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いじめを"なかったこと"にしない

いじめ撲滅

~ 教職員の方はこちら ~ いじめを"なかったこと"にしないために!誠実な学校対応とは

はじめまして!いじめ撲滅委員会代表、公認心理師の栗本顕です。私の専門は「いじめ」です。心理学の大学院で研究もしてきました。現在はいじめの問題を撲滅するべく、研修やカウンセリング活動を行っています。

いじめ撲滅委員会代表栗本顕

今回のテーマは「いじめを"なかったこと"にしない学校対応」です。学校現場で「この程度のことは」と見過ごされがちな出来事が、実は深刻ないじめの始まりかもしれません。子どもたちの心を守るために、私たちができることを一緒に考えていきましょう。

目次は以下の通りです。

①いじめを隠蔽する実態
②いじめと学校の義務
③いじめ早期発見のポイント
④いじめ事案の適切な対処手順
⑤重大事態を防ぐ体制作り
⑥外部機関との連携
⑦いじめ解決後の対応
⑧加害者への教育

いじめに苦しむ子どもたちを一人でも多く救うために、正しい知識と対応方法を身につけることが大切です。ぜひ最後までご一読ください。

いじめを隠蔽する実態

残念ながら、現在でも多くの学校でいじめの隠蔽が行われています。その背景には、学校組織特有の問題があります。

学校が隠蔽する理由と背景

なぜ学校はいじめを隠したがるのでしょうか。その理由を知ることで、問題の根本が見えてきます。多くの場合、管理職の立場を守りたいという気持ちが働いています。いじめが表面化すると、校長や副校長は教育委員会から厳しく問われることになります。

学校評価制度も大きな影響を与えています。いじめの件数が多いと、学校の評価が下がってしまいます。そのため、小さな問題は「友達同士のトラブル」として処理してしまうことがあるのです。

また、教育委員会への報告義務を避けたいという思いもあります。報告すると詳しい調査や対応策の作成が必要になり、多くの時間と労力がかかってしまいます。

隠蔽する理由
管理職の責任回避
学校評価への影響
報告義務の回避

このような理由から、本来守るべき子どもたちの心よりも、大人の都合が優先されてしまうのです。

隠蔽対応が生む深刻な問題

いじめを隠すことで、どのような問題が起こるのでしょうか。まず、被害を受けた子どもが二度傷つくことになります。勇気を出して相談したのに「そんなことはない」と言われると、子どもの心は深く傷つきます。

問題を放置すると、いじめがエスカレートして重大事態に発展する危険があります。軽微に見えたいじめが、やがて子どもの命にかかわる深刻な事態になってしまうのです。

さらに、学校は法的責任を問われるリスクも高くなります。適切な対応を怠ったことで、損害賠償請求を受ける可能性もあります。隠蔽は結果的に、より大きな問題を生み出してしまうのです。

隠蔽が生む問題
被害者の二次被害
重大事態への発展
法的責任の追及

このように、いじめを隠すことは誰にとっても良い結果をもたらしません。

いじめを隠蔽する学校

いじめと学校の義務

平成25年に制定された「いじめ防止対策推進法」は、学校にいくつかの重要な義務を課しています。

いじめの正しい定義と認知基準

いじめとは何かを正しく理解することが、適切な対応の第一歩です。法律では「被害を受けた子どもが心身の苦痛を感じているもの」と定義されています。これは非常に重要なポイントです。

加害者に悪意がなくても、受け手が苦痛を感じればいじめになります。「遊びのつもりだった」「そんなつもりはなかった」という言葉は、いじめの判断には関係ありません。大切なのは、被害を受けた子どもの気持ちなのです。

また、一見軽微に見える行為も認知の対象になります。小さなからかいや仲間はずれも、子どもにとっては大きな苦痛になることがあります。大人の感覚で「この程度なら」と判断してはいけません。

認知の基準
被害者の苦痛が基準
加害者の意図は無関係
軽微でも認知対象

この基準を理解することで、見過ごしがちないじめを早期に発見できるようになります。

学校が負う5つの法的義務

いじめ防止対策推進法は、学校に5つの具体的な義務を定めています。これらの義務を正しく理解し、確実に実行することが大切です。

まず、事実確認と設置者への報告義務があります。いじめの疑いがある場合は、速やかに調査を行い、結果を教育委員会に報告しなければなりません。次に、被害者への支援と加害者への指導も重要な義務です。

さらに、被害者が安心して教育を受けられる環境を整える義務もあります。これには、クラス替えや別室での授業なども含まれます。保護者との情報共有も欠かせません。最後に、犯罪行為に該当する場合は警察との連携も必要になります。

学校の5つの義務
事実確認と報告
被害者支援
加害者指導
環境整備
警察連携

これらの義務を果たすことで、子どもたちを守ることができるのです。

いじめ早期発見のポイント

いじめを早期に発見するためには、日頃からの観察と組織的な取り組みが重要です。

見逃しやすいサインの発見法

いじめのサインは様々な形で現れます。朝、学校に来たがらない、授業中にぼんやりしている、友達と話さなくなったなど、日常の変化に注目することが大切です。また、体に傷がある、持ち物が壊れているなどの物理的な変化も見逃せません。

教職員間での情報共有システムを作ることも重要です。担任だけでなく、部活動の顧問、養護教諭、用務員さんなど、学校にいる全ての大人が子どもたちを見守る体制が必要です。些細な変化でも報告し合うことで、いじめの芽を早期に摘むことができます。

定期的な児童生徒との面談も効果的です。アンケートだけでなく、一対一で話す時間を作ることで、子どもたちが安心して相談できる環境を作りましょう。

発見のポイント
日常変化の観察
教職員の情報共有
定期的な面談

これらの取り組みにより、いじめの早期発見につながります。

教職員の抱え込み防止策

一人の教員が問題を抱え込んでしまうことは、非常に危険です。「自分が何とかしなければ」という責任感は大切ですが、組織的な対応が法律で定められています。学校いじめ対策組織を活用し、複数の目で問題を見ることが重要です。

管理職への報告ルートを明確にしておくことも必要です。どんな小さな情報でも、まずは学年主任や生徒指導主任に相談し、必要に応じて管理職に報告する流れを作りましょう。報告することは決して恥ずかしいことではありません。

また、外部の専門家の力を借りることも大切です。スクールカウンセラーや教育委員会の指導主事など、専門的な知識を持った人たちと連携することで、より適切な対応ができるようになります。

抱え込み防止策
組織的対応の徹底
報告ルートの明確化
外部専門家の活用

一人で悩まず、チーム一丸となって子どもたちを支えることが大切です。

いじめ事案の適切な対処手順

いじめが発覚した際の対応手順を明確にしておくことで、混乱を避け、適切な対応ができます。

初期対応の重要ステップ

いじめが発覚したら、まず被害を受けた子どもの安全を確保することが最優先です。心理的な安全も含めて、その子が安心できる環境を作りましょう。「あなたは悪くない」「必ず守る」というメッセージを伝えることが大切です。

次に、事実関係を客観的に調査します。感情的にならず、冷静に情報を収集しましょう。関係者から個別に話を聞き、矛盾がないか確認します。この際、被害者を責めるような質問は絶対に避けなければなりません。

加害者への教育的指導も重要です。なぜその行為がいけないのか、相手がどんな気持ちになったのかを理解させることが必要です。ただし、一方的に叱るのではなく、その子の背景も理解しながら指導することが大切です。

初期対応ステップ
被害者の安全確保
客観的事実調査
加害者への指導

これらのステップを順序立てて行うことで、適切な対応ができるでしょう。

保護者対応の注意点

保護者対応は特に慎重に行う必要があります。被害者の保護者には、学校がしっかりと対応することを約束し、定期的に経過を報告しましょう。不安な気持ちを理解し、丁寧に説明することが信頼関係を築く鍵です。

加害者の保護者との協議も建設的に行うことが重要です。子どもを責めるのではなく、一緒に解決策を考える姿勢で臨みましょう。家庭での様子や背景を聞くことで、より効果的な指導方法が見つかることもあります。

面談を行う際は、必ず第三者を同席させましょう。管理職や学年主任、場合によってはスクールカウンセラーも交えることで、公正性を保つことができます。感情的になりやすい場面だからこそ、冷静に対応することが大切です。

保護者対応の注意点
被害者側への丁寧説明
加害者側との建設的協議
第三者同席での面談

保護者との信頼関係を築くことが、問題解決への近道になります。

重大事態を防ぐ体制作り

いじめが重大事態に発展することを防ぐためには、日頃からの体制作りが欠かせません。

学校いじめ防止基本方針の策定

学校いじめ防止基本方針は、すべての学校で策定が義務付けられています。この方針には、予防プログラムの年間計画を含めることが重要です。道徳の授業や学級活動で、いじめについて考える機会を定期的に設けましょう。

早期発見システムの構築も欠かせません。アンケート調査の実施時期や方法、相談窓口の設置など、具体的な取り組みを明文化しておくことが大切です。子どもたちが相談しやすい環境を作ることが、早期発見につながります。

事案対処マニュアルの整備により、いざという時に適切な対応ができます。誰が何をするのか、連絡体制はどうするのかなど、具体的な手順を決めておきましょう。定期的に見直しを行い、実情に合わせて改善することも重要です。

基本方針の内容
予防プログラム計画
早期発見システム
対処マニュアル

しっかりとした方針があることで、全教職員が同じ方向を向いて取り組むことができます。

教職員研修と意識改革

教職員のいじめ対応スキル向上は継続的に取り組む必要があります。年に数回の研修会を開催し、最新の知識や対応方法を学びましょう。実際の事例を基にしたロールプレイングも効果的です。

組織的対応の徹底も重要なテーマです。一人で抱え込まない、情報を共有する、チームで対応するという意識を全教職員で共有しましょう。研修を通じて、なぜ組織的対応が必要なのかを理解してもらうことが大切です。

被害者視点での問題認識を持つことも欠かせません。大人の感覚ではなく、子どもの気持ちに寄り添って考える習慣を身につけましょう。研修では、実際に被害を受けた子どもの体験談を聞く機会を設けることも効果的です。

研修のポイント
対応スキル向上
組織的対応の徹底
被害者視点の理解

教職員の意識が変われば、学校全体の雰囲気も大きく変わります。

外部機関との連携

学校だけでは解決できない問題もあります。外部機関との連携を活用しましょう。

教育委員会への適切な報告

教育委員会への報告は法的義務です。報告のタイミングや内容について正しく理解しておきましょう。いじめを認知した場合は、速やかに第一報を入れることが大切です。その後の経過についても、定期的に報告を続けます。

支援要請の方法も具体的に把握しておくことが重要です。学校だけでは対応が困難な場合、どのような支援を求められるのかを知っておきましょう。専門家の派遣や他校の事例紹介など、様々な支援を受けることができます。

調査に協力する際の進め方も重要です。教育委員会から調査依頼があった場合は、誠実に協力しましょう。隠し事をせず、事実をありのままに報告することが、問題解決への近道になります。

教育委員会との連携
適切な報告タイミング
具体的な支援要請
調査への誠実な協力

教育委員会は学校の味方です。遠慮せずに相談することが大切です。

警察・専門機関との協働

いじめの中には犯罪行為に該当するものもあります。暴力、脅迫、恐喝、窃盗などは明らかな犯罪です。このような場合は、教育的配慮も大切ですが、警察への通報も必要になります。通報基準を明確にしておくことが重要です。

スクールカウンセラーの活用も効果的です。心の専門家として、被害者や加害者の心のケアを行ってくれます。また、教職員への助言も行ってくれるので、積極的に相談しましょう。

地域の支援ネットワークを構築することも大切です。児童相談所、民生委員、地域のボランティア団体など、様々な機関と連携することで、より手厚い支援ができるようになります。

専門機関との協働
警察への通報基準
カウンセラー活用
地域ネットワーク

一つの機関だけでなく、複数の機関と連携することで、より良い解決策が見つかります。

いじめをなかったことにしない,外部機関との連携

いじめ解決後の対応

いじめが解決したと思っても、継続的な見守りが必要です。

解消状態の正しい判断

いじめが解消したかどうかの判断は慎重に行う必要があります。法律では、少なくとも3か月間は継続的に観察することが定められています。表面的に止まったように見えても、陰で続いている可能性があるからです。

被害者と保護者への確認も欠かせません。本人が「大丈夫」と言っても、本当に安心できているのかを丁寧に確認しましょう。定期的な面談を通じて、心の状態を把握することが大切です。

再発防止策の検証も重要な作業です。なぜいじめが起こったのか、どのような対応が効果的だったのかを分析し、今後に活かしましょう。同様の問題が起こらないよう、継続的に取り組むことが必要です。

解消判断のポイント
3か月以上の観察
本人・保護者確認
再発防止策検証

「解決した」と安心せず、継続的な見守りを続けることが大切です。

学級・学校全体への指導

いじめの問題は、被害者と加害者だけの問題ではありません。周りで見ていた子どもたちへの指導も重要です。なぜ止められなかったのか、今後はどうすべきかを一緒に考えましょう。傍観者から支援者へと意識を変えることが大切です。

いじめを許さない校風作りも継続的に取り組む必要があります。全校朝会や学年集会で、いじめについて話す機会を定期的に設けましょう。子どもたちが自分たちで考え、行動できるような環境を作ることが重要です。

人権意識向上の取り組みを通じて、お互いを大切にする気持ちを育てましょう。道徳の時間だけでなく、日常の学校生活の中で人権について考える機会を作ることが大切です。

全体への指導内容
傍観者への教育
いじめを許さない校風
人権意識の向上

学校全体で取り組むことで、いじめの起こりにくい環境を作ることができます。

加害者への教育

加害者への対応は、処罰だけでなく教育的な視点が重要です。

処罰ではない指導の重要性

加害者への対応で大切なのは、なぜその行為がいけないのかを理解させることです。一方的に叱るのではなく、相手の気持ちを考えさせることが重要です。被害者がどんなつらい思いをしたのかを想像させ、共感力を育てましょう。

加害者の背景を理解することも必要です。家庭環境や友人関係、学習面での悩みなど、いじめをしてしまう背景には様々な要因があります。その子が抱えている問題にも目を向け、根本的な解決を図ることが大切です。

保護者と連携した支援も欠かせません。学校だけでなく、家庭でも一貫した指導を行うことで、より効果的な改善が期待できます。保護者の協力を得ながら、その子の成長を支えていきましょう。

指導のポイント
共感力の育成
背景要因の理解
保護者との連携

加害者も一人の子どもです。成長の機会として捉えることが大切です。

冤罪疑いへの慎重対応

時には、いじめの加害者とされた子どもが実際にはやっていない場合もあります。このような冤罪を防ぐためには、事実確認の客観性を確保することが重要です。一方の話だけを信じるのではなく、複数の証言や証拠を集めて判断しましょう。

関係者からの聞き取りは丁寧に行う必要があります。誘導的な質問は避け、事実のみを聞き出すよう心がけましょう。子どもは大人の期待に応えようとして、事実と異なることを言ってしまう場合もあります。

公正な調査手続きを実施することで、間違いを防ぐことができます。調査の過程を記録に残し、透明性を保ちましょう。疑いが晴れた場合は、その子の名誉を回復するための措置も必要です。

冤罪防止のポイント
客観的事実確認
丁寧な聞き取り
公正な調査手続き

間違った判断は、無実の子どもを深く傷つけてしまいます。慎重な対応が必要です。

まとめ

いじめを「なかったこと」にしない学校対応について、法的義務から具体的な対処法まで詳しく解説してきました。子どもたちの心を守るためには、大人の都合ではなく、子どもの気持ちを最優先に考えることが大切です。

一人の教員が抱え込むのではなく、学校全体で組織的に取り組むこと、そして必要に応じて外部機関と連携することで、より良い解決が可能になります。いじめに苦しむ子どもたちを一人でも多く救うために、今日から実践できることから始めてみてください。

子どもたちの笑顔を守るのは、私たち大人の責任です。

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いじめ撲滅委員会では、全国の小~高校生・保護者のかた、先生方にカウンセリングや教育相談を行っています。カウンセラーの栗本は、「いじめ」をテーマに研究を続けており、もうすぐで10年になろうとしています。

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