~ お友達の方はこちら ~ いじめがある…友人や同級生から先生に伝えるときのポイント
はじめまして!いじめ撲滅委員会代表、公認心理師の栗本顕です。私の専門は「いじめ」です。心理学の大学院で研究もしてきました。現在はいじめの問題を撲滅するべく、研修やカウンセリング活動を行っています。
今回のテーマは「いじめがある…友人や同級生から先生に伝えるときのポイント」です。友達がいじめられているのを見つけたとき、どうやって先生に相談すればいいのか分からない方も多いでしょう。正しい伝え方を知ることで、困っている友達を効果的に助けることができます。
目次は以下の通りです。
① いじめを見つけたらすぐに動こう
② 先生に話す前に準備しよう
③ 先生への上手な伝え方
④ 先生が動いてくれない時の対処法
⑤ 記録に残すべき大切なこと
⑥ 先生に話すときにやってはいけないこと
⑦ 話した後もしっかりフォロー
いじめを目撃したときの適切な対応方法を、心理学の専門知識と実際の事例をもとに詳しく解説していきます。ぜひ最後までご一読ください。
いじめを見つけたらすぐに動こう
いじめを発見したときは、迷わずに行動を起こすことが何より大切です。時間が経つほど状況は深刻になり、解決が困難になってしまいます。
早く対応すると良いことがある
いじめへの早期対応は、被害者と加害者の両方にとって重要な意味を持ちます。迅速な対応により、いじめがエスカレートする前に解決の道筋をつけることができるのです。
早期対応の効果は以下になります。
・いじめが深刻化しない
・心の傷が軽くて済む
・学校全体で対応できる
・被害者の安全を守れる
・加害者への指導ができる
早期発見・早期対応は、いじめ防止対策推進法でも重視されている基本原則です。小さなサインを見逃さず、すぐに大人に相談することで、より効果的な解決につながります。一人で抱え込まずに、信頼できる大人と連携して対応していくことが重要です。
何もしないと大変なことになる
いじめを放置することは、想像以上に深刻な結果を招く可能性があります。被害者の心身への影響はもちろん、学校全体の雰囲気にも悪影響を与えてしまいます。
放置することで起こる問題は以下になります。
・いじめがひどくなる
・不登校になる危険
・自殺を考える場合も
・加害者が調子に乗る
・周りも巻き込まれる
東京都教職員研修センター(2013)の調査[1]によると、いじめを相談しない理由として「被害が悪化するから」と答える生徒が多いことが分かっています。しかし、実際には早期に適切な対応をすることで、問題の悪化を防ぐことができるのです。勇気を出して行動することが、本当の意味で友達を守ることにつながります。
先生に話す前に準備しよう
効果的な相談をするためには、事前の準備が重要です。感情的になって話すのではなく、冷静に事実を整理してから先生に相談しましょう。
いじめの様子をしっかり記録
いじめの記録を正確に残すことは、問題解決のために最も重要なステップです。曖昧な記録では先生も対応に困ってしまうため、具体的で客観的な記録を心がけましょう。
記録すべき内容は以下になります。
・いつ起きたか
・どこで起きたか
・誰が関わったか
・何をされたか
・どのくらい続いたか
記録をつけるときは、自分の感情や推測は分けて書くようにしてください。「ひどいことをされた」ではなく、「○○と言われた」「××をされた」といった具体的な事実を書くことが大切です。メモ帳やスマホのメモ機能を使って、その日のうちに記録する習慣をつけましょう。
証拠になるものを集める
いじめの証拠を集めることで、先生もより具体的な対応を取ることができます。ただし、証拠集めに夢中になって、被害者の気持ちを無視してはいけません。安全に配慮しながら情報収集を行いましょう。集められる証拠は以下になります。
・目撃者の証言
・写真や動画
・メールやLINE
・壊された物
・診断書や治療費
証拠集めで大切なのは、無理をしないことです。危険を感じたら証拠集めよりも安全を優先してください。また、プライバシーに関わる情報を扱うときは、被害者の同意を得ることが必要です。証拠があることで学校側も動きやすくなりますが、なくても相談することに意味があります。
いじめられている子の気持ちを聞く
いじめられている友達の気持ちを理解し、尊重することは相談の前提条件です。本人の意思を無視した行動は、かえって状況を悪化させる可能性もあります。まずは被害者との信頼関係を築くことから始めましょう。
確認すべきことは以下になります。
・先生に話していいか
・どんな解決を望むか
・誰に知られたくないか
・どんなサポートが必要か
・今一番つらいこと
被害者の中には、事が大きくなることを恐れて相談を嫌がる人もいます。そんなときは無理に説得せず、まずは話を聞いて寄り添うことが大切です。「あなたの味方でいる」「一人じゃない」ということを伝え、安心感を与えてあげてください。最終的には本人の意思を尊重しつつ、適切なサポートを提供していきましょう。
先生への上手な伝え方
いじめの相談は、伝え方によって結果が大きく変わります。先生に効果的に状況を伝えるためのコツを身につけましょう。
話すタイミングを選ぶ
相談のタイミングは、問題解決の成功を左右する重要な要素です。先生も忙しいスケジュールの中で働いているため、適切なタイミングを見計らって相談することが大切です。良いタイミングは以下になります。
・授業の合間の時間
・放課後の空いた時間
・お昼休みの後半
・朝の会の前
・緊急時はすぐに
ただし、緊急性が高い場合は時間を選ばずに相談してください。暴力があった場合や、被害者が自傷行為をほのめかしている場合などは、迷わずにその場で先生に報告しましょう。普段から先生との関係を良好に保っておくことで、いざという時に相談しやすくなります。
はっきりと分かりやすく話す
いじめの相談では、感情的にならずに事実を正確に伝えることが重要です。準備した記録をもとに、冷静で具体的な説明を心がけましょう。先生に分かりやすく伝えるためには、5W1Hを意識することが効果的です。話し方のポイントは以下になります。
・落ち着いて話す
・事実と感想を分ける
・具体的に説明する
・時系列で整理する
・質問には正直に答える
「いじめられています」だけでは、先生も具体的な対応を決められません。「いつ、どこで、誰が、何を、どのように」を明確に伝えることで、先生も適切な判断ができるようになります。分からないことは「分からない」と正直に答え、推測や憶測は避けるようにしてください。
先生と協力する気持ちで話す
いじめの相談では、先生を責めるのではなく、一緒に問題を解決する姿勢で臨むことが大切です。建設的な態度で相談することで、先生からの協力も得やすくなります。
協力的な態度のポイントは以下になります。
・感謝の気持ちを伝える
・解決策を一緒に考える
・自分にできることを聞く
・先生の判断を尊重する
・継続的に協力する
先生も人間ですから、協力的な態度で相談されると、より親身になって対応してくれるものです。「先生、相談があります」「お忙しい中すみません」といった配慮の言葉から始めることで、良好な関係を築きながら相談を進めることができます。問題解決は一人でできることではないので、チームワークを大切にしていきましょう。
先生が動いてくれない時の対処法
残念ながら、担任の先生が適切に対応してくれない場合もあります。そんなときでも諦めずに、他の方法を試してみましょう。
他の先生に相談する
担任の先生が対応してくれない場合は、学校内の他の先生に相談してみましょう。学校には様々な立場の先生がいるので、適切な人を見つけることが大切です。特にいじめ問題の経験が豊富な先生に相談することで、効果的な解決策が見つかる可能性があります。
相談できる先生は以下になります。
・学年主任の先生
・生徒指導の先生
・保健室の先生
・カウンセラー
・校長先生や教頭先生
学校組織では、いじめ対策委員会という専門のチームが設置されています。このチームに情報が届けば、学校全体として組織的な対応が期待できます。また、スクールカウンセラーは心理の専門家なので、被害者の心のケアについてもアドバイスをもらうことができます。
お家の人に助けてもらう
学校内での解決が困難な場合は、保護者の力を借りることも重要な選択肢です。大人の介入により、学校側もより真剣に問題に取り組むようになることがあります。ただし、保護者に相談する際は、事前に被害者の同意を得ることが必要です。保護者ができることは以下になります。
・学校に直接相談する
・他の保護者と連携する
・教育委員会に相談する
・専門機関を紹介する
・法的手続きを検討する
保護者が学校に相談する際は、感情的にならずに冷静に話し合うことが重要です。学校側も保護者からの相談には真剣に対応する傾向があるため、適切なアプローチをすれば問題解決につながります。必要に応じて複数の保護者が連携することで、より大きな影響力を持つことができます。
学校以外の人に相談する
学校内での解決が期待できない場合は、外部の専門機関に相談することも考えましょう。客観的な第三者の介入により、問題が動き出すことがあります。特に深刻ないじめの場合は、専門的な支援が必要になることもあります。相談できる機関は以下になります。
・教育委員会
・24時間子供SOS
・法務省人権相談
・警察
・弁護士
教育委員会は学校を指導する立場にあるため、学校が動かない場合の相談先として効果的です。24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310)は、いつでも無料で相談できる窓口です。深刻な被害がある場合は、警察や法務省の人権相談窓口も利用できます。一人で悩まずに、適切な支援を求めることが大切です。
記録に残すべき大切なこと
いじめの記録は、問題解決のための重要な証拠となります。正確で詳細な記録をつけることで、先生や学校が適切な対応を取りやすくなります。
基本的な情報を書く
いじめの記録では、基本的な情報を正確に記録することが最も重要です。曖昧な情報では証拠としての価値が下がってしまうため、できるだけ具体的に書くことを心がけましょう。記録すべき基本情報は以下になります。
・正確な日時
・詳しい場所
・関係者の氏名
・目撃者の有無
・天気や状況
日時は「○月○日○時頃」といった具体的な記録が理想的です。場所も「教室」ではなく「3年2組の教室の後ろの席」といったように詳しく書きましょう。関係者の氏名は漢字で正確に記録し、あだ名しか分からない場合はその旨も記載してください。これらの情報は後で確認が困難になることもあるため、その日のうちに記録することが大切です。
いじめの内容を詳しく書く
いじめの具体的な内容は、対応策を決めるために最も重要な情報です。抽象的な表現ではなく、具体的で客観的な記録を心がけることで、証拠としての価値を高めることができます。
記録すべきいじめの内容は以下になります。
・具体的な言動
・継続期間
・頻度や回数
・エスカレートの様子
・周囲の反応
「ひどいことを言われた」ではなく、「『バカ』『死ね』と言われた」といった具体的な記録が重要です。いじめの継続期間や頻度も重要な情報なので、「先週から毎日」「月に2-3回」といった記録をつけましょう。また、いじめがエスカレートしている様子があれば、それも詳しく記録してください。
いじめられている子の変化
被害者の心身の変化を記録することで、いじめの深刻さを客観的に示すことができます。外見的な変化だけでなく、行動や態度の変化にも注意を払いましょう。これらの情報は、被害者のケアを考える上でも重要な資料となります。
観察すべき変化は以下になります。
・表情や態度の変化
・体の不調の症状
・学校生活への影響
・人間関係の変化
・学習面への影響
表情が暗くなった、食欲がなくなった、友達と話さなくなったといった変化は、いじめの影響を示す重要な証拠です。また、成績が下がった、保健室に行く回数が増えたといった学校生活への影響も記録しておきましょう。これらの情報は、被害者が回復するためのサポート計画を立てる際にも役立ちます。
先生に話すときにやってはいけないこと
いじめの相談では、避けるべき行動もあります。良かれと思ってした行動が、かえって問題を複雑にしてしまうこともあるので注意が必要です。
感情的になって話す
いじめの相談では、感情的になることは自然な反応ですが、冷静さを保つことが重要です。感情的な相談は、先生にも正確な情報が伝わりにくく、適切な判断を妨げる可能性があります。
怒りや悲しみの感情は理解できますが、まずは深呼吸をして心を落ち着けてから相談しましょう。どうしても感情的になってしまう場合は、一度時間を置いてから改めて相談することも大切です。準備した記録を見ながら話すことで、冷静さを保ちやすくなります。先生との信頼関係を維持することが、問題解決の近道です。
確かではないことを話す
いじめの相談では、確認できた事実のみを報告することが重要です。推測や憶測、噂話を混ぜて話すと、事実関係が不明確になり、適切な対応が困難になってしまいます。
「○○らしい」「○○だと思う」といった不確実な情報は、混乱の原因となります。自分が直接見聞きしたことと、人から聞いた情報は明確に分けて話しましょう。分からないことは「分からない」と正直に答えることが大切です。正確な情報に基づいた相談こそが、効果的な問題解決につながります。
勝手に行動する
いじめの相談では、関係者の気持ちや立場を考慮せずに独断で行動することは避けなければなりません。特に被害者の意思を無視した行動は、状況を悪化させる危険性があります。避けるべき独断行動は以下になります。
いじめられている友達の気持ちを無視して先生に相談すると、友達からの信頼を失う可能性があります。また、感情的になって加害者に直接対決を挑むのも危険です。どんなに良い意図があっても、関係者の同意を得ずに行動することは避けましょう。チームワークを大切にし、みんなで協力して問題解決に取り組むことが重要です。
話した後もしっかりフォロー
先生に相談した後も、継続的に状況を見守ることが重要です。一度の相談で問題がすべて解決するとは限らないため、粘り強くサポートを続けましょう。
その後の様子を見続ける
いじめの相談後は、被害者の状況や学校の対応を継続的に観察することが大切です。問題が完全に解決するまでには時間がかかることもあるため、根気強く見守る姿勢が必要です。観察すべきポイントは以下になります。
・いじめの継続有無
・被害者の状態変化
・加害者の行動変化
・学校の対応状況
・周囲の雰囲気変化
いじめが止まったように見えても、見えないところで続いている可能性もあります。被害者の表情や行動に注意を払い、変化があれば記録しておきましょう。また、加害者の行動にも注意を向け、反省の様子や行動の変化を観察することも大切です。学校の対応についても、約束された措置が実際に行われているかを確認してください。
先生と連絡を取り続ける
相談後も先生との連絡を定期的に取ることで、問題解決の進捗を確認し、必要に応じて追加の対応を求めることができます。先生も継続的な報告を受けることで、より適切な判断ができるようになります。
連絡すべき内容は以下になります。
・新しい情報の報告
・被害者の状況変化
・対応への質問や要望
・感謝の気持ち
・今後の相談予定
週に一度程度、先生に状況を報告することで、問題への関心が継続していることを示すことができます。新しい情報が出てきた場合は、速やかに先生に報告しましょう。また、先生の対応に対する感謝の気持ちも忘れずに伝えることで、良好な関係を維持できます。継続的なコミュニケーションが、効果的な問題解決につながります。
自分の安全も大切にする
いじめの相談をしたことで、自分自身が標的になる可能性もあります。友達を助けることは素晴らしいことですが、自分の安全も同じように大切にしなければなりません。
自分を守るための注意点は以下になります。
・一人にならない
・信頼できる人と行動
・異変を感じたら報告
・記録を安全に保管
・精神的負担を軽減
加害者やその仲間から嫌がらせを受ける可能性があるため、できるだけ一人で行動することは避けましょう。信頼できる友達や大人と一緒にいることで、安全性を高めることができます。もし何らかの嫌がらせを受けた場合は、すぐに先生や保護者に報告してください。自分一人で解決しようとせず、周囲のサポートを積極的に活用することが大切です。
まとめ
いじめを目撃したときの先生への相談は、被害者を守るために非常に重要な行動です。適切な記録の作成、冷静で具体的な報告、そして継続的なフォローアップが効果的な解決につながります。一人で悩まずに、信頼できる大人や友達と連携しながら、勇気を持って行動することが大切です。
あなたの勇気ある行動が、困っている友達の人生を救うかもしれません。完璧である必要はありません。まずは一歩踏み出すことから始めて、みんなが安心して学校生活を送れる環境を一緒に作っていきましょう。いじめをなくすことは一人では困難ですが、みんなで力を合わせれば必ず実現できます。
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いじめ撲滅委員会では、全国の小~高校生・保護者のかた、先生方にカウンセリングや教育相談を行っています。カウンセラーの栗本は、「いじめ」をテーマに研究を続けており、もうすぐで10年になろうとしています。
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