認知療法のやり方をわかりやすく解説カウンセリング,効果
認知行動療法入門は、4つのシリーズで紹介しています。
認知行動療法の基礎①全体像
認知行動療法の基礎②認知療法
認知行動療法の基礎③行動療法
認知行動療法の基礎④ マインドフルネス療法
今回は「②認知療法」についてお話します。
- 全体の目次
- 認知療法とは何?
- 基本モデル
- 思考の緩め方・練習
- 論理療法と反証
- 認知療法とスキーマー
はじめに
私たちの悩みの根本は、私たちの身に起きた出来事ではありません。解釈が、苦しみを生み出しているのです。
これは認知療法の提唱者であるアーロン・ベックの言葉です。
出典:wikipedia
私たちは日々、日常の出来事について同じ反応をするわけではありません。例えば、最近ですとコロナウイルスの問題がありました。
この問題について
「警戒すぎて、コロナうつになる人」
「楽観的で、普段と変わらない人」
それぞれ違います。私たちは同じ出来事でも、落ち込む人もいれば、むしろやる気を出す人もいます。なぜこのような現象が起こるのでしょうか?
認知療法を学び、そのなぞ解きをしていきましょう。
認知療法の基本モデル
基本モデル
認知療法の基本モデルは、以下の通りです。
たとえば、職場の残業時間が減った場合で考えてみましょう。残業が減った(出来事)に対して、
給料が少なくなる(思考)
と考えれば、ネガティブな感情になるでしょう。
一方で
副業にチャレンジする時間が増える!もっと稼げるかも!(思考)
と考えたらどうでしょうか。やる気という感情が出てきそうです。
つまり私たちの感情は、出来事が引き起こしているのではなく、思考が感情を作っていると認知療法では考えていきます。
認知療法の方向性
心理学の研究では、不安が強い、抑うつが強い、落ち込みやすい方は
・思考,認知が歪んでる
・考え方の引き出しが少ない
・ネガティブな視点が多い
ことが分かっています。そのため認知療法ではざっくりと
①認知の歪みの発見
②考え方を増やす
という2つの段階で、メンタルヘルスの安定を目指していくことになります。正式にはもう少し手順があるのですがまずはシンプルに練習していきましょう。
認知の歪み10種類
まずは認知の歪みを発見について考えていきましょう。先程挙げた認知の歪みはアーロン・ベックが提唱し、その後、バーンズという学者がいくつかのパターンに分類していきました。
基礎編では代表的な認知の歪みを抑えていきましょう。それぞれ動画もついていますので理解を深めていきましょう
白黒思考とは以下の意味があります。
物事を白か黒かで判断する考え方
たとえば、少しでもミスをしたらすべてダメになる。このように極端に考えるのが白黒思考の捉え方です。より深く知りたい方は下記の動画を参照ください。
過度の一般化とは、以下の意味があります。
わずかな事実を挙げて、それが一般的な法則であるかのように結論づける考え方
たとえば、彼は2回もミスをした。今度も必ずミスをするにちがいない。「いつも」「全部」「絶対にそうだ」など、断定的に考えるのが過度の一般化です。より深く知りたい方は下記の動画を参照ください。
選択的知覚とは、以下の意味があります。
一つの情報を集め続け、感情を膨らませてしまう状態
たとえば、嫌われていると思ったことで嫌われた情報をどんどん集めてしまいます。偏った情報ばかりを収集することで、ネガティブな感情を膨らませてしまいます。より深く知りたい方は下記の動画を参照ください。
マイナス化思考とは、以下の意味があります。
自分や他人の「行動」「発言」「魅力」の価値を下げる思考
たとえば、テストで100点をとっても、今回はたまたま運がよかっただけ…と考え素直に喜べません。
なんでもマイナスに考えるため、人間関係でトラブルが起きたり、メンタルヘルスが不安になってしまいます。より深く知りたい方は下記の動画を参照ください。
心の読みすぎ癖とは、以下の意味があります。
人の心を読みすぎる。相手が言ったわけでもないに、気持ちを推測してしまう考え方
たとえば、みんなが私のことをバカだとおもっているにちがいない。このように相手の考えを推測して決めつけてしまう考え方になります。より深く知りたい方は下記の動画を参照ください。
拡大解釈・過小評価とは、以下の意味があります。
失敗や短所などを実際よりもとても大きく受け止め、成功や長所は実際よりもとても小さく考えること
たとえば、あの上司に嫌われたら会社では生きていけない。このように、失敗だけ拡大解釈して、自分の成功は小さく見積もる考え方のことです。より深く知りたい方は下記の動画を参照ください。
感情的決めつけとは、以下の意味があります。
自分の感情の一部分にとらわれてネガティブに考えること
たとえば、発表前に緊張を感じたら、「こんなに緊張しているんだから、失敗するに違いない!」などと考えます。より深く知りたい方は下記の動画を参照ください。
べき思考とは、以下の意味があります。
物事を「〜すべきである」「〜しなければならない」と考えること
たとえば、男性はたくましく女性はおしとやかであるべきだ。周囲の事情や例外は認めず、他人にも自分にも求めるので窮屈な人間関係になります。より深く知りたい方は下記の動画を参照ください。
レッテル貼りとは、以下の意味があります。
ある出来事や失敗からネガティブなレッテルを貼ること
たとえば、彼は2回もミスをした。何を頼んでもできないダメ人間だ。このように相手にネガティブなレッテルを貼る考え方です。より深く知りたい方は下記の動画を参照ください。
自己関連付けとは、以下の意味があります。
物事をすべて自分が関係している、自分のせいではないかと考えること
たとえば、飲み会の席が盛り上がらないのはすべて自分のせいだと感じる。このようになんでも自分の責任だ…と考えてしまうことを指します。より深く知りたい方は下記の動画を参照ください。
考え方を増やそう
認知の複雑性とは
次に、「②考え方を増やす」を練習していきましょう!ここで冒頭の例をもう一度あげさせて頂きます。
給料が少なくなる…と考えると確かに落ち込みますよね。これは認知の歪みとしては「選択的知覚」「悲観的シナリオ癖」にあたるでしょう。
しかし、ある出来事に対しては、1つの見方ではなく、様々な見方ができます。ざっとですが下記のようなものが挙げられます。
このように、1つの出来事に対して複数の考え方を持つことを認知の複雑性といいます。
思考のレパートリー
では、複雑性を増やす方法は、どうしたらいいでしょうか。カウンセリング中でよく使う手法をいくつか紹介させて頂きます。
①現実的?
「その考え現実的?」
悩んでいるときは、悩んでいるときは現実的な思考に至らないケースが多いです。わずかな確率のことを100%と言ってしまうこともあります。
その考えは「現実的?確率はどれくらい?」と投げかけ、現実的な確率の考えを出していきます。
②他人なら?
「他人ならどう考えるかな?」
自分はこう思うけど、いつも明るい太郎さんならどう考えるかな?など、イメージできる人がどんな風に考えるかを考えて案を出していきます。
③なし→ある思考
「できたところはどこかな?」
悩んでいるときは、「ない」という発想で物事をとらえがちです。できていない部分ではなく、できたところ「ある」に注目して考えを増やしていきます。
④最悪よりまし!
「最悪の時よりはマシ?」
目の前の良くない状態は、広い目でみれば最悪の状態ではないかも。今の状態を、最悪の時よりはマシと考えてポジティブな考えを出していきます。
⑤痛みが分かる
「この経験が成長に!」
人生ではいろいろな経験をします。辛く悲しい経験が、心の成長になることも…。辛い経験をしたからこそ、人の心の痛みが分かると前向きにとらえるといいでしょう。
⑥チャンス
「このピンチはチャンス!」
上手くいかない状態は、成功につながるチャンスと考えることもできます。ピンチをチャンスを考えていきます。
⑦人生経験にプラス
「これは人生の経験だ!」
いろいろなことを体験していくなかで人生が豊かになるという考えのもと、プラス視点で考えを増やしていきます。
⑧ユーモアに
「これネタになるかも!」
目の前の不安も、笑いに変えることで、気持ちが楽になるものです。今度友だちと話す時に使えるかも…そんな気持ちでとらえてみるといい考えが思いつくものです。
⑨達観
「なんとかなるだろう!」
波乱万丈が面白い!そんな気持ちでとらえてみるといいでしょう。目の前の細かい悩みにこだわらず、少し先を見て考えてみると楽しく考えられるものです。
練習してみよう
ここからは事例を使いながら練習していきます。以下を参考に思考のレパートリーを増やす練習をしてみてください。
<事例>
・会社員の花子さん
・「~べき」などの思考をしがち
・3日後に会社でプレゼン
・プレゼン会場には50名が集まる
・社長や部署も参加する
認知の偏りが強い花子さんは「失敗したら社長からの評価が下がる」という思考から、緊張が高まりプレゼンに対してネガティブ思考でいっぱいになってしまいました。
花子さんの状況に、考え方を増やしていきましょう。先ほどご紹介した、認知の複雑性のコツを参考に、5つくらいを目標に考えていきましょう。
①現実的?確率計算する
②他人なら?
③なし→ある思考
④最悪よりまし!
⑤痛みが分かる
⑥成功はチャンス
⑦人生経験にプラス
⑧ユーモアに
⑨達観
解答例
<事例>
・大学生の太郎くん
・認知の偏りが強い
・就活が上手く進まない
・面接が苦手
・明日は第一希望の会社の面接認知の偏りが強い太郎くんは「どうせ自分はいつもうまくいかない」という思考から、面接に対してネガティブ思考でいっぱいになってしまいました。
太郎くんの状況に、考え方を増やしていきましょう。認知の複雑性のコツを参考に、5つくらいを目標に考えてみましょう。
①現実的?確率計算する
②他人なら?
③なし→ある思考
④最悪よりまし!
⑤痛みが分かる
⑥成功はチャンス
⑦人生経験にプラス
⑧ユーモアに
⑨達観
解答例
認知療法発展とお知らせ
ここから先は認知療法をより深く理解したい方向けの内容です。さまざまな研究や知識をお伝えします。
仕上げの動画
認知療法について動画でも解説しました。仕上げとして動画も見ておくと理解が深まると思います。
コラム法
今回を紹介したやり方は簡便な方法です。正式な手順を知りたい方は以下のコラム法という手法を是非学習してみてください。認知療法を本格的に練習したい方におススメです。
認知療法の効果研究
効果については様々な研究があります。詳しい研究は下記を参照ください。
竹田ら(2015)は、対人援助者220名を対象に、うつ病に対する認知療法の効果を調査しました。以下の図をご覧ください。
認知の偏りが高い群、低い群共に不安感が減少していることがわかります。認知療法は思考の偏りをほぐし、不安を和らげる効果があるのです。
Rileyら(2007)は、
完全主義の度合いは、
以下の図は、
治療前:48.85点
治療後:26.25点
認知療法を行った前後で、完全主義傾向の得点が下がっているのが分かりますね。
対象となった20名のうち15名に臨床的完全主義の改善もみられ
認知の複雑性は、メンタルヘルスにプラスの働きをすることが分かっています。
佐藤(1999)は、専門学生・大学生150名を対象に、調査を行いました。その結果、認知の複雑性をもつ人は抑鬱になりにくいことが分かりました。
以下の図をご覧ください。肯定的自己複雑性は、自分のことを肯定的に見れるボリュームのことです。落ち込みにくい人のほうが多いことが分かります。
4つの心理療法を抑えよう
認知行動療法入門は、4つのシリーズで紹介しています。
認知行動療法の基礎①全体像
認知行動療法の基礎②認知療法
認知行動療法の基礎③行動療法
認知行動療法の基礎④ マインドフルネス療法
まだ読んでいないコラムがありましたら是非、ご一読ください。
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