自閉スペクトラム障害の診断基準,症状

皆さんこんにちは。心理学講座を開催している、公認心理師の川島達史です。今回のテーマは「自閉症スペクトラム症」です。

自閉症スペクトラム障害は発達障害の中でも罹患率の高い障害です。ご自身はもちろん身近な人を合わせると、かなりの確率で向き合う機会があると思います。

そこで当コラムでは自閉症スペクトラム障害を基礎から一通り解説していきます。目次は以下の通りです。

①自閉症スペクトラムとは何か
②自閉症スペクトラムの特徴
③心理療法,作業療法
④精神保健福祉制度
⑤心理師として感じていること

当サイトの特色は、臨床心理学、精神保健福祉の視点から心の病気を解説している点にあります。心の病気の解説サイトは多いですが、精神科医の先生が監修されていることが多く、心理師の専門サイトは多くはありません。

お薬以外での改善策を詳しく知りたい方に特にお役に立てると思います。ご自身の状況にあてはまりそうなものがありましたら是非ご活用ください。

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①自閉症スペクトラムとは何か

歴史

まずはじめに自閉症スペクトラム障害の歴史をみていきましょう。

自閉症は1943年にアメリカの児童精神科医のカナーが、社会性がない、ことばの発達がおそい、反復行動がみられる児童を、早期幼児自閉症と命名したことからはじまりました[1][2]。その後、自閉症に近い症状として、広汎性発達障害、アスペルガー障害、などが追加されていきました。

そしてさまざまな研究が進んで行くと、これらの障害名は1つに統一したほうが、治療しやすいという意見が出てきました。その結果、2013年のアメリカ精神医学会の診断基準であるDSM5[3]では、自閉症スペクトラム(ASD)と総称するようになったのです。

現在でもWHOの診断基準であるICD‐10では自閉症、アスペルガー障害、広汎性発達障害という用語を使っていますが、最新の基準であるICD‐11のでは、自閉スペクトラム症になることが決定しています[4]。一般の方は、自閉症、アスペルガー障害という用語ではなく、自閉症スペクトラム(ASD)という言葉で情報を集めていくことをおすすめします。

診断基準

自閉症スペクトラムと診断されるポイントは大きくわけて4つあります。

①人間関係が苦手
ASDの方は、空気が読めない、曖昧なことばが苦手、感情表現が苦手、という特徴があります。その結果、人が傷つく言葉を言ってしまい、周りを困らせてしまうことがあります。

②興味が集中する
たくさんの情報に触れるより、おなじ情報を集めることを好みます。例えば、虫の図鑑を見てすべての名前を覚えてしまう、電車の路線図を全て覚えてしまう、などが挙げられます。日々の生活も同じリズムですごすことを大事にします。

③幼児期に傾向がみられる
多くの場合、幼児期から兆候が見られます。あやしても目が合わない、一人遊びが好き、言葉の発達がおそい、などが挙げられます。現在では、比較的早期に発見されやすいですが、つい20年前ぐらいまでは、診断されにくく、大人になってからわかるケースもよくありました。

④生活に支障が出る
実際に生活に支障があることも診断基準の1つとなります。例えば、ASDの方は幼少期はいじめにあうケースがあります。また大人になってからは職場にうまく適応できず、転職を繰り返す方もいます。診断される際はこれらの生活上の困難も判断材料になります。

正式な診断基準は以下に折りたたみました。参考にしてみてください。

以下のA、B、C、Dを満たしていること。

A:社会的コミュニケーションおよび相互関係における持続的障害
(以下の3点で示される)

①社会的・情緒的な相互関係の障害
②他者との交流に用いられる非言語的コミュニケーションの障害
③年齢相応の対人関係性の発達や維持の障害

B:限定された反復する様式の行動、興味、活動
(以下の2点以上の特徴で示される)

①常同的で反復的な運動動作や物体の使用、あるいは話し方
②同一性へのこだわり、日常動作への融通の効かない執着、言語・非言語上の儀式的な行動パターン
③集中度・焦点づけが異常に強くて限定的であり、固定された興味がある
④感覚入力に対する敏感性あるいは鈍感性、あるいは感覚に関する環境に対する普通以上の関心

C:症状は発達早期の段階で必ず出現するが、後になって明らかになるものもある

D:症状は社会や職業その他の重要な機能に重大な障害を引き起こしている

 

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②自閉症スペクトラムの特徴

自閉スペクトラム症には以下のような特徴があります。重要な点を解説しましたので参考にしてみてください。

遺伝が影響する

自閉症スペクトラムは遺伝が影響することがわかっています。例えば、一卵性双生児では、一方がASDだと、もう一方もASDになる可能性が90%[5]と言われています。ASDは育て方の問題ではないことをおさえてきましょう。

男性に多い

ASDは男性に多い障害です。弘前大学(2020)の調査[6]によると男女比率は男性2対1前後と言われています。原因としては、脳の脳梁の太さの違いや、共感的な脳の機能の違いなどが指摘されていますがはっきりしたことはわかっていません。

知的レベルは正常なケースも

ASDの場合、知的レベルにはかなり幅があります。目安となりますが、約70%は知的レベルは正常で、30%は知的障害があります。知的レベルはむしろ高い方も多く、研究職やエンジニアなどで大成功する方もいます。

周辺症状,合併症

ASDの方は、ADHDがある、発達性運動協調症になる、てんかん発作を起こしやすい、不眠症になるなど、様々な症状や合併症を併発しやすいです。現場感覚でも、自閉症スペクトラムの方は、一人として同じ人はおらず、個別に丁寧に症状を確認していく必要があります。

幼児期に発症することが多い

弘前大学(2020)[6]の調査によると5歳児の3.22%が当てはまるとされています。一般的にASDは大人になると診断率が低下すると言われていて、Brugha(2011)[7]が行ったイギリスの成人に対する診断率の研究では1%前後とされる研究もあります。

 

③心理療法,作業療法

自閉症スペクトラムは遺伝の影響が強いため、治療というよりも、うまく付き合っていくことが大事になります。当コラムでは、臨床心理学や精神保健福祉の観点から、よく使う対策を紹介します。

①心理教育
②応用行動分析
③SST
④作業療法
⑤環境調整
⑥長所を活かす

①心理教育(ACAT)

最近では、ASDの方向けに、ACAT(Aware and Care for my AS Traits)という心理教育が発展してきています[8]。ACATではASDの特性を理解し、考え方や行動のあり方かを工夫するワークを行っていきます。

自閉症スペクトラムにおいて、自己理解を深めることは何より大事です。障害の特性を理解すると、混乱することが減る、人間関係の失敗が減る、自分を受け入れるきっかけになる、という効果があります。

②応用行動分析

自閉症スペクトラムには応用行動分析という心理療法が使われることが多いです。応用行動分析では、褒める、シールを与える、お菓子をあげるなど、なんらかの報酬をあたえることで、適切な行動をうながしていきます。

例えば、学校でじっとできない生徒に対して、静かに座ることができたら、シールをあげるなどの方法で、適切な行動をうながします。詳しくは以下の折り畳みで解説をしました。参考にしてみてください。

大友(2015)[9]は、トークンエコノミーという応用行動分析に基づく手法を用いて、自閉症児の行動の変化を調査しました。その結果、7か月の間で以下の3つの行動が減少したとしています。

 

③SSTで社会性を身につける

SSTはソーシャルスキルトレーニングの略で、社会性を身に着ける様々なトレーニングの総称です。ASDでも、SSTを学ぶと随分会話が楽になります。例えば、「言い換えのオウム返し」という技術を学ぶと、共感性が薄くても、それなりに理解しているような会話になるため、円滑な人間関係に役立ちます。SSTは弊社で学生向け、成人向けの講座がありますので参考にしてみてください。

学生向けSST講座
大人向けSST講座

④作業療法

自閉スペクトラム症の特徴として、運動の不器用さや、感覚刺激に敏感・鈍感であることがあります。そうした、運動や感覚へのアプローチとして、作業療法が用いられます。特に遊びを用いるなかで、運動や感覚の力を養っていきます。例えば、

・トランポリンを用いてバランス感覚を養う
・ボールプールの中で触覚刺激を与える

など、特に感覚は視覚や聴覚だけでなく、触覚、バランス感覚、空間知覚などの感覚刺激を促すものが使われます。

⑤環境調整

自閉スペクトラム症は臨機応変な対応が難しかったり、こだわりが強かったりします。そのため、症状に応じた環境調整が大事です。例えば、

・スケジュールを視覚化する
・部屋に仕切を作り落ち着く空間を作る
・仕事上、雑音がない部屋を用意する

などがあげられます。

⑥自己受容を促す

ASDの方は特に思春期に深く思い悩みます。最初はご自身の障害を嘆き、ショックを受ける方が大半です。しかし、障害の特性を理解し、長所もあることがわかると、段々と自己受容が進み、自分らしい人生を歩めるようになります。心理療法家としては、よくお話をお伺いしながら、自己受容するお手伝いをすることになります。

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④精神保健福祉制度

ASDについては様々な使える制度や支援機関があります。サポート体制を充実させるためにも参考にしてみてください。

発達障害者支援センター
発達障害者支援センターは、発達障害児(者)への支援を総合的に行うことを目的とした専門的機関です。発達障害児(者)とその家族が豊かな地域生活を送れるように、総合的な支援ネットワークを構築しています。相談も無料で行ってくれるので是非訪ねてみてください。

精神障害者保健福祉手帳の手引き
各種割引が受けられる手帳です。医療費が安くなる、交通機関を安く利用できる、などのメリットがあります。ASDの診断を受けた方は取得することをおすすめします。

相談支援事業
相談支援事業は生活全般についてのあらゆる相談に乗ってくれる支援事業です。専門の支援員がついてくれるので物理的にも精神的にも大きな心の支えになってくれます。是非利用してみてください。

障害者就労支援
ASDの方は大きくわけて、一般就労をされる方と、障害者向けの就労支援を利用される方がいます。一般就労で活躍している方もたくさんいらっしゃる一方で、理解をされず苦しむ方もいらっしゃいます。障害者就労支援制度では、症状を理解する支援員のもと、健康的に仕事を続けることができます。

 

⑤心理師として感じていること

自閉症スペクトラムは、私が仕事をはじめた当初はそこまで有名ではありませんでした。ASDという障害の存在をしらず、苦しんでいるかたがたくさんいました。今のように診断がスムーズにおりるわけでもなく、検査まで2か月待ちということもざらにありました。

現在は社会的な理解が進んできて、ASDの方が使える制度も増えてきたように感じています。これは良い傾向だと感じています。

ASDの方は人生のいずれかの時期で強い挫折に苛まれることが多いです。学校でいじめにあう、就職活動がうまくいかない、会社に入ってから苦労する、恋愛がうまくいかない、などたくさんハードルがあります。

しかし、もがいてもがいていると、どこかのタイミングで、スポッと社会に居場所ができることがあります。その居場所は、自分にあった仕事場かもしれないですし、気の合う仲間たちかもしれないですし、理解してくれる恋人かもしれません。

私はASDの方が、そんな居場所を見つけ、自分を認めることができるようになる瞬間が大好きです。そしてASDの方がそんな場所を見つけられる社会を微力ながら私も作っていきたいと感じています。

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講座のお知らせ

「自閉症スペクトラム障害」コラムにお付き合いしていただき、ありがとうございました。

最後にお知らせがあります。発達障害は、心理療法やソーシャルスキルを学ぶと、社会に適応的な面を増やせることがわかっています。心理療法や人間関係を学びたい方は、私たち公認心理師が開催している講座への参加をおすすめしています。内容は以下の通りです。

・心を安定させる,心理療法の基礎
・ソーシャルスキルトレーニング(SST)
・ASDでもできる,会話の練習
・自分の長所を発見するワーク

興味がある方は以下の看板をクリックください。皆さんのご来場をお待ちしています。

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監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典

[1] Leo Kanner(1943).“Autistic Disturbances of Affective Contact,” The Nervous Child 2:217-50.

[3] 森野百合子,海老島(2021).ICD-11 における神経発達症群の診断について 精神経誌 第123巻 第 4 号

[4]高橋三郎,大野裕(2014).DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引 単行本 – ‎ 医学書院

[5] Tick, B., Bolton, P., Happe, F., Rutter, M. & Rijsdijk, F.(2016) Heritability of autism spectrum disorders: a meta-analysis of twin studies. Journal of Child Psychology and Psychiatry, and Allied Disciplines 57, 585-595</div

[6] 斉藤まなぶ,廣田智也,坂本由唯,足立匡基,高橋芳雄,大里絢子,Young Shin Kim, Bennett Leventhal, Amy Shui,加藤澄,中村和彦,国立大(2020).5歳における自閉スペクトラム症の有病率は推定3%以上であることを解明

[7] Brugha T, McManus S, et al:(2011).Epidemiology of autism spectrum disorders in adults in the community in England. Arch Gen Psychiatry 68: 459-465,

[8] 大友浩(2015).自閉症生徒Aの不適切行動のコントロールと適切な行動形成の試み 自閉症スペクトラム研究 12(2), 53-62