月経前症候群(PMS)の症状,治療

皆さんこんにちは。心理学講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回のテーマは「月経前症候群(PMS)」です。

月経前症候群,PMS,へなちょこなすび様作成

目次は以下の通りです。

①月経前症候群(PMS)とは
②月経前症候群(PMS)の原因
③心理療法による治療
④薬物療法による治療

当サイトの特色は、臨床心理学、精神保健福祉の視点から心の病気を解説している点にあります。心の病気の解説サイトは多いですが、精神科医の先生が監修されていることが多く、心理師の専門サイトは多くはありません。

お薬以外での改善策を詳しく知りたい方に特にお役に立てると思います。ご自身の状況にあてはまりそうなものがありましたら是非ご活用ください。

①月経前症候群(PMS)とは

意味

月経前症候群((premenstrual syndrome:PMS))とは、公益社団法人日本産科婦人科学会[1]によると以下のように定義されています。

月経前、3~10日の間続く精神的あるいは身体的症状で、月経開始とともに軽快ないし消失するもの

PMSはアメリカ精神医学会の診断基準[2]で、抑うつ障害群の中の1つである月経前不快気分障害(PMSS)として診断されることもあります。

抑うつ障害群
うつ病(major depressive disorder)
持続性抑うつ障害(気分変調症)
他の特定される抑うつ障害または特定不能の抑うつ障害
その他は,病因により以下のように分類される
月経前不快気分障害
他の医学的疾患による抑うつ障害
物質・医薬品誘発性抑うつ障害

月経前症候群(PMS)と月経前不快気分障害(PMDD)の違いですが、PMSが重症化したり、精神症状が強くなったりする場合はPMDDと判断されることが多いとされています。PMDDの詳しい診断基準は以下の通りです。

準備中です

症状

PMSの症状は主に精神症状、身体症状、社会適応困難の3つがあります。

精神的症状
抑うつ、イライラ、不安、焦燥感、情緒不安定、集中力低下、過食、睡眠障害

身体症状
頭痛、腹痛、乳房の張り、むくみ、体重増加、肌荒れ

社会適応困難
周りの人に怒ってしまう、孤立しがちになる、誘いを断る、仕事の能率が下がる

齋藤ら(2005)[3]は看護学生31名を対象に、月経と気分の変化の割合について調査を行いました。その結果の一部が下図となります。

上図のように約65%前後の方が、憂鬱になったり、いらいらしやすくなることがわかります。これらの症状には個人差が大きく、自分に合った対処法が必要です。

 

生理前,憂鬱,カネーライス様作成

②月経前症候群(PMS)の原因

月経前症候群(PMS)の原因は、女性ホルモンの変動であると考えられています。

月経前の体の変化

女性には基礎体温の変動、排卵・月経に周期的な月経リズムがあります。これは卵巣ホルモンの1つであるエストロゲンの増減が影響しているとされています。エストゲンは、“女性らしさ”を作るホルモンで、性器や乳房の発育、生理周期などを調整し、骨密度の低下を防ぎ、情緒を安定させる効果があります。次に以下の図をご覧ください。

情緒不安定と月経周期

図のように、エストロゲンは生理前になると減少する傾向があります。月経リズムで、情緒不安定になる傾向がある場合は、PMSの疑いがあります。

ホルモンバランスが崩れている時期は、環境の変化やストレスが無くても、情緒不安定になりやすくなります。日常生活に支障が出ることもあるため注意が必要です。

無月経期間の減少

現代は昔に比べると晩産化と少子化が進み、妊娠~授乳期までの無月経期間が短くなっているとしています。そのため、女性が一生のうちで経験する月経の回数が増えているということになります。

昔は約50回程度だったものが、今では約450回に増えているという報告もあります[4]。つまり、月経の回数が増えているため、それに付随する症状の機会も増えているということになります。

 

③心理療法による治療法

月経前症候群(PMS)は体の仕組みの問題であるため、心理療法や薬物療法を組み合わせながら、うまく付き合っていくことが大事になります。まずは心理療法の視点から役立つ方法を解説します。

①心理教育
②体の仕組みと予定を合わせる
③認知療法
④アサーティブコミュニケーション
⑤アンガーマネジメント

ご自身でも役立ちそうなものを中心に組み合わせてご活用ください。

①心理教育

PMSは自己理解を深めることは何より大事です。障害の特性を理解すると、混乱することが減る、予定を立てやすくなる、自分を受け入れるきっかけになる、という効果があります。具体的には専門家から説明を受ける、書籍を読む、当事者の動画を見るなどが挙げられます。

②体のしくみと予定を合わせる

PMSは感情の揺れ動きのパターンを把握し、予定に反映させることが大事です。例えば以下が挙げられます。

*調子がいい時期
集中力が必要な仕事を片付ける
外にお出かけする
友人と会食する
料理をはりきる

*調子が悪い時期
残業を少なくする
漫画喫茶でマンガを読む
公園を散歩する
料理は総菜で済ます

などがあげられます。症状が軽い時期、重い時期を同じように過ごすのではなく、症状に応じた生活スタイルを確立することをおすすめします。

③認知療法

PMSの時期に不安が大きくなってきた場合は、認知療法が効果を発揮することがあります。認知療法は考え方の偏りを柔軟にほぐす手法です。症状が重くなると、根拠のない思考が多くなりがちです。この時、認知療法を練習しておくと、現実的に考えることができるようになります。不安や恐怖を感じやすい方は以下のコラムを参照ください。

認知療法のやり方

 

④アサーティブコミュニケーション

PMSを抱える方の中には、恥ずかしさや、人に迷惑をかけてはならない、という気持ちから周りに自分の症状を伝えられない方がいます。しかし、困ったときはお互いさまです。自分の症状を周りに伝えておくことも大事です。

周りに伝えられない・・・と感じる方は、アサーティブコミュニケーションの学習をおすすめします。アサーティブとは、自他尊重のコミュニケーションと呼ばれ、自分と他人の、価値観、生き方、困り事を尊重する心理療法です。理解を深めたい方は以下のコラムを産参照ください。

アサーティブコミュニケーションの基礎

 

⑤アンガーマネジメント

PMSを抱える方の中にはイライラしてしまい、周りとうまくいかなくなってしまう方がいます。あてはまる方は、アンガーマネジメントを学ぶことをおすすめします。アンガーマネジメントとは、怒りを予防・制御するための心理療法プログラムで、不適切な怒りの感情をうまくコントロールすることを目指す手法です。怒りをうまくコントロールできない方は以下のコラムを参照ください。

アンガーマネジメントのやり方

PMS,治し方,カネーライス様作成

 

④薬物療法による治療法

PMSは症状が重くなると、薬物療法での治療も視野にいれる必要があります。PMSの場合は、主に以下の3つの治療法が挙げられます。

排卵抑制療法

排卵を止めてしまうことで、女性ホルモンの変動をなくし症状を和らげる方法です。女性ホルモンの大きな変動は、排卵が原因です。そのため排卵を止めることで、症状を緩和していきます。治療に用いられる主な薬は、以下の通りです。

低用量経口避妊薬(OC、低用量ピル)
低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)

これらの薬は、服用期間だけ排卵を一時的に止めるため、服用を控えれば排卵がすぐに戻ります。また少ないホルモン量で排卵を止めることができ、薬の副作用も少ないと言われています。

痛み,不安を抑える薬

心を安定させるホルモンであるセロトニンの分泌を促すことで、情緒不安定を和らげる方法です。神経症状や自律神経症状に対しては、「SSRI(精神安定剤や選択的セロトニン再取り込み阻害薬)」を使用し、痛みに対してはロキソニンなどの鎮痛剤を用いて対処します。

漢方

症状によっては、漢方を使って、むくみや冷え、情緒不安定などの症状を和らげることができます。PMS治療では、主に以下の漢方が使われています。

・帰芍薬散
帰芍薬散(とうきしゃくやさん)は体温を上げて水分代謝を高め、むくみを解消する漢方薬です。

・桂枝茯苓丸
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)は血液の循環を良くし、のぼせ・足冷えなどを感じる方の生理痛を和らげる漢方薬です。

・加味逍遥散
加味逍遥散(かみしょうようさん)は、不足している血液を補い、精神を安定させる働きがある漢方薬です。

これらの漢方薬はすべて市販していますので、ドラックストアなどで購入できます。

心理学講座のお知らせ

私たち公認心理師は心理療法をわかりやすく学べる講座を開催しています。内容は以下の通りです。

・心を安定させる,認知行動療法の学習
・辛い気持ちを緩和,認知の偏りの改善
・感情のコントロール法
・健康的に生きる,生活環境の作り方

興味がある方は以下の看板をクリックしてご検討ください。皆さんのご来場をお待ちしています。

 

月経前症候群(PMS),月経前不快気分障害(PMSS)の症状,治療,心理学講座

監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


YouTube→
Twitter→
元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典

[1] 公益社団法人日本産科婦人科学会  月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS) 2023年時点のホームページから引用

[2] 監訳  髙橋 三郎,大野裕(2014). DSM5 精神疾患の診断・統計マニュアル 医学書院

[3] 齋藤千賀子,西脇美春(2005).月経パターンと月経時の不快症状及び対処行動との関係 山形保健医療研究 8, 53-. 63

[4]  長谷川暢子(2021).知っておきたい!女性のライフステージとがん検診 一般財団法人 京都工場保健会 大阪府健活セミナー