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愛着障害入門①症状,診断基準,対策

入門① 愛着障害とは何か?種類や克服法①

はじめまして!臨床心理士の竹元、精神保健福祉士の川島です。私たちは現在、こちらの初学者向け心理学講座の講師をしています。本コラムでは「愛着障害」について理解と対策まで解説します。目次は以下の通りです。

  • 入門①愛着障害とは何か?
    ・定義
    ・診断基準(動画)
    ・4分類と症状
  • 入門②子供の愛着障害と対策
  • 入門③大人の愛着障害と対策,簡易診断
  • 発展Harlowの愛着形成‐動物実験
  • 発展人格障害との関連
  • 発展簡易診断とチェック
  • 発展曖昧さ耐性の欠如(動画)
  • 助け合い掲示板

入門編でははじめての方向けに最低限押さえておくべきポイントを解説しています。まずは入門①~③を読み進めていくことをオススメします。

愛着障害とは何か?歴史

愛着と情緒的な結びつき

愛着障害の「愛着(attachment)」にはどのような意味があるのでしょうか。心理学辞典(1990)では以下のように解説されています。

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ボウルヴィ(Bowlby, J.1969)はアタッチメントを特定の情緒的な結びつきと名付けた。赤ん坊は生後6.7か月になると母親が部屋に出ていくと泣きさけぶようになる、ほかの人がいくらあやしても泣きやまないが、母親が受け取るとぴたりと泣きやむようになる。これは赤ん坊が母親に特別の感情を抱くようになったからにほかならない(一部簡略化)。

以上から愛着とは特定の親しい人との情緒的な結びつきと考えると良いでしょう。

皆さんは幼少期に親しい人と愛情を持った信頼関係を築いたという感覚はありますでしょうか。もし幼少期に信頼できる人がいなかった…という方は愛着不安を抱えていた可能性があります。

発達障害と愛着

 

愛着の重要性の発見

愛着形成はなぜ大事なのでしょうか?児童心理学の専門家であるボウルビィの活動を紹介したいと思います。ボウルビィは、戦争で被災した孤児と関わっていました。その結果、戦争孤児には
・粗暴である
・情緒不安定である
・成長しても攻撃性が残る
という心理的な問題を抱えることが分かったのです。

ボウルビィはなぜこのような心理的問題が起こったのか?という疑問を持ちました。そして戦争孤児をよく観察したのです。その結果、戦争孤児には、泣いたときにあやしてもらえない、適切なタイミングでミルクをもらえない、充分な愛情が注がれていないという問題があることがわかりました。

診断名がつくように

ボウルビィは人と健康的なコミュニケーションをするには、土台となる養育者と適切な「愛着」を築くことが大事であると主張するようになりました。愛着研究はその後、世界中で広がました。

現在では母性的な養育と、心の発達が関係していることがわかってます。そして特に愛着形成に問題を抱える人を愛着障害と呼ぶようになり、幼児の精神疾患の1つとして診断されるようになったのです。

ただ医療機関で愛着障害とされることは稀で、実際に愛着障害と診断されるの10%程度という説もあります。

診断基準と症状

「愛着障害」は実際どのような基準で診断されるのでしょうか?ここではWHOの基準を解説します。世界保健機関(WHO)が定める「ICD-10」においては「反応性愛着障害」「脱抑制愛着障害」として分類されています。入門コラムでは簡略化してお伝えします。

「反応性愛着障害」

・励ましても素直に喜ばない
・親への警戒や悲しみがある
・人と目を合わせず抱き着く

反応性愛着障害

「脱抑制愛着障害」

・過剰な愛情要求
・誰とでも愛着を求める
・過度になれなれしい

とされています。これらの障害は母親をはじめとする養育者との間で、幼少期に安定した愛着を深める行動が断たれた事で引き起こされるとされ、対人面や情緒面での問題症状が起こるとされています。

診断基準については動画解説とアメリカ精神医学会の定義を掲載させて頂きました。

心理的外傷およびストレス因関連障害群

DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引き(2014) 医学書院

反応性アタッチメント障害/反応性愛着障害

A.以下の両方によって明らかにされる,大人の養育者にたいする柳制され情動的に引きこもった行動の一貫した様式:
(1)苦痛なときでも,その子どもはめったにまたは最小限にしか安楽を求めない.
(2)苦痛なときでも,その子どもはその子どもはめったにまたは最小限にしか安楽に反応しない.

B.以下のうち少なくとも2つによって特徴づけられる特続的な対人交流と情動の障害
(1)他者に対する最小限の対人交流と情動反応
(2)制限された陽性の感情(3)大人の養育者との威嚇的ではない交流の間でも、説明できない明らかないらただしさ,悲しみ,または恐怖のエピソードがある,

C.その子どもは以下のうち少ないとも1つによって示される不十分な養育の極端な様式を経験している.
(1)安楽.刺激.および愛情に対する基本的な情動欲求が養育する大人によって満たされることが特続的に欠落するという形の社会的ネグレクトまたは剝奪
(2)安定したアタッチメント形成の機会を制限することになる,主たる養育者の頻回な変更(例:里親による養育の頻繁な交代)
(3)選択的アタッチメントを形成する機会を極端に制限することになる,普通でない状況における養育(例:養育者に対して子どもの比率が高い施設)

D.基準Cにあげた養育が基準Aにあげた行動障害
の原因であるとみなされる(例:基準Aにあげた障害が基準Cにあげた適切な養育の欠落に続いて始まった).

E.自閉症スペクトラム症の診察基準を満たさない.

F.その障害は5歳以前に明らかである.

G.その子どもは少なくとも9カ月の発達年齢である.
該当すれば特定せよ 特続性:その障害は12カ月以上存在している.
現在の重症度を特定せよ 反応性アタッチメント障害は,子どもがすべての 症状を呈しており,それぞれの症状が比較的高い水準で現れているときには重度と特定される.

脱抑制型対人交流障害+
A.以下のうち少なくとも2つによって示される,見慣れない大人に積極的に近づき交流する子どもの行動様式
(1)見慣れない大人に積極的に近づき交流することへのためらいの減少または欠如
(2)過度に馴れ馴れしい言語的または身体的行動(文化的に認められた,または年齢相相応の社会的規範を逸脱)
(3)たとえ不慣れな状況であっても,遠くに離れて行った後に大人の養育者を振り返って確認することの減少または欠如
(4)最小限に,または何のためらいもなく,見慣れない大人に進んでついて行こうとする.

B.基準Aにあげた行動は注意欠如・多動症で認められるような衝動性に限定されず,社会的脱抑制行動を含む.

C.その子どもは以下の少なくても1つによって示される不十分な養育の極端な様式を経験している.
(1)安楽,刺激,および愛情に対する基本的な情動欲求が養育する大人によって満たされることが特続的に欠落する形の社会的ネグレクトまたは剝奪
(2)安定したアタッチメント形式の機会を制限することになる,主たる養育者の頻回な変更(例:里親による養育の頻繁な交代)
(3)選択的アタッチメントを形成する機会を極端になる制限することになる,普通ではない状況における養育(例:養育者に対して子どもの比率が高い施設)

D.基準Cにあげた養育が基準Aにあげた行動障害原因であるとみなされる(例:基準Aにあげた障害が基準Cにあげた病理の原因となる養育に続いて始まった).

E.その子どもは少なくとも9カ月の発達年齢である.
該当すれば特定せよ 特続性:その障害は12カ月以上存在する.

現在の重要度を特定せよ
脱抑制型対人交流障害は,子どもがすべての状況を呈しており,
それぞれの症状が比較的高い水準で現れているときは重度特定された.

エインワーズと4分類

愛着障害は精神医学の分野だけでなく、心理学的な見地からも研究されています。心理学的には愛着形成について4つに分類することが多いです。エインズワースという研究者は、赤ちゃんを対象にストレンジ・シチュエーション法で研究を行いました。手順は以下の通りです(少し簡略化しています)。

①赤ちゃんがお母さんと一定時間楽しく過ごす
②しばらくしてお母さんだけが退室する
③再度その後お母さんに戻ってくる
④赤ちゃんの反応を見る

このような実験を繰り返した結果、幼児には、安定型・回避型・葛藤型・無秩序型があることがわかったのです。

4つの型

安定型
お母さんがいなくなると不安に思う。お母さんが返ってくると、素直に喜ぶことができる。あるいは、泣いて寂しさを伝えることができる。

回避型
お母さんがいなくなっても、泣いたりしない。お母さんが戻ってきたあともよそよそしい。

葛藤型
そもそもお母さんとなかなか離れることができない。あるいは、お母さんが戻ってきたあとも、喜びの感情もあるが、怒りの感情などを示すことがある。

無秩序型
赤ちゃんのお母さんに対する態度に一貫性がない。急に怒ったり、泣いたり、寂しさを伝えることもある。

このように愛着障害は様々な分類がありますが、幼児期から始まるとされ、その後成人になってもその傾向が続く方がいることがわかっています。大人の愛着障害については後述します。

症状

愛着障害は、対人不安、自己肯定感の欠如、基本的信頼感の欠如、など人生を通して影響を与えると言われています。コラム1では対人不安研究を1つ紹介します。丹羽(2005)は、大学1年生628名を対象に、「大学入学時の対人関係不安と愛着不安」について調査を実施しました。

具体的には、
・愛着不安高い群
→親などとの重要な他者と情緒的に問題を抱える群

・愛着不安低い群
→情緒的に健康的な関係を築いている群

に分け、それぞれ大学にうまくなじめているかを調査しました。その結果、以下のような特徴があることがわかりました。

対人不安と愛着入学直後は、愛着不安高群が対人不安が強く、その傾向は3か月後も持続していることがわかります。大学という新しい環境で、愛着安定している人の方が、友達などを作って慣れるスピードが早いと解釈できるのです。このように、愛着は実際に社会適応の土台になっていると考えられます。

入門①まとめ

ここまで愛着障害について、定義、診断基準、症状、4つの型について解説してきました。まとめると

・愛着障害は幼少期の影響が大きい
・対人不安や自己肯定感に問題が起こる
・葛藤型や回避型などがある
・大人になっても継続する可能性あり

ということをまずは押さえておきましょう。

入門② 子供の愛着障害への対策

ここからが具体的に対策を立てています。入門②では「子供の愛着障害への対策」入門③では「大人の愛着障害への対策」を解説していきます。入門コラム①では概要をお伝えします。当てはまる場合はリンク先のコラムを活用ください。

子供が情緒不安定な場合

もしお子様が情緒面で問題を抱えている場合、愛着不安を持っている可能性があります。特に入門①で挙げた、癇癪を起すと止まらない、声をかけても嫌がるなど、当てはまる項目が多い場合は対策が必要になってくるかもしれません。

親として心がける事

そこで、入門コラム②では親として子どもと接するコツについて解説をしています。愛着形成の土台は「わがままを聞いてもらった」「泣いたときにあやしてもらった」などの基本的な体験が大事になってきます。子育てのコツを知りたいと感じる方は以下のリンク先をクリックしてみてください。

・抱っこして歩く大作戦
・無条件の肯定ストローク法
・夫婦関係を円満にしよう
・親も成長しよう
愛着障害入門②子共,幼児の保育・治療・種類

入門③ 大人の愛着障害への対策

影響は成人しても続く

もし過去に両親との関係が悪かった方は、愛着不安が根底に残っている可能性があります。ネグレクトを受けていた、親が怒りやすい性格だったという方は注意が必要です。愛着は実際に社会適応の土台になっていると考えられます。幼少期に愛着障害がある方は友人関係や恋愛で躓きやすくなるのです。

成人になってからの対策

もし幼少期の親との関係が悪く、それが現在の自分に影響しているかもしれないと感じたら入門コラム③をご一読いただくことをオススメします。研究や対策など解説していきます。
・愛着スタイルごとの解決策
・他人に愛着を求めない
・大人になってからの治療
愛着障害の克服法!大人の愛着障害はどうやって治療する?入門③

愛着障害 克服

発展編‐発展

ここから先は愛着障害をより深く理解したい方向けの内容となります。様々な研究や知識をお伝えします。愛着障害について基礎的なことは理解したけどもっと深く知識を得たい方、医療関係者や福祉関係の学生様は参考にして頂けると幸いです。

発展① Harlowの愛着形成‐動物実験

愛着理論のベースとも言われる、Harlowのアカケザルの実験について解説をしました。

愛着形成とは何か?アカケザルの実験②

発展② 他の精神疾患との関連

愛着障害は、様々な精神疾患や心理的な問題と併存しやすと言われています。参考にしてみてください。

発達障害との違い,他の精神疾患との関連③

発展③ 簡易診断とチェック

愛着不安が強いかもしれない。という方はこちらの診断をご利用ください。

簡易診断とチェック

発展④ 曖昧さ耐性の欠如

愛着不安がある方は、あいまいさ耐性が低いことが分かっています。あいまいさ耐性と愛着不安について、解説と対応策について解説しています。興味がある方は下記動画を参照ください。

まとめ+助け合い掲示板の活用

入門①まとめ

入門1の解説は以上となります。愛着障害は親の影響があるため、運命的なものともいえます。過去に戻るわけにもいかないので、嘆く方もいらっしゃいます。ただ歴史上の偉人は愛着不安を抱えていることが多いと言われています。不安はある意味で、自分の特性で、情緒の豊かさや、人間関係の機微の源泉でもあります。しっかりと自分自身を理解して、前向きな特性としてほしいなと感じています。

助け合い掲示板の活用

ページ下部には助け合い掲示板があります。当コラムは愛着について考え方が多く集います。お互いの悩みや経験談など相談してみましょう。*お互いを思いやったご投稿をよろしくお願いします。

講座のお知らせ

コラムだけでなく心理の専門家の講義を受けてみたい!という方は下のお知らせをクリックして頂けると幸いです。私たちが講義をしている講座となります。

★対人関係に欠かせない要素。大人でも練習で愛着形成はできる

コメント

3件のコメント

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    • ひかり
    • 2019年5月18日 11:21 AM

    私は、ひきこもり型の傾向があります。
    他人との信頼関係が築きにくいです。
    私は幼い時から他人を信用するな、余計な事は話すなと教わってきたので、
    今でも他人と関わるのが怖く感じます。
    大人になってから(自分を受け入れてほしい)という気持ちが強くなってきたので、
    どのように表現してよいのか分からずに、相手に冷たい態度を取ったり、
    あえて突き放すような態度を取ったりと、(振る舞い)(しぐさ)などの、
    曖昧なメッセージを使って相手に伝えようとしてしまいます。
    素直に伝える表現の仕方が分からず悩む時があります。
    普段からのコミュニケーションを大切にするように心がけていきたいと思います。

    2+
    • べり
    • 2019年3月4日 7:03 PM

    愛着障害を自覚しています。興味深く拝見しました。
    文章で読むと、なんだか安心しますね。
    子供と大人とそれぞれに解説があったのが分かりやすかったです。

    何故か診断はできませんでしたが、私は見捨てられ不安型ではないかと考えます。
    いきなり自分の内面的な話をしてしまう、というのは昔よくした失敗で苦笑でした。

    年を重ね随分改善したと思いますが、過去の経験から自分には安定した関係は作れないと強い思いがあり苦しいです。この後のコラムも読んでさらに改善させたいです。

    1+
    • たいな
    • 2020年1月11日 10:29 PM

    中2です。自分が愛着障害かははっきりとは分からないのですが、先生に構ってもらいたいからわざと悪いことをしてみたり、問題児のフリをしてみたりしてしまうことがあります。ですが、親の前ではいい子のフリをしています。本当の自分が分かりません。これって、やはり障害なのでしょうか?自分では分かりません。教えていただければ幸いです。

    0

コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士
  • 社会心理学会会員

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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出典・参考文献
・丹羽智美(2005) 青年期における親への愛着と環境移行期における適応過程 パーソナリティ研究 13 156-169 名古屋大学

中島 義明 子安 増生 繁桝 算男 箱田 裕司 安藤 清志 (1999)心理学辞典 有斐閣