民館、図書館
・民間のフリースクール,フリースペース
などがあり、どこを安全基地とするかは状況によって異なります。
まずは家庭をベースにして、子どもが望む安全基地を増やしていくといいでしょう。子どもの気持ちを優先させてください。
③毎日のコミュニケーション
日々の会話で信頼関係を
いじめ被害の発見には、日々のコミュニケーションがとても大切です。
家庭内の会話があれば「今日は元気がないかも?」など、子どもの日々の変化に気づきやすくなります。加えて日々のちょっとしたコミュニケーションは、親子の信頼関係づくりにも役立ちます。
思春期の子どもは、幼少期と比べて会話が少なくなるものです。しかし不安なことや心配なことは、信頼できる人に相談しながら乗り越え成長をしていきます。信頼関係のある親子であれば、子どもは親を頼ってくれるものです。
日々の何気ない会話から、いじめ被害の大きな手掛かりを見つけることができるかもしれません。今からでも始められます、会話がある家庭を目指してみましょう。
会話を増やす3つのポイント
家庭内での会話を増やすための方法として3つご紹介します。ちょっとした心がけで子どもの心や体の変化に気づきやすくなると思いますので取り入れてみてください。
1:集合する時間を作る
家族全員が集まる時間を設けます。例えば、朝と夜は家族全員で食事をする、休日は1時間一緒に過ごすなど、家庭内で可能なルールを決めておくと実行しやすいでしょう。無理なく習慣化できることで進めてみてください。
2:会話をする
家族で過ごす時には、会話がしやすい環境を作るようにします。例えば、スマホの使用を禁止する、テレビを消すなど環境を整えるといいでしょう。また子どもが話しやすいよう、大人は何の屈託もない様子で話すよう心がけてみてください。
3:子どもの話をよく聴く
会話では、子どもの話にしっかり耳を傾けるようにします。傾聴を心がけることで、子どもが自己開示しやすくなります。傾聴の進め方がわからない場合は、こちらのコラム傾聴力を高める練習を参考にしてみてください。
④いじめのサインを見抜く
いじめ問題を解決するポイントは、いじめのサインを早期にキャッチすることです。子どもの何気ない言動の変化に気付くことで、いじめ問題の早期解決につながります。
いじめのサインが現れやすい場所や行動を、以下にまとめました。参考にしてみてください。
・最近よくモノをなくす
学校でモノを隠されたり、壊されたりしている可能性があります。なくした理由を、あいまいにすることが増えた時には要注意です。
・ノート,教科書を見せない
持ち物に落書きをされたり、破かれたりしている可能性があります。教科書やノートは全科目、あるいは何冊かまとめて書き込み、破かれていることがあります。
・お金の要求が増えた
いじめの加害者から継続的にお金を要求されている可能性があります。
・「学校行事に来ないで」と言う
いじめの加害者から「親を学校に来させるな」とプレシャーをかけられている可能性があります。加害者は、いじめている子の親が学校に来ることを避けたい傾向にあります。
・プリント,連絡帳を出さない
プリントを破られたり、連絡帳に落書きをされたりしている可能性があります。
・ボーとする時間が増えた
いじめによる気分の落ち込みや意欲が低下している可能性があります。いじめを受けている時には、気分が落ち込み「何もする気になれない」という精神状態に陥ることが多く見られます。
・過度に明るい様子
いじめられていることに築かれないようにするため、無理に明るくふるまっている可能性があります。
・「別に」「普通」など具体的に答えない
学校の事を質問したときに「別に」「普通」と返事をすることが多い場合は、いじめのサインかもしれません。いじめのつらい気持ちを伝えられないため具体的に話せなくなっているのです。
・学校のことを詳しく聞くと怒る
学校のことを「聞かれると困る」と思っている可能性があります。またいじめを隠しているものの、いじめに気づいてくれない親に腹が立つ…。そんな気持ちの表れから、詳しく聞くと「うるさいな」など怒って話を終わらせようとすることがあります。
・寝つきが悪い,夜中に起きる
いじめを思い出して、眠れなくなっている可能性があります。いじめが原因で「過覚醒」「入眠不安」となり、不眠になってしまうのです。
・用事がないのに朝早く登校する
いじめ加害者に待ち伏せをされないために、時間をズラしている可能性があります。
・登校時「行きたくない」という
これはSOS信号です。特に通学時間帯に身体の具合が悪くなる場合には、いじめ被害が身体化している可能性もあります。
(山脇(2006)・三坂ら(2007)より、一部編成して掲載)
サインを見つけたら
もしも「いじめのサインかも?」と気になる点があれば、まずは子どもに「最近何か心配事がないかな?」と優しく聞いてみましょう。
その時には、とがめたり急いで事情を聞き出そうとすることはやめましょう。子どものペースに合わせて、こどもから自己開示ができるよう、傾聴を心がけてください。
⑤味方である宣言
勇気づける
いじめのサインを見つけたら、すぐにでも解決に向けて行動したい!と思うかもしれませんが、対策を進める前にお願いしたいことがあります。それは、
「私たちはあなたの味方だよ」
と子どもに強く宣言してください。
いじめに合っている子どもは、精神的に非常に孤独な状態です。寂しさや不安を抱えている子どもをまずはしっかりと勇気づけてあげてください。
子どもの目をみて
「お父さんがついている!」
「お母さんがついている!」
「何があっても〇〇を守る!!」
と強く伝えましょう。この両親からのメッセージで子どもは勇気づけられます。
話を共感的に聴く
そして子どもはいじめで大変な思いをしています。その体験を共感的に聴くようにしましょう。
いじめにあっていた時の体験を理解しようとする両親の姿勢は、子どもにとって何よりの安心感につながります。子どもの話にしっかりと耳を傾けてあげましょう。
共感については、こちらの共感コラムが参考にしてください。
話しやすい環境づくり
いじめは、非常につらく孤独な体験です。この大変な体験で感じたことを、子どもがいつでも相談できるような話やすい環境づくりをします。
「何かあったらいつでも話を聞くよ」
そんな声掛けを子どもにするだけでも話やすくなるものです。子どもが気軽に相談できるような雰囲気づくりを心がけてみてください。
そして子どもの話を聴くときには「真剣に向き合っている」ことが伝わよう、傾聴姿勢を大切にしてください。
まずは子どもに安心を
いじめにあった子どもは、精神的にも肉体的にも非常に不安定です。まずは保護者が最大の味方となり支えとなることがとても大切です。しっかりと子どもの気持ちを受け止めてあげてください。
我が子がいじめ被害にあっているとわかれば、すぐにでも怒鳴り込んで子どもを守りたいと考えるでしょう。しかし親が怒って感情のままに学校や相手に怒鳴り込んでも、根本的な問題の解決はできません。しっかりと作戦を練ってから行動するようにしましょう。
⑥証拠を集める
被害記録は重要な証拠
いじめを解決するときには、被害記録がとても役に立ちます。
被害記録は、先生やスクールカウンセラーと話し合うときの重要な情報となります。また相談窓口や法律の専門家に相談する時には、いじめの事実を裏付ける証拠として提出が求められるケースが多いです。
被害記録は、ノートに記入したり、スマホに入力したり、場合によってはボイスレコーダーを使ってもいいでしょう。そしてそれらの証拠は、複製をつくっておくようにします。
いじめの記録
いじめの被害記録には、子どもの様子を記載します。
・顔色
・発言
・変化した部分
これらを日付ごとに残すようにします。
そして子どもの心理状態と親子関係が許すのであれば「いじめに関する日記」「いじめの証拠」を子どもが持っているか確認をしてみてください。持っているようであれば、子供の許可を取ったうえで、後ほど紹介する専門家に示すようにします。なお、いじめの被害記録がないからといって、新たな証拠を子どもに探させる必要はありません。
いじめ解決は専門家とともに考えることで大切です。家族だけで抱え込まず、専門家の力を借りながら視野を広くもってみんなで解決をしていきましょう。
⑦スクールカウンセラーと話す
スクールカウンセラーとは
スクールカウンセラーとは、学校に通う子どもやその保護者に対して心のケアを行うスタッフです。公認心理師や臨床心理士の資格を取得している心の専門家で、いじめ問題の相談・支援もしてくれます。
スクールカウンセラーは、平成7年文部科学省の指導により配置されており、令和元年時点では30,000校の公立小中学校に配置がされています、
具体的なサポート
スクールカウンセラーは、児童や生徒、保護者へのカウンセリングで進められます。個別でのカウンセリングをもとに、問題解決に向けて心理学的な観点から支援を行ってくれます。
具体的には
・ストレスの対処法
・適切なコミュニケーションの方法
・いじめ問題をどんな方法で解決を目指すのか
などがあり相談内容に合わせて一緒に考えてくれます。
依頼方法と守秘義務
スクールカウンセラーを利用する場合は、学校を通して依頼します。
相談内容は、学校の先生と共有されるのが一般的ですが、先生に知られたくない場合はその旨を伝えてください。スクールカウンセラーには、守秘義務があります。学校の先生に知らせずに相談することもできます。
⑧学校と話しあう
最初は担任の先生に
いじめ問題の解決に向けて、学校としっかりと話し合い対処していくことがとても大切です。最初は、子どもの担当の先生に相談します。そのうえで状況が改善されない、解決に向けた動きが確認できない場合には、管理職である教頭、そして校長と順番に相談をしていきましょう。
話し合いは冷静に
「すぐにでも解決をしたい!」という思いから、感情の赴くまま学校の先生に怒りや悲しみをぶつけてしまうと、いい方向に進まなくなってしまいます。
気持ちを落ち着けて、まずは子どもがいじめられている事実を伝えるようにします。落ち着いて伝えるために、文書などにまとめて相談すると先生もじっくりと状況が把握できるでしょう。
匿名でも可能
いじめの事実を匿名で伝えいたい場合は弊社のいじめいじめ通報URLもご利用ください。
⑨公的機関へ相談する
学校が本気で取り組んでくれない場合は、公的機関を利用していきましょう。いじめに関する相談窓口は、さまざまあります。公的機関を利用するメリットは学校へ第三者が介入する点にあります。
学校だけですと場合によっては閉鎖的な話し合いで終わってしまうこともありますが、第三者の機関を利用すると様々な支援の輪を広げていくことができます。
たくさんの支援先があるので、保護者だけ家族だけで抱え込まずぜひ活用してください。相談先はこちらの相談窓口一覧にまとめています。参考になさってください。
また私もご両親向けのいじめ撲滅カウンセリングを行っています。有料となってしまいますが気軽に相談ください。
https://www.direct-commu.com/no-ijime/activity/parent_counseling/
いじめ被害の保護者の方へ
いじめ体験,両親がしてくれたこと
いじめ撲滅委員会代表の私 栗本は学生時代に壮絶ないじめ体験をしました。
背中を鉛筆などで刺されたり、私物を隠されたり、嘘の噂を流されてしまい信用を失ってしまったりなど、この場では語り切れないほどの内容でした。
当時の私は、非常に気が小さく、反論や反撃といった行動ができませんでした。またいじめを受けていた時には「恥ずかしい」「心配をかけてしまう」と考えから、いじめ被害を誰かに相談することができず一人で抱え込んでいました。
被害を受けていく中で、私の体はその場に行くことに限界を感じてきていました。そのため、登校しぶりやわざと遅れて登校したりなどを繰り返していました。
そんな私を両親は「学校に行きなさい!!」と注意をし、引っ張って車に乗せたたこともありました。
しかし、私がいじめに苦しんでいることをカミングアウトすると、両親は全力で私の心と体の安全を最優先に学校と掛け合ってくれました。
そのおかげで一定期間学校を休むことができ、再び登校ができるようになりました。「保護者という最大の味方」がいたので、復帰は怖くありませんでした。
後日談になりますが、父の机の上に不登校問題などの資料があったことに気付き、両親はかなりの勉強をしてくれていたのだと思います。研究を続けてきた今の私でもかなわないほどに。。。
保護者の方へ
ここで私から、お子さんがいじめ被害にあっている保護者の方へのメッセージになります。
今どんなことを考えてみえますか。
楽しいことを考えようとしてもいじめられている我が子のことや、いじめをした子たちの顔が思い浮かんでしまうのではないでしょうか。
なんの前触れもなく我が子がいじめ被害にあっていることが分かったとき、親として怒りや悲しみがこみあげてくると思います。「相手に同じことをしてやりたい」「学校に怒鳴り込んでやりたい」と思うのは当然のことです。
しかし、それ以上にいじめ被害にあっている子どもは怒りや悲しみを抱えています。だからこそ、冷静に我が子の訴えを聞いてあげることが重要です。
親が我が子の最大の味方になることで、我が子は守られます。そして子どもと保護者が協力し合って、どのようなことができるのか。どんな解決策があるかを共に考えることで、いじめ被害は大きく変わります。
いじめ問題は多岐にわたります。そして、それぞれにエピソードがあり、それぞれに解決策があります。
「一人で」「親子で」「家族で」抱え込まずに、さまざまな人や物、場所に頼ってください。保護者自身も無理をしないことが大切です。冷静に、視野を広くもって子どものために解決していきましょう。
相談をご希望の方へ
いじめ撲滅委員会では、全国の小~高校生・保護者のかた、先生方にカウンセリングや教育相談を行っています。カウンセラーの栗本は、「いじめ」をテーマに研究を続けており、もうすぐで10年になろうとしています。
・いじめにあって苦しい
・いじめの記憶が辛い
・学校が動いてくれない
・子供がいじめにあっている
など、いじめについてお困りのことがありましたらご相談ください。詳しくは以下の看板からお待ちしています。
<参考・引用文献>
深谷 和子 1996 「いじめ世界」の子どもたちー教室の深淵 金子書房.
三坂 彰彦・田中 早苗・佐藤 香代・角南 和子・浦川 朋子 2007 Q&A 子どものいじめ対策マニュアルー解決への法律相談 明石書店.
山脇 由貴子 2006 教室の悪魔 株式会社ポプラ社.
小林 正幸・嶋崎 政男 (2012) 三訂版もうひとりで悩まないで!教師・親のための子ども相談機関利用ガイド ぎょうせい.
2件の相談
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私は祖母です。孫がイジメにあい一年が経ちます。加害者の親が校長の元教え子という事で終わった事にされました。孫と親が精神的にまいり積み木崩しの状態です。孫は今ステップにて対応されイヤイヤ登校しております。どうにかなりませんか?
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教育委員会か、いろいろないじめのサイトでこのことを言う。最悪国に頼ってください。別室登校(保健室など)や転校という手もあります。こんなに言われても難しいですよね、、、いじめの専門家に頼ってもいいかもしれません。
大変かと思いますが頑張ってください!0
日本からいじめをなくそう
私は学校に行くことができていません(不登校です)。でも何故だかわからないんです。いい友だちもたくさんいて、クラブも含めて学校生活は楽しいです。でも何故だか行けない。「家にいたらダメ、とにかく外へ出ろ」となかなか怒らない母でさえも怒らせてしまいました。今まで怒るのを色々我慢させてしまって本当に申し訳ないです。もうこれ以上母や他の家族を苦労させたくありません。私はどうしたらいいですか?