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行動療法のやり方,研究,不安階層表の使い方

行動療法のやり方,研究,不安階層表の使い方

みなさんこんにちは。公認心理師の川島です。私はこちらの心理学講座を開催しています。当コラムは認知行動療法の入門シリーズです。全4回で解説しています。

①認知行動療法の全体像
②認知行動療法と認知療法
③認知行動療法と行動療法
④マインドフルネス療法への展開

今回は「③行動療法」について解説していきます。

行動療法,心理療法

行動療法は名前の通り、行動に焦点をあてた心理療法で、生活していく上で問題となっている行動を改善し、健康的な行動を取得する方法です。医療機関では、社交不安障害、うつ病、潔癖症など幅広く活用されています。

また、病気だけでなく、積極性を身に着けたい、恋愛力をつけたい、引っ込み思案をなおしたい、こんな日常的なお悩みにも活用できる守備範囲が広い心理療法なのです。

今回の目次は以下の通りです

①行動療法とは何か
②ご褒美法
③罰則法
④不安階層表の使い方
⑤自立訓練法のやり方
⑥その他の技法

ご自身でも活用できそうなワークを組み合わせてご活用ください。

①行動療法とは?

行動療法とは何か?

行動療法という用語が最初に使われたのは1953年の頃です。ハーバード大学のスキナーらの研究ではじめて開始されました。

その後、イギリスのアイゼンク、南アフリカのウオルピら、複数の学者によって、10種類以上の手法が生み出されていくことになります。行動療法はこれらの手法の総称となるのです。

行動療法は歴史的はやや衰退した時期もあるのですが、現在では長所と短所が明確になってきており、健康的な使い方ができるようになっています。筆者もカウンセリングでよく活用しています。

行動療法を提唱したハンスアイゼンク

行動療法の効果

Anderssonら(2006)は、社交不安障害の患者に対して、自分でできる行動療法をインターネット上で実施してもらいました。

以下の表は、治療法を受けた人、受けていない人、それぞれの改善率が示されています。%が多いほど、改善した人の割合が多いことを意味しています。

臨床的に不安症状が改善した人の割合

不安感の改善、会話への自信など、行動療法を受けた人の改善率が高いことが確認できます。

行動療法の前に

当コラムでは、初学者向けの手法を紹介しますが、すべてのやり方で「記録すること」が基本になります。例えば、会話力をつけたいのであれば、

・今日は何分会話したか?
・相槌は打てたか?
・誰とお話したか?

など具体的な行動を記録していきます。しっかりと記録をすると分析がしやすくなり、問題を改善しやすくなります。スマフォ、ノート、PC、などをまずは用意しましょう。

記録-行動療法

②ご褒美法

行動療法は大きく分けて

「良いことをできるようにする」
「悪い習慣をやめる」

の2つに適応されます。良いことをできるようにするとは、例えば、

人前に立てるようになる
嫌なことをされたら主張できるようになる
高いところに登れるようになる
勉強を途中でやめないで最後までする

などが挙げられます。このような前向きな行動を増やしたい場合はごほうびを用意しておくと良いでしょう。

私たちの行動は、褒美があると、よりその行動をとりやすくなると行動療法では考えます。例えば、以下のような例が挙げられます。

達成したら菓子を食べる
ミシュランにのっているケーキを食べる
温泉旅行に行く
達成すると給料があがる
達成すると恋人ができる

ご褒美は自分で用意できそうなものでもいいですし、誰かからもらえるものでもOKです。要は、達成したらメリットがある状態にすることが、大事なのです。

ご褒美を用意するやり方は、行動療法の根幹をなす手法です。シンプルですが効果的なので、是非意識してみてください。

報酬-行動療法

③罰則法

次に「悪い習慣をやめる」について考えて行きます。悪い習慣をやめるとは例えば、

お酒の過剰摂取をやめる
ギャンブルをやめる
暴食をやめる
喫煙をやめる

などが挙げられます。このような悪い習慣を減らしたい場合は罰を用意しておくと良いでしょう。例えば、以下のような例が挙げられます。

約束を破ったらお小遣いを減らす
約束を破ったら恋人と1か月会えない
SNSで宣言して挫折したら恥をかくようにする
失敗したら上司に強く叱ってくれとお願いしておく

などが挙げられます。罰は自分で用意できそうなものでもいいですし、誰かにお願いしてもOKです。要は、悪い習慣が再発したらデメリットがある状態にすることが、大事なのです。シンプルですが効果的なので、是非意識してみてください。

罰-弱化

ご褒美法、罰則法は、シンプルですが、行動療法のもっとも基本的なやり方となります。簡易的に活かしたい場合は、参考にしてみてください。

④不安階層表の使い方

ここからは本格的なやり方を解説していきます。まずは不安階層表を紹介します。

スモールステップを徹底

不安階層表とは、スモールステップを作って1つ1つ丁寧に達成していくシートを意味します。具体的には、1番上に最終目標を記入し、3段階くらいの小さな練習を設定します。そして各練習について、不安得点や実行日を記入します。

不安階層表の例

以下の記入例は、私(川島)が引きこもりの時期に書いた不安階層表です。

不安階層表の練習問題目標設定のポイントは、具体的な行動で本当に小さな目標にすることです。そして続けるコツとして、達成できたときには自分にご褒美をあげるといいですよ。

以下事例に応じてサンプルを折りたたんでおきました。参考にしてみてください。

潔癖症の方の治療用の不安階層表です。手を洗う回数を少しずつ減らすステップになっています。

潔癖症な人の不安階層表

パニック障害の方の治療用の不安階層表です。少しずつ人が多い場所に行動範囲を広げています。

不安階層表の記入例

飲み会が苦手な花子さんの不安階層表です。コミュニケーションの幅を少しずつ広げています。

飲み会が苦手な人の不安階層表

婚活中の方の不安階層表です。婚活パーティーに慣れることからはじめて、少しずつアプローチを強くしています。

不安階層表の記入例

 

不安の性質を抑えよう

実際に行動する前には、不安の特性についてよく知っておくことが必要です。坂野(2013)の不安の説明を見てみましょう。

不安障害の治療に効果があるエクスポージャー法について

これらのことを図に表すと以下のようになります。

要約すると、長期的にみると、回避するよりも、行動したほうが、不安は小さくなるということです。勇気をもって行動するようにしましょう。

⑤自律訓練法

行動予定を立てたとしても、体が緊張してなかなか動かない…という方もいると思います。そんなときは自律訓練法がオススメです。

自律訓練法とは?

自律訓練法は、交感神経と副交感神経のバランスをとるトレーニングです。

神経には、交感神経と副交感神経の2種類あります。副交感神経は、落ち着いたときに働くリラックス系です。一方で、交感神経は、緊張や怒りなど力が入るようなときに働きます。

交換神経と副交感神経

第二公式までは、安全度が高いとされています。緊張しやすい場面や不眠の時には、第二公式までを3分間3セットくらいで実践してみてください。うつ病、糖尿病、消化器系の疾患をお持ちの方は、第三公式以降は専門家と行ってください。

自立訓練法の手順

背景公式と6つの訓練公式で構成されています。

【背景公式】
心が落ち着いている状態を作ります。

①環境設定をする
基本的には横になるか、イスに腰掛けるかの姿勢をとります。楽な姿勢で、肩の力を抜いて目を閉じます。体を締め付けているベルトなどは外します。

②腹式呼吸をする
5回から10回くらい行います。鼻から3秒吸って、6秒吐くを繰り返します。

横隔膜が上下運動するように進めて見てください。複式呼吸で、よい空気を吸って悪い空気を出すイメージで進めます。

③落ち着いているか確認
深呼吸が済んだら、心の中で「落ち着いているのだ」と心の中でつぶやき実感させます。

自立訓練法のやり方

本番直前などは時間がない時は、背景公式だけでもOKです。1分程度でも少し落ち着くことができます。背景公式が終わったら次の公式に入っていきます。

【第一公式】
両腕、両足の重さを感じる
「両腕両足が重たい」と感じる練習です。重感練習は、脳と筋肉の両方がリラックスできる方法です。

【第二公式】
両腕、両足の暖かさを感じる
「両腕両足が温かい」と感じる練習です。温感練習は、重感練習と同様にリラックス効果が高い方法になります。

【第三公式
心臓が静かに鼓動を打っているのを感じましょう。

【第四公式
楽に呼吸している自分を確認していきます。

【第五公式】
お腹の温度を感じます。ぽかぽか暖かいことを実感します。

【第六公式】
額を意識します。額が涼しい感覚を味わいます。

最後に、消去動作として、グーパー・グーパーを行います。

 

⑥その他の技法

ここから先は行動療法をより深く理解したい方向けの内容です。さまざまな研究や知識をお伝えします。基礎的なことは理解したけど、もっと様々な手法を知りたい方、医療関係者や福祉関係の学生様は参考にして頂けると幸いです。

方法論系は古典的条件付けを前提とした行動療法です。5種類紹介します。

①暴露療法,エクスポージャー法

暴露療法はエクスポージャー法とも呼ばれます。恐怖場面に思い切って突入していくことで、慣れてくるという方法です。暴露療法は2つのやり方で実施されます。

*フラッティング
フラッティングは恐怖心がある場面に、いきなりさらされることで、段々と慣れていくやり方です。行動療法の中でもかなり強い手法です。たとえば、高所恐怖症の人がいたとして、やや強引ですが思い切って高い場所で訓練していきます。最初は恐怖がありますが、時間とともに緊張が解けることを狙いとしています。

*不安階層表
不安階層表は少しづつ成功を積み重ねていく方法で、当コラムでも紹介しました。スモールステップで対応していきます。

詳しくはこちらの暴露療法コラムで解説しています。

行動療法ブラッティング

 

②暴露反応妨害療法

暴露反応妨害療法は、不適切な繰り返し行動などをあえてやらないことで健康的な行動を取れるようにする手法です。例えば、戸締りを何度も確認してしまう方の場合は、あえて確認しないという行動を目指して練習していきます。暴露反応妨害法は先程と同じく、フラッティングや不安階層表を使いながら実施されます。

 

③嫌悪療法
問題行動に罰を与え、行動を抑制する法です。たとえば、アルコール依存症の人の場合。お酒を飲むと気分が悪くなる抗酒剤を飲んでもらうなどが挙げられます。お酒を飲む→気分が悪くなるというフローを脳に覚えさせ、飲酒を抑制していきます。当コラムでは罰則法として紹介しました。

嫌悪療法の例

④自立訓練法
自己催眠を用いたリラックスで、心身を安定させる方法です。背景公式と6つの訓練公式で構成されています。当コラムで紹介しました。

⑤系統的脱感作法
緊張しやすい場面を想像して身体をリラックスする方法です。この方法は、強迫性障害や恐怖症に対する治療法で、逆制止という原理を活用しています。逆制止とは、恐怖や不安が現れた際に、反対の感情を起こすことで、恐怖や不安が少なくなるのです。

系統的脱感作法の例

徹底論系はオペラント条件付けをベースにした手法です。報酬を多用する特徴があります。

⑥シェーピング
スモールステップで練習を重ね、成果が出るとお菓子やお金など、何かが与えられる方法です。不安階層表に似ている療法です。

⑦トークエコノミー
子どもによく利用する療法です。できないことができたときに、シールをあげたり、バッチを与える方法です。

⑧バイオフィードバック
自分が本当にリラックスしているかを、数字でみながらリラックスする方法です。

リラックスしているかどうかは判断が難しいため、脳波計などをみながら自分の状態を確認していきます。

行動療法リラックスを確認する方法

⑨タイムアウト
子どもによく使われる方法です。感情が爆発しているときには、時間に区切りをつけ、場所を移動して心を落ち着けていく方法です。

この方法は、大人にも効果があります。悩みが強くなった時には、カフェなど、静かな場所に移動してみると心を落ち着けることができますよ。

⑩モデリング・ロールプレイ
模擬場面を設定して、人の姿をみながら勉強する方法です。

 

仕上げ動画

当コラムの仕上げとして行動療法の動画を見るとより理解が深まると思います。参考にしてみてください。

 

4つの心理療法を抑えよう

認知行動療法入門は、4つのシリーズで紹介しています。

認知行動療法の基礎①全体像
認知行動療法の基礎②認知療法
認知行動療法の基礎③行動療法
認知行動療法の基礎④マインドフルネス療法

まだ読んでいないコラムがありましたら是非、ご一読ください。

 

心理学講座のお知らせ

行動療法を公認心理師から直接学びたい方は、心理学講座をおすすめします。講座では

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出典・参考文献
坂野 雄二(2013)不安障害に対する認知行動療法 ーエクスポージャー法をどのように導入するか,そのコツを探るー 第108回日本精神神経学会学習総会 教育講演