赤面症の克服方法,治し方
皆さんこんにちは。心理学講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「赤面症の治し方」について解説していきます。
赤面症は社交不安障害の中でもよくある症状です。当コラムでは赤面症の理解と対策を一通り解説していきます。目次は以下の通りです。
①赤面症とは何か
②赤面症と発症年齢
③原因と治し方
④一見治ったに注意
当コラムの特色は、臨床心理学、精神保健福祉の視点から心の病気を解説している点にあります。心の病気の解説サイトは多いですが、精神科医の先生が監修されていることが多く、心理師の専門サイトは多くはありません。
お薬以外での改善策を詳しく知りたい方に特にお役に立てると思います。ご自身の状況にあてはまりそうなものがありましたら是非ご活用ください。
①赤面症とは何か
意味
赤面症は現在、2つの意味で使われています。1つ目は、血流が良く顔が赤くなりやすい症状です。何かに集中する、温度が高い場所に行く、緊張すると顔が赤くなりやすい方に対して使われます。ほとんどのケースで病気とはなりません。
2つ目は、顔が赤くなることを極端に恐れる症状として使われています。正確には赤面恐怖症と呼ぶべき症状で、深刻になると社交不安障害という病名がつくことがあります。
現在の日本では、1と2の意味がごっちゃになって使われています。当コラムでは赤面症という言葉を使いますが、2つ目の意味であることを前提として進めていきたいと思います。
病気の関係
ここで皆さんに質問です。赤面症のお悩みはいつごろからはじまりましたか?おそらくですが、10代から始まった方がほとんどなのではないでしょうか。ここで絶対に抑えて頂きたいことがあります。
それは
ほとんどの場合、顔が赤くなることは病気ではない
ということです。
冬に公園で走り回っている子供の顔を見てみましょう。興奮してみんなまっかかです。皆さんの顔もきっとまっかかだったと思います。でも全然気にしていなかったと思います。
顔が赤くなること自体が問題なのではなく、赤面を恐れる心が問題であることをおさえておきましょう。
②赤面症と発症年齢
10代から悩みがはじまる
赤面症が心の問題になってくるのは、ほとんどの場合は10代です。ここで、社交不安障害を発症する年齢の割合を示したグラフをご覧ください。グラフを見ると、ほとんどの人が10代で発症していることがわかります。
10代は、公的自己意識が過剰になる、思考の歪みが生じる、感情のコントロールができない、と言った心の問題がおこりやすい年代です。精神的な対処法がまだ育っていないので、赤面症になりやすいのです。
30代後半から落ち着く傾向
一方で赤面症は、30代後半から落ち着いていく傾向があります。日本医療開発機構の川上(2016)の調査によると、社交不安障害は、以下の図のように年齢を重ねるごとに有病率が低下していくことがわかっています。
赤面症そのものの統計はないのですが、筆者の臨床経験をもとにすると、30代後半になると赤面で相談される方はかなり減ってくると感じています。
③原因と4つの克服方法
先程解説したように、赤面症は10代の頃にその原因のほとんどが形成されます。ここからは赤面症の原因と対策を解説します。
①公的自己意識の過剰
②思考の歪みがある
③症状へ捉われる
④体の仕組みを異常と考える
自分にもあてはまる…と感じる項目を中心にご活用ください。
①公的自己意思の過剰
赤面症の中核となる心理は思春期に爆発的に増える「公的自己意識」です。公的自己意識とは周りの目を気にする心理です。それは友人の目であったり、異性の目、社会の目であったりします。
周りの目を気にするということは、社会に出るために必要な心なのですが、大きくなりすぎると、がんじがらめになり、様々な症状を気にするようになります。
公的自己意識の過剰さを改善するには、「私的自己意識」を増やすことが近道です。私的自己意識とは
自分がどうしたいか
自分のやりたいことに集中する
やるべきことをやる
という意識の向け方です。他人の目を気にしすぎず、自分主体の考えを増やしていくことが大事になるのです。以下の折り畳みでは練習問題にチャレンジすることができます。ぜひ参考にしてみてください。
赤面症を改善する上では、公的自己意識と私的自己意識のバランスを整えることが大切です。実際に練習問題を解きながら考えていきましょう。
あなたは来週の月曜日に、20人の前で朝礼でスピーチをしなさいと上司に指示を受けました。この時、
・
公的自己意識が強い
私的自己意識が強い
バランスを取る人
・
それぞれどのような考え方の違いが起きるでしょうか。それそれ考えてみてください。
解答例
・公的自己意識が強い人
赤くなったら笑われる
赤面する自分を見られてはいけない
・私的自己意識が強い人
ウケなくてもいい。自分らしく話そう。
自分が話したい話ができればOK
最近面白かった話をしよう
・バランスを取る人
周りの目は気になるし、
皆に楽しんでもらえるよう配慮するけど、
自分らしく話すことも大事にしよう
このように公的自己意識が強すぎる方はバランスを取る人の考え方を真似してみましょう。もっと練習をしたい方は、以下のコラムも是非参考にしてみてください。
②思考の歪みがある
10代は「思春期」と言われるぐらい、考えることが増える時期です。この時期に多くの青年は「思考が歪み」が生じすくなります。例えば、赤面症を気にする方は
顔が赤くなることは恥ずかしいことだ
と1つの思考で極端に考える傾向があります。このような極端な思考を「白黒思考」と言います。
白黒思考を改善するには、様々な考え方を足していくことが大事です。私の相談者の中に白黒思考と赤面症でなやむある女性がいました。その女性は以下のように考え方を追加していきました。
赤いのは健康的な証拠
チークなくても済むからうれしい!
顔が赤いから嫌われるわけではない
若く見えるから助かる
彼女にとって顔の赤みはチャーミングな特徴に変わったのです。
このように白黒思考を改善するには、思考の歪みがないかチェックし、現実的で前向きな考えを増やしていくことをおすすめします。詳しくは以下のリンク先で練習することができます。極端に考えがちな方は参考にしてみてください。
③症状にとらわれる
人間の心理として「〇〇してはいけない」と考えると余計にそこに意識が向いてしまい、結果的にその状態になってしまうことがあります。これは精神交互作用と呼ばれています。
例えば、悪口を言ってはいけない!!と考えると、周りの悪口が非常に気になってしまったり、結果的に悪口を考えてしまって、以前よりも症状が増えてしまうことがあるのです。赤面症も同じで「赤くなってはいけない」と考えると余計に赤くなってしまうことがあります。
赤面症の事を考えすぎてしまう…と感じる方は、森田療法を実践することをオススメします。森田療法とは簡単に表現すると、症状をあるがままに受け止めて考えていく方法です。
赤面する自分を受け入れる
顔が赤くても無理になおそうとしない
自然な身体の仕組みと考える
このような姿勢を意味します。対人恐怖症や、赤面恐怖、視線恐怖で古くから活用されてきた治療法です。赤面症の状態をあるがままに受け止めることで、その症状にとらわれないようにすることができます。
赤面症のことを考えすぎて余計に悩みが強くなってしまう…という方は下記のコラムを参照ください。
④体の仕組みを異常と考える
赤面症でなやむ方は、顔の赤さを体の異常と捉える傾向にあります。心が見透かされたような気持ちになり、赤くならない人を羨ましいとさえ考えてしまいます。
しかし、顔が赤くなること自体は身体のメカニズムで極めて自然なことなのです。体の仕組みを理解し、自分が健康的であることがわかると、どこかほっとする面もあります。顔が赤くなるのは身体がおかしいからだ…と感じてしまう方は以下の折り畳みを参照ください。
私たちの体には、自律神経には2種類あります。
私たちの体は、恐怖場面、集中すべき場面、活発に遊ぶ場面に遭遇すると、左側の交感神経が活発になります。
交感神経働くと、身体の機能を向上させるため、
「毛細血管」
に血液が流れていきます。
頬や鼻周りには、この毛細血管が張り巡らされており、交感神経の働きが強くなると、毛細血管に多くの血液がめぐり顔が赤くなります。
多くの場合、赤面症は極めて自然な身体的の仕組みなので、病気ではなく、赤くなること自体が問題ということはありません。この点はまずは押さえておきましょう。
④一見治ったに注意
社交不安障害の症状は、赤面症のほかに、視線恐怖症・表情恐怖・醜貌恐怖・自己臭恐怖・書痙など幅広く、いずれも対人状況において生じる症状と言われています。
これらの症状は1つの症状が出ると、他の症状が不思議と消えることもあったります。なぜこのようなことが起こるのでしょうか?
実は講師川島は赤面症が治ったと思ったら、重度の視線恐怖になったことがあります。当日の私の話も含めて書かせて頂いたので気になる方は下記をクリックください。
執筆者の川島の場合は、昔10代中盤の頃は赤面恐怖がありました。その後、10代の後半に入ると視線恐怖に移行していきました。そうするとなぜか赤面恐怖はかなり軽くなったのです。
講師業をしている今も、視線恐怖と表情恐怖など、2つぐらいの症状が併存している方を見ることはありますが、視線恐怖と表情恐怖と自己臭恐怖など、3つはまれだと言えます。
これはおそらく「症状への集中」に限界があるからだと考えています。例えば、視線に集中し、精神交互作用が起こると、赤面のことまで考える暇(?)がなくなるのです。同じ原理として、視線恐怖の方が、自己臭恐怖を持つと、おそらく視線恐怖の症状は軽くなると考えています。
結局は
・過剰な公的自己意識
・思考の歪み
・精神交互作用
これらを改善しない限りは、仮に赤面症が治ったとしても、他の症状がはじまる可能性が極めて高いと言えます。治療の際は、この点をおさえておきましょう。
仕上げの動画
赤面症については動画でも詳しく解説しました。仕上げとしてご視聴ください。
まとめ
赤面症の対策の基本編は以上となります。繰り返しになりますが、赤面症は一部の方を除きそれ自体が病気であるというわけではありません。基本は心のあり方で改善できる症状です。
私自身も顔が赤くなりやすい体質ですが、今はわりと受け入れていて、人間らしさの1つと考え、自分の症状を愛するようになっています。皆さんのお悩みが改善され、健康的な人間関係を築かれることをせつに願っています。
なお、よく赤面症について「手術したほうがいいですか」という質問を頂くのですがこの点については以下のコラムで解説しました。気になる方は参考にしてみてください。
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監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
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名前
長田洋和
経歴
- 元専修大学人間科学部教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連