反応性,脱抑制愛着障害の特徴と治療法

皆さんこんにちは。心理学講座を開催している、公認心理師の川島達史です。今回のテーマは「愛着障害」です。

反応性,脱抑制愛着障害,あおいりんご 様作成

目次は以下の通りです。

①愛着障害とは何か
②診断の流れと診断基準
③愛着障害の治療法

当サイトの特色は、臨床心理学、精神保健福祉の視点から心の病気を解説している点にあります。心の病気の解説サイトは多いですが、精神科医の先生が監修されていることが多く、心理師の専門サイトは多くはありません。

お薬以外での改善策を詳しく知りたい方に特にお役に立てると思います。ご自身の状況にあてはまりそうなものがありましたら是非ご活用ください。

愛着障害とは何か

愛着研究の歴史

愛着に関する研究は1950年代から始まりました。ボルヴィという心理学者は、孤児院で育てられた乳児が極端な人間関係になりがちなことを発見し、愛着の重要性を主張するようになりました。

その後、ハーローという学者がハリガネで育てられたサルと、布で育てられたサルを比較し、後者のサルが精神的に安定していることを発見しました。またイスラエルのキブツで子供を効率よく育てるために、集団で育てた結果、子供が情緒不安定になる、攻撃的になるなどの問題が起こることがわかりました。

これらの研究が積み重ねられ、愛着形成に問題がある児童に対して愛着障害という診断名が付くようになりました。現在の精神医学では、「反応性愛着障害」「脱抑制愛着障害」の2つに分類されています。

反応性愛着障害とは

反応性愛着障害はWHOの基準では以下のように定義されています。

5歳未満に始まり, 子供の対人関係におけるパターンの持続的な異常によって特徴づけられ, 情緒的混乱を伴い, それは環境の変化に応じて変わる(たとえば,過度の警戒と恐怖, 仲間との対人相互反応の乏しさ, 及び相手に対する攻撃, 精神的苦痛, 及びある例では成長の停止)。 この症候群は, 重篤な養育放棄, 虐待,重い養育過誤などの直接の結果として生じると見られる。

直感的な表現では、警戒心があり、素直に甘えることができないような状態の幼児が当てはまります。励ましても素直に喜ばない、親への警戒や悲しみがある、人と目を合わせない、などの症状が挙げられます。

脱抑制愛着障害とは

脱抑制愛着障害はWHOの基準では以下のように定義されています。

 5歳未満に生じ, 誰かれかまわぬ親しげな行動, 仲間との節制の乏しい相互作用及び状況に応じ情緒的あるいは行動的障害が伴うこともある。

直感的な表現では、誰にでも馴れ馴れしくなってしまう、過度に甘える一方で、協調性がなく自分勝手になりがちになるなどの症状が挙げられます。

 

診断の流れ,タイプ分析

愛着障害については大きくわけて、精神医学的な診断と臨床心理学によるタイプ分けの2つのやり方があります。

精神医学的な診断

愛着障害は成人期に診断名がつくことはほとんどなく、未成年に対してつけられる診断名です。初診で診断名がつくことは稀です。精神科医の先生と、親子面接などを繰返しながら確定されていきます。詳しい診断基準は下記を参照ください。

反応性愛着障害は、アメリカ精神医学会の基準では以下のような診断基準となっています。

A.以下の両方によって明らかにされる,大人の養育者にたいする柳制され情動的に引きこもった行動の一貫した様式:

(1)苦痛なときでも,その子どもはめったにまたは最小限にしか安楽を求めない.
(2)苦痛なときでも,その子どもはその子どもはめったにまたは最小限にしか安楽に反応しない.

B.以下のうち少なくとも2つによって特徴づけられる特続的な対人交流と情動の障害
(1)他者に対する最小限の対人交流と情動反応
(2)制限された陽性の感情
(3)大人の養育者との威嚇的ではない交流の間でも、説明できない明らかないらただしさ,悲しみ,または恐怖のエピソードがある,

C.その子どもは以下のうち少ないとも1つによって示される不十分な養育の極端な様式を経験している.
(1)安楽.刺激.および愛情に対する基本的な情動欲求が養育する大人によって満たされることが特続的に欠落するという形の社会的ネグレクトまたは剝奪
(2)安定したアタッチメント形成の機会を制限することになる,主たる養育者の頻回な変更(例:里親による養育の頻繁な交代)
(3)選択的アタッチメントを形成する機会を極端に制限することになる,普通でない状況における養育(例:養育者に対して子どもの比率が高い施設)

D.基準Cにあげた養育が基準Aにあげた行動障害
の原因であるとみなされる(例:基準Aにあげた障害が基準Cにあげた適切な養育の欠落に続いて始まった).

E.自閉症スペクトラム症の診察基準を満たさない.

F.その障害は5歳以前に明らかである.

G.その子どもは少なくとも9カ月の発達年齢である.
該当すれば特定せよ 特続性:その障害は12カ月以上存在している.
現在の重症度を特定せよ 反応性アタッチメント障害は,子どもがすべての 症状を呈しており,それぞれの症状が比較的高い水準で現れているときには重度と特定される.

E.その子どもは少なくとも9カ月の発達年齢である.
該当すれば特定せよ 特続性:その障害は12カ月以上存在する.

現在の重要度を特定せよ
脱抑制型対人交流障害は,子どもがすべての状況を呈しており,
それぞれの症状が比較的高い水準で現れているときは重度特定された.

脱抑制愛着障害は、アメリカ精神医学会の基準では、脱抑制対人交流分類障害という障害名になっています。診断基準としては以下のようになっています。

A.以下のうち少なくとも2つによって示される,見慣れない大人に積極的に近づき交流する子どもの行動様式
(1)見慣れない大人に積極的に近づき交流することへのためらいの減少または欠如
(2)過度に馴れ馴れしい言語的または身体的行動(文化的に認められた,または年齢相相応の社会的規範を逸脱)
(3)たとえ不慣れな状況であっても,遠くに離れて行った後に大人の養育者を振り返って確認することの減少または欠如
(4)最小限に,または何のためらいもなく,見慣れない大人に進んでついて行こうとする.

B.基準Aにあげた行動は注意欠如・多動症で認められるような衝動性に限定されず,社会的脱抑制行動を含む.

C.その子どもは以下の少なくても1つによって示される不十分な養育の極端な様式を経験している.
(1)安楽,刺激,および愛情に対する基本的な情動欲求が養育する大人によって満たされることが特続的に欠落する形の社会的ネグレクトまたは剝奪
(2)安定したアタッチメント形式の機会を制限することになる,主たる養育者の頻回な変更(例:里親による養育の頻繁な交代)
(3)選択的アタッチメントを形成する機会を極端になる制限することになる,普通ではない状況における養育(例:養育者に対して子どもの比率が高い施設)

D.基準Cにあげた養育が基準Aにあげた行動障害原因であるとみなされる(例:基準Aにあげた障害が基準Cにあげた病理の原因となる養育に続いて始まった).

E.その子どもは少なくとも9カ月の発達年齢である.
該当すれば特定せよ 特続性:その障害は12カ月以上存在する.

現在の重要度を特定せよ
脱抑制型対人交流障害は,子どもがすべての状況を呈しており,それぞれの症状が比較的高い水準で現れているときは重度特定された.

 

臨床心理学によるタイプ分け

愛着については臨床心理学で詳細にタイプ分けがなされています。愛着障害の診断がつき、心理療法をする場合に、公認心理師や臨床心理士により行われることがあります。

子供に対してはストレンジシチュエーション法という手法をベースに行われます。ストレンジシチュエーション法では、見知らぬ大人が乳幼児の前に出入りすることでその反応を伺い、傾向を把握する手法です。具体的なやり方は下記を参照ください。

ストレンジシチュエーション法のやり方

大人に対しては、成人用アタッチメント尺度でタイプが把握されることがあります。具体的には1時間程度かけて、面接と用意された質問に回答し、愛着のタイプを分析していく形になります。

成人用アタッチメント診断のやり方(上野,2010)

 

愛着不安,幼児,あおいりんご様作成

 

③愛着障害の治療法

愛着障害については大きくわけて薬物療法と心理療法の2つがあります。当コラムでは、心理療法の視点からよく使う対策を紹介します。

①心理教育
②家族療法
③無条件の肯定を増やす
④スキンシップを増やす
⑤夫婦仲をよくする

*この対策は基本的にはお子様をもつご両親に向けたものです。大人の方でご自身の愛着障害を治したい方はこちらの大人の愛着障害コラムを参照ください。

①心理教育

愛着障害に対しては、障害の特性を理解する姿勢が何より大事です。特性を理解すると、あらかじめ予測を立てられる、混乱することが減る、悩んでいる親は自分だけでないという安心感が得られる、という効果があります。具体的には専門家から説明を受ける、書籍を読む、愛着障害の当事者の動画を見るなどが挙げられます。

②家族療法

家族療法は、家族を治療の単位として扱い、個人の問題を家族と言う文脈のなかで捉えようとする心理療法です。愛着障害は家族関係に問題があり、それが子供に症状をしてあらわれるケースが非常に多いです。

家族療法ではこれらの家族間の問題を把握し、健康な関係を取り戻せるようにしていきます。家族療法について理解を深めたい方は以下を参照ください。

家族療法の基礎と手法

③無条件の肯定を増やす

子供が心から安心をするには、無条件の肯定的ストロークが必要です。無条件の肯定的ストロークとは、「どんな時でもあなたは肯定されていると感じられる関り方」を意味します。

どんな時でも・・・というのがカギで、ただただ肯定することが大事です。例えば以下のようなコミュニケーションが挙げられます。

抱きしめる だっこ 微笑む 目を見て話す 二の腕に触れる 話を受け止める ○○ちゃんはそう感じているのねと傾聴する

無条件の肯定的ストロークは、安定した愛着の土台になります。理解を深めたい方は以下のコラムを参照ください。

無条件のストロークのやり方

 

④スキンシップを増やす

心理学の研究ではスキンシップを増やすと、子供の心理にリラックス効果があり、愛着形成に前向きな効果があることがわかっています。③の対策でも挙げましたが、

抱きしめる だっこ おんぶをする 頭をなでる 一緒に昼寝する 高い高いをする お風呂に入る プロレスをする くすぐりあう

などを習慣にしていくと良いでしょう。

 

⑤夫婦仲をよくする

菅原ら(2002)は、1360名の母親を対象に、夫婦関係が子どものメンタルヘルスにどのような影響を与えるか調査しました。結果の一部が下図となります。

愛着障害の治療法

上図のように「父親と母親がお互いに愛情を持っている」場合、家族の雰囲気がよくなり、子どもの抑うつ傾向が低くなることが分かっています。

夫婦仲が良いと子供のメンタルヘルスが向上し、安定した愛着が形成されると推測されます。夫婦仲が悪い‥と感じる場合は以下のコラムを参照ください。

夫婦の会話を増やす方法

愛着障害,治療,あおいりんご様作成

 

 

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・無条件の肯定のコツ

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*参考資料
DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引き(2014) 医学書院