アスペルガー障害の特徴,症状

皆さんこんにちは。心理学講座を開催している、公認心理師の川島達史です。今回のテーマは「アスペルガー障害」です。当コラムではアスペルガー障害を基礎から一通り解説していきます。目次は以下の通りです。

①アスペルガー障害とは
②アスペルガー障害の症状
③心理療法
④精神保健福祉制度

当サイトの特色は、臨床心理学、精神保健福祉の視点から心の病気を解説している点にあります。心の病気の解説サイトは多いですが、精神科医の先生が監修されていることが多く、心理師の専門サイトは多くはありません。

お薬以外での改善策を詳しく知りたい方に特にお役に立てると思います。ご自身の状況にあてはまりそうなものがありましたら是非ご活用ください。

 

①アスペルガー障害とは

アスペルガー障害とは

アスペルガー障害とは、以下のような定義がされています。

自閉症と同様の症状がみられるが、言葉の遅れや知的障害がないもの

アスペルガー障害は知的な機能が保たれるため、”知的障害のない自閉症”とも呼ばれています。現在は、アスペルガー障害としての診断名はありません。以前の診断基準ではアスペルガー障害として診断名がありましたが、DSM-5からは「自閉症スペクトラム障害」として診断が下されます。

 

歴史

アスペルガー障害は1944年にオーストリアの小児科医、H.Aspergerによって報告されました。彼は自閉症児の中でも、特殊な才能を持つ子供に注目しました。

例えば、天文学者になった自閉症児の症例があります。この症例の自閉症児は、天文学に興味があり子供の頃にニュートンの誤りに気付いていました。そして、大人になって天文学者となり、この誤りを証明したのです。H.Aspergerはこのような症例を取り上げ、自閉症児の中には特異な才能を持っていることを主張したのです。

ハンス・アスペルガー(画像:wikipediaより)

その後、1994年に診断基準であるDSM-4で、アスペルガー障害が診断基準として採用されました。しかし、2013年のDSM-5ではアスペルガー障害としての診断名は削除され、現在は自閉症スペクトラム障害として統一されています。

 

自閉症との違い

自閉症とは類似する症状がありますが、いくつか違う点もあります。例えば、自閉症児では知能や言葉の遅れがありますが、アスペルガー障害にはありません。また、アスペルガー障害では年齢相応の自己管理能力も保たれています。

自閉症とアスペルガー障害の違いを以下の表にまとめてあります。

 

②アスペルガー障害と症状

アスペルガー障害の症状には以下の特徴があります。

空気が読めない

相手の気持ちを考えて話すことが苦手です。そのため、自分が思ったことをそのまま言ってしまい、知らずのうちに相手を傷つけてしまうことがあります。これは、心の理論が獲得されてないからだとしています。心の理論とは、他者の感情や思考を理解する力のことを言います。通常であれば、4歳頃には獲得していきますが、アスペルガー障害ではこの発達が遅れているとしています。

 

冗談を理解できない

冗談をそのまま受け入れて怒ったり、冗談の言葉通りに動いてしまいます。冗談を冗談として理解することが難しいです。これは、アスペルガー障害の人は、語用論による理解が難しいからだとしています。語用論とは、会話の背景にある状況などを考慮して理解することです。状況を考慮せず言葉の額面通りに捉えてしまうため、冗談を理解できないと考えられます。

心の理論,シンパシー

曖昧なものが苦手

決まりきっていない曖昧なものが苦手です。例えば、マニュアル化されていない仕事などが挙げられます。具体的に明文化されていないと、どのように動いたらよいかがわからないことが多いです。ある程度パターンが決まっていて、結果がわかりやすい仕事に向いています。

また、周りに合わせて何となく動くことや、具体的な指示なしに動くことが苦手です。そのため、仕事では指示を曖昧にせず、具体的な方法で示された方が力を発揮しやすいです。

 

③心理療法,作業療法

アスペルガー障害の治療は、自閉症スペクトラム障害に準じたものになります。当コラムでは、臨床心理学や精神保健福祉の観点から、よく使う対策を紹介します。

①SST
②応用行動分析
③作業療法
④環境調整
⑤長所を活かす

①SSTで社会性を身につける

アスペルガー障害の人は、学校や職場でも対人関係でつまづきやすいです。そのため、SSTでのトレーニングはとても有益です。SSTはソーシャルスキルトレーニングの略で、社会性を身に着ける様々なトレーニングの総称です。アスペルガー障害でも、SSTを学ぶと随分会話が楽になります。

例えば、「言い換えのオウム返し」という技術を学ぶと、共感性が薄くても、それなりに理解しているような会話になるため、円滑な人間関係に役立ちます。SSTは弊社で講座がありますので参考にしてみてください。

SST講座

 

②応用行動分析

アスペルガー障害には、応用行動分析という心理療法が使われることが多いです。応用行動分析では、褒める、シールを与える、お菓子をあげるなど、なんらかの報酬をあたえることで、適切な行動を促すものです。

例えば、学校でじっとできない生徒に対して、静かに座ることができたら、シールをあげるなどの方法で、適切な行動をうながします。詳しくは以下の折り畳みで解説をしました。参考にしてみてください。

大友(2015)は、トークンエコノミーという応用行動分析に基づく手法を用いて、自閉症児の行動の変化を調査しました。その結果、7か月の間で以下の3つの行動が減少したとしています。

 

 

③作業療法

自閉スペクトラム症の特徴として、運動の不器用さや、感覚刺激に敏感・鈍感であることがあります。そうした、運動や感覚へのアプローチとして、作業療法が用いられます。特に遊びを用いるなかで、運動や感覚の力を養っていきます。例えば、

・トランポリンを用いてバランス感覚を養う
・ボールプールの中で触覚刺激を与える

など、特に感覚は視覚や聴覚だけでなく、触覚、バランス感覚、空間知覚などの感覚刺激を促すものが使われます。

④環境調整

アスペルガー障害の人は臨機応変な対応が難しかったり、こだわりが強かったりします。そのため、症状に応じた環境調整が大事です。例えば、

・あらかじめ仕事の計画を伝えておく
・曖昧な指示ではなく具体的に指示をする
・会話で孤立しないようにする

などがあげられます。特にコミュニケーションでその場の空気をつかむことが苦手です。対象者が会話の中で置いていかれないように、フォローしてあげることも大事です。

⑤長所を活かす

アスペルガー障害の人は、知的な能力は高かったり、身の回りの自己管理の能力には遅れがないことが多いです。そのため、対象者の方の長所をうまく引き出すことが大事になってきます。

また、興味の幅は狭いですが、特定の分野に対しては執着するほど関心が高かったりします。どんなことに興味があり、その興味を生活や仕事に活かせるように支援者の人も関わて行くことが大事です。

ASD,心理療法,knot改様作成

 

④精神保健福祉制度

アスペルガー障害を含む、自閉症スペクトラム障害ついては様々な使える制度や支援機関があります。サポート体制を充実させるためにも参考にしてみてください。

発達障害者支援センター
発達障害者支援センターは、発達障害児(者)への支援を総合的に行うことを目的とした専門的機関です。発達障害児(者)とその家族が豊かな地域生活を送れるように、総合的な支援ネットワークを構築しています。相談も無料で行ってくれるので是非訪ねてみてください。

精神障害者保健福祉手帳の手引き
各種割引が受けられる手帳です。医療費が安くなる、交通機関を安く利用できる、などのメリットがあります。自閉症スペクトラム障害の診断を受けた方は取得することをおすすめします。

相談支援事業
相談支援事業は生活全般についてのあらゆる相談に乗ってくれる支援事業です。専門の支援員がついてくれるので物理的にも精神的にも大きな心の支えになってくれます。是非利用してみてください。

障害者就労支援
自閉症スペクトラム障害の方は大きくわけて、一般就労をされる方と、障害者向けの就労支援を利用される方がいます。一般就労で活躍している方もたくさんいらっしゃる一方で、理解をされず苦しむ方もいらっしゃいます。障害者就労支援制度では、症状を理解する支援員のもと、健康的に仕事を続けることができます。

 

コミュニケーション講座のお知らせ

公認心理師,精神保健福祉士など専門家の元で、心理療法や健康的な人間関係の築き方を学んでみたい方は、私たちが開催している講座をオススメしています。講座では

・ソーシャルスキルトレーニング
・アサーティブコミュニケーション
・柔らかい断り方の練習
・人間関係の心理学の学習

など練習していきます。筆者も講師をしています♪皆様のご来場をお待ちしています。↓興味がある方は下記のお知らせをクリックして頂けると幸いです↓

コミュニケーション講座,心理療法の学習

 

*出典・引用文献

高橋三郎,大野裕(2014)DSM-5精神疾患の分類と診断の手引き 医学書院

 

監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


YouTube→
Twitter→
元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 元専修大学人間科学部教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連