視線恐怖症の原因と克服方法

皆さんこんにちは。心理学講座を開催している公認心理師,精神保健福祉士の川島達史です。今回は「視線恐怖症の克服方法」についてご相談を頂きました。

視線恐怖症

相談者
28歳 男性

お悩みの内容
私は高校生の頃から周りの視線が気になるようになってきました。とにかく目を合わせるのが苦手で、ちょっとでも目が合うとビクっとしてしまいます。
最も苦手なのは、正面に人がいる状態で、汗が噴き出してしまって会話どころではありません。検索していたところ「視線恐怖症」という用語があることを知りました。詳しく教えてください。

人と目を合わせるのが苦手な状況だと、人間関係がある場面でとにかく疲れてしまいますよね。当コラムでは、視線恐怖症の原理と克服方法を解説します。目次は以下の通りです。

・視線恐怖症とは何か
・視線恐怖症と年齢の傾向
・原因と6つの克服法
・心理師として感じていること

是非最後までご一読ください。

 

視線恐怖症とは何か?

視線恐怖症とは

視線恐怖症とは、視線を必要以上に気にすることにより、強い対人不安を持つ症状を意味します。視線恐怖が強い場合は、社交不安障害や醜形恐怖症という診断名が付くことがあります。

回避まで進む方は注意

視線は誰でも怖くなることがあるものです。発表する機会、異性と会話をする機会、権威のある人と話す機会に緊張することは健康的な証拠でもあります。

一方で、何気なく目があっただけで、体が硬直するような感覚があり、会話場面を避けるところまで進んでいる方は視線恐怖症の疑いが出てきます。回避傾向がある方は症状が進んでいる可能性が高いので要注意です。

視線恐怖症と4分類

視線恐怖症は細かく分類するとさらに4つに分けられます。

・他者視線恐怖症
人の視線を極度に恐れる症状 他者視線恐怖は現場感覚ではもっと多く見られます。社交不安障害の方に非常に多いです。

・自己視線恐怖症
自分の視線が相手に対して、不快感を与えると考える症状です。症状が重たい場合は醜形恐怖症に分類されることもあります。

・正視恐怖症
人と正面から見つめあうと、自分の心が見透かされているような気分になります。

・脇見恐怖症
周りにいる人の視線を異常に気にしてしまう症状です。脇見恐怖の方は、その人の目線を追ってしまうため、トラブルになることもあります。

視線恐怖

 

視線恐怖症と年齢の傾向

社交不安障害と発症年齢

社交不安症を発症する年齢の割合を示したグラフがあります。

視線恐怖症

約75%の人が15歳以下で発症していることがわかります。(図.1)対人不安症の特徴としては、発症した年齢と医療機関に訪れた年齢が異なることが挙げられます。

ある研究では、発症年齢から10年後以上の30代半ばで専門機関を訪れる傾向があることが報告されています。相談の遅れると、視線恐怖症の克服に時間がかかってしまうケースもあるため注意が必要です。

30代後半から落ち着く傾向

一方で社交不安障害は、30代後半から落ち着いていくことが分かっています。日本では日本医療開発機構の川上(2016)が調査を行いました。その結果、以下の図のように若い方ほど有病率が高いことがわかりました。

これは筆者の現場経験と一致しています。視線恐怖症も好発年齢は30代中盤まででそれ以降は徐々に落ち着いていくと推測できます。

 

原因と6つの克服方法

視線恐怖は上記のように複数の種類がありますが、発症のプロセスには共通している部分があります。ここからは視線恐怖症の原因と対策を解説します。

①人の目を気にする
②失敗過敏
③認知の歪みがある
④行動が極端になる
⑤視線に過剰にこだわる
⑥一見治ったに注意

自分にもあてはまる…と感じる項目を中心にご活用ください。

①人の目を気にする心理

原因

視線恐怖が起こる心理の中核は

人の目を気にする心理

です。これは心理学的に公的自己意識と言います。公的自己意識は10代前半に爆発的に増え、10代の中盤から後半に一気にピークを迎えます。

思春期は、異性を気にする、友人と比較する、協調性を求められるなど、他人の目を気にする心が育つ時期です。公的自己意識が過剰になりやすく、視線恐怖が好発しやすいと言われています。

一般的に、病気にかかりやすいのは、幼児と高齢者ですよね。しかし、心理的な問題は10代におこりやすく、特に視線恐怖は思春期におこるという点で独特です。

治し方

対策としては、人の目を気にする心理から、自分の気持ちに目を向ける意識を高める訓練が有効です。例えば、人と会話をするときに、「嫌われてはいけない」と相手の目を意識するのではなく、「この時間を楽しもう」と自分の気持ちに目を向けるのです。

詳しい練習法は以下のコラムで解説をしました。参考にしてみてください。

人の目が気になる心理を改善する方法

 

②失敗過敏がある

原因

視線恐怖の方は共通して、失敗してはならない…という意識が非常に強いと言えます。これは心理学的に失敗過敏と呼びます。

視線を不自然にしてはいけない
人前で恥をかいてはいけない
評価を下げてはいけない

このような感覚が強い方は注意が必要です。

治し方

失敗過敏が強い方は、目標を緩やかにしたり、リラックスできるイメージをすることが大事です。

多少は視線がぎこちなくなってもOK
ぼちぼち目があえばOk
肩の力をぬいて穏やかに話そう

こんな形で自分がリラックスできる目標を立てながら人と話すようにしましょう。詳しい練習法は以下のコラムで解説をしました。参考にしてみてください。

失敗が怖いを改善する方法

③認知の歪みがある

原因

ある時、あなたが近所の人に挨拶したが、目が合うとどこかびっくりした表情になっていたとします。このような時、視線恐怖症の方は

私の目線が鋭いから怖くなったに違いない
私が目を合わせないから避けているに違いない
視線を合わせられないと変な人だと思われる

など、極端に考えてしまう傾向があります。このように偏った考え方を「認知の歪み」と言います。視線恐怖症の方は、この認知の歪みがあることが多く、非現実的な思い込みを持っている可能性が高いといえます。

治し方

このような極端な思い込みを改善するには、現実的に考えていくことが大事になります。例えば、多少視線が合わせられなくても、そこまで嫌われることはありません。むしろシャイなところに安心感を持つ方も一定数います。

このように「視線」についての偏った考えを柔軟にほぐしていくこともとても大事なのです。思い込みが激しいかも…と感じる方は以下のコラムを参照ください。考え方をほぐす訓練になると思います。

④行動が極端になる

原因

視線恐怖がある方は、視線に対して極端な考えを持っているため、行動も極端になりがちです。例えば、

視線を一切合わせない
視線恐怖を克服するため凝視をしてしまう

このように、視線を合わせるか、もしくは凝視をしてしまうか、の2択になりがちです。

治し方

このような極端な行動を改善するには、スモールステップを作って少しずつ自然なアイコンタクトを獲得していくことが大事になります。例えば、以下のような不安階層表を作るやり方があります。

視線恐怖症の場面や恐怖レベルのチェック表

最初に、最も恐怖を強く感じる場面を5点と設定し、それよりも不安の小さい場面を点数ごとに挙げて表にします。そして、恐怖の少ない順番に一つずつ挑戦し、克服していきます。このように階層表を作ると、自分の行動傾向がわかり、目標までのステップが明確化されます。

視線について極端な行動をしている…と感じる方は以下のコラムを参照ください。視線に少しずつ慣れる良い訓練になると思います。

原因

このように、視線恐怖は、人の目を気にすることを中核として、失敗過敏と相まって段々と大きくなっていきます。

この心理をさらに促進する重要な概念として「精神交互作用」があります。精神交互作用とは、以下の図のように、症状へのとらわれがさらに症状を強くするという心理です。

悪循環,精神交互作用

私たちの脳は「〇〇してはいけない」と考えると、そこに意識が向いてしまうという特徴があります。

例えば、リンゴを食べてはいけない!!と強く考えてみてください。すると、なぜか唾液が出てきて、リンゴのことを考えてしまうと思います。

これと同じ原理で、人の目を気にし始めると、〇〇してはいけない!と考える機会が多くなります。視線恐怖の方は、

視線が不自然になってはいけない!
人と目を合わせないと!
きつい視線になってはいけない!

と考え、視線にこだわりすぎてさらに症状を悪化させてしまうのです。

治し方

視線へのこだわりが強い方は、少しずつ考える時間を減らしていくことが大事です。視線が怖いことを自然なこととして受け止め、それ以上でもそれ以下でもないと考えていくのです。視線恐怖を治そう!と肩に力を入れるのではなく、

視線が怖いのは仕方がない
あるがまま行こう
視線が怖いながらも会話を楽しもう

とこだわらないようにしていきます。このような姿勢は森田療法という心理療法の「あるがまま」の姿勢と言います。詳しくは以下のコラムで解説しました。参考にしてみてください。

視線恐怖症を克服するあるがまま

 

⑥一見治った…に注意

対人恐怖の症状は、視線恐怖のほかに、対人緊張・赤面恐怖・表情恐怖・醜貌恐怖・自己臭恐怖・書痙など幅広く、いずれも対人状況において生じる症状と言われています。

これらの症状は1つの症状が出ると、他の症状が不思議と消えることもあったります。なぜこのようなことが起こるのでしょうか?

実は講師川島は20歳の前後に重度の視線恐怖になったことがあります。当日の私の話も含めて書かせて頂いたので気になる方は下記をクリックください。

執筆者の川島の場合は、昔10代中盤の頃は赤面恐怖がありました。その後、10代の後半に入ると視線恐怖に移行していきました。そうするとなぜか赤面恐怖はかなり軽くなったのです。

講師業をしている今も、視線恐怖と表情恐怖など、2つぐらいの症状が併存している方を見ることはありますが、視線恐怖と表情恐怖と自己臭恐怖など、3つはまれだと言えます。

これはおそらく「症状への集中」に限界があるからだと考えています。例えば、視線に集中し、精神交互作用が起こると、赤面のことまで考える暇(?)がなくなるのです。

同じ原理として、視線恐怖の方が、自己臭恐怖を持つと、おそらく視線恐怖の症状は軽くなると考えています。

ある意味で症状は表面的なものであり、根本原因は、

・人の目を気にする
・精神交互作用

にあると推測しています。そのため、仮に、視線恐怖症が治ったとしても、実は他の症状に移行した過ぎないというケースを多々見てきました。この辺に注意しなくてはなりません。

 

心理師として感じていること

視線恐怖症は私が8年近く苦しめられた症状なので、思い入れが深い症状です。率直に言えば、克服するのは時間がかかりますし、簡単なことではありません。

しかし、今回挙げた心理的な対処をコツコツ続けると、「あれ?そこまで人の目がきにならなくなってるな…」という瞬間がきっとくると思います。皆さんが当コラムを参考に視線恐怖症の問題を解決し、人間関係を楽しまれることをせつに願っています。

 

心理学講座のお知らせ

心理療法を独学で学ぶことに不安がある場合は、専門家の元でしっかり学ぶこともお勧めしています。 私たち公認心理師・精神保健福祉士は、対人不安、緊張の軽減を目指し、心理学講座を開催しています。講座内容は以下の通りです。

・人の目を気にする心理の改善
・精神交互作用の学習
・緊張緩和法の学習
・人と楽しく会話をする練習

独学に限界を感じた方、心理学を体系的に勉強されたい方のご参加をぜひお待ちしています。執筆者も講師をしています(^^)

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コミュニケーション講座,心理療法の学習

社交不安障害も学ぼう

視線恐怖症は社交不安障害の症状の1つとされています。社交不安障害を理解すると、視線恐怖の理解も同時に深まります。下記のコラムも参考にしてみてください。

社交不安障害の基礎と対策

 

自然なアイコンタクト

視線恐怖症の方は「相手を全く見る事ができない」逆に「相手の目を凝視してしまう」など不自然な癖が出てしまいます。自然なアイコンタクトの方法について詳しく知りたい方は下記をご参照ください。

自然なアイコンタクトのコツ