社交不安障害,赤面症,視線恐怖症と薬物療法での治療
社交不安障害は心療内科や精神科の受信をすることも選択肢の1つとして重要です。
・薬物療法とは何か?
・薬の効果
・クリニックの選び方
・心理療法と薬物療法の違い
について解説していきます。
社交不安障害,赤面症,視線恐怖の治療
精神科と3つの対処法
社交不安障害の治療には、心療内科や精神科病院での治療があります。精神科では以下の手法で治療が進められています。
1.生物学的対処
⇒薬物療法、電気療法など
2.心理的対処
⇒カウンセリング、精神療法など
3.社会的対処
⇒社会復帰プログラム、SSTなど
その中でも、薬物療法は基礎となる治療法であり、社交不安障害でも、薬を処方して治療を行うことが多いです。
精神科の実態
精神科では基本的には、脳や体の仕組みの面から改善していくのが基本です。後程詳しく解説しますが、私たちの脳は、様々な脳内伝達物質で、不安を感じたり、悲しくなったりします。
精神科ではこれを「薬」の面から改善していくのです。
一方で、薬以外の手法である、カウンセリング、精神療法、社会復帰プログラム、SSTは、精神科によってはかなりばらつきがあります。
精神科によっては薬物療法だけのクリニックもあります。公認心理師,臨床心理士,精神保健福祉士(コメデオイカル)のカウンセリングや社会生活のアドバイスを充実させている機関もあります。
精神科医の悩み相談は控えめ
ただ大概のクリニックが、まずは薬物療法を基本としていて、カウンセリングや精神療法は補助的に組み合わせていくケースが多いです。
診察はまずは予備面接から始まることが多く、30分前後、コメディカルの面接を挟み、検査などを行い、そのうえで、精神科医のお医者さんとの面接にはいることが多いです。
精神科のお医者さんが1時間しっかり悩みを聞いてくれるようなことはまずありませんのでその点は、あまり期待しないようにしましょう。。(お医者さんに怒られてしまうかもしれませんが (^^; )
最低限抑える薬の知識
さて社交不安障害,赤面症,視線恐怖症で精神科のクリニックに行くと、かなりの確率でお薬の処方となると思います。もちろん自由意志ですので無理に服用する必要はありませんが、最近では副作用が少ない薬も開発されています。
まずは薬についての正しい知識を身に着けておきましょう。
薬物療法の歴史
薬物療法は、1952年のフランスの精神科医 Delayと Deniker が初めて抗精神病薬を発見したことが始まりになります。
以来、半世紀に渡って研究が進み、薬物がどのようなメカニズムで脳に作用するかが解明されました。比較的副作用が少ない薬物が誕生し、臨床に導入されるようになりました。
精神科で社交不安障害,赤面症,視線恐怖症を治療する際は、薬物療法が基本となります。
処方される薬の種類
社交不安障害で処方される可能性があるのが、以下の3つになります。
SSRI,SSRI
「選択的セロトニン再取り込み阻害薬」
「セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬」
ベンゾ系
「ベンゾジアゼピン系抗不安薬」
プロプラノロール
「プロプラノロール塩酸塩」
それぞれ果と副作用について解説をします。
SSRI,SNRI
SSRI,SNRIは社交不安障害で最もよく使われるお薬です。SSRI、SNRIを処方された際は、比較的穏やかな薬と考えると良いでしょう。
効果
・不安を和らげる
・抑うつ緩和
・前向きにする
SSRIはセロトニンという精神を安定させる神経伝達物質を増やすことで症状を和らげる薬です。SNRIはセロトニンとノルアドレナリンという意欲に関する神経伝達物質を増やすことで症状の緩和をしていきます。
副作用
精神神経系症状
頭痛、眠気、不随意運動、めまいやふらつきなどの症状があらわれる場合があります。
運転などの危険をともなう機械作業は控えましょう。
セロトニン症候群
いらいらする、不安、混乱するなどの症状があらわれる場合が稀にあります。
消化器症状
口渇、吐き気、便秘、下痢、食欲不振、嘔吐などの症状があらわれる場合がある
上記の症状は服用初期にあらわれることが多いが、2〜3週間前後で治まる傾向にあります。
性機能障害
勃起障害、射精障害などの性機能異常も微小な確率ですが、考えられます。
ベンゾジアゼピン系
ベンゾジアゼピン系は慎重に処方されるべきお薬です。比較的効き目が強い一方で、副作用も出やすいお薬と言われています。
効果
・不安を和らげる
・緊張を和らげる
・安眠効果
この薬には、「GABA」と呼ばれるリラックス効果を高める物質の働きが関わっています。GABAに直接作用して、増強する働きがあるため、不安を鎮めを精神の安定につながるのです。
副作用
強い眠気
ベンゾジアゼピン系抗不安薬は脳内の活動を低下させる薬なので、日中に強い眠気に襲われたりと、人によっては強い副作用が表れることもあります。
依存性
薬の種類やどれだけの頻度で服用するかなどによって変わりますが、数週間以上、毎日服用していると、薬に対する依存が形成される恐れがあります。例えば、用量を今までより多く服用しないと、これまで得られていた薬の効果が感じられなくなります。
プロプラノロール
プロプラノールは体の震え、文字を書く際に震えてしまうなどの症状に有効です。
効果
・手足の震えを抑える
・書痙の緩和
・動悸を抑える
インデラルは、交感神経の1つであるβ受容体を遮断する作用があります。β受容体にフタをすることで、神経の興奮を抑え震えや動悸を鎮静化していきます。
※β受容体…交感神経の受容体。ノルアドレナリンと結びつくことで、心拍数・血液量を上昇させ、体を緊張状態にする。
副作用
主に徐脈、めまい、発疹、蕁麻疹、視力異常、霧視、涙液分泌減少などが報告されています。こうした症状が現れたら、担当の医師または薬剤師に相談してください。
処方されたら調べよう
お薬を処方される際は、大概のお医者様が副作用も教えてくれると思いますが、念のため自分自身でも副作用をしっかり理解した上で飲むようにしましょう。
基本的には商品名で処方されるので、商品名をネットで検索すると、上記のどのタイプかはわかると思います。
薬を飲むことは罪ではない
お薬を飲むときは、精神病者になってしまった…というような感覚に陥り、罪悪感を持つ方も一部います。
しかし、社交不安障害は脳の複雑な仕組みによって引き起こされる部分もあります。特に日本人はS型という緊張遺伝子を多く持っていると言われています。
このような気質的な部分はあなたの責任ではなく、脳の仕組みの問題なのです。例えば、糖尿病の方が体の仕組みの問題を抱え、お薬を飲むように、社交不安障害も脳の仕組みの問題であることもあります。
薬を飲む=悪いこと,罪
と考えるのではなく、自分を助ける治療として重要なことであると考えましょう。もちろん意味もなく飲むことはNGですので、効果をよく主治医の方と相談しながらうまく使っていきましょう。
社交不安障害と薬の話
ここからは、私がよく質問されることをいくつかピックアップさせて頂きました。動画も含め参考にしてみてください。
心理療法と精神科の違い
心理療法だけで改善を目指すのか?精神科も併用するのか?は非常に大きなテーマとなります。以下違いについて解説をしましたので参考にしてみてください。
診断を受けた後の援助
もし社交不安障害と診断されたら、障害者総合支援法という法律を知っておくととても有効活用できます。こちらの動画で解説していますので参考にしてみてください。
薬物療法と脳の仕組み
薬物療法がどうして効果があるのか?そのプロセスを知りたい方は、下記を展開して理解をぜひ深めていきましょう。脳の中で何が起こっているか?理解が深まると思います。
①セロトニンの再取り込み
神経の末端部には、「シナプス小胞」という化学物質が貯まっている袋があります。そこから「セロトニン」という神経伝達物質が放出されます。セロトニンは次の神経細胞に届き、「セロトニン受容体」という所に作用します。
このとき、分泌されたセロトニンは前の神経細胞にある「セロトニントランスポーター」に再取り込みされて、リサイクルされます。健康的な人では、セロトニンの量が十分分泌されているため、再取り込みされても変調をきたすことはありません。
しかし、うつ病や不安が強い人はセロトニンの量が乏しいので、再取り込みされてしまうと、十分に後の神経細胞にある「セロトニン受容体」に作用がされません。そのため、うつや不安が強い人はセロトニンがリサイクルされないことが大事になってきます。
②SSRIの作用
SSRIはこの「セロトニントランスポーター」に蓋をして、リサイクルされないように作用します。リサイクルされないで残ったセロトニンは、シナプスの間に残ることになり結果的にセロトニンの濃度が高く維持されるようになります。セロトニンの濃度が高くなることで、うつや不安などの症状が和らいでいきます。
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