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家族療法とは何か,歴史や事例,技法

家族療法 歴史とは?事例や技法について詳しく解説

みなさんこんにちは。
公認心理師,精神保健福祉士の川島達史です。

当コラムのテーマは
「家族療法」
です。

目次は以下の通りです。

・家族療法の歴史
・基本用語
・家族療法の対象

まずは基礎編として、家族療法の歴史から見ていきましょう。

家族療法の歴史とは

意味

心理学辞典(1999)によると家族療法は以下のように定義されています。

家族集団を研究と治療の単位として扱い、個人の問題を家族と言う脈略のなかで捉えようとする

治療にあたっては顕在化している問題が
家族の中でどのように関連しているかを把握し
参加可能な家族成員の合意のもと治療が行われる

(一部簡略化)

家族療法は歴史を概観すると理解しやすくなります。まずは歴史を追っていきましょう。

1940年代

精神的な病気の1つに統合失調症(昔は精神分裂病と呼んでいました)。当初、統合失調症は、「本人」の心のあり方や、脳の仕組みの問題として考えられていました。

そのため治療は、患者本人に対する心の治療や、投薬が中心でした。

1950年代

統合失調症の治療研究が進むと、回復し退院する患者が出てくるようになりました。しかし、ここで問題が起こります。その患者が家族の元に帰ると、症状が再燃し、再入院することが増えてきたのです。

治ったはずの統合失調症が、家族の元に戻るとまた病気になってしまう。そのため、実は家族に問題があるのではないか?という仮説が立てられ、研究が進んでいきました。

この研究の中心となったのか
ベイトソン(Bateson)とヘイリー(Haley)
でした。

*ヘイリーの生前の動画はこちら

1960年代

ベイトソン(Bateson),ヘイリー(Haley)等の功績により、家族単位で精神疾患を考える着眼点は発展してきました。

1960年代初頭にはMental Research Institute (MRI) という家族療法の中心となるグループが設立され、研究が盛んになりました。

例えばイギリスの調査では以下の2群の比較が行われました。

・薬をきちんと飲む 家族と一緒に暮らす
・薬を飲まない   家族と離れて暮らす

この結果、なんと後者のグループの方が再発率が低かったのです。このように統合失調症は家族のあり方の影響があることが分かってきました。

1970年代

統合失調症に家族の問題があることがはっきりしてくると、家族の構成員の研究が盛んになります。1970年代になると、家族の中に高EEの人物がいることが次第に分かってきました。

高EEとは後程詳しく解説しますが、感情表現が過剰で、怒鳴り散らしたり、人格批判を繰返したり、一貫性のない支離滅裂な言動を繰り返すタイプを意味します。このような人物がいると、混乱しやすくなり、精神疾患になりやすいことが分かってきました。

またこの時期は家族療法前期と言われ、以下のような学派が誕生し発展していきます。それぞれ折りたたんで記載しましたので、気になる項目をクリックしてみてください。

ベイトソン(Bateson, G.)の共同研究者であるジャクソン(Jackson, D. D.)による学派です。後の短期療法に影響を与えた学派です。家族の中で起きている問題は、家族の「悪循環」であると捉えます。

アッカーマン(Ackerman)を中心してつくられた学派です。アッカーマンは精神分析を専門としており、精神分析を家族療法へ応用したことで、当時個人への治療が主流であった精神医学に「家族」という新しい視点を吹き込んだといえます。

精神科医のボーエン(Bowen)による学派です。ボーエンは、精神分裂病患者の家族について研究をし「分化と融合」という視点で、多世代家族の関係を捉えました。

分化と融合とは、自分の感情などが自立している程度のことです。分化が適切にできないと、自分が親になりしつけなどすることで子どもへ伝わり、問題や病気となり後世の家族へ伝承します。これらを、家族関係図(ジェノグラム)を描き整理していきます。

ミニューチン( Minuchin, S.)による学派で家族を「構造」として捉えます。構造とは、家族が夫婦や兄弟など役割を持ち(サブシステム)、それが1つの集合体になることです。

それぞれの役割が境界線(家族間境界)を持ち、問題や病気が起こる家族には境界線が曖昧なため家族の構造を再構築する治療が行われます。

他にも「ジョイニング」「エナクトメント」「ワンウェイミラー」(マジックミラー)の導入などの技法を生み、摂食障害の治癒について高い評価を得ています。

ヘイリー(Haley, Jらによる学派です。「今、ここにある問題」といった現在の問題の解決を重要としました。そのため、家族一人ひとりの考え方や性格を修正などの他の学派が行う治療とは異なり、問題や病気を解決させるために家族がどのような行動をすればよいかを考え取り組みます。

この学派は、問題となる行動を「もっとやりなさい」などと指示する「逆説的指示」や「リフレーミング」などの技法を使うことが特徴です。

精神科医セルビーニ・パラツォーリ(Selvini Palazzoli, M.)による学派です。イタリアのミラノに、家族療法研究センターを設立し、後の短期療法を生み出します。

システミック・アプローチとも呼ばれます。理論や技法などはMRIグループとよく似た方法です。

 

1980年代

1980年代以降は概ね後期と言われています。後期の特徴は

 現実として起こっている問題を解決する
 Ipが発症している病気の症状を改善する

という問題解決志向に、重きが置かれるようになります。こうした動きから、次のような学派が生まれました。それぞれ折りたたんで記載しましたので、気になる項目をクリックしてみてください。

スティーヴ・ド・シェイザー(de Shazer, S.)、インスー・キム・バーグ(Berg, I. K.)らによる学派です。これは短期療法(ブリーフセラピー)のなかのひとつとされています。

問題やその原因などを探すのではなく、問題や病気を解決するために役に立つ資源(リソース)と呼ばれる手立てや強みを探し活用することが特徴です。「何がいけないのか」と考えるのではなく、「解決には何が必要で、何ができるか。」を考えます。

マイケル・ホワイト(White, M.)やデーヴィッド・エプストン(Epston, D.)らによる理論です。1980年代につくられ現在は「ナラティブセラピー」というひとつの技法として確立しています。

この学派は、問題を抱える人(クライエント)らが経験、生活していること、自分の問題などを物語として語り書き換えることで、新しいストーリーを創りだすことで問題解決を図るという方法です。

トム・アンデルセン(Anderson, T.)を中心につくられた学派です。この学派は、片方の部屋から覗ける「ワンウェイミラー」を双方向から見られるようにしました。

前期の方法では、ミラーの中を観察しながらチームを組んだカウンセラーが治療や支援について話し合うだけでしたが、リフレクティング・プロセスはその様子を相談者(クライエント)が実際に見ることができるようになりました。

そのため、自己治癒力を養う方法であるといえます。

ハロルド・グーリシャン(Goolishian, H.)や、ハーレン・アンダーソン(Anderson, H.)らによる学派で、社会構築主義の考え方を取り入れ、対話を通して人間関係を理解するという理論です。

ここでの「理解」とは、新しい意味を構成することです。そのため、カウンセラーは偏見にとらわれた解釈をせず「無知の姿勢」という態度でクライエントと「理解」を共同探索していくのです。

この学派も「ナラティブセラピー」として確立しています。

後期になると、ブリーフセラピーやナラティブセラピーの基礎をつくる学派が登場します。

このように家族療法はじつにさまざまな学派が横断的に重なり合う心理療法なのです。

日本でも1980年代初頭から導入がはじまり、現在では公認心理師や臨床心理士が学ぶ重要な心理療法として重視されています。

家族療法,支援

家族療法の基本用語

家族療法には複数の学派がありますが共通している考え方が複数あります。基本として抑えておきましょう。

システム論

ある一人の人が心の病気になったとします。心理療法の多くは「患者」に焦点を当てます。

一方で家族療法では、家族が互いに影響し合った結果として、病気や問題が引き起こされると捉えています。

家族の間で起きた問題は、さまざまな要因が複雑に混ざり刻一刻と変化します。その変化が悪循環に陥ると、最も感受性の強い者が心の病気になると考えていくのです。

そして「家族」という団体を1つの集合体(システム)と考え、心の病気を全体から解決していきます。

リフレーミング法

家族療法では問題の捉え方を1つの視点ではなく、様々な視点からとらえることを大事にしています。システム論の具体的な手法として、問題を捉えなおすやり方をリフレーミングと言います。

例えば、不登校の子供がいる家庭の場合、不登校の子供がいるおかげで、離婚寸前の夫婦が安定しているケースがあったりします。

このような視点でとらえると、子どは親のために行動していると捉えなおすことができるのです。

詳しく知りたい方はこちらの動画を参照ください。

ジョイニング法

家族療法ではカウンセラーが実際に家庭に入って、交流しながら変化を促すことがあります。

この家庭に溶け込むための手法としてジョイニング法があります。ジョイニング法は家族と接するときのコツで、伴走、調節、模倣の3つから成り立ちます。

IPとは何か?

家族療法ではIPと言う用語をよく使います。IPとは、

Identified(識別された) Patient(親)

の略であり、
「家族の病気の代表者」
「家族の中の象徴的な患者と見なされた者」
「家族の問題を肩代わりしている人」

と考えます。

例えば、父親、母親、17歳の長女、14歳の二女の4人の家族がいたとします。その中で二女が、摂食障害を発症したとします。

この時、次女は家族の問題を代表したIPと考えていきます。そして、表面ではわからない家族関係や問題について仮説を立てて、全体のシステムとして治療していきます。

例えば、父親と母親に共依存関係があり、この問題を解決すると、次女の摂食障害が治ることなどもあります。

ダブルバインド

ベイトソンは、統合失調症の患者についての研究から、「ダブルバインド仮説」という理論を発表しました。ダブルバインド仮説とは、

言葉のメッセージ
表情やしぐさのメッセージ

が一貫せず矛盾したコミュニケーションをすることです。

例えば、親が「怒らないから理由を言って!」と言ったにもかかわらず、正直に打ち明けた子供を叱りつけたとします。

このように一貫性のない歪んだコミュニケーションを続けると子供の心理が不安定と考えられています。

高EE

怒りや暴言のような激しい感情表出がある方を高EE(Expressed Emotion)と呼びます。高EEが家族内にいると、家族内の誰かが精神疾患になりやすいと言われています。高EEの方の感情表出は以下の2点としてあげられます。

1.批判的表出
「本当に物覚えが悪いな!」「この怠けものめ!」このように感情に任せて批判を行います。

2.情緒的表出
「私なんていてもいなくてもいい!「私のことなんて誰も必要としていないでしょ!」など自暴自棄な発言が見られます。

 

家族療法,ダブルバインド

 

家族療法の対象

家族単位

現代では、男女ともに初婚年齢が上がっており、離婚率も上昇しています。また、核家族化が進み、現在の親が子どもの頃育ってきた環境とは違う家族の形で生活しています。

そのため家庭内の負担は大きく、特に夫婦間に起こる問題は深刻であると考えられています。そのために、家族単位で行う支援はとても大切なのです。

学校単位

「システムアプローチ」という理論は、学校場面でも応用することができます。例えば学校でいじめがあったときに、これは生徒間の問題として考えるだけでなく、学校の仕組みの問題、地域の問題としても捉えることができます。

風通しの悪い学校、教師に隠ぺい体質があるなど、システムの面から考え、全体として考えていく発想に結びつけることができます。

企業単位

ある企業で責任を問われる大きな問題が起きたとします。通常であれば、その仕事を担当した社員が叱責される、原因を追求されます。また、その上司も同様でしょう。

しかし「システムアプローチ」の考え方を取り入れると、担当者や上司だけのせいでないことが考えられるのです。

上司と担当者の関係性やコミュニケーション、強いては部署内全体の関係やコミュニケーションをシステムとして捉えると、仕事がどのように処理されているのかが次第に明るみになっていきます。

その部署(システム)の中で何が起きているのか、どのように関係を築けばよいか、どのように問題に対処すればよいのかなどを整理することができるのです。

 

まとめとお知らせ

まとめ

ここまでは家族療法の基本的な考え方について解説してきました。家族療法は、個人を対象としがちな心理療法の視野を広げた点で画期的なものです。

援助をする際、自分の悩みを考える際に、「家族」という視点を持ち、改善の糸口を探してみてください。

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*出典 中島 義明 子安 増生 繁桝 算男 箱田 裕司 安藤 清志 (1999)心理学辞典 有斐閣

*出典
・中島 義明 子安 増生 繁桝 算男 箱田 裕司 安藤 清志 (1999)心理学辞典 有斐閣