睡眠障害,不眠症とは?

皆さんこんにちは。心理学講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回のテーマは「睡眠障害」です。睡眠障害は複数ありますが、今回は不眠症の治療法を中心に心理師視点で解説していきます。

目次は以下の通りです。

①睡眠の種類
②睡眠の効果
③睡眠障害の種類
④不眠症とリスク
⑤不眠症6つの治療方法

当サイトの特色は、臨床心理学、精神保健福祉の視点から心の病気を解説している点にあります。心の病気の解説サイトは多いですが、精神科医の先生が監修されていることが多く、心理師の専門サイトは多くはありません。

お薬以外での改善策を詳しく知りたい方に、特にお役に立てると思います。ご自身の状況にあてはまりそうなものがありましたら是非ご活用ください。動画にもまとめています。参考にしてみてくださいね♪

 

①睡眠の種類

まずはじめに睡眠の基礎を抑えていきましょう。私たちの睡眠には、レム睡眠、ノンレム睡眠の2種類があります。

レム睡眠

レム睡眠はざっくりと言うと浅い眠りです。身体は休んでいて脳は活動していている状態で、夢を見やすいとされています。レム睡眠は、急速眼球運動を伴う睡眠です。寝ている時に目がくりくり動いている場合はレム睡眠になります。浅い眠りのため、ちょっとした物音でも目が覚めることがあります。

ノンレム睡眠

ノンレムは深い眠りです。脳は休んでいると考えられていて、身体は休んでいるもののやや緊張している状態です。深い眠りに入っているため、起こすと不機嫌だったりスッキリしません。

時系列

一般的に寝床につくと、ノンレム睡眠から始まり一気に深い眠りに入ります。1時間ほどたつと、徐々に眠りが浅くなり、レム睡眠へと移行します。その後、またノンレム睡眠に移行して深い眠りに入った後、眠りが浅くなってレム睡眠に移行します。

この周期は90分くらいで行われており一晩に3~5回繰り返されます。睡眠の前半3時間は深い眠りで、後半になるにつれてレム睡眠が増えてきます。

睡眠障害

 

②睡眠の効果

睡眠の効果はさまざまありますが、ここでは2つ紹介します。

記憶の定着

睡眠は記憶を定着させる効果があります。以下は、Jenkins JG(1942)[1] という学者の研究の図です。ジェンキンスは、2名の被験者に対して、意味のない文字の羅列を覚えてもらい、寝る場合と寝ない場合の記憶の定着を確かめる実験を行いました。その結果、寝ない場合と比べて寝た場合は記憶が定着することがわかりました。

睡眠障害

 

この結果から受験勉強や資格試験の時には、しっかり寝ることも大事な戦略の1つと言えます。

エネルギーの回復

睡眠は体を回復させる効果があります。以下は厚生労働省が公開している、動物と睡眠量を示した図です[2]。横軸は睡眠時間、縦軸は、体重あたりのカロリー消費量)になります。

睡眠障害

図のように、身体が小さくよく動く動物ほど睡眠時間が長いという特徴があります。人間で例えるなら、幼児はよく動きます。体を回復させる必要があるためよく寝るのです。

逆に、身体が大きく動きがゆったりした動物は、睡眠時間がすくないという特徴もあります。人間に例えると、老人は寝る時間が短くなる傾向にあります。これは、幼児に比べて動きがゆったりになり、身体を回復させる必要がないことが理由の一つと言えそうです。

心理学者の荻野(2004)[3]は、231名の看護・介護職を対象に感情労働について調査を行いました。その結果の一部が下図となります

睡眠障害 感情の不協和 

こちらは、感情の不協和があると不眠になりやすいことを意味しています。「感情の不協和」は、感情と行動が一致せず混乱している状況で、過剰適応に近い概念です。過剰適応になっている方は、不安になりやすく眠りが浅いと言えそうです。

③睡眠障害とは何か

睡眠障害の種類

睡眠障害にはさまざまな種類がありますが、今回は代表的な4つの睡眠障害を紹介します。

①不眠症
不眠症は、よく眠れないため日中の眠気、注意力の散漫、疲れなど種々の体調不良が起こる障害です。不眠症には、入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠障害の4つの種類があります。

②過眠症
過眠症は、夜眠っているにもかかわらず、日中に強い眠気が生じて、起きているのが困難になる障害です。別名ナルコレプシーとも呼ばれています。

③睡眠関連運動障害
睡眠関連運動障害は、布団に入って安静にしていると足がムズムズするような感覚が出現し、身体を動かすと症状が軽くなる入眠時の障害です。睡眠中に主に下肢の細かな震えが発生する場合もあります。

④概日リズム睡眠覚醒障害
概日リズム睡眠覚醒障害は、昼夜の睡眠のリズムが逆転してしまう障害です。昼夜のサイクルと体内時計のリズムが合わないために活動に困難をきたします。

種類別統計

土井(2012)[4]の研究では過去 10 年間の研究をもとに、日本における睡眠障害の頻度(有症率)や健康への影響についてレビューを行いました。その結果の一部が以下のです。

睡眠障害 種類別統計

慢性不眠や入眠困難、中途覚醒は、最も一般的な睡眠障害の一つであり、男性は約22%、女性は約20%が罹患しているとされています。これは、5人に1人が慢性不眠に悩んでいることを意味します。

睡眠関連呼吸障害は、睡眠中に呼吸が止まってしまう病気です。305人中約22%が罹患しており、重症化すると死に至るケースもあります。睡眠時無呼吸症候群は、睡眠関連呼吸障害の中でも最も一般的な病気です。男性の約9%、女性の約3%が罹患しており、肥満や高血圧などのリスクを高める可能性があります。

中枢性過眠症は、10万人あたり約160人が罹患していると推定されており、日常生活や社会生活に大きな支障をきたす可能性があります。ナルコレプシーは、中枢性過眠症の中でも比較的稀な病気です。10万人あたり約592人が罹患していると推定されており、日中の突然の睡眠発作などの症状が現れます。

 

④不眠症とリスク

不眠症には様々なリスクがあることが分かっています。

うつ病リスク2.1(オッズ比)

不眠症はうつ病のリスクを高めることが知られています。不眠が続くと体調が悪化し、仕事や人間関係などのパフォーマンスが低下し、心の負担が増大します。その結果、うつ病などの精神疾患に罹患する可能性が高まります。

Lu Dongら(2022)[5]による研究では、25,962人を対象に睡眠時間とうつ症状の関連性を調査しました。

Fig. 2

その結果、うつ症状と睡眠時間の間にはU字型の関連性が見られました。睡眠時間とうつ症状の関係は、8時間で最も負の相関を示しました。しかし、睡眠時間が8時間を超えると、うつ病の発症リスクが急激に増加することが明らかになりました。

糖尿病リスク1.84倍

土井(2012)[6]によると、不眠症は糖尿病のリスクが高くなります。睡眠の質が低下すると、血糖値を下げるインスリンの動きが悪くなるなるためです。また不眠で起き+ている時間が増えると夜食をとる機会が増えます。その結果過食や肥満が助長され、糖尿病をますます悪くしていることがわかってきました。

死亡リスク1.12倍

土井(2012)[6]の同研究では、不眠で死亡リスクが高くなることがわかっています。睡眠不足は万病の素です。いろいろな病気になりやすくなり死亡リスクも高くなってしまうのです。

⑤不眠症6つの治療方法

ここでは、睡眠障害の中でも特に悩みが多い「不眠症」についての治療方法を心理師視点でお伝えします。

1:睡眠効率をおさえる
2:アプリで分析
3:スケジュール法
4:心のリラックス
5:身体のリラックス
6:光の浴び方
7:よく笑う

1:睡眠効率をおさえる

まずはじめに睡眠効率という用語を抑えましょう。睡眠効率とは、布団に入ってしっかりと寝れている効率のことで、以下の計算式で求められます。

実質睡眠時間 / 床上時間=睡眠効率

実質睡眠時間は、寝ている時間、床上時間は布団に入っている時間です。以下の図から、睡眠効率の悪い状態と良い状態を見ていきます。図の緑の枠が床上時間です。枠内のピンク色が睡眠時間、白色が眠れていない時間です。

睡眠障害

悪い例:睡眠効率54%
布団に入ってからなかなか眠れず、何度も起きてしまいます。実際に布団に入っている時間は長いものの実質睡眠時間が短い状態です。

良い例:睡眠効率95%
実質睡眠時間が長く、寝起きもいい状態になります。睡眠の質が非常にいいと言えます。

目標は、床上時間は「実質睡眠+15~30分程度」、睡眠効率85%を目指せるといいでしょう。

2:アプリで分析

アプリで睡眠を実際に計測する方法です。睡眠に関するアプリはさまざまありますがここでは「熟睡アラーム」を紹介します。熟睡アラームは、毎日の睡眠リズムを数値化してくれるアプリです。睡眠の種類や睡眠効率を出してくれます。また目覚めが良いとされている「レム睡眠」のタイミングに合わせてアラームを鳴らし、ベストなタイミングで起こしてくれます。

熟睡アラーム

3:スケジュール法

眠りの予定を体に覚えさせる方法です。スケジュール法には2つの視点があります。

・統制法
何もしないことで寝床は寝る場所と脳に覚えさせる方法です。布団に入ったら何もしません。本を読んだり、スマホを見ないことで、脳がリラックスできます。

・制限法
眠くなったら布団に行く方法です。眠くない時は無理をして布団に入ることをしません。眠い状態で布団に入るため、睡眠効率も高まります。

4:心のリラックス

布団に入ったら心が休まるような思考を巡らせます。

・感謝をする
心理学の研究にも、感謝はメンタルヘルスに良いことが分かっています。感情で、自己肯定感を上げたり幸福感をあげて心を落ち着ける効果があります。今日一日を生きてこれたことに感謝をして寝る。これだけでも十分です。

・ポジティブ反芻
ポジティブなことを繰り返し確認するとメンタルヘルスに良いことがわかっています。布団に入ったら、楽しかった出来事やうれしかった出来事を心の中で確認するようにします。

・妄想タイム
これは私川島からの提案になりますが、自分のありたい姿を妄想して目をつむって自分の生活が豊かになるような妄想をしてみてください。寝ている時は自由です。自分の気持ちがハッピーになるような妄想を膨らませることでうれしい気持ちで入眠ができます。

5:身体のリラックス

身体をリラックスさせる方法はいろいろありますが、どこでも手軽にできる2つの方法を紹介します。

1つ目は筋弛緩法です。これはアメリカの精神科医エドモンド・ジェイコブソンが開発した方法です。 体の筋肉を緩めることで体の緊張をほぐしていきます。例えば、顔や腕、肩などに力を入れて緊張させた後、ストンと一気にゆるめることを繰り返して、体の緊張をほぐします。力が抜けた感覚を味わうことでリラックスができます。

筋弛緩法のやり方

筋弛緩法

 

2つ目は自律訓練法です。心療内科や精神科などでも用いられる手法で、自己催眠法で心身の疲れをすっきりさせていく方法です。神経には「交感神経」「副交感神経」の2つがあり、睡眠の時には「交感神経」を落ち着かせて「副交感神経」を働かせていきます。

行動療法と自律訓練法

 

睡眠障害

 

6:光の浴び方

朝起きたらしっかり太陽の光を浴びて、夜寝る前は照明を落とし気味で生活することで良質の睡眠が得られるようになります。太陽の光はメラトニンと関連していると言われています。メラトニンは体内時計に働きかけ自然な眠りを誘う作用があり、別名「睡眠ホルモン」とも呼ばれています。

メタトニンは、太陽の光を浴びてから14時~16時間後に増え始めると言われています。例えば、6時に起きてカーテンを開けて太陽光を取り込むと、23時にメラトニンが働きはじめると推測することができます。

睡眠障害

ちなみに太陽の光はセロトニンも増やしてくれます。セルトニンは心を落ち着ける効果があり、うつ病などの予防にもなります。朝起きたら、カーテンを開けるなど、太陽を浴びる習慣を持つようにしましょう。

7:よく笑う

井奈波ら(2018)[7]は、看護師 395 名を対象に声を出して笑う頻度と、睡眠の関係について調査を行いました。

その結果が以下のグラフです。

笑顔 睡眠障害

このようにほぼ毎日笑う、週1~5日笑うグループに比べて月3日以下笑うグループは睡眠障害が高いことが分かります。つまりよく笑う人は、睡眠の質が高まりやすいと考えられます。

まとめ

最後に、これまで「睡眠障害」コラムにお付き合いしていただき、ありがとうございました。人生80万時間の25時間は寝ています。睡眠の質を向上させて、脳と体が元気な状態で過ごせるようにしましょう。

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監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典

[1] Jenkins JG, Dallenbach KM.(1924).Obliviscence During Sleep and Waking. Am J Psychol 605–612,

[2] 厚生労働省,睡眠のメカニズム

[3]荻野ら(2004).対人援助職における感情労働がバーンアウトおよびストレスに与える影響 The Japanese Journal of Psychology , Vol. 75, No. 4, 371-377

[4]土井由利子(2012).日本における睡眠障害の頻度と健康影響 Vol.61 No.1 p.3-10

[5]Lu Dong, Yongwei Xie, Xiaohua Zou,(2022).Association between sleep duration and depression in US adults: A cross-sectional study.Journal of Affective Disorders,Volume 296,Pages 183-188,ISSN 0165-0327,https://doi.org/10.1016/j.jad.2021.09.075.
[7]井奈波良一,日置敦巳(2018).女性看護師の声を出して笑う頻度と睡眠の位相・質・量の関係 日本職業・災害医学会会誌 = Japanese journal of occupational medicine and traumatology 66 (5), 384-388, 2018-09