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認知行動療法の基礎,効果・やり方とは-公認心理師が解説

認知行動療法の入門,効果・やり方とは

みなさんこんにちは。公認心理師の川島達史と申します。私はこちらのコミュニケーション教室を開催しています。今回のテーマは「認知行動療法」です。

認知行動療法,tomoe様作成

認知行動療法は人類が生み出した、悩みを改善する手法の集大成と言えます。もし仮に「初学者が学ぶとよい心理療法は?」と公認心理師にアンケートを取ったら、1位になると思います。

それぐらい認知行動療法は、示唆に富んだ心理療法なのです。コラム①では全体像について解説していきます。

目次

①認知行動療法の概要

認知行動療法の意味

認知行動療法は、Cognitive(認知)、Behavioral(行動)、Therapy(療法)の頭文字をとってCBTと略されることがあります。心理学辞典(2013)では、以下のように定義されています。

認知療法や行動療法を統合した心理療法で、問題のある思考プロセスや問題行動を特定し、修正することに焦点をあてた療法(一部簡略化)。

認知行動療法には3つの重要なポイントがあります。

*統合されたもの
認知行動療法は1つの心理療法ではなく複数の心理療法を活用していきます。認知療法・行動療法の利点を活かし、弱点を補い合いながら、より良い心理療法として確立されたと言えます。

*考え方を扱う
認知行動療法は「思考」を扱います。私たちの感情は、出来事に対する捉え方の影響を強く受けます。感情をコントロールしようとするのではなく、考え方から改善していくことを大事にしています。

*行動を扱う
私たちはマイナス感情に振り回されると、極端な行動を選択してしまいやすくなります。考え方だけでなく、行動を健康的にすることも目指していきます。

全体の歴史

認知行動療法は心理学の歴史と共に発展してきました。全体をざっくり俯瞰すると、以下のように発展してきました。
      
1950 行動療法  
   ↓
1960 認知療法  
   ↓
1990 マインドフルネス 

歴史を概観するとわかるように、認知行動療法は70年近くの歳月を経て、様々な心理療法を吸収しながら発展してきました。

効果がありそうな心理療法であれば、積極的に吸収していく柔軟さがあるのが特徴です。そのため認知行動療法を学習すると、心理療法のエッセンスをかなり学ぶことができるのです。

コラム1では3つの代表的な心理療法を概観し、詳しい方法はコラム2以降で解説していきます。

CBT,認知行動療法,tomoe様作成

②行動療法とは何か

行動療法のはじまり

行動療法は、スキナー、ウオルピなど、様々な心理療法家の理論を、ドイツ生まれのイギリスの心理学者ハンス・J・アイゼンクがまとめあげた心理療法です。

行動療法を提唱したハンスアイゼンク,出典wikipedia

行動療法より前の心理療法は、抽象的なものが多く、科学的と言えないものがたくさんありました。アイゼンクは、これらの抽象的なものではなく、目に見える「行動」を重視したのです。

行動療法では、不健康な行動を繰返している方でも、その原因をしっかり分析して、よりよい学習をすれば改善していけると考えます。

行動療法の手法

行動療法の手法は、ざっと10種類程度あります。よく使う技法の1つに、不安階層表があります。これは小さな目標をたて、少しづつ行動範囲を広げていく手法です。

例えば、人前に立つのが苦手な方が、いきなりハードルの高いチャレンジをすると、失敗してしまう可能性が高く、その結果自信を無くしてしまいます。この時、以下のようにスモールステップを作るのです。

段階1 1人で練習
段階2 観客を2人する
段階3 観客を3人にする

こんな形でスモールステップを作ってチャレンジをしていくと、成果が出やすくなり、苦手な状況を克服しやすくなります。

行動療法の効果

行動療法は、行動の改善に大きな成果をもたらします。例えば以下のようなお悩みの改善が典型的です。

社交不安で孤独だった人の会話が増えた
電車が苦手だったが乗れるようになった
いちいち鍵を確認しなくて済むようになった

生活をする上での不健康な行動が目立つ場合は、行動療法を試してみると良いかもしれません。

行動療法の問題

一方で、行動療法には

行動面の改善が中心となる
心の問題をそこまで重視しない
なんでも学習理論で解釈してしまう

という問題がありました。いうなれば行動療法は目に見えるものを重視しすぎたゆえに、心の問題を軽視しすぎてしたのです。

そして認知行動療法は別の心理療法も吸収しながらさらに成長していくことになります。

行動療法の特徴とメリットデメリット

③認知療法とは何か

認知療法のはじまり

次に出てきたのが認知療法です。認知療法は考え方や思考に焦点を充てた心理療法です。この考え方を体系化した人物は2人おり、実はそれぞれ別の学派を作っています。混同しやすいので整理しておきましょう。

アルバート・エリス
エリスは「心の問題は、出来事ではなく認知(出来事の捉え方)によって変わる」と主張し[1]、1955年に「論理療法」(後の論理情動行動療法, REBT)という学派を創始しました。論理療法についてさらに詳しく知りたい方は、こちらのコラムもご覧ください。

アーロン・ベック
ベックは「心の問題は、出来事をどう解釈するか(自動思考,スキーマ)によって変わる」と主張し[2]、1960年代に「認知療法」を確立しました。

エリスの論理療法とベックの認知療法は、別々に生まれた独立した学派です。しかし「考え方が心の状態を決める」という基本的な発想は共通しているため、後に一緒に「認知療法系」として語られるようになり、どちらも認知行動療法の土台になっていきました。

認知療法の手法

認知療法は、「起こった出来事に対してどう反応するか」に焦点を当てた療法です。基本モデルは、以下の通りです。

認知療法の基本モデル

例えば以下の図をみてみてください。同じ出来事でも、考え方によって、つらい気持ちにもなれば、楽しい気持ちにもなります。

認知療法の具体例

このように認知療法では、考え方に焦点をあて、ポジティブな感情が増えるように工夫をしていきます。

認知療法の効果

認知療法はマイナス感情の改善に大きな効果を発揮します。例えば以下のようなお悩みの改善が典型的です。

人前での緊張が軽くなった
悲観的だったが少し楽観的になった
怒りやすかったが怒りを抑えられるようになった

認知療法は、研究が豊富であるため実証性が高い心理療法です。現在は、条件付きではありますが、日本でも保険適用がなされています。

認知療法の問題

さて!認知行動療法はしばらくの間は、行動療法と認知療法を組み合わせながら、なかなかの成果を上げてきました。しかし、だんだんと以下のような問題があることもわかってきたのです。

考えることは疲れる
継続しないと再発する

認知療法は頭を使うので結構疲れますし、継続しないと再発する可能性が高くなります。うつ病の場合、2年後の再発率がやや高いといわれています。

そこで認知行動療法は新しい心理療法を再び取り入れ進化をしていきます。そうです!認知行動療法はドラゴンクエストのように仲間を集めていくのですね。

④マインドフルネス療法とは

マインドフルネスの導入

1990年代になると東洋の瞑想からヒントを得て開発されたマインドフルネス療法が流行してきました。提唱者は分子生物博士のジョン・カバット・ジンです。

カパットジン,出典:wikipedia

マインドフルネスの特徴は、感情をあれこれ変えようとせず、ただ観察するだけでそのまま受け入れていくところにあります。行動療法や認知療法は、基本的にマイナス感情を軽くしようとしますが、マインドフルネスは「受け入れる」姿勢を大事にします。

マインドフルネスの手法

マインドフルネス療法では、“いまこの瞬間” に意識を向け、恐怖、怒り、悲しみ、気持ちがいい、痛いなど、感情や感覚を観察する訓練をたくさんしていきます。

たとえば、不安な気持ちがあれば、「今自分は不安なんだな」「緊張している自分がいるな」と観察するだけに留めておきます。「緊張しているからダメだな」など、それが良いか悪いかという価値判断はしないようにします。

人間の感情は、マイナス、プラスに揺れ動くものですが、これらの感情の揺れ動きに対して、大きく構えることを目指していきます。

マインドフルネスの効果

マインドフルネス療法は、以下のようなお悩みの改善が典型的です。

感情に振り回されて混乱しやすかったのが改善した
将来を不安に思う日々から今を生きるようになった
自分の感情を自然と受け入れられるようになった
何事も大きな視点で捉えられるようになった

マインドフルネスは、東洋的な考えがベースにあるので、日本人はなじみやすい心理療法といえます。しっかりと身につけると、未来や過去よりも、今この瞬間を楽しんで生きることができます。

マインドフルネスのデメリット

そんなマインドフルネスですが以下の弱点もあります。

研究が少ない
抽象度が高い
繰り返し練習が必要

研究が少ないため、まだ少し完成度が低い療法といえます。また、見えない部分での検証になるため、抽象的で、練習によって感覚を掴んでいく必要があるという点がデメリットと言えます。

マインドフルネス療法の例

⑤研究紹介とまとめ

研究紹介

詳しい認知行動療法の効果は以下に折りたたんで解説しました。理解を深めたい方は展開してみてください。

認知行動療法の実施状況

高橋ら(2018)[3]は、全国の診療所・クリニック1019か所を対象に、認知行動療法の実施状況を調査しました。▼結果の一部が下の図になります。

認知行動療法の実施状況 統計

このように、認知行動療法は様々な精神疾患に活用されていることがわかります。最も多いのはうつ病で、次いで社交不安症、そのあとにパニック症、全般不安症が続いています。

認知行動療法の統計的効果

Dugasら(2003)[4]は、慢性的な心配が特徴である全般性不安障害の方に対する、集団認知行動療法の効果を調査しました。以下の図は、治療前と治療後の心配得点を比較しています。治療後に心配の度合いが大幅に改善していることが分かります。

認知行動療法と心配との関係 心理学研究

ヒステリーの改善-効果

鈴木ら(1984)[5]は、行動療法が有効であったヒステリー性失立失歩の1例を報告しています。

ヒステリー性失立失歩とは、手や足が麻痺することで、立って歩くことができない症状です。ヒステリーを起因とした転換症状のうちでもしばしば見出される代表的な症状の一つです。

【症例:12歳の女児】
・ヒステリー性失立失歩
・軽度の精神発達遅滞

この事例では、患者が小児だったため、医師と患者の間に補助治療者が入り、行動療法などがヒステリーの治療として実施されました。

1:オペラント技法
結果に対して反応を与える技法です。治療では、移動訓練を遂行した時には報酬を与え、食事摂取をしない時には罰を与えました。

2:嫌悪療法
行動に対して不快な結果を結びつける行動療法です。治療では「歩けなければ足を切る」という言語的嫌悪刺激を与えました。

3:主張訓練法
アサーション理論ともいわれる技法で、自分の意見を冷静に伝え、かつ相手側の立場を考慮した主張法を学習する(心理学辞典,2013)こととされています。

その結果、徐々に行動および性格の変化が認められ、3カ月後に歩行訓練を行なったところ、ヒステリー症状の劇的な改善が見られました。

まとめ

ここまで認知行動療法を全体像から理解を進めていきました。以下に長所と対象をまとめました。

認知行動療法の種類と特徴、対象のまとめ

仕上げの動画

認知行動療法につい動画解説もあります。動画を見るとより理解が深まると思います。仕上げとしてご活用ください♪

よくある質問Q&A

私たちは普段カウンセリングや、教室で以下のような質問を頂きます。回答例も参考にしてみてください。

認知療法と行動療法、結局どちらを学べばいいですか?

とてもよく聞かれる質問です。結論からお伝えすると、どちらか一方に絞る必要はありません。考え方の癖が強いと感じる方は認知療法から、まず行動を変えることで気持ちを整えたい方は行動療法から始めるのがおすすめです。教室でも、最初はどちらか気になる方を試していただき、慣れてきたらもう一方も取り入れる、という進め方をされる生徒さんが多いですよ。両方の視点を持てると、自分に合った対処法の幅がぐっと広がります。どちらが正解というものではありませんので、まずは気軽に、興味を持った方から触れてみてくださいね。

効果を感じられるまでどれくらいかかりますか?

個人差が大きいので、はっきりとお答えするのは難しいのですが、教室の生徒さんを見ていると、1〜2ヶ月ほど継続した頃から「少し楽になってきたかも」と感じ始める方が多い印象です。認知行動療法は、一度で劇的に変わるというよりも、小さな気づきを積み重ねていく性質のものです。すぐに効果が出なくても焦らず、まずは1つの技法を1週間続けてみることから始めてみてくださいね。効果を感じにくい時期こそ、実は土台をじっくり作っている時期だと私は捉えています。

独学でも大丈夫ですか、それとも専門家に習うべきですか?

独学でも十分に取り組める内容だと思います。実際、このコラムだけで実践を始められた方もたくさんいらっしゃいます。ただ、一人で進めていると「これで合っているのかな」と不安になったり、同じところでつまずいてしまったりすることもあります。そんな時は、無理に一人で抱え込まず、専門家に一度相談してみるのも良い選択です。独学と専門家のサポート、両方をうまく使い分けていただければと思います。一人で頑張り続けることが偉いわけではありませんので、行き詰まりを感じたら、遠慮なく頼っていただいて大丈夫ですよ。

心の病気ではなくても、認知行動療法は役に立ちますか?

はい、とても役立つと思います。認知行動療法は、もともと治療のために発展してきた面もありますが、今では健康な方のストレス対処やパフォーマンス向上にも幅広く使われています。教室にいらっしゃる生徒さんも、病気というわけではなく「もっと感情に振り回されずに過ごしたい」という理由で学ばれる方が実は多いんですよ。日常のちょっとした心の整理術として、気軽に取り入れてみてください。特別な時だけでなく、普段の生活の中に少しずつ取り入れていただくと、効果を実感しやすくなると思います。

しっかり身につけたい方へ

当コラムで紹介した内容は、「ダイコミュ」のコミュニケーション教室で、仲間と実践しながら学ぶことができます。学べる内容は以下のとおりです。

・認知療法の基礎
・思考の歪みの改善
・行動療法の学習
・マインドフルネスワーク

講師に質問をしたり、仲間と相談しながら進めていくと、理解しやすくなります。まずは体験受講からお試しください。筆者も講師をしています(^^)

コミュニケーション教室,講座,ダイコミュ

個別レッスン

個別にじっくり学びたい方は、マンツーマンでのレッスンも可能です。オンラインで学べるので全国どこからでもご相談いただけます。講師は国家資格を持つ公認心理師です。ご自身のペースで認知行動療法を深めたい方は、下記をご参照ください。

個別レッスンの詳細はこちら。

シリーズの続きを読む

認知行動療法入門は全4回のシリーズで、今回は①全体像を扱いました。エリスやベックが体系化した認知療法について、自動思考やスキーマといった概念をさらに詳しく学びたい方は、こちらのコラムがおすすめです。

②認知行動療法と認知療法

不安階層表などのスモールステップを使った行動療法の具体的な技法を、実例とともに学びたい方はこちらをご覧ください。

③認知行動療法と行動療法

感情をそのまま受け入れるマインドフルネスの考え方や実践方法を、より深く身につけたい方はこちらへどうぞ。

④マインドフルネス療法への展開

監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1] Rosenberg, M. B. (2015). Nonviolent communication: A language of life (3rd ed.). Encinitas, CA: PuddleDancer Press.(安納 献(監訳)小川 敏子(訳)(2018). NVC 人と人との関係にいのちを吹き込む法 新版 日本経済新聞出版社)
 
[2] Marlow, E., Nyamathi, A., Grajeda, W. T., Bailey, N., Weber, A., & Younger, J. (2012). Nonviolent communication training and empathy in male parolees. Journal of Correctional Health Care, 18(1), 8-19.
 
[3] Epinat-Duclos, J., Foncelle, A., Quesque, F., Chabanat, E., Duguet, A., Van der Henst, J.-B., & Rossetti, Y. (2021). Does nonviolent communication education improve empathy in French medical students? International Journal of Medical Education, 12, 205-218.
 
[4] Danet Danet, A. (2020). La comunicación noviolenta entre teoría y práctica. Una revisión sistemática. Revista de Paz y Conflictos, 13(1), 35-55.
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