夫婦喧嘩の仲直り方法・子供への影響①
はじめまして!公認心理師の川島です。
今回のテーマは
「夫婦喧嘩,仲直り」
です。
はじめに
家庭は心を休める安全基地です。一方で
・家事の分担で喧嘩になる
・子供の育て方で喧嘩になる
・お金の使い方で言い争い…
このような状態では心が休まる暇がありません。お互いのイライラが募り、離婚してしまう夫婦もいらっしゃいます。
日本の離婚件数は年間、22万件で社会問題になっていると言えます。
そこで当コラムでは、夫婦喧嘩についての心理的な研究と対策をしっかりお伝えします。目次は以下の通りです。
・夫婦喧嘩の統計
・仲直り力を診断しよう
・仲直りの5つのプロセス
・発展:感謝の気持ちを持つ
・発展:価値観のズレがある時
皆さんの円満な家庭のために少しでもお役に立てればと思います。是非最後までご一読ください。
夫婦喧嘩と統計,研究
夫婦喧嘩は心理的に様々な負担をもたらします。さらには夫婦だけでなく、子供にすら影響が及びます。
心理学の分野ではこれまで、夫婦仲について様々な研究がなされてきました。重要なものをピックアップしたので、気になる項目がありましたら展開してみてください。
世の中の夫婦はどういった内容で喧嘩をしているのでしょうか。
川島(2013)は、Yahoo!知恵袋の投稿データ2004年4月1日~2009年4月7日までの、質問データ総数1600万件を調査し、夫婦喧嘩の内容調査を行いました。
その結果、以下のようになりました。
グラフの通り、経済面や義両親などの関係は離婚の決定打にはならず、パートナーの人格、癖、行動が決断の大きな要因になることが分かります。
子どものいる家庭では、夫婦喧嘩が子供の成長や教育、人格形成に悪影響を与えてしまうこともあります。
張(2015)の研究では日本と中国の高校生537名を対象に、夫婦喧嘩が子供のメンタルへルスにどのように影響するかを調べました。
その結果の1つが以下の図です。
このように、親に対する恐れを感じた子供は、無気力感に苛まれることが分かります。
夫婦喧嘩の状態は子供にも恐怖を覚えさせます。その結果、無気力になる可能性もあり、不登校につながるなどの結果になることもあります。注意が必要です。
夫婦喧嘩は子供の成長や教育、人格形成に悪影響を与えてしまうこともあります。
張(2015)の研究では日本と中国の高校生537名を対象に、質問紙を用いて夫婦喧嘩が子供のメンタルへルスにどのように影響するかを調べました。
その結果の1つが以下の図です。
このように、夫婦喧嘩で親に対する恐れを感じた子供は、抑うつ傾向が高まるにことが分かります。
家の中で緊迫した状態が続いていれば、心を休めることができません。結果、どんどんメンタルへルスが悪化してしまうのですね。
菅原ら(2002)は、1360名の母親を対象に夫婦関係が子どものメンタルヘルスにどのような影響を与えるか調査をしました。
その結果が以下の図です。
このように以下のような流れが発生していることが分かります。
1.父親と母親がお互いに愛情を持つ
2.家族の雰囲気がよくなる
3.子どもの抑うつ傾向が低くなる
夫婦関係が良好だと、家族も円滑になり、子どものメンタルへルスを安定させてくれるのです。また、以下のような流れも確認できます。
1.母親が父親に対して愛情を持つ
2.子どもにも暖かく接することができる
3.子どもの抑うつ傾向を下げる
このように、夫婦関係によって子どもの精神的な健康が左右されてしまいます。夫婦喧嘩の中で「子どもたちは関係ないでしょ!」という発言をしてしまう人は、少し配慮する必要があるかもしれません。
夫婦関係‐仲直り力診断
普段の家庭生活でのやりとりや夫婦喧嘩を振り返ってセルフチェックをしてみましょう。以下、おりたたんで診断を記載をしましたので気になる方は展開してみてください。
以下の項目のうち、自分たちに思い当たることはいくつあるか数えてみてください♪
当てはまった数はいくつでしたか?
→ 個
夫婦満足度をチェックしよう
当てはまった数から、あなたの家庭の夫婦円満度、または深刻な夫婦喧嘩による危機的状況の可能性がどのくらいなのかを確かめましょう!
0個
夫婦円満!お互いを尊重したコミュニケーションが取れているようです。ぜひ、そのままの思いやりや配慮の気持ちを持ちながら円満な家庭を持続してください!
1~5個
夫婦の危機度は低めですが、少し意識をして会話をするようにした方が良いでしょう。どんな夫婦だって、不満に思うことの1つや2つはあって当然です。大切なのは、1つ1つ話し合った上で解決していくことです。
6~10個
要改善!夫婦の危機度はやや低めではありますが、油断は禁物です!また、最後の3つ(NO14.15.16)があてはまった場合は夫婦仲が悪化している可能性もあるので、常態化しているようであれば早急な改善が必要です。
11個以上
かなり危険な状態です。特に、最後の3つ(NO14.15.16)、あてはまった場合は、夫婦仲がかなり悪化しているかもしれません。「離婚」の二文字が頭をよぎったことも一度や二度ではないのでは?!
しかし、あなた(お互い)の気持ちややり方次第で危機から脱出できるはずです。直ちに冷静になって話し合いの機会を持つことと、相手に対する配慮やコミュニケーションの取り方を改めましょう。
診断を受けて夫婦喧嘩を解消したいという気持ちを持たれた方は、これから当コラムでご紹介する対処法を学んで一緒に対策していきましょう。
仲直りをする5つのプロセス
ここからは夫婦喧嘩から仲直りをする5つプロセスを提案させて頂きます。口を利かないほどの気まずい状況を改善するアイデアをお伝えします。
参考になりそうなものがありましたらご自身の生活でも試してみてくださいね。
1.話し合う決意を固める
2.あいさつ,イイネで土台作り
3.話しあいのオファー
4.相手の価値観を傾聴する
5.アサーティブに話しあう
それぞれの方法のポイントを理解して実践してくださいね。
1.決意を固める
夫婦喧嘩をした後、自分から仲直りに踏み切れなくなるのが人間です。しかし、大概の場合は、しっかりと話し合うことができれば、関係は修復できるものです。
まずはいつかは話し合おうと決意を固めることから始めていきましょう。あなたにその覚悟がなければ、家庭環境が改善されることはありません。
厳しいようですが、この決意を固めない限りは2以降の改善策は水泡と帰してしまいます。
2.あいさつ,気遣いで土台作り
決意が固まったら次に、関係ベース作りをしていきます。重要なポイントは毎日の何気ないコミュニケーションです。例えば、
おはよう
おかえり
これだけで、ガラリと印象は変わるものです。また、あなたが夫なら休日は家事を手伝う、あなたが妻なら夫の好物の料理を作るなど少しの気遣いをしていきましょう。
相手が好意的に感じることを積極的に行うことで、話し合いのきっかけとなる可能性もあります。
3.話し合う提案
ベースの関係作りを重ねたら、次にいよいよ話し合いの提案をしていきます。
ここは真面目に率直に言ってOkです。実はずっと話し合いと思っていたんだ…としっかり告げましょう。残念ながらNGな場合もありますが、ほとんどの場合はOKをもらえるはずです。
なおタイミングは相手の気分がよい時が狙い目です。心理学の研究では「気分一致効果(リンク)」と言って、プラスの感情の時は、プラスの反応が返ってきやすくなります。
金曜日の夜など、ほっとした時間に提案するといいでしょう。
*NGが続く場合
残念ながら断固拒絶されることもあります。その場合はどこかで区切りをつけることも大事です。
4.相手の価値観を傾聴する
話し合いの場面になったら、まずは相手の気持ちを素直に傾聴するようにしましょう。とりあず自分の気持ちは一旦置いておきます。そうして、
・ここは納得できるな
・ここは同感だな
と思える部分をしっかり見つけていきましょう。
そして、ちゃんと相手に伝えます。確かにそこは私もそう思う。そうか~そうだよね、と共感を大事にしてみてください。
なお共感の仕方については下記のコラムに書いてあります。後程練習してみてください。
5.アサーティブに話しあう
話し合いをすると大概の場合は、夫婦関係は改善されます。しかし、それでも上手くかみ合わない場合には以下の方法を試してみると良いでしょう。
・アサーティブとは
まだズレが残っている場合は、あなたの考えも伝えるようにしましょう。ここで大事なのはアサーティブな精神を持つことです。アサーティブとは相手を尊重しつつ自身の主張も伝え、建設的な関係を築く手法です。
・意見が食い違う場合
例えば、土日は家事を手伝うと約束していたのに、夫が手伝わなかったとします。この時、夫が
「いや、忙しくて家事はできなかったし、それを悪いとは思わない」
と言ったとします。それに対してあなたは納得できない時は相手の意見も尊重しつつ、自分の気持ちを主張していきます。例えば、
「確かに仕事を忙しいのは分かる。けど、それなら今日は忙しくて手伝えないと前持って言ってほしかった。」
このように、相手を肯定しつつも自分の気持ちを伝えていくのです。建設的な議論ができるように提案をしていきましょう。
アサーティブコミュニケーションについては下記のコラムでしっかり記述しています。話し合いの前にぜひ参考にしてみてくださいね。
発展編‐夫婦喧嘩にならないように
最後に発展編として、夫婦円満になる方法を3つ提案させて頂きます。是非日々の生活で意識してみてください。
感謝の気持ちを持つ
夫婦喧嘩を解消したい場合、パートナーの「感謝できる部分」に目を向けることが大切です。例え、夫婦喧嘩状態にあっても、必ず相手のおかげで生活が成り立っている部分があるはすです。
・家事をしてくれる
・お金を稼いでくれる
・育児をしてくれる
など、してもらっている部分に目を向けてきましょう。感謝できる部分を再確認すると、自然と相手に対する敵意が薄れていくものです。
感謝の気持ちを持つ方法をより深く知りたい方は下記をご覧ください。
価値観のズレがある時
夫婦喧嘩の大きな原因の1つとして、「価値観のズレ」があります。やはり2人は別々の人間なので、もちろん趣味趣向や考え方の違いは出てきてしまいます。
つまり、夫婦円満の秘訣はお互いの価値観のズレをすり合わせることにかかっていると言っても過言ではありません。コラム3では、夫婦の価値観のズレを上手くすり合わせるコツをご紹介しています。
価値観のズレを乗り越える方法を詳しく知りたい方は下記をご覧ください。
日々の会話が超重要
山口(2007)では夫婦の会話時間が増えると、夫への信頼度が増すことが分かっています。日々の会話が少ない状態では、お互いに不信感が募り、夫婦喧嘩が起きやすくなってしまいます。
そこで、会話を定例化することが大切です。
夫婦生活が長くなるほど、家庭内の会話も少なくなっていきます。このタイミングで会話をする!とあらかじめ決めておくことで、バランス良く夫婦の会話は活性化していきます。
まとめ+お知らせ
まとめ
夫婦喧嘩になってしまったことに後悔したり、罪悪感を感じているかもしません。しかし、落ち込む必要は一切ありません。
夫婦生活に喧嘩は付きものです。夫婦の信頼関係は、お互いにぶつかり合い、本音で話しあうことでより強固なものになっていきます。そのため、あなたの今の状況は夫婦関係を深めるための絶好のチャンスなのです。
夫婦喧嘩の最中は辛いものですが、その辛い状況を2人で乗り越えていくことで絆は深まっていきます。ぜひご紹介した方法を活用して、円満な夫婦関係を送ってくださいね♪
お知らせ
もし公認心理師,精神保健福祉士など専門家の元でしっかり心理学を学習したい方場合は、私たちが開催しているコミュニケーション講座をオススメしています。講座では
・アサーティブコミュニケーション
・傾聴力をつける練習
・共感力トレーニング
・暖かい人間関係を築くコツ
など練習していきます。興味がある方はお知らせをクリックして頂けると幸いです。ぜひお待ちしています。
コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科修士
取材執筆活動など
- AERA 「飲み会での会話術」
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
- TOKYOガルリ テレビ東京出演
ブログ→
YouTube→
Twitter→
*出典・参考文献
Huston,T.L.,Caughlin,J P,Houts,R M,Smith,S. E.&George,L. J(2001)「The Connubial Crucible: Newlywed Years as Predictors of Marital Delight, Distress, and Divorce.」Journal of Personality and Social Psychology, 80(2), 237-252.
Howard J.Markman・Galena K.Rhoades・Scott M.Stanley・Erica P.Ragan・ Sarah W. Whitton(2010)「The Premarital Communication Roots of Marital Distress and Divorce: The First Five Years of Marriage」
岩藤裕美(2008)「葛藤生起場面における夫婦間コミュニケーション・スタイル ―尺度の作成と妥当性の検討―」人間文化創成科学論叢第11巻2008年
I.R.スチュアート,L.E.アブト(1972)「離婚・別居の家族と子ども」家政教育社
ジョエル・Dブロック/スーザン・S・バーテル(2004)「パパ、ママぼくを巻き込まないで!」旭屋出版
張新荷(2015)「夫婦間葛藤に対する青年期の子供の反応と心理的ストレス反応の関連-日本と中国の高校生を対象にー」東北大学大学院研究科研究年報 第63集・第2号(2015年)
川島(2013)「Yahoo!知恵袋」に見る夫婦間葛藤解決方略 千葉大学教育学部研究紀要 第61巻 185~191頁
「離婚に関する調査2016」(2016)リクルートブライダル総研http://bridal-souken.net/data/divorce/divorce2016_release.pdf
菅原ら(2002)夫婦関係と児童期の子どもの抑うつ傾向との関連より一部改変して掲載教育心理学研究,2002,50,129ー140