アルツハイマー型認知症の意味と対処法

皆さんこんにちは。心理学講座を開催している、公認心理師の川島達史です。今回のテーマは「アルツハイマー型認知症」です。

アルツハイマー認知療法,ぶんこ様作成

 

目次は以下の通りです。

①アルツハイマー型認知症とは何か
②中核症状,周辺症状
③症状の経過
④治療方法

当サイトの特色は、臨床心理学、精神保健福祉の視点から心の病気を解説している点にあります。心の病気の解説サイトは多いですが、精神科医の先生が監修されていることが多く、心理師の専門サイトは多くはありません。

お薬以外での改善策を詳しく知りたい方に特にお役に立てると思います。ご自身の状況にあてはまりそうなものがありましたら是非ご活用ください。

アルツハイマー型認知症とは

意味

アルツハイマー型認知症とは、脳の老化によって起こる記憶や行動の障害です。認知症の中でも最も多い疾患です。特徴としては、高齢期に発症しやすく、徐々に進行していく疾患であることです。

原因

病理の組織的な変異として、老人斑と呼ばれるシミが脳の皮質に表れることが知られています。この老人斑の中心にはβアミロイドと呼ばれる、タンパク質が沈着しています。アルツハイマー型認知症は、このβアミロイドタンパクの沈着が、発生の機序として有力視されています。

老人斑wikipediaより

 

好発年齢

アルツハイマー型認知症の好発年齢は70歳以上です。発症の年齢が40~65歳に発症するものを早発性といいます。高齢になるにつれて、発病率も高くなります。

物忘れとの違い

単なる物忘れとは違い、自身に自覚がなかったり生活に支障が出ることが特徴です。物忘れは進行することはありませんが、認知症は進行して悪化することが特徴です。

 

中核症状と周辺症状

アルツハイマー型認知症の症状として特徴的なものに、中核症状と周辺症状があります。

中核症状

一番代表的な症状です。物忘れが徐々に進行して、記憶の障害が表れます。これは、記憶をつかさどる海馬と呼ばれる脳の一部が萎縮することによって起こるとされています。

中核症状は様々なものがありますが、その1つに見当識の低下があります。見当識とは時間や場所を把握する能力です。この能力が障害されると、今日の日付を聞かれても答えられなかったり、今いる場所がわからなくなってしまいます。また、注意力や理解力、判断力などの低下も見られます。

周辺症状

周辺症状はBPSDと呼ばれ、認知症に伴う行動・心理症状を意味します。徘徊、攻撃性、多動、妄想、抑うつ、不安、無気力、などが挙げられます。リハビリや各種環境調整はこの周辺症状に対して行われることが多いです。

 

どのように経過するか?

アルツハイマー型認知症は進行性の病気です。進行の具合によって症状も異なってきます。その病気の経過について解説をしてきます。

初期

物忘れが中心です。置いたものを忘れてきたり、時間や場所の記憶があいまいな部分が増えてきます。「家族が持ち物を盗んでいった」というような、物盗られ妄想が発現することもあります。一方で、会話のスムーズさが保たれていたり、人格が変化するようなことはありません。

中期

言語面での障害が出始めます。たとえば、相手から言われた言葉をそのまま言うオウム返しの状態や、同じ言葉を何回も繰り返すようなことが出てきます。

その他、家事などの日常的な動作もできなくなってきます。家にいてもトイレの場所がわからなくなったり、着替えも自分でできなくなってきます。

末期

記憶や思考の機能が高度に障害されてしまいます。自分で考えることや、会話もほぼできなくなってしまいます。身体の障害も重度になってくることが多く、パーキンソン症候群や筋力低下、関節の拘縮なども表れてくることが多いです。

 

アルツハイマー症状,ぶんこ様作成

アルツハイマーの治療法

アルツハイマー型認知症については以下の治療法が挙げられます。

①リアリティーオリエンテーション
②回想法
③認知機能訓練
④運動機能訓練
⑤薬物療法

ご自身、ご家族の状況に合わせて組み合わせてご活用ください。

①リアリティオリエンテーション

リアリティオリエンテーションとは、見当識障害の改善を目的に日時や場所、人物などの情報を繰り返し教示する方法です。1950年代にアメリカのFolsom,Jによって開発されました。カレンダーや時計、新聞、季節に関するものなどの物品を使って見当識を促していきます。

リアリティオリエンテーションは、定型と非定型に分けられます。

*定型
特定の場所に集まってグループによって行います。施設のスタッフなどが司会を務め、グループ内で名前、場所、時間、今後の予定などを確認していきます。

*非定型
グループを設定せず、日常の生活の中で行います。カレンダーを見ながら今日の日付を確認したり、外の季節の花を見ながら四季を確認するなどです。

リアリティオリエンテーションは効果は、見当識障害の進行を遅らせたり改善させることです。特に定型リアリティオリエンテーションは対象者同士のコミュニケーションも加わり、効果が高いとされています。

また、リアリティオリエンテーションだけで行われることは少なく、回想法や他の認知機能改善プログラムの一部として使われていることが多いです。

 

②回想法

回想法は1963年にButler.R,Nによって開発されました。回想法は過去の思い出を振り返り、それを語ることで認知機能の活性化を図る心理療法です。昔の生活備品やおもちゃなどを用いて、思い出を振り返ることも行われます。

奥田ら(2016)は在宅の高齢者に対し、懐メロを用いた回想法を実施しその効果を検証しています。回想法のプログラムにおいて、明治・大正・昭和の歌謡曲などの懐メロを用いています。対象者は、懐メロを選択してメンバーで合唱し、その曲について自由に語っています。

その結果、認知機能の得点と主観的幸福感の得点が上がったとしています。

 

③認知機能訓練

症状が進行し、病院内で治療されている方には、作業療法も行われます。作業療法では、主に認知機能や運動機能の維持回復を目指して行われます。認知機能訓練では、脳トレなどを通じて記憶力や注意力を鍛えていきます。

具体的には…漢字問題、計算問題、間違い探し、ぬりえ、などに取り組んでいきます。また、昔の音楽を聴いたり、映画の俳優の画像を見せることで記憶の想起を促すこともあります。

④運動機能訓練

運動機能訓練では、ストレッチや筋トレなどをして関節の可動域や筋力を鍛えてきます。また、風船バレーや卓球など、球技を用いて運動機能を鍛えていくこともあります。

運動機能訓練は機能回復訓練室に集まって集団で実施する場合や、障害の程度に応じて個別に実施する場合もあります。

⑤薬物療法

現在根本的な治療薬というものはまだ開発されていません。せいぜい進行を遅らせる治療薬によって、症状を抑えたり認知機能を維持させるのが、現在の薬物療法の中心です。

その薬物療法でよく使われるものが、コリンエステラーゼ阻害薬とNMDA受容体拮抗薬と呼ばれるものです。

コリンエステラーゼ阻害薬は、神経伝達物質であるアセチルコリンを増やすことで症状を抑えます。ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミンといった薬があります。

副作用として、下痢、眠気、めまいなどの症状があります。

グルタミン酸がNMDA受容体に過剰に活性化することで、認知症症状が出ることが知られています。NMDA受容体拮抗薬によって、NMDA受容体を不活性化させて、症状を抑える仕組みになっています。

メマンチンという薬が有名です。

副作用として、便秘、食欲不振、めまい、眠気、肝機能障害などがあります。

認知症の症状が進んでいくと、日常生活に障害が出て、服薬もうまくできないケースが増えていきます。そこで、最近では飲む薬ではなく、“貼る薬”というのも出てきています。

丸いパッチ状のもので、皮膚に貼るだけで薬理効果があるというものです。

アルツハイマー型認知症,治療,ぶんこ様作成

 

コミュニケ‐ション講座のお知らせ

アルツハイマーの進行を遅らせるには、ご家族の方や支援者の傾聴スキルが大事になります。専門家の元でトレーニングをしたい方は、私たちが開催している人間関係講座をオススメしています。講座では

・傾聴のトレーニング
・共感の仕方
・話しやすい質問の作り方
・感情を受け止める方法

など練習していきます。筆者も講師をしています。皆様のご来場をお待ちしています。↓興味がある方は下記のお知らせをクリックして頂けると幸いです↓

コミュニケーション講座,心理療法の学習

*出典・引用文献

奥田淳,橋本顕子,鈴木佑典,鳥塚亜希,上平悦子,軸丸清子(2017) 閉じこもり傾向にある地域在住高齢者への心理ケアに関する研究-懐メロを用いた回想法による介入の評価- 日本看護研究学会雑誌 40(1), 1_15-1_23,