ADHDの特徴と診断基準,症状

皆さんこんにちは。心理学講座を開催している臨床心理士の森、公認心理師の川島達史です。今回のテーマは「ADHD,注意欠陥多動性障害」です。

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ADHDは発達障害の中でも中心となる障害です。当コラムではADHDを基礎から一通り解説していきます。目次は以下の通りです。

①ADHDとは何か
②ADHDの原因
③心理療法
④精神保健福祉制度
⑤薬物療法
⑥心理師として感じていること

当サイトの特色は、臨床心理学、精神保健福祉の視点から心の病気を解説している点にあります。心の病気の解説サイトは多いですが、精神科医の先生が監修されていることが多く、心理師の専門サイトは多くはありません。

お薬以外での改善策を詳しく知りたい方に特にお役に立てると思います。ご自身の状況にあてはまりそうなものがありましたら是非ご活用ください。

 

①ADHDとは何か

診断基準

ADHDとは、注意欠陥/多動性障害を意味します。注意欠陥は英語では、Attention-Deficitとあらわします。特徴としては以下が挙げられます。

集中力がない
不注意の間違いが多い
必要なものをよく失くす
外からの刺激ですぐに気が散る
人の話を最後まで聞けない

多動性は英語ではHyperactivity Disorderとあらわします。特徴としては以下が挙げられます。

そわそわ動かしたり落ち着きがない
すぐに席を離れる
静かに遊ぶことができない
順番を待つことができない
衝動的に人に干渉する

ADHDの方はこれらの症状が混在してあらわれることになります。より詳しい診断基準を知りたい方は以下を参照ください。

注意の障害と多動が基本的特徴である。両者が診断に必要であり、1つもしくはそれ以上の状況で両者を明らかにしなければならない(たとえば家庭、教室、病院など)。

注意の障害
課題を未完成で中止したり、活動が終わらないうちに離れてしまったりすることで明らかになる。こういった子どもたちはしばしば1つの活動から次の活動へ移るが、おそらく他のことに気が散り、1つの課題に注意を集中できないためと思われる。持続性と注意の欠陥は、その子どもの年齢とIQから考えて過度な場合にのみ診断されるべきである。

多動の障害
とくにおとなしくしていなくてはならない状況において、過度に落ち着きがないことを意味する。状況によって、走り回り跳ね回る、あるいは座ったままでいるべきときに席から立ち上がる、あるいは過度にしゃべり騒ぐ、あるいはもじもじそわそわしていることが含まれる。

判定の基準
状況から予想される程度より活動が過度でかつ、同じ年齢とIQの他の小児と比較して活動が過度であることが必要である。この行動特徴が最も顕著となるのは、行動の自己統制が高度に必要とされる、構造化され組織化された状況である。

以下の随伴する特徴は診断に必ずしも十分でも必要でもないが、診断の確認に役立つ。社会的関係での抑制欠如、多少危険な状況でも向こうみずであること、社会的規則に対する衝動的な軽視(他人の活動に干渉したり妨げたり、他人が質問を終わらないうちに答えたり、順番を待つのが困難であったりすること)などである。

学習の障害と運動の不器用さはきわめてしばしばみられ、これらが存在するときは個別に(F80-F89)に記載されるべきであり、これらはこの多動性障害を実際診断する際の基準の一部にしてはならない。 行為障害の症状は主診断の基準でも包含基準でもない。しかしその症状が存在するかしないかは、この障害の主な下位分類の基準となる(以下を参照せよ)。

年齢
特徴的な問題行動は早期に発現(6歳以前)し、長く持続するものである。しかしながら、入学前には正常範囲の幅が大きいので、多動と認定するのは困難である。学齢以前の幼児では程度が極度の場合のみ診断がなされる。

多動性障害と成人
診断することは成人期でも可能である。基本的には小児期と同様であるが、注意と行動に関しては発達に見合った基準を考慮して診断しなければならない。多動が小児期に存在し、しかし現在はなく非社会的パーソナリティ障害や物質乱用などの他の状態になっている場合には、以前の状態ではなく現在の状態でコード化する。

*WHO ICD10の診断基準を一部簡略化

発症年齢

6歳未満から症状がはっきりしてくることがわかっています。子供はもともと衝動性が強いですが、その中でも目立って落ち着きがない行動を取ります。例えば、保育園では、皆が手をつないでいるのに、一人だけすぐに離して走り回るなどが挙げられます。

発症率と持続性

WHOの基準によると、発症率は学齢期で3% – 7%とされています。青年期には30%の方が改善していきます。残りの40%は、症状が持続し、さらに残りの30%は、うつ病、アルコール依存症などの、精神障害を合併しやすいとされています。

合併症については、さまざまな研究が報告されています。以下に詳しく解説をしていますので、理解を深めたい方は展開してみてください。

Beckerら(2017)の研究によると、多動・衝動型ADHDの人は、夜間に覚醒する確率が高いことを示しています。さらに、多動・衝動性型ADHDの人は、高い確率で悪夢も併存することがわかっています。

ADHDの人は衝動的であるため、以下の精神疾患と親和性が高いとされています。

①反抗挑発症

反抗挑発症は怒りっぽく、権威ある人と口論になったり、挑発的な行動が目立つ障害です。通常は就学前の子供に見られます。

②素行症

素行症は反抗挑発症がエスカレートしていたものです。人や動物への攻撃性や、窃盗、破壊行為などの社会的規範から逸脱する行動を引き起こします。13歳未満にみられます。

③反社会性パーソナリティ障害

反社会性パーソナリティ障害は15歳以前に素行症があることが診断基準です。法を破って何度も逮捕されたり、良心の呵責の欠如、計画性のなさなどが特徴です。

 

男女比

男児は女児の3~4倍程度ADHDになりやすいと言われています。その理由としては、染色体にあるという説があります。男性はXY、女性はXXですが、女性はXXで片方がうまく機能しなくても、もう一方で補うことができるとされています。しかし、現時点では明確には立証されていません。

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②ADHDの原因

ADHDの原因には様々な要因が考えられています。

①遺伝的要因

遺伝的な脆弱性から発症しやすい要因が考えられます。遺伝率は研究により幅がありますが、70~90%と考えられています。ただし、ADHDを発症する遺伝子が特定されているわけではなく、様々な遺伝的な要因が関与して発症すると考えられています。

②周産期要因

周産期の母体への影響から発症する可能性が考えられています。例えば、妊娠中の母親のストレスや、喫煙、飲酒などの影響が考えられています。ただし、周産期の過ごし方が健康でもADHDを発症することも多く、母親はいたずらに自責をしないことも大事です。

③心理社会的要因

基本的にADHDは先天的な要因が大きいと考えられていますが、養育環境の影響も少なからず影響することも指摘されています。例えば、虐待や過度なストレスなど悪影響を及ぼす養育環境であるとADHDを発症しやすかったり、症状を悪化させることが指摘されています。

 

③心理療法

ADHDは遺伝の影響が強いため、治療というよりも、うまく付き合っていくことが大事になります。当コラムでは、臨床心理学や精神保健福祉の観点から、よく使う対策を紹介します。

①心理教育
②認知行動療法
③マインドフルネス療法
④SST
⑤アンガーマネジメント
⑥環境調整
⑦長所として活かす

 

①心理教育

ADHDにおいて、自己理解を深めることは何より大事です。障害の特性を理解すると、混乱することが減る、人間関係の失敗が減る、自分を受け入れるきっかけになる、という効果があります。専門家の説明を受ける、書籍を読む、ADHDの当事者の動画を見るなどが必要になります。

②認知行動療法

認知行動療法は、考え方を現実的にする、健康的な行動を取れるようにする心理療法です。様々な技法の集合体で、ADHDの方にも効果があります。

例えば、ADHDの方は、整理整頓が苦手な方が多いですが、自己報酬を作ることで、整理整頓のモチベーションを持続させることができます。具体的には片付けが終わったら、お菓子を食べる、というような報酬を作ると、気が散った際に元に戻りやすくなるのです。

認知行動療法については以下のコラムで解説しています。総合的なコラムとなりますので、お時間がある時にじっくりご一読ください。

認知行動療法のやり方

 

③マインドフルネス療法

マインドフルネス療法は、自分の感情や考え方を客観的に把握することで、冷静さを持続させる心理療法です。近年、ADHDの方への応用が進み、効果があることが分かってきています。

ADHDの方は、気がつくと、感情的に行動してしまう特徴があります。この点、マインドフルネスで感情的になっている自分に気がつく力をつけると、衝動的な行動を減らすことができるのです。ADHDの方に対する筆者の臨床経験でも、マインドフルネスは効果が高いと感じています。

興味がある方は以下のコラムを参照ください。

マインドフルネス療法のやり方

 

④SSTで社会性を身につける

SSTはソーシャルスキルトレーニングの略で、社会性を身に着ける様々なトレーニングの総称です。ADHDの方でも、SSTを学ぶと随分会話が楽になります。例えば、ADHDの方の中には、人の話を聴く際に、質問が多くなる方がいます。この時、「オウム返し法」という技術を学び、いったん相手の話を受け止める訓練をすると、会話のテンポをゆったりさせることができます。SSTは弊社で学生向け、成人向けの講座がありますので参考にしてみてください。

学生向けSST講座
大人向けSST講座

 

⑤アンガーマネジメント

アンガーマネジメントは怒ったりイライラしたりした時に、気持ちを落ち着けることを意味します。怒りは、自分や他人の人生に深刻な悪影響を及ぼします。アンガーマネジメントでは、深呼吸のやり方や、怒りにくい考え方を育てる訓練をします。ADHDの方でカッとなりやすい…と感じる方は以下のコラムを参照ください。

アンガーマネジメントコラム

 

⑥環境調整

ADHDの方は集中力の持続が難しい傾向があります。そのため、症状に応じた環境調整が大事です。例えば、

・つくえの上には最低限の物しか置かない
・スマートフォンの電源を切る
・やることをリストを作る

などがあげられます。中島ら(2019)の研究では、スケジュール帳を使って、時間管理スキルを習得するプログラムを展開しています。この研究では、調査期間が終了した後も、時間管理にスケジュール帳を用いて生活をしていると報告されています。

 

⑦長所として活かす

ADHDの方は特に思春期に深く思い悩みます。最初はご自身の障害を嘆き、ショックを受ける方が大半です。しかし、障害の特性を理解し、長所もあることがわかると、活発に活動される時期がきます。

ADHDのHは「Hyperactivity」です。すごく活発!と考えれば、行動のエネルギーに変えることができます。事実ADHDを持ちながらも、経営者として活躍している人、芸術家として活動している方はたくさんいます。

そうした障害の特性をうまく活かす視点も大事にしましょう。

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④精神保健福祉制度

ADHDについては様々な使える制度や支援機関があります。サポート体制を充実させるためにも参考にしてみてください。

発達障害者支援センター
発達障害者支援センターは、発達障害児(者)への支援を総合的に行うことを目的とした専門的機関です。発達障害児(者)とその家族が豊かな地域生活を送れるように、総合的な支援ネットワークを構築しています。相談も無料で行ってくれるので是非訪ねてみてください。

精神障害者保健福祉手帳の手引き
各種割引が受けられる手帳です。医療費が安くなる、交通機関を安く利用できる、などのメリットがあります。ADHDの診断を受けた方は取得することをおすすめします。

相談支援事業
相談支援事業は生活全般についてのあらゆる相談に乗ってくれる支援事業です。専門の支援員がついてくれるので物理的にも精神的にも大きな心の支えになってくれます。是非利用してみてください。

障害者就労支援
ADHDの方は大きくわけて、一般就労をされる方と、障害者向けの就労支援を利用される方がいます。一般就労で活躍している方もたくさんいらっしゃる一方で、理解をされず苦しむ方もいらっしゃいます。障害者就労支援制度では、症状を理解する支援員のもと、健康的に仕事を続けることができます。

 

⑤薬物療法

ADHDには薬物療法も適応されます。代表的な治療薬としては、3つあります。

メチルフェニデート除放剤

覚醒作用のある治療薬になります。そのため、朝に服薬することになっています。依存性の高い薬のため、精神科専門医の処方が必要になります。

アトモキセチン

ノルアドレナリン再取り込み阻害薬と呼ばれるものです。ノルアドレナリンを増やすことで、集中力や注意力を高める効果があります。

グアンファシン

α2アドレナリン受容体刺激薬と呼ばれるものです。ノルアドレナリンの受容体を刺激して、神経伝達を促進します。それにより、集中力や注意力を高める効果があります。

この3つの治療薬に関しては、保険適用の対象になっています。

 

⑥心理師として感じていること

ADHDは、私が仕事をはじめた当初はそこまで有名ではありませんでした。ADHDという障害の存在をしらず、苦しんでいるかたがたくさんいました。そのため診断を受けられず、そのまま成人になってしまい、苦しんでいる方と接してきました。

大人になってから、ADHDの診断を受けられた方は、今まで苦労してきたことの原因がわかりほっとされる方が多いように感じています。そして障害の特性を理解し、むしろ前向きに活かして、活動される方もいます。

私はADHDの方が、悩みを乗り越え、前向きに活動する意志を固めた瞬間がすごく好きです。今ADHDでお悩みの方も、きっとポジティブに行動する瞬間が来るはずです。心から応援しています。

 

コミュニケ‐ション講座のお知らせ

公認心理師,精神保健福祉士など専門家の元で、心理学のトレーニングをしてみたい方は、私たちが開催している講座をオススメしています。講座では

・心理療法の基礎
・認知行動療法の学習
・マインドフルネス療法の学習
・ソーシャルスキルトレーニング

など練習していきます。筆者も講師をしています♪皆様のご来場をお待ちしています。↓興味がある方は下記のお知らせをクリックして頂けると幸いです↓

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引用文献

柴田真緒,高橋智(2020) 発達障害を有する子ども・若者の睡眠困難に関する研究動向:海外動向を中心に 東京学芸大学紀要 総合教育科学系71,193-205

中島美鈴,稲田尚子ら(2019) 成人注意欠如・多動症の時間管理に焦点を当てた集団認知行動療法の効果の予備的検討 発達心理研究第30巻,第1号,23-33

監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 元専修大学人間科学部教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連