>
>
アサーティブコミュニケーションの意味とは,トレーニング方法

アサーティブコミュニケーションとは?意味,トレーニング方法

みなさんこんにちは。
公認心理師の川島達史です。

当コラムのテーマは
「アサーティブコミュニケーション」
です。

アサーティブコミュニケーションは、わかりやすく実践的なので、初学者が学びやすい心理療法です。人間関係の入門書として、とてもオススメです。目次は以下の通りです。

コラム1 アサーティブの基礎
コラム2 段階的主張‐DESC法
コラム3 感謝とセットで断る法
コラム4 価値観ワーク,学校や職場編
コラム5 断り方ワーク,こども編
コラム6 断り方ワーク,大人編

しっかり記述したので長くなってしまいました。1日1コラムぐらいのペースでじっくり読み進めてみてください。

 

 

アサーティブの歴史,意味,哲学

まずは、アサーティブコミュニケーションの歴史と意味から確認していきましょう。

精神疾患と抑圧

アサーティブはアメリカが発祥の地です。1949年に出版されたSalterの「条件反射療法」が原著といわれています。

アサーティブ,歴史

当時のアメリカでは、精神的に問題のある患者は抑圧され、意見を表に出しにくい環境にいました。

Salterはこのような状況から、患者が人間的回復をするためには、主体的にアサーティブ(主張)することが必要だと主張したのです。

アサーティブコミュニケーション,歴史,精神疾患

主張訓練が始まる

1950年代に入ると、精神科医のWolpe(1958)が、アサーティブが不安抑制に有効であることを主張しました。

その後、対人関係がうまくいかない人や自己表現が苦手な人のための、訓練法としてアサーティブが活用され始めます。

アサーティブは、その後20年ほど精神医学の世界で、行動療法や対人関係療法の一部として発展することとなりました。

一方であくまで一部の医療機関やカウンセリングルームで実施される手法であり、メジャーな心理療法とは言えない状況でした。

パーフェクトライトの出版

アサーティブが爆発的に広がったのは1970年代に入ってからです。

そのころアメリカで
・題名 Your Perfect Right(あなたの完全な権利)
・著者 ロバートアルベティ マイケルエモンズ

ユアーパーフェクトライト

 という本がベストセラーになりました。

この本を契機として、アサーティブが人種差別、性差別、社会的に抑圧される人の人権を守る方法として広がりました。

また教育や福祉、産業などの分野にも広がり、現在では社会的スキルのひとつとして位置づけられています。

日本での広がり

1990年代になると、心理療法家の平木典子先生がアサーティブを紹介しました。その後、様々な分野で活用されています。

・身近な人間関係のトラブル予防

親子関係や友人関係、夫婦や恋人、近所づき付き合いなど、日常生活のトラブルの改善や予防として活用されています。市民講座などで、頻繁に開催されています。

・セクハラ,パワハラへの対処

企業研修では積極的にアサーショントレーニングが取り入れられています。セクハラやパワハラへの対処、職場うつの予防、高圧的な上司の態度の抑制など、職場でのよりよい人間関係をつくることに活用できます。

・いじめの防止

アサーショントレーニングはいじめの防止にも有効です。特に学校現場では特別授業で取り入れられることが多く、研究論文もたくさん出されています。

心理療法家の平木(1993)はアサーティブを以下のように定義しています。

自分も相手も大切にした自己表現

自己主張を過剰に抑えるのでもなく、かといって自己中心的に生きるのでもなく、その双方のバランスのとれた自己表現がアサーティブコミュニケーションが目指すところなのです。

 

アサーションは日常のコミュニケーションに役立つ

アサ-ティブコミュニケーションは、5つの哲学を土台にしています。これは人間関係における憲法のようなものです。入門として是非抑えておきましょう。

①尊重され、大切にされる権利

あなたの気持ちや考え方は大事にされる権利があります。意見を伝え、感情を出し、それを大事に受け止めてもらうことができるのです。

②自分で決定し責任をもつ

意見を伝える上では、自分で考え、発言に責任を持つことも大事です。自分の意見を他人のせいにしたり、責任転嫁をしないようにします。

③過ちをおかす権利がある

アサーティブコミュニケーションにおいては、失敗に寛容であることも大事にされます。なぜなら自分で決定して意見を表明したとしても完璧に行くものではないからです。

過ちをおかす権利を大事にし、お互いの主張が出やすい空気を大事にします。

④不平等さを訴える権利

不平等があった時に、これを訴える権利が大事にされます。

たとえば、同じ給料にも拘わらず、必死に働く従業員がいる一方で、楽をしている従業員がいたとします。この時、職場の処遇を改善する権利があると考えます。

⑤あえて主張しない自由もある

自分の身に危険が及ぶ状況では、主張しない権利も尊重されます。自分の身を守る必要があれば、主張しない自由もあることを把握しておきましょう。無理に主張しなくていい権利

 

3つの自己表現

アサーションの提唱者である心理学者ウォルピィ(Wolpe,J.)は、人間関係における自己表現には3つのタイプがあるとしています。

① 攻撃的タイプ
② 非主張的タイプ
③ アサーティブなタイプ

アサーティブコミュニケーションの基本となる分類なので是非抑えていきましょう。

①攻撃的タイプ(アグレッシブ)

・攻撃タイプの特徴
自分を最優先に考え、他人の意見を軽視するのが攻撃的タイプです。

攻撃タイプの人は、「言い負かす」「命令する」「大声で怒鳴る」などの自己表現をします。また勝ち負けで物事を決めたり 相手より優位に立とうとしたり、巧妙に相手を操作しようとすることもあります。

・どんな人がなりやすい?
 *権力や権威のある人
 *知識や経験が豊富な人
 *自尊心が低く防衛的
 *自己愛が強すぎる
 *共感性が低い

アサーション3つのタイプアグレッシブ

②非主張的タイプ(ノン・アサーティブ)

・非主張タイプの特徴
感情表現を抑制する、意見を言わない、相手を優先することが習慣になっているのが非主張的タイプです。

非主張的タイプの人は「嫌われてしまうのでは…」「揉め事がおきるのでは…」「孤立してはいけない…」という不安が大きく、自分の意見を主張することを避けます。

・どんな人がなりやすい?
 *自己肯定感が不足している
 *見捨てられ不安がある
 *自己効力感が不足している
 *家庭環境で厳しくしつけられた

アサーション3つのタイプノンアサーティブ

③アサーティブなタイプ
(攻撃的・非主張定な黄金律)

・アサーティブタイプの特徴
自分の気持ちをその場にふさわしい方法で表現し、相手が自分と同じように、意見をすることも大事にするのがアサーティブなタイプです。

このタイプの人は、相手と意見がぶつかったときには、互いに意見を出し合い、譲ったり譲られたりしながら双方が納得のいく結論を出そうとします。

3つの自己表現の中では一番理想的なタイプとされています。

・どんな人がなりやすい?
 *自己肯定感,他者肯定感が育っている
 *幼少期に安定した愛着形成
 *基本的信頼感が高い
 *ソーシャルスキルが高い

3つのタイプとストレス状況

関口ら(2011)は学生180名(男性75名・女性105名)を対象に、アサーションとストレス反応について調査を行いました。その結果の一部が下図となります。

3つの自己表現と対人ストレスの割合

攻撃的タイプの人
いずれの対人ストレスについて、ストレス反応が高い傾向が分かります。

非主張的タイプ
アサ―ティブタイプの人と比べてストレスを感じやすく、対人劣等を高く感じる傾向にあることが分かりますね。

アサーティブなタイプ
いずれの対人ストレスについて、ストレス反応が少ない傾向が示されています。

つまり、自分の意見を率直に主張でき同時に自分の意見も需要できる人(=アサ―ティブタイプ)は、対人関係においてトラブルが生じにくく、良好な人間関係を築くことができるといえます。

アサーティブなタイプ

3つのタイプ診断,チェック

皆さんは3つの自己表現についてどんなタイプでしょうか?気になる方は、以下をチェックしてみましょう。

次の質問について
当てはまる場合→○
当てはまらない場合→×
で答えてください。A・B・Cどの項目に〇が多かったかで診断していきます。

A項目
①相手の長所よりも短所が気になる(○・×)
②否定されるとイライラする(○・×)
③思い通りにならないと言葉が荒くなる(○・×)
④他人のミスに厳しい(○・×)
⑤人の話を聞かない(○・×)

B項目 
① 引っ込み思案である(○・×)
② 自分に自信がなく、ダメ出しが多い(○・×)
③ いつも相手の意見に合わせて行動する(○・×)
④ 相手に認められるために意見を変える(○・×)
⑤ 相手に反論されると言い返せなくなる(○・×)

C項目 
① 正直な気持ちを打ち明け相談する(○・×)
② 相互理解をしようと努力する(○・×)
③ 自分の意見を主張できる(○・×)
④ 意見の食い違いは話し合いで解決する(○・×)
⑤ 避難されても、自分を卑下せず、
 相手の意見も尊重できる(○・×)

さて解答がそろいましたか。A・B・Cの項目で、〇が多かった項目はどれでしたか?結果は以下の2段階で把握しましょう。

①傾向を見る

まずは傾向を見てみましょう。

0~1個・・・傾向は薄い
2~3個・・・傾向ややあり
4~5個・・・傾向がかなり強い

②タイプを見る

次に最も多い項目を見てみましょう。

A項目の○が多かった人
A項目が多かった人は、攻撃的タイプの可能性が高いです。自分の気持ちを優先させるあまり、自分勝手な行動になっていませんか。自己主張が強く、相手の気持ちや考えを軽視しがちかもしれません。

B項目の○が多かった人
B項目が多かった人は、非主張的タイプの可能性が高いです。日ごろから自分の考えより他者への気遣いを優先していませんか。自分の主張は控えめで、相手に譲ることが多いでしょう。

C項目の○が多かった人
C項目が多かった人は、アサーティブタイプの可能性が高いです。自分も相手も大切にした自己表現ができているでしょう。その場にふさわしい方法でコミュニケーションができているのではないでしょうか。

アサーションタイプをチェック

 

トレーニングの実際

ここからは、アサーティブコミュニケーションのトレーニング方法を解説していきます。当サイトでは
・個人向けの手法を6つ
・指導者向けのやり方を2つ
紹介します。アサーティブ力を高めるために是非ご活用ください。

「だから、あなたはダメなのよ!」
「そんなことは言うべきではない!」

このような表現はアサーティブコミュニケーションの世界で「YOUメッセージ」と呼びます。「YOUメッセージ」は相手の権利を侵すリスクがある主張法です。Iメッセージでアサーティブなコミュニケーション

これに対して、主語を「私」にする手法をアイメッセージと言います。アイメッセージは相手の領域を大事にしながら主張する手法です。

「今の言葉…(私は)少し傷ついたかも…」
「そっかあ‥‥(私は)なんだか残念な気持ちになるな」

このように自分の意見を伝えるとき主語を「私は~」にしてみると、批判的な印象がグッと軽減できます。具体的なやり方は以下のコラムで詳しく解説しています。

参考にしてみてください。

アサーティブのやり方「アイメッセージとは」

DESC法は段階に応じた主張法です。主張には段階があります。主張をする際は、まずはマイルドな表現から始め、だんだんと強くしていくのが基本となります。

アイメッセージと合わせて練習すると、手法の引き出しが増えます。是非基礎として抑えておきましょう。

アサーティブの技法「段階的主張-DESC法」

同じ主張を何度も繰り返して断る手法です。しつこい人を断るときに効果があります。

相手が何を主張してきても、壊れたレコードのように同じことを繰り返すことで相手が諦めてくれる可能性が高くなります。壊れたレコード法

相手のプラスの面をみつけて他者尊重の姿勢をもつことです。最初からすべてを否定するのではなく、相手のいいところを認めたうえで、相手が受け入れられる内容で提案をします。

非常にスマートな断り方です。

部分肯定法

感謝とセット法は、お願いなどを柔らかく断る技術です。断り方がアサーティブな人は「感謝できる部分をセットで伝える」ことが非常にうまいのです。断り方のコツを解説ただ単に断るのではなく、まずは「ありがとう」「頼りにしてもらえるんだ!」とポジティブに受け止めてから、うまく断っていきます。

アサーティブトレーニング「感謝+断り法」

限界設定とは限界点を設定することで、権利侵害の線引きをする手法です。「ここまではOK」「ここから先はNG」と主張しておくと、曖昧な状況が亡くなり、問題が起こりづらくなります。

困った時には限界点を設定をして進めてみてください。

限界設定コラム「意味・手法・具体例」

アサーティブを学ぶ方法として、価値観ワークがおススメです。価値観ワークは、日常の価値観をグループ討論しながら進めていくワークです。

価値観を交換しながらアサーションを練習できるおススメの手法です。学校や職場で是非実施してみてください。

アサーティブを学校や職場できる「価値観ワーク」

アサーションは実際に練習をしていくことで身に着けることができます。以下、子供向け、大人向けにサンプルのワークを作成しました。

指導者の方は参考にしてみてください。

アサーティブを育む「断りワーク」子ども編
アサーティブトレーニング「断りワーク」大人編

長谷川ら(2004)は言語聴覚士の学生26名に対して、アサーティブ・トレーニングを実施しました。トレーニング実施前に、学生たちに以下の3つの尺度(基準)を測定してもらいました。

1.相互作用不安尺度(IAS)
人と相互作用することで生まれる主観的な
対人不安感を測定する尺度。

2.特性的自己効力感尺度(SES)
一時的ではなく、長期的な日常での自己効力感
を測定する尺度。

3.アサーティブ・マインド・スーケル(AMS)
「自己表現に対する肯定的態度」「他者尊重」「合理的信念」
「率直さへの確信」の4つの要素から構成されるアサーティブ傾向
を測定する尺度。

そして、アサーティブ・トレーニング後にもう1度測定してもらい、実施前と実施後の結果を比較しました。

以下の表は「アサーティブ・トレーニング前後で得点が変化した人の人数」を表したものです。

アサーティブ効果

このように、「相互作用不安」は得点が下がっている人数が多く、「自己効力感」「アサーティブ」では得点が上がっている人が多いですね。

この結果からアサーティブトレーニングを行うことで、不安が減って自己効力感が高まることがわかります。さらに、アサーティブに主張できるメンタリティも身に付けられることが推測されます。

 

まとめ+お知らせ

入門①まとめ

コラム①の解説は以上となります。

アサーティブトレーニングを日本で広めた平木典子先生は、アサーティブを学ぶことで「目的や課題を達成する力」「人と共に生きる力」を伸ばすことができるとしています。

アサーティブは対人ストレスの軽減はもちろん、自分自身をより成長させる要素ともなるでしょう。まずは自分らしく行動することで、アサーティブをはじめてみましょう。

お知らせ

私たちは実際に心理学を学べる講座を開催しています。

・心理療法をたくさん勉強したい!
・アサーションを専門家から学びたい
・自己主張ができるようになりたい
・人間関係を充実させたい

という方は下記の看板をクリックしてみてください♪ぜひお待ちしています。