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校内でのチーム対応の進め方

いじめ撲滅

~ 教職員の方はこちら ~ 【いじめ問題】担任だけで抱えない!校内でのチーム対応の進め方

はじめまして!いじめ撲滅委員会代表、公認心理師の栗本顕です。私の専門は「いじめ」です。心理学の大学院で研究もしてきました。現在はいじめの問題を撲滅するべく、研修やカウンセリング活動を行っています。

いじめ撲滅委員会代表栗本顕

今回のテーマは「担任だけで抱えない!校内でのチーム対応の進め方」です。

「クラスでいじめが起きているかもしれない…でも一人で判断していいのだろうか」「保護者に連絡する前に、誰かに相談したほうがいいのでは」そんな不安を感じたことはありませんか。

いじめ問題は、一人の先生だけで抱え込むにはあまりにも重すぎる課題です。本記事では、学校全体でチームを組んで対応する方法について解説していきます。

目次は以下の通りです。

①なぜ担任一人では対応できないのか
②校内のいじめ対策組織とは
③いじめ発見から初動対応まで
④被害児童への支援体制
⑤加害児童への指導と支援
⑥管理職の役割と責任
⑦組織的対応のための記録管理
⑧学年・学級を超えた連携
⑨保護者との協力体制づくり
⑩外部機関との連携方法
⑪定例会議の効果的な運営
⑫重大事態への対応

いじめ問題は、学校全体で取り組むべき重要な課題です。一人で悩まず、チームの力で子どもたちを守る方法を一緒に学んでいきましょう。ぜひ最後までご一読ください。

なぜ担任一人では対応できないのか

いじめ問題は年々複雑になっており、一人の先生だけでは見きれない部分が増えています。ここでは、なぜチームでの対応が必要なのかを見ていきましょう。

いじめ問題の複雑化

現代のいじめは、昔とは大きく変わってきています。教室内だけでなく、SNSやメッセージアプリを使ったいじめも増えており、先生の目が届きにくくなっているのが現状です。

言葉での悪口だけでなく、無視や仲間外れ、ネット上での誹謗中傷など、その形も多様化しています。このような複雑ないじめに対して、一人の先生が全てを把握し、適切に対応することは非常に困難です。

SNSでの陰口
グループ外し
写真の無断拡散
24時間続く攻撃
証拠が残りにくい

また、被害を受けた子どもも、加害行為をした子どもも、それぞれに心のケアが必要となります。一人で全てを抱えようとすると、対応が遅れたり、見落としが出たりする危険性が高まります。複数の目で見ることで、子どもたちの本当の姿が見えてくるのです。

担任が抱え込むリスク

担任の先生が一人でいじめ問題を抱え込むと、様々なリスクが生じます。まず、自分のクラスの子どもたちへの思い入れが強いあまり、「うちのクラスにいじめなんてあってほしくない」という気持ちが判断を鈍らせることがあります。

また、「自分の指導力不足だと思われたくない」という不安から、管理職への報告をためらってしまうこともあります。

判断が偏る
対応が遅れる
精神的に疲弊
見落としが増える
孤立してしまう

さらに、一人で対応しようとすると、24時間365日、そのことが頭から離れなくなり、精神的に追い詰められてしまいます。教師も人間です。

一人で背負い込むのではなく、チームで支え合うことが大切なのです。そして何より、子どもたちにとって最善の対応をするためには、複数の目で見て、複数の視点で考えることが必要不可欠です。

法律で定められた組織対応

実は、いじめ問題への組織的な対応は、法律で定められています。2013年に施行された「いじめ防止対策推進法」では、教職員がいじめの情報を学校内で共有しないことは法律違反になる可能性があると明記されています。

つまり、一人で抱え込むことは、法的にも問題があるのです。この法律により、すべての学校には「いじめ対策組織」を設置することが義務付けられています。

情報共有の義務
組織設置の義務
迅速な対応義務
保護者への説明
教育委員会報告

いじめの疑いがあると感じたら、必ず管理職に報告し、組織で対応することが求められているのです。一人で判断するのではなく、チームで判断する。これは法律で定められた義務であり、子どもたちを守るための大切なルールなのです。

いじめ 法律

校内のいじめ対策組織とは

すべての学校には、いじめに対応するための専門チームが設置されています。このチームがどのように機能するのかを理解しておきましょう。

いじめ対策組織の役割

いじめ対策組織は、学校内でいじめに関する情報が集まる司令塔のような存在です。担任の先生や養護教諭、学年主任など、さまざまな立場の先生から寄せられる情報を一か所に集約し、「これはいじめなのか」「どう対応すべきか」を組織として判断します。

一人ではなく、複数の目で見ることで、より正確な判断ができるのです。また、この組織は一度対応したら終わりではありません。

情報の集約
いじめの認知
方針の決定
役割分担の決定
継続的な見守り

いじめが解決した後も、被害を受けた子どもが安心して学校生活を送れているか、加害行為をした子どもが同じことを繰り返していないかを、継続的に見守る役割も担っています。

学校全体で子どもたちを守る体制を作ることが、この組織の最も重要な使命なのです。

組織の構成メンバー

いじめ対策組織には、様々な立場の教職員が参加します。校長先生や教頭先生といった管理職は、組織全体を統括し、重要な判断を下します。学年主任や生徒指導担当の先生は、日常的に子どもたちと接する中で得た情報を提供し、具体的な対応策を考えます。

養護教諭は、保健室を訪れる子どもたちの様子から、いじめの兆候を察知することがあります。そして担任の先生は、クラスでの子どもたちの様子を最もよく知る立場として、詳しい情報を提供します。

校長・教頭
学年主任
生徒指導担当
養護教諭
担任教師

このように、それぞれの立場から見える景色は異なります。だからこそ、みんなで情報を持ち寄ることで、子どもたちの本当の姿が見えてくるのです。

一人では気づけなかったことも、チームなら気づくことができます。

外部専門家との連携

いじめ対策組織には、学校の先生だけでなく、外部の専門家にも参加してもらうことができます。スクールカウンセラーは、臨床心理士や公認心理師の資格を持つ心の専門家です。子どもたちの心のケアや、保護者との面談など、心理的なサポートを担当します。

スクールソーシャルワーカーは、家庭環境に課題がある場合などに、福祉的な支援を行います。また、法的な問題が関わる場合には弁護士に、医療的なケアが必要な場合には医師に相談することもあります。

カウンセラー
ソーシャルワーカー
弁護士
医師
警察官OB

さらに、警察官OBが学校の安全管理について助言してくれることもあります。このように、学校だけでは解決が難しい問題も、様々な専門家の力を借りることで、子どもたちにとって最善の対応ができるようになるのです。

校内いじめ対策組織

いじめ発見から初動対応まで

いじめを発見したら、すぐに行動を起こすことが大切です。ここでは、発見から最初の対応までの流れを見ていきましょう。

発見時の報告ルール

いじめかもしれないと感じたら、担任の先生は「もう少し様子を見よう」と思わず、すぐに管理職に報告することが大切です。「いじめかどうか分からない」「まだ確実な証拠がない」と思っても、まずは報告してください。

いじめかどうかの最終的な判断は、担任一人ではなく、組織全体で行うものだからです。報告することは、決して恥ずかしいことではありません。むしろ、早く報告することで、被害を最小限に抑えることができます。

いつ起きたか
誰が関わっているか
何があったか
どこで起きたか
子どもの様子

また、報告をためらわせない職場の雰囲気を作ることも大切です。「報告してくれてありがとう」という言葉をかけ合い、みんなで支え合える環境を作りましょう。早期発見、早期対応。これがいじめから子どもたちを守る第一歩なのです。

緊急会議の開催

いじめの報告を受けたら、管理職は速やかにいじめ対策組織のメンバーを招集し、緊急会議を開きます。この会議は、報告を受けたその日のうちに、できれば数時間以内に開くことが理想です。時間が経つほど、いじめはエスカレートし、被害が大きくなる可能性があるからです。

会議では、担任から詳しい状況を聞き、全員で情報を共有します。そして、誰がどのような役割を担うのか、具体的な行動計画を立てます。

事実確認の方法
誰が何をするか
保護者への連絡
被害者の安全確保
今後の方針

たとえば、担任は被害を受けた子どもの話を聞く、学年主任は周りの子どもたちから情報を集める、養護教諭は心のケアをする、といった具合です。一人一人が自分の役割を理解し、チーム一丸となって動くことが、迅速な対応につながります。

事実確認の進め方

いじめの事実確認は、慎重に、しかし迅速に行う必要があります。まず最初に、被害を受けた子どもの話をじっくりと聞きます。この時、「本当にあったの?」と疑うような態度ではなく、「つらい思いをしたね」と受け止める姿勢が大切です。

子どもが安心して話せる環境を作り、いつ、どこで、誰に、何をされたのかを丁寧に聞き取ります。次に、加害行為をしたとされる子どもからも話を聞きます。

被害者の聞き取り
加害者の聞き取り
周囲の聞き取り
物的証拠の確認
記録の作成

ただし、被害を受けた子どもと加害行為をした子どもを直接対面させることは避けます。力関係がある中では、本当のことが言えないからです。

また、周りで見ていた子どもたちからも、注意深く情報を集めます。そして、これらの情報をすべて記録に残します。正確な記録は、今後の対応の大切な資料となります。

被害児童への支援体制

いじめを受けた子どもの心と体を守ることが、何よりも優先されます。ここでは、被害を受けた子どもへの具体的な支援方法を見ていきましょう。

心のケアの実施

いじめを受けた子どもの心は、深く傷ついています。「もう大丈夫だよ」という言葉だけでは、その傷は癒えません。担任の先生は、日常的に声をかけ、子どもの様子を見守ります。養護教諭は、保健室という安全な場所で、子どもの話を聞きます。

そして、専門的な心のケアが必要な場合は、スクールカウンセラーにつなぎます。心のケアで最も大切なのは、「あなたは一人じゃない」「私たちはあなたを守る」というメッセージを、言葉と行動で伝え続けることです。心のケアの方法は以下になります。

毎日の声かけ
安全な居場所
カウンセリング
家庭との連携
継続的な見守り

時間はかかるかもしれませんが、大人たちが味方でいてくれるという実感が、子どもの心を少しずつ回復させていきます。焦らず、じっくりと、子どものペースに合わせて支援していくことが大切です。

保護者との連携

被害を受けた子どもの保護者には、できるだけ早く連絡を取り、学校で起きたことを正直に伝えます。「いじめがありました」ときちんと認め、学校としてどのように対応するのかを具体的に説明します。

保護者の不安や怒りの気持ちを真摯に受け止め、一緒に子どもを守っていく姿勢を示すことが大切です。決して、学校の都合を優先してはいけません。そして、その後も定期的に連絡を取り、学校での子どもの様子を伝えます。

家庭での様子も教えてもらい、学校と家庭で情報を共有しながら、子どもを支えていきます。保護者との信頼関係があってこそ、子どもは安心して学校に通うことができるのです。

学習面でのサポート

いじめを受けた子どもの中には、教室に入ることが怖くて、学校を休んだり、別室で過ごしたりする子もいます。そのような場合でも、学習の機会を失わないようにサポートすることが大切です。別室での学習支援や、放課後の補習など、その子に合った方法で学びを続けられるようにします。

教室に戻れないことを責めるのではなく、今できることを一緒に考えます。そして、子どもの心が回復し、「また教室に行ってみようかな」と思えたときには、段階的に教室に戻れるようサポートします。

最初は給食の時間だけ、次は好きな授業だけ、というように、少しずつステップを踏んでいきます。焦らせず、子どものペースを大切にすることが、確実な回復への道となります。

加害児童への指導と支援

いじめをした子どもへの対応も、組織的に、そして教育的に行う必要があります。ここでは、その具体的な方法を見ていきましょう。

組織的な指導の実施

加害行為をした子どもへの指導は、担任一人ではなく、必ず複数の教職員で行います。たとえば、担任と学年主任、または担任と生徒指導担当といった組み合わせです。複数で指導することで、子どもに「学校全体が自分の行為を重く見ている」ということが伝わります。

また、一人の先生の感情に左右されることなく、冷静で公平な指導ができます。指導では、何が悪かったのか、相手がどれだけ傷ついたのかを、具体的に伝えます。

ただ叱るだけでなく、「なぜそのようなことをしたのか」を聞き、その子の抱えている問題にも目を向けます。そして、二度と同じことを繰り返さないための約束をし、その後も継続的に見守ります。

一度指導して終わりではなく、その子の成長を支え続ける姿勢が大切です。

加害児童の背景理解

いじめをしてしまう子どもの背後には、様々な事情があることがあります。家庭で厳しく叱られている反動で、学校で弱い立場の子に当たってしまう子もいます。発達の特性から、相手の気持ちを理解することが苦手な子もいます。

また、自分自身が過去にいじめを受けた経験があり、その痛みから逃れるために加害側に回ってしまう子もいます。だからこそ、表面的な行為だけを叱るのではなく、その子の背景にも目を向ける必要があります。

家庭環境の課題
発達特性の配慮
過去の被害体験
ストレスの蓄積
自己肯定感の低さ

この部分の目を向けるようにしましょう。必要であれば、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーと連携し、その子自身への支援も行います。「いじめをした子ども」として責めるだけでなく、「困っている子ども」として支える視点も持つことが、本当の意味での問題解決につながります。

加害保護者への対応

加害行為をした子どもの保護者への連絡は、とても難しい対応の一つです。しかし、これも組織として行うことが大切です。校長や教頭も同席し、事実を丁寧に、そして正確に伝えます。

保護者の中には、「うちの子に限って」と信じられない様子を見せる方もいます。そのような場合でも、感情的にならず、冷静に、具体的な事実を伝えることが重要です。

そして、学校だけでなく、家庭でも一緒に子どもを指導していただくよう、協力をお願いします。

複数人で対応
事実の丁寧な説明
証拠の提示
協力の依頼
継続的な連絡

保護者を責めるのではなく、「一緒に子どもの成長を支えましょう」という姿勢で接することが大切です。

また、被害を受けた子どもの保護者との直接のやり取りは避けていただき、学校を通してのコミュニケーションをお願いします。感情的な対立を防ぐための配慮です。

管理職の役割と責任

校長先生や教頭先生といった管理職は、いじめ対応において重要な役割を担います。ここでは、管理職に求められることを見ていきましょう。

校長のリーダーシップ

校長先生は、学校全体のいじめ対策を統括する責任者です。いじめ対策組織が適切に機能しているか、教職員がきちんと報告・相談できる環境になっているかを常に確認します。

また、重大ないじめ事案が発生した場合には、教育委員会への報告、保護者への説明、マスコミ対応など、学校の代表として対外的な役割も担います。

そして何より大切なのは、「いじめは絶対に許さない」という強いメッセージを、全校児童・生徒、教職員、保護者に発信し続けることです。

組織の統括
教育委員会報告
保護者対応
教職員の指導
方針の決定

校長先生の姿勢が、学校全体の雰囲気を作ります。いじめに対して毅然とした態度を示すことで、子どもたちも「いじめは悪いこと」という認識を持つようになります。

リーダーとしての強い意志が、学校を変える原動力となるのです。

教頭の調整機能

教頭先生は、校長先生を補佐し、実際の対応の中心となって動きます。いじめに関する情報が入ってきたら、それを整理し、いじめ対策組織のメンバーに伝えます。そして、誰が何をするのか、具体的な役割分担を決め、それぞれの進捗状況を管理します。

また、保護者からの電話や来校にも対応し、学校全体の調整役として機能します。教頭先生は、いわば学校の司令塔です。各教職員が自分の役割を果たせているか、困っていることはないかを常に気にかけ、必要に応じてサポートします。

教頭の主な役割は以下になります。

情報の整理
役割分担の決定
進捗の管理
保護者対応
教職員の支援

また、担任の先生が一人で抱え込んでいないか、精神的に追い詰められていないかにも目を配ります。教職員一人一人が安心して働ける環境を作ることも、教頭先生の大切な役割なのです。

対応の優先順位の判断

管理職には、いじめ事案の深刻さを見極め、適切な対応を判断する力が求められます。たとえば、暴力を伴うケースや、SNSで拡散されているケースなど、緊急性の高い事案では、即座に警察に連絡する必要があります。

また、被害を受けた子どもが自殺をほのめかすような発言をした場合には、重大事態として対応する必要があります。このような判断は、経験や知識が必要とされる難しいものです。

だからこそ、日頃から教職員研修を行い、管理職自身も学び続ける必要があります。優先度の高いケースは以下になります。

暴力行為がある
金品の要求
自殺のほのめかし
長期欠席
ネット拡散

また、判断に迷ったときには、教育委員会や警察、弁護士など、外部の専門家に相談することも大切です。子どもの命と安全を最優先に、適切な判断を下すこと。それが管理職に求められる最も重要な責任なのです。

いじめ,校長先生,教頭先生

組織的対応のための記録

いじめ対応では、正確な記録を残すことが非常に重要です。ここでは、記録の取り方と管理方法を見ていきましょう。

情報記録の方法

いじめに関する情報は、必ず記録に残します。「いつ」「どこで」「誰が」「誰に」「何を」したのかを、できるだけ具体的に、そして客観的に記録します。

「○○くんがいじめられた」という曖昧な表現ではなく、「○月○日の昼休み、教室で、Aさんが○○くんの筆箱を隠した」というように、事実を正確に記録します。

また、聞き取りをした際の子どもの言葉も、できるだけそのまま記録します。「悲しそうだった」という印象ではなく、「『もう学校に行きたくない』と泣きながら言った」というように、具体的に書きます。

記録に残すべき内容は以下になります。

日時と場所
関係者の名前
具体的な行為
子どもの様子
対応した内容

この記録は、後々、保護者への説明や、教育委員会への報告、場合によっては警察や裁判での証拠となる可能性もあります。正確な記録が、適切な対応の基盤となるのです。

情報共有ツールの活用

記録した情報は、いじめ対策組織のメンバー間で共有する必要があります。多くの学校では、「生徒指導ファイル」や「いじめ対応記録簿」といった専用のファイルを作り、そこに全ての情報を集約しています。

このファイルは、職員室の決まった場所に保管し、関係する教職員がいつでも見られるようにしておきます。

また、定例のいじめ対策会議では、この記録を元に、各ケースの進捗状況を確認します。最近では、デジタル化して、タブレットやパソコンで情報を共有する学校も増えています。

情報共有の方法は以下になります。

専用ファイル作成
定例会議で報告
デジタル記録
アクセス権限設定
定期的な更新

ただし、個人情報が含まれるため、アクセスできる人を限定し、セキュリティには十分注意する必要があります。適切な情報共有が、チームでの対応を支えます。

個人情報保護との両立

いじめに関する記録には、子どもたちの名前や家庭の事情など、センシティブな個人情報が含まれます。これらの情報は、むやみに広げてはいけません。

情報を共有する範囲は、「その情報を知る必要がある人」に限定します。たとえば、6年生で起きたいじめの詳細を、1年生の担任が知る必要はありません。

必要最小限の範囲で共有することが原則です。記録は、鍵のかかる場所に保管し、持ち出しは原則禁止とします。また、教職員には守秘義務があることを改めて確認し、家族や友人にも話さないよう徹底します。

情報管理のルールは以下になります。

必要な範囲で共有
施錠管理の徹底
持ち出し禁止
廃棄時の注意
守秘義務の徹底

そして、一定期間が経過し、記録が不要になった場合には、シュレッダーで確実に廃棄します。子どもたちのプライバシーを守りながら、必要な情報共有を行う。このバランスが大切なのです。

学年・学級を超えた連携

いじめは、一つの学級だけで起きるとは限りません。学年や学級を超えた連携も重要です。

学年間の情報共有

子どもたちは毎年進級し、担任の先生も変わります。しかし、いじめの問題は、学年が変わったからといって突然解決するものではありません。前の学年でいじめを受けていた子どもは、新しい学年でも不安を抱えているかもしれません。

また、いじめをしていた子どもが、同じクラスになった場合、再びいじめが起きる可能性もあります。

だからこそ、進級する際には、前年度の担任から新しい担任へ、しっかりと引き継ぎを行います。過去にいじめがあったこと、どのように対応したのか、今も見守りが必要な子どもは誰かなど、詳しく情報を伝えます。

学年間連携のポイントは以下になります。

進級時の引き継ぎ
過去の記録確認
継続的な見守り
クラス編成の配慮
情報の更新

また、クラス編成の際にも、いじめの被害者と加害者を離すなどの配慮をします。学年が変わっても、学校全体で見守り続けることが大切です。

学級担任同士の協力

いじめは、自分のクラスだけで完結するものではありません。休み時間や放課後、廊下や校庭など、様々な場所で起こります。また、別のクラスの子どもが関わっていることもあります。

だからこそ、学級担任同士が協力し、お互いのクラスの子どもたちの様子を共有することが大切です。

「○○さん、最近元気がないみたいだけど、大丈夫?」と声をかけ合うことから始まります。また、休み時間には、自分のクラスだけでなく、廊下や階段、トイレなど、様々な場所に目を配ります。

日常的な声かけ
休み時間の見守り
他クラス情報共有
合同指導の実施
横断的な理解

他のクラスの子どもが困っていたら、自分のクラスの子どもでなくても声をかけます。学校全体の子どもたちを、学校全体の教職員で見守る。この意識が、いじめの早期発見につながります。

部活動顧問との連携

中学校では、部活動の中でいじめが起こることもあります。部活動は、授業とは違う密接な人間関係があり、先輩後輩の上下関係も厳しい場合があります。

また、部活動の時間は、担任の先生の目が届きにくい時間でもあります。だからこそ、部活動の顧問の先生からいじめ対策組織への報告ルートを、しっかりと確保しておく必要があります。

顧問の先生は、部活動の中で子どもたちの様子を注意深く観察し、気になることがあれば、すぐに担任や生徒指導担当に報告します。

部活動での連携は以下になります。

顧問からの報告
部活内の観察
上下関係の把握
指導の連動
保護者への説明

そして、いじめがあった場合には、部活動での指導と、学級での指導を連動させます。たとえば、部活動で謹慎処分を受けた子どもに対して、学級でもフォローするといった具合です。学校生活全体を通して、一貫した指導を行うことが大切です。

保護者との協力体制づくり

いじめの解決には、保護者の理解と協力が欠かせません。ここでは、保護者との関わり方を見ていきましょう。

被害保護者への対応

被害を受けた子どもの保護者は、強い不安と怒りを抱えています。「なぜうちの子が」「学校は何をしていたのか」という思いでいっぱいです。そのような保護者に対して、学校は誠実に、そして迅速に対応する必要があります。まず、いじめがあったことを認め、心からお詫びします。

そして、学校として今後どのように対応していくのかを、具体的に説明します。そして、一度説明して終わりではなく、その後も定期的に連絡を取り、学校での子どもの様子を伝えます。

「今日は給食を全部食べました」「休み時間に友達と話していました」など、小さなことでも報告します。

迅速な連絡
誠実な謝罪
具体的な説明
定期的な報告
寄り添う姿勢

保護者が安心できるまで、寄り添い続ける姿勢が大切です。学校と保護者が信頼関係を築き、一緒に子どもを守っていく。これが何より重要なのです。

加害保護者への対応

加害行為をした子どもの保護者への対応は、とてもデリケートです。多くの保護者は、自分の子どもがいじめをしたと聞いて、大きなショックを受けます。「信じられない」「何かの間違いでは」と思うのは当然の反応です。

そのような保護者に対して、感情的に責めるのではなく、冷静に、そして丁寧に事実を伝えることが大切です。そして、保護者を責めるのではなく、「一緒にお子さんの成長を支えましょう」という姿勢で接します。

家庭でも指導していただくようお願いし、学校と家庭で連携して子どもを見守ることの大切さを伝えます。

加害者の保護者への具体的なポイントは以下の通りです。

冷静な説明
事実の提示
協力の依頼
子の成長支援
継続的な連絡

加害行為をした子どもも、支援が必要な子どもです。保護者と学校が協力することで、その子が同じ過ちを繰り返さないよう、成長を支えることができるのです。

保護者間トラブルの防止

いじめが起きると、被害を受けた子どもの保護者と、加害行為をした子どもの保護者の間で、直接対決のようなことが起こることがあります。しかし、これは避けなければなりません。感情的な対立は、問題をより複雑にし、子どもたちにとっても良い結果を生まないからです。

学校は、保護者同士が直接連絡を取らないよう、お願いします。もし謝罪の場を設ける場合には、必ず学校の教職員が同席します。校長や教頭が立ち会い、感情的にならないよう、冷静に話し合いができるようサポートします。

トラブル防止策は以下になります。

直接対決を避ける
学校を通す連絡
第三者の同席
謝罪の場の設定
冷静な対話

また、謝罪は形だけのものにならないよう、加害行為をした子ども本人に、自分の行為をしっかりと反省させた上で行います。保護者間のトラブルを防ぎ、子どもたちのために最善の解決を目指す。それが学校の役割です。

いじめ対応,保護者との連携

外部機関との連携方法

学校だけでは対応しきれない問題もあります。外部の専門機関との連携方法を知っておきましょう。

教育委員会との連携

教育委員会は、学校を指導・支援する立場にあります。いじめの重大事態が発生した場合や、学校だけでは判断が難しい問題がある場合には、教育委員会に報告し、指導を仰ぎます。また、保護者からの強い要望があり、学校と保護者の間で話し合いが難航している場合にも、教育委員会に間に入ってもらうことがあります。

教育委員会には、いじめ問題に詳しい指導主事がいます。困ったときには、一人で悩まず、教育委員会に相談することが大切です。また、定期的に教育委員会からの調査や報告の依頼があります。

重大事態の報告
指導助言の要請
保護者対応支援
調査への協力
情報の共有

これらにきちんと対応し、日頃から良好な関係を築いておくことで、いざというときにスムーズに連携できます。学校と教育委員会が協力して、子どもたちを守る体制を作ります。

警察との連携

いじめの中には、犯罪行為に該当するものもあります。たとえば、殴る蹴るなどの暴行、お金を脅し取る恐喝、持ち物を隠したり壊したりする器物損壊などです。このような場合には、教育的な指導だけでなく、警察との連携も必要になります。

「子どもの将来を考えて」と警察への連絡をためらう学校もありますが、それは間違いです。犯罪行為は犯罪行為として、きちんと対処することが、加害行為をした子どもにとっても、責任を学ぶ大切な機会となります。また、被害を受けた子どもの安全を守るためにも、警察の力が必要な場合があります。

暴行・傷害
恐喝・脅迫
器物損壊
ストーカー行為
児童ポルノ

学校と警察が連携し、子どもたちを犯罪から守り、そして加害行為をした子どもには適切な指導を行う。これが社会全体での子ども支援なのです。

医療機関との連携

いじめによって、心や体に深い傷を負った子どもには、医療的なケアが必要な場合があります。学校のスクールカウンセラーだけでは対応しきれないほどの心の傷を負っている場合、精神科や心療内科での治療が必要になることがあります。また、暴力を受けて怪我をした場合には、整形外科などでの治療も必要です。

学校は、保護者に医療機関の受診を勧め、必要に応じて学校での様子を医師に伝えます。また、医師の診断書がある場合には、それを踏まえた対応を行います。

医療機関連携は以下になります。

精神科・心療内科
小児科
整形外科
診断書の取得
継続治療の配慮

たとえば、「しばらく集団活動を避けるように」という指示があれば、それに従います。医療機関と連携し、医学的な視点も取り入れながら、子どもの回復を支えることが大切です。

児童相談所との連携

いじめの背景に、家庭での虐待やネグレクトが疑われる場合があります。たとえば、いじめをする子どもが、家庭で暴力を受けていたり、極度に厳しいしつけを受けていたりすることがあります。

また、いじめを受けた子どもが、家庭でも適切なケアを受けられない状況にあることもあります。このような場合には、児童相談所と連携する必要があります。

児童相談所は、子どもの福祉を守る専門機関です。学校が虐待を疑った場合には、通告する義務があります。また、家庭環境に課題があり、福祉的な支援が必要な場合にも、児童相談所に相談します。

児童相談所連携は以下になります。

虐待の疑い通告
家庭環境の調査
福祉的支援
一時保護の検討
継続的な見守り

子どもを守るためには、学校だけでなく、様々な機関が連携することが必要です。児童相談所と協力し、子どもの安全と健やかな成長を支えていきます。

定例会議の運営

いじめ対策組織を機能させるには、定期的な会議が欠かせません。効果的な会議の進め方を見ていきましょう。

会議の頻度と時間設定

いじめ対策組織の会議は、定期的に開催することが大切です。多くの学校では、週に1回、または月に2回程度の頻度で定例会議を開いています。定期的に開くことで、いじめの早期発見につながり、また、継続的な見守りが必要なケースの進捗確認もできます。

会議の時間は、30分から1時間程度が適当です。ただし、重大ないじめが発生した場合には、定例会議を待たずに、緊急会議を招集します。いじめ対応は、スピードが命です。また、会議には、いじめ対策組織のメンバー全員が参加することが原則です。

会議運営のポイントは以下になります。

週1回の定例開催
30分〜1時間
緊急時は即座に
全員参加が原則
時間厳守

やむを得ず欠席する場合には、事前に情報を共有し、決定事項を後で確実に伝えます。効率的で実効性のある会議運営が、組織対応の要となります。

議題の設定と進行

会議では、まず新しく発生したいじめのケースについて報告します。担任や養護教諭など、発見者から詳しい状況を聞き、全員で情報を共有します。

次に、現在対応中のケースについて、それぞれの進捗状況を確認します。「被害を受けた子どもは元気に登校している」「加害行為をした子どもに再指導を行った」など、具体的な報告を行います。

そして、今後どのように対応していくのか、具体的な方針を決めます。誰が、いつまでに、何をするのかを明確にし、次の会議までの役割分担を決めます。

新規ケースの報告
継続ケースの確認
対応方針の検討
役割分担の決定
次回までの課題

会議の進行は、通常、教頭先生や生徒指導主任が務めます。ダラダラと長引かせず、要点を押さえた効率的な会議を心がけます。限られた時間を有効に使い、子どもたちのために何をすべきかを、全員で考え、決定します。

議事録の作成と共有

会議の内容は、必ず議事録として記録に残します。いつ会議を開いたのか、誰が出席したのか、どのようなケースについて話し合ったのか、どのような方針を決定したのかを、具体的に記録します。

特に、決定事項は明確に書き残します。「○○先生が、○月○日までに、被害児童の保護者に連絡する」というように、誰が何をするのかが分かるように記録します。議事録は、会議が終わったらできるだけ早く作成し、メンバー全員に共有します。欠席したメンバーにも必ず届けます。

議事録に記載する内容は以下になります。

日時と出席者
報告されたケース
話し合った内容
決定事項
次回までの課題

また、議事録は、いじめ対応の記録として、他の資料と一緒に保管します。後から見返したときに、学校がどのように対応してきたのかが分かる、大切な証拠となります。きちんとした記録が、組織的な対応を支えるのです。

重大事態への対応

いじめが深刻化し、重大事態となった場合の対応について知っておく必要があります。

重大事態の定義

いじめ防止対策推進法では、「重大事態」を明確に定義しています。一つ目は、いじめによって子どもの生命、心や体、財産に重大な被害が生じた場合です。たとえば、自殺を図った、大きな怪我をした、精神疾患を発症した、金品を奪われたなどのケースです。

二つ目は、いじめによって、相当の期間(目安は30日)学校を欠席している場合です。また、これらに該当しない場合でも、保護者から「重大事態として調査してほしい」という申し立てがあった場合には、重大事態として扱います。

重大事態の例は以下になります。

自殺・自殺未遂
大怪我・精神疾患
金品の強要
30日以上の欠席
保護者の申し立て

重大事態と判断したら、学校や教育委員会は、速やかに調査を開始する義務があります。決して、「重大事態ではない」と軽く考えてはいけません。子どもの命と安全を守ることが、何よりも優先されるのです。

調査委員会の設置

重大事態が発生したら、学校または教育委員会は、調査委員会を設置します。この委員会は、学校の教職員だけでなく、弁護士、臨床心理士、医師など、外部の専門家も含めて構成されます。公平で客観的な調査を行うためです。

調査委員会は、いじめの事実関係を詳しく調べ、何が起きたのか、学校の対応に問題はなかったのかを明らかにします。調査では、被害を受けた子どもや保護者、関係する子どもたち、教職員など、様々な人から話を聞きます。また、学校に保管されている記録や、アンケートの結果なども分析します。

事実関係の調査
関係者への聞き取り
資料の収集と分析
報告書の作成
再発防止策の提言

そして、調査結果をまとめた報告書を作成し、教育委員会や保護者に提出します。この報告書は、同じような事態を二度と起こさないための、大切な資料となります。

再発防止策の策定

調査が終わったら、その結果を踏まえて、再発防止策を作ります。「なぜいじめを防げなかったのか」「どこに問題があったのか」を分析し、具体的な改善策を立てます。たとえば、

アンケートの実施方法を見直す
対策組織の会議を週1回に増やす
教職員研修を充実させる

といった具合です。

これらの対策は、文書にまとめ、全教職員で共有します。そして、これらの対策を確実に実行します。作っただけで終わらせてはいけません。定期的に、対策が実行されているか、効果が出ているかを確認し、必要に応じて見直します。

再発防止策の例は以下になります。

早期発見体制の強化
組織対応の徹底
研修の充実
相談体制の改善
保護者との連携強化

重大事態は、学校にとって大きな教訓です。その教訓を無駄にせず、二度と同じことを繰り返さないという強い決意を持って、学校全体で改善に取り組むことが大切です。

まとめ

ここまで、いじめ問題への組織的な対応について、様々な角度から見てきました。最後に、大切なポイントをまとめます。

組織でいじめに対応することには、多くの利点があります。まず、一人では気づけなかったことも、複数の目で見ることで気づけます。担任は授業中の様子を、養護教諭は保健室での様子を、それぞれの立場から見ることで、子どもの全体像が見えてきます。また、判断を組織で行うことで、偏りや間違いを防ぐことができます。

一人の思い込みではなく、みんなで考えることが大切です。さらに、担任一人が抱え込むことによる精神的な負担も、チームで分かち合うことができます。「一人じゃない」という安心感は、教職員にとっても大きな支えとなります。

相談をご希望の方へ

いじめ撲滅委員会では、全国の小~高校生・保護者のかた、先生方にカウンセリングや教育相談を行っています。カウンセラーの栗本は、「いじめ」をテーマに研究を続けており、もうすぐで10年になろうとしています。

・いじめにあって苦しい
・いじめの記憶が辛い
・学校が動いてくれない
・子供がいじめにあっている

など、いじめについてお困りのことがありましたらご相談ください。詳しくは以下の看板からお待ちしています。

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