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遊戯療法①やり方,効果,種類などを基礎

遊戯療法①やり方,効果,種類などを基礎

みなさんこんにちは。執筆者の橋爪麻由子です。私は臨床心理士として学校などでカウンセリングやコンサルテーションを行っています。

心理療法の知識をみなさんにわかりやすくお伝えし、みなさんの生活などにお役に立つことができるとうれしいです。

今回のテーマは
「遊戯療法」
です!

遊戯療法は主に、子どもに対して行う治療法です。実際の治療場面ではどんなことをするのだろう?と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。

このコラムを読んで少しでもみなさんの身近になり、ご興味を持っていただけると嬉しいです。

遊戯療法と歴史

意味

心理学辞典(1999)によると遊戯療法は以下のように定義されています。

子どもを対象として遊びを通じて行う心理療法

子どもは言葉のやり取りによって自分の気持ちを表現することがまだ十分にできない

遊びを代わりに用いることでありのままの自己表現を促し自己成長へと向ける
(一部簡略化)

始まりは精神分析

遊戯療法以前、精神分析という心理療法をフロイトが創設しました。精神分析とは、私たちの問題となる行動や葛藤は、無意識の世界が影響しているというものです。

興味がありましたら後程こちらの精神分析コラムも参照ください。その精神分析を学習する一人に、オーストリアの精神分析医であるヘルミン・ハグ・ヘルムートがいました。

ヘルミン・ハグ・ヘルムート

ヘルムートは「子供の魂の人生から」というプロジェクトを発足させ、子供の精神分析について研究をしていきます。その過程でヘルムートはある発見をします。

精神分析は通常自分の過去を回想し無意識を探ります。一方で子どもはそれに消極的であり、自分の感情を大人ほど言葉にすることが難しいと発見したのです。

ヘルムートは子どもを分析するために「遊び」が重要であること、遊びを通して自分を表現するために遊具やおもちゃが必要であると説きました。

しかし残念ながら、ヘルムートの研究はそこまで有名にはなりませんでした。

アンナ・フロイトと遊戯療法

ヘルムートの研究を理論として体系づけ広めたのは、主にアンナ・フロイトとメラニー・クラインといえるでしょう。この二人が子供に精神分析を応用し実践しました。これを児童分析といいます。

アンナ・フロイトは、精神分析の創始者で有名なフロイトの娘にあたります。アンナは1925年前後から、本格的に児童の精神分析を始めます。

最初の出版物は「精神分析入門:児童アナリストと教師のための講義」でした。これはアンナが実際に子どもと接するときに行っていた手法をまとめたものです。

アンナは子供が絵を描いたり、遊んだりするなかで表現されるものは、無意識の葛藤が隠れていると考え、これを治療に役立てようとしました。

さらにアンナは、遊戯療法は精神分析だけでなく、親と子の信頼関係を築く手段でもあると主張しました。単に分析を目的とするだけでなく、親と子の関係をよりよくしようとした点に特徴があります。

メラニー・クラインと遊戯療法

アンナフロイトと双璧をなすのは、メライン・クラインです。クラインはウイーン出身の精神分析家です。アンナフロイトと同じく精神分析を基盤にしています。

クラインは、プレイセラピーという手法を提唱しました。プレイセラピーでは、おもちゃ、人形、ペットがいる部屋で子どもに遊んでもらいそれをしっかり観察することで子ども深層心理を探っていくという手法です。

アンナ・フロイトとメラニー・クラインは遊戯療法以外にも精神分析の自我防衛機制の理論に携わったり、母子関係と子供の発達についての理論を挙げたりなどさまざまな分野で活躍しました。

遊戯療法の発展

遊戯療法においては、アンナとクラインはお互いの理論について激しく闘争し合います。その結果、遊戯療法は様々な学派に別れていきました。最後に、重要な2人を紹介します。

・デイヴィッド・レヴィ
(David Revy)  

開放療法という方法を提唱しました。精神分析のような解釈は必要とせず、遊ぶことが抑圧された感情を解放し治療になると考えたのです。

開放療法では、子どもが自由に遊ぶことで遊戯室や治療者に慣れる一方で、治療者は遊びを子どもと一緒に展開します。そしてだんだんと子どもにストレスが起きるような遊具を与え、トラウマ体験や不安を活性化させます。

・バージニア・アクスライン
(Virginia Axline)
 
非指示的遊戯療法と呼ばれます。アクスラインはロジャーズの非指示的療法(来談者中心療法)を遊戯療法に取り入れ、8つの条件をまとめ発表しました。遊戯療法については、後程詳しく解説します。

非指示的遊戯療法は、子どもが自分への認識を高め、自己実現を促すため、子どもをコントロールしたり変えたりしない点が特徴です。子どもは時には何もせずに沈黙してもよく、治療者はそんな子どもに寄り添い、言葉を繰り返します。

遊戯療法の特徴

遊戯療法は様々な学派に別れていますが、共通する特徴がいくつもあります。以下を入門としておさえておきましょう。

実施場所

遊戯療法は、12歳頃までの子どもを対象に
・病院のカウンセリングルーム
・学校のカウンセリングルーム
・児童養護施設
・市区町村などの相談施設
・民間の施設
などで行われます。

各施設には「遊戯室」が設置されます。子どもはそこで思う存分遊び、「遊び」を通して自分の心を表現します。治療者は遊びに加わり観察をすることで、子どもの心の状態を理解し、不安や悩み、心の病気を治療していきます。

遊戯室の雰囲気

遊戯室には積み木、人形、ままごと道具、お絵描きセット、ボールや鉄砲などさまざまなおもちゃがあります。場合によっては砂場や水遊びができる場所なども備わっています。安全にも十分に配慮された、安心できる空間で子どもが遊べます。

*雰囲気は下記を参照ください。

治療の進め方

治療の目的は、子どもが遊びを通して自分の心の中を表現し、それを治療者が上手に汲み取ることで子どもの感情を言い換えたり不安を和らげることです。そうすることで、子どもの抱えている悩みや心の病気を治療します。

施設によりますが、だいたい1時間程度の時間で行われ、定められた部屋で遊びます。これは治療を進めていく上での約束事です。

また約束事は他にもあります。自分や人に怪我などの危害が呼ぶ場合には、治療者が止めに入ることがあります。約束事を設けるからこそ、子どもは安心できる空間で思う存分遊ぶことができるのです。

なぜ効果があるの?

子どもは不安や悩み、心の病気などを人に上手に伝えることができません。そこで「遊び」を通し自分の心の中の様子を表し不安などを和らげていきます。言葉で表すことが苦手な子供にとって「遊び」はとても大切なコミュニケーションツールなのです。

遊戯療法は子どもの不安や悩み、心の病気などを治療するだけでなく、子ども自身が治療者と一緒に本来の自分(自己)を探し発見できます。

自分ってどんな人だろう?という内省が深まり、不安や怒りなどの感情も上手にコントロールできるようになるのです。

対象となる児童

遊戯療法は様々な児童の心理的問題に対して行われます。具体的には以下の問題が挙げられます。

・自閉症スペクトラム
・愛着障害
・ADHD
・チック症状
・場面緘黙
・不登校
・体の異常
・問題を抱える親子
など…子どもにはたくさんの悩みや問題が溢れています。子供の頃は原因を確定することが難しく、遊戯療法は原因を把握する上での参考としても活用されています。

思想は誰でも活かせる

本格的な遊戯療法は専門機関で行われますが、その思想や手法は学校や幼稚園の先生、保育士の方など、子どもに関わる職業の方におすすめです。また親子の間でも、とても役に立つ心理療法です。

子どもが心身ともに成長するには、身体の感覚、感情(情動)の感覚、言葉の感覚を養い、全てが一連につながることが必要です。

遊びを通してそのような感覚を養うことも子どもにとっては必要なのです。どんな悩みや困難があっても、周りの人らが寄り添うことで、子どもの成長の可能性は無限に広がります。

子どもへの関わりを通して大人のみなさんも自分自身を振り返ってみるのもよいかもしれませんね。子どもの「遊び」を通して、親も子も成長に繋げていきましょう。

遊戯療法-発展編

遊戯療法をより詳しく理解したい方は下記を参考にしてみてください。

場面緘黙への事例

場面緘黙症の子供への実践例を解説しました。以下のコラムで参考にしてみてください。

遊戯療法と場面緘黙症への対処

情緒不安定への事例

乱暴で情緒不安定なの子供への実践例を解説しました。以下のコラムで参考にしてみてください。

遊戯療法と乱暴,情緒不安定への対処

アイクスライン8つの原則

治療者として心がけたい8つの原則について解説しました。支援者の方、保護者の方は遊戯療法以外でも参考になると思います。是非ご一読ください。

遊戯療法と乱暴,情緒不安定への対処

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*出典

中島 義明 子安 増生 繁桝 算男 箱田 裕司 安藤 清志 (1999)心理学辞典 有斐閣