反応性,脱抑制愛着障害の特徴と治療法

皆さんこんにちは。心理学講座を開催している、公認心理師の川島達史です。今回のテーマは「愛着障害」です。

反応性,脱抑制愛着障害,あおいりんご 様作成

目次は以下の通りです。

①愛着障害の意味とは
②臨床心理学上の分類
③愛着障害の治療法
④当事者の方の体験談

当サイトの特色は、臨床心理学、精神保健福祉の視点から心の病気を解説している点にあります。心の病気の解説サイトは多いですが、精神科医の先生が監修されていることが多く、心理師の専門サイトは多くはありません。

お薬以外での改善策を詳しく知りたい方に特にお役に立てると思います。ご自身の状況にあてはまりそうなものがありましたら是非ご活用ください。

愛着障害の意味とは

愛着研究の歴史

愛着に関する研究は1940年代から本格的に始まっていきました。アンナ・フロイトと同僚のドロシー・バーリンガム(1944)は、第 2 次世界大戦の影響で戦争孤児になった児童の精神衛生を調査しました。その結果、情緒的発達の遅れ、発話の遅れ、攻撃的になりやすい傾向があることがわかりました。

その後、ボルヴィ(1952)[1]が『乳幼児の精神衛生』にて、孤児院で育てられた乳児が極端な人間関係になりがちなことを発見し、愛着の重要性を主張するようになりました。

その後、ハーローという学者[2]がハリガネで育てられたサルと、布で育てられたサルを比較し、後者のサルが精神的に安定していることを発見しました。またイスラエルのキブツで子供を効率よく育てるために、集団で育てた結果[3]、子供が情緒不安定になる、攻撃的になるなどの問題が起こることがわかりました。

これらの研究が積み重ねられ、愛着形成に問題がある児童に対して愛着障害という診断名が付くようになりました。現在の精神医学では、「反応性愛着障害」「脱抑制愛着障害」の2つに分類されています。

反応性愛着障害とは

反応性愛着障害はWHOの基準[4]では以下のように定義されています。

5歳未満に始まり, 子供の対人関係におけるパターンの持続的な異常によって特徴づけられ, 情緒的混乱を伴い, それは環境の変化に応じて変わる。 この症候群は, 重篤な養育放棄, 虐待,重い養育過誤などの直接の結果として生じると見られる。

直感的な表現では、警戒心があり、素直に甘えることができないような状態の幼児が当てはまります。励ましても素直に喜ばない、親への警戒や悲しみがある、人と目を合わせない、などの症状が挙げられます。

反応性愛着障害は、アメリカ精神医学会の基準[5]では以下のような診断基準となっています。

A.以下の両方によって明らかにされる,大人の養育者にたいする柳制され情動的に引きこもった行動の一貫した様式:

(1)苦痛なときでも,その子どもはめったにまたは最小限にしか安楽を求めない.
(2)苦痛なときでも,その子どもはその子どもはめったにまたは最小限にしか安楽に反応しない.

B.以下のうち少なくとも2つによって特徴づけられる特続的な対人交流と情動の障害
(1)他者に対する最小限の対人交流と情動反応
(2)制限された陽性の感情
(3)大人の養育者との威嚇的ではない交流の間でも、説明できない明らかないらただしさ,悲しみ,または恐怖のエピソードがある,

C.その子どもは以下のうち少ないとも1つによって示される不十分な養育の極端な様式を経験している.
(1)安楽.刺激.および愛情に対する基本的な情動欲求が養育する大人によって満たされることが特続的に欠落するという形の社会的ネグレクトまたは剝奪
(2)安定したアタッチメント形成の機会を制限することになる,主たる養育者の頻回な変更(例:里親による養育の頻繁な交代)
(3)選択的アタッチメントを形成する機会を極端に制限することになる,普通でない状況における養育(例:養育者に対して子どもの比率が高い施設)

D.基準Cにあげた養育が基準Aにあげた行動障害
の原因であるとみなされる(例:基準Aにあげた障害が基準Cにあげた適切な養育の欠落に続いて始まった).

E.自閉症スペクトラム症の診察基準を満たさない.

F.その障害は5歳以前に明らかである.

G.その子どもは少なくとも9カ月の発達年齢である.
該当すれば特定せよ 特続性:その障害は12カ月以上存在している.
現在の重症度を特定せよ 反応性アタッチメント障害は,子どもがすべての 症状を呈しており,それぞれの症状が比較的高い水準で現れているときには重度と特定される.

E.その子どもは少なくとも9カ月の発達年齢である.
該当すれば特定せよ 特続性:その障害は12カ月以上存在する.

現在の重要度を特定せよ
脱抑制型対人交流障害は,子どもがすべての状況を呈しており,
それぞれの症状が比較的高い水準で現れているときは重度特定された.

 

脱抑制愛着障害とは

脱抑制愛着障害はWHOの基準では以下のように定義されています。

 5歳未満に生じ, 誰かれかまわぬ親しげな行動, 仲間との節制の乏しい相互作用及び状況に応じ情緒的あるいは行動的障害が伴うこともある。

直感的な表現では、誰にでも馴れ馴れしくなってしまう、過度に甘える一方で、協調性がなく自分勝手になりがちになるなどの症状が挙げられます。

脱抑制愛着障害は、アメリカ精神医学会の基準では、脱抑制対人交流分類障害という障害名になっています。診断基準としては以下のようになっています。

A.以下のうち少なくとも2つによって示される,見慣れない大人に積極的に近づき交流する子どもの行動様式
(1)見慣れない大人に積極的に近づき交流することへのためらいの減少または欠如
(2)過度に馴れ馴れしい言語的または身体的行動(文化的に認められた,または年齢相相応の社会的規範を逸脱)
(3)たとえ不慣れな状況であっても,遠くに離れて行った後に大人の養育者を振り返って確認することの減少または欠如
(4)最小限に,または何のためらいもなく,見慣れない大人に進んでついて行こうとする.

B.基準Aにあげた行動は注意欠如・多動症で認められるような衝動性に限定されず,社会的脱抑制行動を含む.

C.その子どもは以下の少なくても1つによって示される不十分な養育の極端な様式を経験している.
(1)安楽,刺激,および愛情に対する基本的な情動欲求が養育する大人によって満たされることが特続的に欠落する形の社会的ネグレクトまたは剝奪
(2)安定したアタッチメント形式の機会を制限することになる,主たる養育者の頻回な変更(例:里親による養育の頻繁な交代)
(3)選択的アタッチメントを形成する機会を極端になる制限することになる,普通ではない状況における養育(例:養育者に対して子どもの比率が高い施設)

D.基準Cにあげた養育が基準Aにあげた行動障害原因であるとみなされる(例:基準Aにあげた障害が基準Cにあげた病理の原因となる養育に続いて始まった).

E.その子どもは少なくとも9カ月の発達年齢である.
該当すれば特定せよ 特続性:その障害は12カ月以上存在する.

現在の重要度を特定せよ
脱抑制型対人交流障害は,子どもがすべての状況を呈しており,それぞれの症状が比較的高い水準で現れているときは重度特定された.

 

有病率

乳児院入所児での精神疾患に関する調査では、11.5%が反応性愛着障害であったという研究があります[6]

 

臨床心理学上の分類

愛着障害については臨床心理学の視点からも研究が進められてきました。例えば、エインズワース(1978)[7]は、ストレンジシュチュエーション法という手法で、愛着形成について4つのタイプがあるとしています。

回避型
avoidant

親がいなくなっても不安にならないし、戻ってきても、全然喜びを表現せず、むしろ回避的になります。また自分の遊びに集中し続けるという特徴が見られました。研究では26%が回避型でした。日常的には、親は拒絶的であることわかりました。

安定型
secure

親がいなくなると、不安になって、その後、親が戻ってくると、素直に喜びます。そして親とひとしきりコミュニケーションを取った後に遊び出します。エインワーズの研究では57%が安定型でした。日常的には親はよく気遣っているということがわかりました。

アンビバレント型
ambivalent

親がいなくなると、激しく怒り、戻ってくると、親になぜいなくなったのか激しく怒りをぶつけてきます。そして親とのコミュニケーションを求め続け、自分の遊びをはじめないという特徴が見られました。研究では17%がアンビバレント型でした。日常的には親は一貫性のない接し方をしていることがわかりました。

無秩序・無方向型
disorganized/disoriented

エインズワーズの研究後、教え子であったらメインら(1986)[8]によって無秩序型が追加されました。親に対する態度に一貫性がなく、背を向けながら近づいたり、泣いたり、じっとう動かないという特徴があります。日常的には、親が抑うつ的で虐待などをしているケースもみられることがわかりました。

ストレンジシチュエーション法では、見知らぬ大人が乳幼児の前に出入りすることでその反応を伺い、傾向を把握する手法です。具体的なやり方は下記を参照ください。

ストレンジシチュエーション法のやり方

 

 

愛着不安,幼児,あおいりんご様作成

 

③愛着障害の治療法

愛着障害の治療法については大きくわけて薬物療法と心理療法の2つがあります。当コラムでは、心理療法の視点からよく使う対策を紹介します。

①心理教育
②家族療法
③無条件の肯定を増やす
④スキンシップを増やす
⑤夫婦仲をよくする

*この対策は基本的にはお子様をもつご両親に向けたものです。大人の方でご自身の愛着障害を治したい方はこちらの大人の愛着障害コラムを参照ください。

①心理教育

愛着障害に対しては、障害の特性を理解する姿勢が何より大事です。特性を理解すると、あらかじめ予測を立てられる、混乱することが減る、悩んでいる親は自分だけでないという安心感が得られる、という効果があります。具体的には専門家から説明を受ける、書籍を読む、愛着障害の当事者の動画を見るなどが挙げられます。

②家族療法

家族療法は、家族を治療の単位として扱い、個人の問題を家族と言う文脈のなかで捉えようとする心理療法です。愛着障害は家族関係に問題があり、それが子供に症状をしてあらわれるケースが非常に多いです。

家族療法ではこれらの家族間の問題を把握し、健康な関係を取り戻せるようにしていきます。家族療法について理解を深めたい方は以下を参照ください。

家族療法の基礎と手法

③無条件の肯定を増やす

子供が心から安心をするには、無条件の肯定的ストロークが必要です。無条件の肯定的ストロークとは、「どんな時でもあなたは肯定されていると感じられる関り方」を意味します。

どんな時でも・・・というのがカギで、ただただ肯定することが大事です。例えば以下のようなコミュニケーションが挙げられます。

抱きしめる だっこ 微笑む 目を見て話す 二の腕に触れる 話を受け止める ○○ちゃんはそう感じているのねと傾聴する

無条件の肯定的ストロークは、安定した愛着の土台になります。理解を深めたい方は以下のコラムを参照ください。

無条件のストロークのやり方

 

④スキンシップを増やす

心理学の研究ではスキンシップを増やすと、子供の心理にリラックス効果があり、愛着形成に前向きな効果があることがわかっています。③の対策でも挙げましたが、

抱きしめる だっこ おんぶをする 頭をなでる 一緒に昼寝する 高い高いをする お風呂に入る プロレスをする くすぐりあう

などを習慣にしていくと良いでしょう。

 

⑤夫婦仲をよくする

菅原ら(2002)[9]は、1360名の母親を対象に、夫婦関係が子どものメンタルヘルスにどのような影響を与えるか調査しました。結果の一部が下図となります。

夫婦喧嘩 子どもの抑うつ

上図のように「父親と母親がお互いに愛情を持っている」場合、家族の雰囲気がよくなり、子どもの抑うつ傾向が低くなることが分かっています。

夫婦仲が良いと子供のメンタルヘルスが向上し、安定した愛着が形成されると推測されます。夫婦仲が悪い‥と感じる場合は以下のコラムを参照ください。

夫婦の会話を増やす方法

愛着障害,治療,あおいりんご様作成

 

④当事者の方の体験談

愛着障害について、当時者の方の体験談が参考になると思います。以下の動画を参照ください。

いのりさんの体験談

じゅんこさんの体験談

コミュニケーション講座のお知らせ

私たち公認心理師は人間関係や家族関係を健康的にする講座を開催しています。内容は以下の通りです。

・ソーシャルスキル(SST)会話力をつける
・家族関係を健康的にする心理学
・心が豊かになる声かけ練習
・心を安定させる心理学

興味がある方は以下の看板をクリックしてご検討ください。皆さんのご来場をお待ちしています。

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監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典

[1] ジョン・ボウルビィ 著, 黒田実郎 訳(1967).乳幼児の精神衛生 岩崎学術出版社

[3] 岡田尊司(2011).愛着障害~子ども時代を引きずる人々~ 光文社新書

[4] 厚生労働省 ICD-10 基本分類表及び内容例示表  第5章精神及び行動の障害(F00-F99).

[5] 高橋三郎,大野裕(2014).DSM-5精神疾患の分類と診断の手引き 医学書院

[7] Ainsworth,M.D.S., Blehar M.C., Waters,E.and Wall,S.(1978). Patterns of attachment. Hillsdale, NJ: Lawrence Erbaum.

[8] 厚生労働省 ICD-10 基本分類表及び内容例示表  第5章精神及び行動の障害(F00-F99).

[9] 菅原 ますみ, 八木下 暁子, 詫摩 紀子, 小泉 智恵, 瀬地山 葉矢, 菅原 健介, 北村 俊則(2002).夫婦関係と児童期の子どもの抑うつ傾向との関連 教育心理学研究 50 巻 2 号 p. 129-140