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認知療法の効果,やり方

認知療法の効果,やり方

みなさんこんにちは。公認心理師の川島です。私はこちらの心理学講座を開催しています。当コラムは認知行動療法の入門シリーズです。全4回で解説しています。

①認知行動療法の全体像
②認知行動療法と認知療法
③認知行動療法と行動療法
④マインドフルネス療法への展開

今回はコラム2回目の「認知療法」についてお話します。

認知療法を提唱したアーロンベック

私たちの悩みの根本は、私たちの身に起きた出来事ではありません。解釈が、苦しみを生み出しているのです。

これは認知療法の提唱者であるアーロン・ベックの言葉です。最近ですとコロナウイルスの問題がありましたが、その反応は千違万別です。

すごく警戒する人、ピリピリする人、いつも通りな人、むしろチャンスと考える人、それぞれ違います。なぜこのような現象が起こるのでしょうか?

認知療法を学ぶとこのような人間の感情の違いが理解しやすくなり、メンタルヘルスを向上させやすくなります。今回の目次は以下の通りです。

①認知療法の基本モデル
②認知の歪み10種類
③思考の緩め方・練習
④認知療法と発展知識

認知療法の学習は一生ものになります。是非最後までご一読ください。

 

①認知療法の基本モデル

基本モデル

認知療法の基本モデルは、以下の通りです。

認知療法の基本モデル

私たちは生きてると、なんらかの出来事に遭遇します。そしてその出来事に対して、考えたり、解釈をしたりします。その結果、感情が起こると仮定するのです。

例えば、以下の図をご覧ください。

認知療法認知のゆがみ,考え方の例

残業が減ったという事実に対して、給料がすくなくなる…と考えると、元気が出てきませんね。一方で以下のように考えると、どうなるでしょうか。

認知療法の考え方の例

副業にチャレンジする時間が増える!もっと稼げるかも!と考えると、やる気が出てきそうですね。このように、私たちの感情は、考え方や解釈の仕方が影響していると認知療法では想定していくのです。

認知療法の方向性

実際に認知療法の研究が進むと、不安が強い人、落ち込みやすい人は、以下の特徴があることがわかってきました。

考え方が極端になっている
非現実的な考え方になっている
ネガティブな視点が多い

認知療法ではこれらの、極端な考え方をほぐし、健康的な考え方を増やすワークをたくさん行っていくのです。

②認知の歪み10種類

考え方の偏りは、正式には、認知の歪み、思考の歪みと呼ばれます。最近では、「歪み」という言葉は使わない方がよいという専門家の見解もありますが、当コラムでは、ひとまず認知の歪みというワードで進めていきたいと思います。

認知の歪みはアーロン・ベックが提唱し、その後、バーンズという学者がいくつかのパターンに分類していきました。基礎編では代表的な認知の歪みを10通り解説しす。

以下の折り畳みには、簡単な解説と詳しい動画を掲載しました。まずは概要を読んで、あてはまるかも…と感じる部分を重点的にご視聴ください。

本格的に学習をしたい方はすべての動画をチェックすることをおすすめします。認知の歪みをかなり改善できると思います。

白黒思考とは以下の意味があります。

物事を白か黒かで判断する考え方

たとえば、「少しでもミスをしたらすべてダメになる」「学歴で仕事は決まる!」このように極端に考えるのが白黒思考の捉え方です。

白黒思考を改善するには、「曖昧な状態でもよしとする心の余裕」が必要です。より深く知りたい方は下記の動画を参照ください。

過度の一般化とは、以下の意味があります。

わずかな事実をもとに、それが一般的な法則であるかのように結論づける考え方

たとえば、「彼は2回もミスをした。今度もミスを連発するにちがいない。」このように小さな事実を元に、「いつも○○だ」「全部が△△だ」「絶対にそうだ」など、法則化するのが過度の一般化です。

過度の一般化を改善するには、充分なデータがあるか?無理やり推論していないか?と振り返る癖をつける必要があります。より深く知りたい方は下記の動画を参照ください。

選択的知覚とは、以下の意味があります。

同じ情報を集め続け、思い込みを深くしてしまう考え方

たとえば「〇〇さんは私を嫌っている!笑顔であいさつをしなかったのが証拠だ」と偏った情報を集め、確信を深めて行くのが選択的知覚です。

選択的知覚を改善するには、思い込みとは逆の事実を集めてみることが大事です。例えば、「嫌われている!」と思い込んだら、「好かれている!」と仮定して事実を集めてみるのです。

より詳しく知りたい方は下記の動画を参照ください。

マイナス化思考とは、以下の意味があります。

自分や他人の「行動」「発言」「魅力」の価値を下げる考え方

たとえば、テストで100点をとっても、「今回はたまたま運がよかっただけ…次はどうなるかわからない…」と考えるのが、マイナス化思考です。マイナス化思考が強い方は、なんでも価値を下げるため、人間関係でトラブルが起きたり、メンタルヘルスが不安になってしまいます。

改善するには、減点法ではなく加点法で考えていくことが大事です。より深く知りたい方は下記の動画を参照ください。

心の読みすぎ癖とは、以下の意味があります。

人の心を過剰に読む、気持ちを過剰に推測する考え方

たとえば、「みんな私のことをバカだとおもっている!」「今日の私は暗いと思われているに違いない!」このように相手の考えを推測し続けるのが心の読みすぎ癖です。心の読みすぎ癖は、対人不安や緊張しやすい心理に繋がりやすいので注意が必要です。

対策としては、まずは人の気持ちを考える時間を少なくします。そして空いた時間を、別の生産的なことを考えるようにするのです。より深く知りたい方は下記の動画を参照ください。

拡大解釈・過小評価とは、以下の意味があります。

失敗や短所などを実際よりも大きく受け止め、成功や長所は実際よりも小さく考えること

たとえば、「名刺の交換でマナー違反があった…とんでもないミスをしてしまった…大口の取引を結んだが運がよかっただけだ」このように失敗だけ拡大解釈して、成功は小さく見積もるのを拡大解釈・過小評価と言います。

拡大解釈・過小評価を改善するには、失敗を過剰に見積ることを止め、成功をしっかり認めていく姿勢が大事です。より深く知りたい方は下記の動画を参照ください。

感情的決めつけとは、以下の意味があります。

自分の感情が現実になる!と捉われる考え方

たとえば、緊張を感じた時に「こんなに緊張しているんだから、失敗するに違いない!」と決めつけるのが感情的決めつけです。

改善するには、感情と事実を分けて、未来の予測を合理的にしていくことが大事になります。より深く知りたい方は下記の動画を参照ください。

べき思考とは、以下の意味があります。

物事を「〜すべきである」「〜しなければならない」と強迫的に考えること

たとえば、「男性は絶対にたくましくあるべきだ」「女性はいつもおしとやかであるべきだ」このような、慣習やルールに厳格な姿勢をべき思考と言います。他人にも自分にも厳格なルールを守らせようとするため窮屈な人間関係になります。

改善をするには、言葉遣いを柔らかくしてみることです。例えば「なるべく」「できれば」などが挙げられます。より深く知りたい方は下記の動画を参照ください。

レッテル貼りとは、以下の意味があります。

失敗や挫折をした人に非現実的でネガティブなレッテルを貼ること

たとえば、「彼は2回もミスをした。何を頼んでもできないダメ人間だ。」このように相手に強引かつネガティブな推測をすることをレッテル貼りと言います。

改善をするには、レッテルと矛盾する行動に焦点をあて、カウントしてみる手法が挙げられます。例えば、「だらしない」というレッテルを張ってしまったら、何回中何回だらしないのか?数字に起こしてみるのです。実際にカウントすると意外と確率が低かったりします。

より深く知りたい方は下記の動画を参照ください。

自己関連付けとは、以下の意味があります。

物事をすべて自分が関係している、自分のせいではないかと考えること

たとえば「飲み会の席が盛り上がらないのはすべて自分のせいだ」このように、非現実的に原因や責任の所在を自分と絡めて考える姿勢を自己関連付けと言います。

改善するには、「自他の境界」をしっかりつけていくことが大事になります。詳しくは下記の動画を参照ください。

 

③考え方を増やそう

認知の複雑性とは

認知の歪みが発見できたら、仕上げとして、考え方の引き出しを増やしていくことが大事になります。ここで冒頭の例をもう一度あげさせて頂きます。

認知療法認知のゆがみ,考え方の例

給料が少なくなる…と考えると確かに落ち込みますよね。これは認知の歪みとしては「選択的知覚」「白黒思考」にあたるでしょう。

このように認知の歪みを見つけたら、様々な角度からその出来事を見直していきましょう。残業が無くなるという例で考えると、下記のようなものが挙げられます。

認知の複雑性の例

このように、1つの出来事に対して複数の考え方を持つことを認知の複雑性といいます。心理学の研究では、認知の複雑性がある人ほどメンタルヘルスが良いことが分かっています。

 

思考のレパートリー

では、認知の複雑性を増やす方法は、どうしたらいいのでしょうか。以下、認知の複雑性が増す質問を提案させていただきます。なかなか発想できない…と感じる方は参考にしてみてください。

質問① その考えは現実的?

悩んでいるときは、悪い未来をどんどん想像してしまうものです。そこで「その考えは現実的?確率はどれくらい?」と投げかけ、客観的な数字で考えて行きます。

質問② 他人ならどう考える?

いつも明るい〇〇さんならどう考えるかな?など別の人の考え方を想像してみます。いつも楽観的な人の考え方がおすすめです。思わぬ発想ができたりします。

質問③ できた(る)ことはあるかな?

悩んでいるときは「ない」という発想で物事をとらえがちです。できていない部分ではなく、できたところ、できることに注目して、前向きな考えを増やしていきます。

質問④ 最悪よりマシなのでは?

目の前の良くない状態は、広い目でみれば最悪の状態ではないことは多々あります。今の状態を、「最悪の時よりはマシかもしれない」と考えてポジティブな考えを出していきます。

質問⑤ 人の痛みが分かるかも?

人生ではいろいろな経験をします。辛く悲しい経験が、心の成長になることもあります。辛い経験をしたからこそ、人の心の痛みが分かると前向きにとらえるといいでしょう。

質問⑥ チャンスな面はあるかな?

上手くいかない状態は、成功につながるチャンスと考えることもできます。ピンチをチャンスとして考えてみます。

質問⑦ 人生経験にプラスになったかな?

苦しみも成功も体験するからこそ、人生は豊かになっていきます。失敗や挫折も人生のドラマチックな一面と考えると良いかもしれません。

質問⑧ ネタになるかな?

目の前の不安も、笑いに変えることで、気持ちが楽になるものです。友だちと話す時にネタになるかも(^^;…そんな気持ちでとらえてみるといい考えが思いつくものです。

質問⑨ 仙人ならどう考える?

たまには達観した視点で考えてみるのもありです。仙人ならどう考えるかな?と想像してみると良いでしょう。ちなみに私は、どうせこの世は幻(笑)と言って苦難と乗り越えています。

 

練習してみよう

ここからは事例を使いながら練習していきます。以下を参考に思考のレパートリーを増やす練習をしてみてください。

<事例>
会社員の花子さん
3日後に会社でプレゼン
社長や部長も参加する

「感情的決めつけ癖」がある花子さんは「今から緊張している!こんなに緊張しているのだから失敗する!」と考え、混乱しています。

認知療法の練習問題

花子さんの状況をもとに、先ほどご紹介したコツを参考に考え方を増やしてみてください。

①現実的?確率計算する
②他人なら?
③できることはあるかな
④最悪よりまし!
⑤痛みが分かるかな
⑥チャンスな面はあるかな
⑦人生経験にプラス
⑧ネタになるかな
⑨達観できるかな

 

 

解答例

認知の偏りを修正する練習

<事例>
大学生の太郎くん
就活が上手く進まない
明日は第一希望の会社の面接

「白黒思考」がある太郎くんは「この会社に落ちたら人生が終わる!」「どうせうまくいかない」と極端に考え、プレッシャーで一杯になっています。

就活生の認知の偏り

太郎さんの状況をもとに、先ほどご紹介したコツを参考に考え方を増やしてみてください。

①現実的?確率計算する
②他人なら?
③できることはあるかな
④最悪よりまし!
⑤痛みが分かるかな
⑥チャンスな面はあるかな
⑦人生経験にプラス
⑧ネタになるかな
⑨達観できるかな

 

 

解答例

認知の偏りを修正する考え方

 

認知療法-発展知識

ここから先は認知療法をより深く理解したい方向けの内容です。さまざまな研究や知識をお伝えします。

仕上げの動画

認知療法について動画でも解説しました。仕上げとして動画も見ておくと理解が深まると思います。

コラム法

今回を紹介したやり方は簡便な方法です。正式な手順を知りたい方は以下のコラム法という手法を是非学習してみてください。認知療法を本格的に練習したい方におススメです。

コラム法の基礎練習

認知療法の効果研究

認知療法については様々な効果研究があります。理解を深めたい方は以下の折り畳みを参照ください。

竹田ら(2015)は、対人援助職220名を対象に、認知の歪みと認知療法の効果について調査をしました。結果の一部が下図となります。

STAIとは不安の大きさを意味します。表から認知の歪み高群、低群、共に不安が小さくなっていることがわかります。

Rileyら(2007)は、完全主義があり日常生活支障が出ている20人を対象に、認知行動療法を行い、その効果を調査しました。その結果の一部が下図となります。

認知療法による治療前後の違い認知療法を行った後は、完全主義傾向の得点が下がっているのが分かります。具体的には、対象となった20名のうち15名に改善がみられました。

認知の複雑性は、メンタルヘルスにプラスの働きをすることが分かっています。

佐藤(1999)は、専門学生・大学生150名を対象に、認知の複雑性とメンタルヘルスについて調査を行いました。その結果の一部が下図となります。自己表現の複雑性に関する各指標の平均値と標準偏差の図

こちらの図は肯定的自己複雑性がある方は、落ち込みにくいことを意味しています。肯定的自己複雑性とは、自分のことを様々な角度から肯定的に考える姿勢を表します。自分を褒めること習慣にするとメンタルヘルスに良いと推測できます。

 

4つの心理療法を抑えよう

認知行動療法入門は、4つのシリーズで紹介しています。

認知行動療法の基礎①全体像
認知行動療法の基礎②認知療法
認知行動療法の基礎③行動療法
認知行動療法の基礎④マインドフルネス療法

まだ読んでいないコラムがありましたら是非、ご一読ください。

心理学講座のお知らせ

認知行動療法を公認心理師の元でしっかり学びたい方は、私たちが主催する講座をおすすめします。講座では

・認知療法の基礎
・思考の歪みの改善
・行動療法の学習
・マインドフルネスワーク

などを学習していきます。筆者も講師をしています。皆様のご来場を心からお待ちしています。↓興味がある方は以下の看板をクリック♪↓

竹田 伸也・太田 真貴・松尾 理沙[他]・大塚 美菜子 2015 対人援助職者に対する認知療法によるストレスマネジメントプログラムの効果 ストレス科学研究 30(0), 44-51.