吃音の診断,症状,治し方

皆さんこんにちは。心理学講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「吃音」について解説していきます。目次は以下の通りです。

①吃音とは何か
②吃音の症状
③診断基準
④吃音の治し方

当コラムの特色は、臨床心理学、精神保健福祉の視点から心の病気を解説している点にあります。心の病気の解説サイトは多いですが、精神科医の先生が監修されていることが多く、心理師の専門サイトは多くはありません。

お薬以外での改善策を詳しく知りたい方に特にお役に立てると思います。ご自身の状況にあてはまりそうなものがありましたら是非ご活用ください。

 

①吃音とは何か

意味

吃音(きつおん)は昔は「どもり」とも言われていました。現在のDSM-5という診断の手引きでは、「小児期発症流暢性症」と名称がつけられています。その吃音の意味について、

発声に際し、流暢性の障害が著しくなり特定の音や単語の発声を避けたり、人との会話を避けるようになる障害

としています。つまり、言葉の流暢さがに問題があり、コミュニケーションが阻害されてしまう症状を示しています。

発症年齢

吃音は幼児期の2〜4歳が多く、ほとんどが7歳までの発症です。それより遅くなる、遅発性の場合は、成人期発症流暢症と診断されることがあります。

有病率・男女差

吃音の有病率は1%とも言われています。100人に1人は吃音であることを示しています。また、男女差は男性(男児)に多く、比率は3:1や4:1ともいわれています。

 

②吃音の症状

吃音の症状には、主な症状である「発話症状」と、それに伴う「二次的症状」に分けられます。

発話症状

発話症状とは発声の仕方で困難を抱えている症状です。吃音の中核症状とも言います。発話症状には以下のようなものがあります。

1.繰り返し
⇒単語の始めの音や、音節、単語のそのものを繰り返してしまう
例)と、と、と、とけい

話し始めに現れて、それ以降は流暢に話すことができます。また、話すことをやめ再度話そうとすると、繰り返しが表れます。

2.引き伸ばし
⇒話し始めなどの1音を伸ばしてしまう
例)と−――けい

特に話し始めの1音を引き伸ばすことが多いです。また、話している途中でも不自然な引き伸ばしが表れることがあります。

3.ブロック
⇒話そうとする最初の言葉が詰まってしまう
例)っ……っとけい

二次的症状

二次的症状とは、発声による症状とは別に起きる、心理社会的な症状のことを言います。吃音の二次的症状として、社交不安症が指摘されています。菊地(2014)では、吃音があるだけで、社交不安症のリスクが高まるとしています。「どもりたくない」という予期不安から、吃音を隠したり、話す場面を回避することで、社交不安症を発症することが多いとしています。

③吃音の診断

精神疾患の分類と診断の手引きであるDSM-5では以下の診断基準が設けられています。ここでは、”小児期発症流暢症”という診断名がつけられています。

小児期発症流暢症(吃音)

A.会話の正常な流暢性と時間的構成における困難、その人の年齢や言語技能に不相応で、長時間にわたって続き、以下の1つ(またはそれ以上)のことがしばしば明らかに起こることにより特徴づけられる。
(1)音声と音節の繰り返し
(2)子音と母音の音声の延長
(3)単語が途切れること
(4)聴きとれる、または無言状態での停止(発声を伴ったまたは伴わない会話の休止)
(5)遠回しの言い方
(6)過剰な身体的緊張とともに発せられる言葉
(7)単音節の単語の反復

B.その障害は話すことの不安、または効果的なコミュニケーション、社会参加、学業的または職業的遂行能力の制限のどれか1つ、またはその複数の組み合わせを引き起こす。

C.症状の始まりは発達期早期である。

D.その障害は言語運動または感覚器の欠陥、神経損傷に関連する非流暢性、または他の医学的疾患によるものではなく、他の精神疾患ではうまく説明されない。

 

 

④吃音の克服方法

吃音の克服方法には大きく「発話そのものを改善する方法」と「考え方や環境を工夫する方法」とに分けられます。その中でも、今回は5つの方法について紹介したいと思います。

①発話訓練
②系統的脱感作
③認知行動療法
④メンタルリハーサル
➄環境調整

①発話訓練

発話訓練は直接発声のトレーニングをしていくものです。発話の流暢を改善したり、どもりながらでも楽に話せる方法で改善を目指します。具体的には、発話の流暢さを改善するために

・呼吸の仕方を改善する
・ひと呼吸で話す長さを調整する
・短いフレーズを区切らずに話す

などの練習を繰り返すことで、発話の流暢さを改善していきます。発話の訓練は専門的な言語聴覚士による訓練が必要になることもあります。吃音と発話訓練については以下のサイトで詳しく解説しています。

吃音トレーニングの基礎

②系統的脱感作

統的脱感作とは、不安階層表や全身をリラックスさせる方法を使って、不安を軽減させていくものです。どもってしまう不安を段階的に解消していく方法にも有効です。

都築(2002)の研究では、吃音の対象者39名に対して筋弛緩によるリラクゼーションによる脱感作を行っています。その結果、36%の人が日常生活でも支障にならないくらいに改善したとしています。

また、この研究では過去の吃音エピソードを想起したり、どもって嫌な思いをした場面など、記憶・情動にも焦点を当てています。系統的脱感作の導入にも、記憶や情動に焦点を当てたアプローチが効果を上げることを示唆しています。

③認知行動療法

どもりに対する不安や恐怖には、認知行動療法も有効であることがわかっています。認知行動療法とは、思考の偏りを修正していく認知療法の技法と、学習理論に基づく行動療法の技法を合わせた心理療法です。

富里ら(2020)の研究によると、吃音に対する認知行動療法の導入で、社交不安や吃音に対する困難度が減ったと報告しています。その中でも代表的な症例も紹介しています。

39歳男性、言葉が詰まって出ない
・結婚式のスピーチで言葉が詰まり失敗した
・認知的特徴として「マイナス化思考」や「一般化のし過ぎ」の傾向
・治療者とソクラテス質問法を使って、認知の修正を実施
・認知面の変化:結婚式のスピーチは失敗ではないことに気づき、だいぶ楽になったと自覚
・行動面の変化:吃音が出てもメニューの注文ができるようになり、食べたいものが食べられた

このように、認知行動療法を通して、吃音に対する考え方や、吃音があってもやりたいことができるなどの変化が望めます。認知行動療法については以下のコラムを参照ください。

認知行動療法の基礎,やり方

 

④メンタルリハーサル

メンタルリハーサルとは、過去の発話で失敗した場面に対して、自然に発話するイメージをしてリハーサルすることでその場面の恐怖を軽減していく方法です。吃音の治療では、②系統的脱感作と併用して使われることが多いです。

具体的には以下のような流れで行われます

1.過去の吃音年表作成
幼稚園時代~現在までの吃音で困ったエピソードに関して年表を作成します。

2.場面の分析
どんな場面で吃音の症状が出てしまったのか、その時どのように感じたかなどを聴取して分析をしていきます。

3.イメージの作成
吃音場面の悪いイメージに対して、良いイメージを作成していきます。例えば、「スムーズに発話ができる」「周囲から賞賛される」など、成功体験を含めた良いイメージを作成していきます。

4.イメージの想起
作成した良いイメージを想起していきます。治療者と面接を行い、フィードバックを通して実施していきます。

➄環境調整

吃音は周囲の環境に非常に左右されやすい疾患でもあります。職場では電話がうまく受けられなかったり、プレゼンなどでつまづきやすかったりします。環境にうまく適応できるようにするには、どうしても周囲の理解が必要です。

そのためには、どんな場面で吃音が出るのか?どんなことに配慮されれば本人の能力が発揮できるのか?などが周知されていることが必要です。吃音の支援には本人の治療だけでなく、周囲への理解を含めた環境調整が必要です。

 

吃音改善,個人指導のお知らせ

 私たちダイコミュという団体では、言語聴覚士による吃音改善のトレーニングを実施しています。

・ブロック症状を治したい
・何度も繰り返してしまう
・緊張をほぐしたい
・人と楽しく会話をしたい

と感じる方は以下の個人指導を参照ください。是非お待ちしています。

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監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 元専修大学人間科学部教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

菊池良和(2015) エビデンスに基づいた吃音支援 心身医学55(10),1104-1110

都筑澄夫(2002) 記憶・情動系の可塑性と吃音の治療 : 発話にかかわるパラリンギスティックな要因について音声言語医学 43(3), 344-349

富里周太,矢田康人,白石紗衣,和佐野浩一郎(2020) 吃音11症例における低強度認知行動療法の有効性日本耳鼻咽喉科学会会報 123(5),363-370