分離不安症の特徴,症状

皆さんこんにちは。心理学講座を開催している、公認心理師の川島達史です。今回のテーマは「分離不安症」です。

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当コラムでは分離不安症を基礎から一通り解説していきます。目次は以下の通りです。

①分離不安症と症状
②分離不安症の原因
③診断の流れと基準
④心理療法

当サイトの特色は、臨床心理学、精神保健福祉の視点から心の病気を解説している点にあります。心の病気の解説サイトは多いですが、精神科医の先生が監修されていることが多く、心理師の専門サイトは多くはありません。

お薬以外での改善策を詳しく知りたい方に特にお役に立てると思います。ご自身の状況にあてはまりそうなものがありましたら是非ご活用ください。

①分離不安症とは

分離不安症とは

まずは分離不安症について何かをおさえましょう。分離不安症は診断基準であるDSM-5では、不安症群に含まれます。内容としては以下の通りになります。

愛着を持っている人からの分離に対する、過度で不適切な不安

愛着とは特定の対象に対する、特別の情緒的結びつきです。生後6か月~3歳くらいまでは、抱っこをせがむ、離れると泣くなど、養育者へ接近して愛着行動がみられます。

一方、3歳以降では、養育者を安全基地とすることで、安心して他の対象に目を向けれるようになっていきます。そして、次第に養育者に対しての愛着行動が減っていきます。

このように、通常の発達では愛着行動は減ってきますが、分離不安症の場合は、なんかの原因により、この愛着行動が残ってしまうのです。

症状

分離不安症はその過度な不安から日常生活に支障が出てきます。その症状には、

養育者と離れる不安から、学校や幼稚園に行けなくなる
悪夢にうなされて睡眠障害になる
吐き気や腹痛など身体的な症状

などが挙げられます。

発症年齢と有病率

発症年齢は分離不安が解消される3歳以降に診断されることが多いです。ちょうど保育園や幼稚園に行き始めて、養育者と離れる場面が多くなると発症することもあります。有病率は0.9~1.9%といわれています。男女比は女児の方が多いといわれています。

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②診断基準と流れ

分離不安症と診断されるポイントは大きくわけて4つあります。

①分離に対する過剰な不安

養育者や愛着を持っている人と離れ離れになる不安が過剰にあります。例えば、
・母親に見捨てられるのではないか
・迷子になってしまう
・誘拐されてしまう

などの不安があり、それによって苦痛を感じています。

②睡眠時に問題が起こる

愛着を持っている人と離れ離れになる主題の悪夢を見ることが多いです。愛着のある人がそばにいないと寝れないなどの症状もあります。

③症状が4週間以上続く

18歳未満では症状が4週間以上続くことが基準になっています。また、成人では6か月以上続くことが基準になっています。

④生活に支障が出る

分離に対する不安から、日常生活に支障が出ます。例えば、外へ出かけることへの強い抵抗などがあります。家から離れて、幼稚園や学校、仕事へ行くことが困難になってきます。

正式な診断基準は以下に折りたたみました。参考にしてみてください。

以下のA、B、C、Dを満たしていること。

A:愛着を持っている人物からの分離に関する発達的に不適切で、過剰な恐怖または不安で、以下のうち3つ以上当てはまる。

①家または愛着を持っている重要な人物からの分離が予期されるときの、過剰な苦痛
②愛着を持っている重要な人物を失うかもしれない、その人に病気、災害、または死など危害が及ぶか
もしれないという過剰な心配
③愛着を持っている重要な人物から分離される運の悪い出来事への過剰な心配
④分離の恐怖のため、家から離れて学校、仕事、そのほかの場所へ行くことへの抵抗または拒否
⑤一人でいることや、愛着を持っている重要な人物がいないで家やその他の状況で過ごすことへの過剰
な恐怖または抵抗
⑥家を離れて寝る、または、愛着を持っている重要な人物の近くにいないで就寝することへの持続的な
抵抗または拒否
⑦分離を主題にした悪夢
⑧分離されるまたは分離を予期したときの、反復する身体症状の訴え(例:頭痛、胃痛、吐き気など)

B:その恐怖、不安、または回避は子供や青年では少なくとも4週間、成人では6か月以上持続する

C:その障害は、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、学業的、職業的、または他の重要な重要な領域における機能の障害を引き起こしている

D:その障害は自閉スペクトラム、精神病性障害、広場恐怖症、全般不安症、病気不安症などの他の精神疾患によってはうまく説明されない

 

③分離不安の原因

①愛着形成に問題

分離不安の原因は親子関係に問題があることがあります。長期の親の不在、親からの無関心、スキンシップの不足などが原因として挙げられます。親からの愛情が不安定だと、子供の心が混乱しやすく、離れることに強い不安を覚えるようになります。

②遺伝的要因

分離不安症には遺伝的要因も関与している可能性も指摘されています。Bolton,Dら(2006)の研究では、6歳児の双子で73%の確率で分離不安症の一致率があることを示しています。

また、臆病で恥ずかしがりやな気質も、分離不安症の発症に関わってくることが指摘されています。こうした気質は、あまり慣れていない人や場所に対して不安を感じやすいです。そのため、分離に対する不安が高まっていくことが考えられます。

 

④分離不安症と心理療法

当コラムでは、臨床心理学や精神保健福祉の観点から、分離不安症に対してよく使う対策を紹介します。

①親子相互交流療法
②家族療法
③遊戯療法
④無条件の肯定を増やす
⑤夫婦仲を安定させる

①親子相互交流療法

心理療法には、親子相互交流療法というものがあります。親子相互交流療法(PCIT)とは、

幼い子供のこころや行動の問題と、育児に悩む親の両方に対し、親子の相互作用を深め、その質を高めることで回復に向かうよう働きかける心理療法

とされています。つまり、子と親の両方に働きかけて、その相互作用を活かして、愛着などの問題を解消していくものです。その方法は、

①子と親が遊ぶ場面を設定
②セラピストがその場面を観察
③セラピストから親に
イヤホン越しにコーチングをする

というものです。この心理療法メリットは、その場で親にコーチングができるという点にあります。良い関わり方には賞賛が与えられ、繰り返すことで強化されてより効果が上がります。

②家族療法

家族療法とは、家族全体を一つのシステムとして捉え、その家族全体に働きかける心理療法です。家族療法では、特定の家族に直接の原因があるとは捉えず、その家族システム全体として捉えることが特徴的です。

特に、子どもの精神疾患は、家族全体から見直すという視点が重要です。分離不安症も養育者との愛着が主題になることから、家族療法を通した治療法が有効です。

家族療法の詳しい解説はこちら
家族療法とは何か,技法について解説

 

③遊戯療法

遊戯療法とは、主に子供を対象とした、遊具・玩具を使って遊びながら行う心理療法です。特徴としては言語表現を必要としないため、言葉の発達が遅れていても用いることができることです。また、遊びの中で子供の内的世界を表現できるという特徴もあります。

分離不安症の場合は、分離に対する不安や心配などの葛藤が、遊びの中に表現されるということがあります。遊戯療法の詳しい解説は下記を参照ください。

遊戯療法のやり方,効果,種類などを基礎

 

④無条件の肯定を増やす

分離不安症は愛着形成の不全にあると考えられています。そのため、愛着形成を促す関わり方が必要になってきます。愛着形成には、無条件の肯定を増やすことが大事です。

無条件の肯定を促す行動の例として

・感謝
小さなことでも
ありがとうと伝える

・存在の肯定
抱きしめる
うなづく
だっこ

・非言語の褒める態度
微笑む
相手の目を見る
二の腕に触れる

・傾聴態度
論理的に正しくなくても
相手の話をひとまず聞く
相手の話を受け止める

・価値観の尊重
頭ごなしに否定しない
なるほど〇〇という考えがあるのか
○○ちゃんはそう感じているのね。

などの行動が挙げられます。

「勉強をした時だけ」「お手伝いをした時だけ」など、何か条件を満たしたときにだけ肯定する、条件付きの肯定では本当の安心感は得られません。「どんな時でもあなたと私は肯定されている」と、無条件に肯定されている感覚が、愛着の形成を促していきます。詳しくは下記を参照ください。

無条件の肯定ストロークを増やす方法

 

⑤夫婦仲を安定させる

安定した愛着を促して分離の不安をなくすには、夫婦が仲良くすることも大事です。菅原ら(2002)は、1360名の母親を対象に、夫婦関係が子どものメンタルヘルスにどのような影響を与えるか調査をしました。

その結果、「父親と母親がお互いに愛情を持っている」と、家族の雰囲気がよくなり子どもの抑うつ傾向が低くなることが分かっています。

また、母親が父親に対して愛情を持っていると子どもに対する養育の暖かさが増し、結果子どもの抑うつ傾向を下げるのです。分離不安症も夫婦の関係性からも影響してくると考えられます。

夫婦仲を良くしたい…と感じる方は以下のコラムを参考にしてみてください。

夫婦円満,夫婦喧嘩の改善法

 

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*出典・引用文献

American Psychiatric Association. (2013). Risk and Prognostic Factors of Separation Anxiety. In Diagnostic and statistical manual of mental disorders (5th ed.)

Bolton D, Eley TC, O’Connor TG, et al. (2006). “Prevalence and genetic and environmental influences on anxiety disorders in 6-year-old twins”. Psychol Med. 36 (3): 335–344

Altman, C; McGoey, K. E.; Sommer, J. L (2009). “Anxiety in early childhood: what do we know?”. Journal of Early Childhood and Infant Psychology.