~ 校長,教頭先生はこちら ~ 校長のいじめ初動対応マニュアル!発覚直後の正しい行動
はじめまして!いじめ撲滅委員会代表、公認心理師の栗本顕です。私の専門は「いじめ」です。心理学の大学院で研究もしてきました。
現在はいじめの問題を撲滅するべく、研修やカウンセリング活動を行っています。

今回のテーマは「校長のいじめ初動対応」です。
学校でいじめが発覚したとき、校長として何から手をつければいいのか迷うことはありませんか。初動対応を誤ると、被害児童の心の傷を深めたり、保護者との信頼関係を失ったりする可能性があります。本記事では校長として取るべき正しい初動対応について解説していきます。
目次は以下の通りです。
①いじめ発覚時の基本姿勢
②最初の24時間の動き
③被害児童への対応
④加害児童への指導
⑤重大事態の判断
⑥再発防止の体制
⑦外部機関との連携
いじめは学校にとって最も重要な課題のひとつです。校長の迅速で適切な判断が、子どもたちの未来を守ります。ぜひ最後までご一読ください。
いじめ発覚時の基本姿勢
いじめの報告を受けたら、校長として守るべき3つの基本姿勢があります。ここでは発覚直後に心がけるべき考え方を説明します。
組織で動く
いじめ対応は校長ひとりで抱え込んではいけません。いじめ防止対策推進法では、学校いじめ対策組織を中核とした対応が義務づけられています。
報告を受けたら、すぐに対策組織のメンバーを招集してください。教頭、生徒指導主任、学年主任、養護教諭など、複数の教職員で情報を共有します。校長が強いリーダーシップを発揮し、それぞれの役割を明確に指示することが大切です。
担任だけに任せると、対応が遅れたり、判断を誤ったりする危険があります。組織で動くことで、多角的な視点から事実を把握でき、適切な対応策を考えられます。
迅速に判断する
いじめかどうかの判断は、被害を受けた児童生徒の立場に立って行います。加害側が「遊びだった」と主張しても、被害児童が心身の苦痛を感じていればいじめです。
いじめ防止対策推進法では、いじめとは「心理的または物理的な影響を与える行為で、対象となった児童等が心身の苦痛を感じているもの」と定義されています。この定義に基づいて、表面的な判断は避けてください。
軽微に見える行為でも、いじめと認知することが早期解決につながります。様子を見よう、と先延ばしにせず、その日のうちに判断を下すことが重要です。
事実を記録する
発覚時から時系列で詳細な記録を残してください。いつ、誰が、どこで、何をしたのか、被害児童はどう感じたのかを具体的に書き留めます。
記録は後の調査や保護者への説明、教育委員会への報告で必要になります。記憶があいまいになる前に、関係者から聞き取った内容をすぐに文書化することが大切です。
記録は複数の教職員で確認し、事実と推測を分けて整理します。感情的な表現は避け、客観的な事実だけを記載してください。この記録が学校の対応の証拠となり、信頼性を高めます。

最初の24時間の動き
いじめ発覚後の24時間は、対応の成否を分ける重要な時間です。ここでは発覚当日に行うべき具体的な行動を説明します。
情報を集める
まず担任や発見者から詳しく話を聞きます。いつからいじめが始まったのか、どのような行為があったのか、他に気づいていた教職員はいないかを確認してください。
被害児童が欠席している場合でも、加害側への聞き取りを優先して行うことがあります。事実関係を早く把握することで、適切な対応方針を決められるからです。
情報収集では、複数の視点から事実を確認することが重要です。目撃者がいれば話を聞き、SNSなどでのやり取りがあれば内容を確認します。集めた情報は整理して、対策組織で共有してください。
対策会議を開く
校内いじめ対策組織の緊急会議を開き、集めた情報をもとに対応方針を決めます。被害児童の安全確保、加害児童への指導、保護者への連絡など、具体的な役割分担を行ってください。
会議では以下の点を決定します。
誰が被害児童に対応するか
誰が加害児童に指導するか
誰が保護者に連絡するか
教育委員会への報告内容
校長は会議の進行役として、教職員の意見をまとめ、明確な指示を出します。対応が遅れないよう、その日のうちに具体的な行動計画を立ててください。
教育委員会に連絡
いじめを認知したら、速やかに教育委員会など学校の設置者に報告する義務があります。報告が遅れると、学校の信頼を失う原因になります。
報告内容には、いじめの態様、被害児童と加害児童の状況、学校の対応方針などを含めます。電話での第一報の後、文書で詳細を提出してください。
設置者からの指導や助言を受けながら対応を進めることで、適切な判断ができます。重大事態に発展する可能性がある場合は、特に早い段階で相談することが大切です。

被害児童への対応
被害児童の心身の安全を守ることが、いじめ対応の最優先事項です。ここでは被害児童を守るための具体的な方法を説明します。
安全を確保する
被害児童が学校で安心して過ごせる環境を、すぐに整えてください。加害児童との接触を避けるため、座席を離したり、別の教室で学習させたりする措置を取ります。
休み時間や登下校時の見守りも重要です。複数の教職員で連携し、被害児童が孤立しないよう配慮してください。
場合によっては、加害児童を別の場所で指導することも検討します。いじめ防止対策推進法では、被害児童が安心して教育を受けられるよう、必要な措置を講じることが学校に義務づけられています。
心のケアを始める
被害児童は深く傷ついています。養護教諭やスクールカウンセラーと連携し、心のケアを開始してください。無理に話をさせるのではなく、児童のペースに合わせた対応が大切です。
保健室を安全な居場所として提供することも有効です。いつでも相談できる体制を整え、児童が「守られている」と実感できるようにします。
心のケアは長期的な視点で行います。いじめが解消した後も、定期的に様子を確認し、不安や苦痛がないかを本人と保護者に確認してください。
保護者に説明する
被害児童の保護者には、校長自らが説明に行くことが望ましいです。家庭訪問をして、いじめの事実と学校の対応方針を丁寧に伝えてください。
保護者は怒りや不安を抱えています。まず保護者の気持ちを受け止め、学校として全力で子どもを守る姿勢を示すことが重要です。
定期的に状況を報告し、保護者との信頼関係を築いてください。保護者が学校を信頼できれば、協力して問題解決に取り組めます。連絡を怠ると、保護者の不信感が高まり、事態が悪化する危険があります。
加害児童への指導
加害児童への適切な指導は、再発防止のために欠かせません。ここでは加害児童にどう向き合うかを説明します。
事実を確認する
加害児童への聞き取りは、複数の教職員で行います。担任と学年主任など、2人以上で個別に話を聞くことで、客観的な事実を把握できます。
最初は「いじめではない」と主張することが多いです。しかし、被害児童が苦痛を感じていれば、それはいじめです。加害児童の言い分を聞きつつ、行為の事実を確認してください。
聞き取りでは、いつ、どこで、何をしたのかを具体的に尋ねます。なぜそのような行為をしたのか、理由も聞き取りますが、理由があってもいじめは許されないことを明確に伝えます。
毅然と指導する
加害児童には、「これはいじめであり、絶対に許されない行為だ」と毅然とした態度で伝えます。曖昧な指導は、いじめを軽く見る原因になります。
指導では、被害児童がどれほど苦しんでいるかを理解させることが大切です。相手の気持ちを考えさせ、自分の行為を反省するよう促してください。
教育的配慮をしながらも、厳しく指導することが求められます。場合によっては、懲戒処分も検討します。加害児童が真剣に反省し、行動を改めるまで、継続的に指導してください。
保護者と連携する
加害児童の保護者にも、学校に来てもらい、事実を説明します。学校での対応と、家庭での指導を連携させることが重要です。
保護者の中には、わが子の行為を認めたがらない人もいます。しかし、事実に基づいて丁寧に説明し、協力を求めてください。
以下の点を保護者に伝えます。
いじめの具体的な内容
学校の対応方針
家庭での指導の依頼
今後の連携方法
保護者との信頼関係を築くことで、加害児童の行動改善につながります。定期的に連絡を取り、児童の変化を共有してください。
重大事態の判断
いじめが深刻な場合は、重大事態として扱う必要があります。ここでは重大事態の判断基準と対応を説明します。
認定基準を知る
重大事態とは、いじめにより児童生徒の生命、心身、財産に重大な被害が生じた疑いがある場合、または相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがある場合です。
具体的には、児童生徒が自殺を企図した場合や、身体に重大な傷害を負った場合、金品を大量に奪われた場合などが該当します。また、年間30日以上の欠席がある場合も重大事態とされます。
被害児童や保護者から「重大な被害が生じた」という申し立てがあったときも、重大事態として扱わなければなりません。校長の判断だけでなく、被害者側の声を重視することが法律で定められています。
調査体制を作る
重大事態と判断したら、速やかに調査組織を設置します。調査組織には、弁護士や精神科医、学識経験者など、学校と直接の利害関係がない専門家を入れることが推奨されます。
調査では、いじめの事実関係を明らかにし、再発防止策を検討します。被害児童や保護者に対して、調査方針を説明し、定期的に経過を報告してください。
調査は公正に行われる必要があります。学校に不利な事実も隠さず、真実を明らかにする姿勢が大切です。調査結果は被害児童と保護者に提供し、必要な情報を適切に伝えます。
文科省に報告する
2023年4月から、重大事態が発生した場合は、教育委員会を通じて文部科学省への報告が義務化されました。報告は速やかに行う必要があります。
報告には、重大事態の内容、学校の対応、調査の状況などを記載します。報告が遅れると、行政からの指導を受ける可能性があります。
文部科学省への報告は、全国のいじめ対策を改善するためのデータとなります。正確な情報を提供することで、他の学校での再発防止にもつながります。
再発防止の体制
いじめへの対応は、解消した後も続きます。ここでは再発を防ぐための継続的な取り組みを説明します。
学校全体で共有
いじめ事案の対応は、全教職員で共有してください。職員会議などで、事案の概要と対応方針を説明し、全員が同じ認識を持つことが重要です。
情報共有では、被害児童と加害児童のプライバシーに配慮しつつ、必要な情報を伝えます。教職員が連携して見守ることで、再発を防げます。
また、他のクラスや学年でも同様のいじめが起きていないか、注意を呼びかけてください。学校全体でいじめを許さない雰囲気を作ることが、予防につながります。
経過を観察する
いじめ防止対策推進法では、いじめが解消したと判断するには、少なくとも3か月間、いじめ行為が止んでいることが必要とされています。
3か月間は、被害児童の様子を継続的に観察してください。定期的に本人と保護者に面談し、心身の苦痛がないかを確認します。
解消の判断は慎重に行います。表面的にいじめが止まっていても、被害児童が不安を感じていれば、まだ解消していません。教職員間で情報を共有し、見守りを続けてください。
基本方針を見直す
いじめ事案が発生したら、学校いじめ防止基本方針を見直す機会にしてください。今回の対応で不十分だった点を改善し、次に生かします。
基本方針の見直しでは、以下の点を検討します。
見直しのポイント
早期発見の方法
対応手順の明確化
教職員研修の充実
保護者との連携強化
改善した基本方針は、全教職員に周知し、日々の教育活動に反映させてください。PDCAサイクルを回すことで、学校のいじめ対応力が向上します。
外部機関との連携
いじめ対応は、学校だけで完結しません。ここでは外部機関との連携方法を説明します。
警察と協力する
いじめが犯罪行為に該当する場合は、警察と連携して対処します。暴行、傷害、恐喝、名誉毀損などの行為があれば、所轄の警察署に相談してください。
特に、児童生徒の生命や身体に重大な被害が生じる恐れがあるときは、直ちに警察に通報する義務があります。躊躇せず、児童の安全を最優先に判断してください。
警察との連携では、学校の対応と警察の捜査を並行して進めます。情報を共有しながら、それぞれの役割を果たすことが重要です。
専門家を活用する
スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなどの専門家を積極的に活用してください。心理面や福祉面からのサポートが、児童の回復を助けます。
スクールカウンセラーは、被害児童の心のケアだけでなく、加害児童へのカウンセリングも行います。なぜいじめをしたのか、どうすれば行動を改められるのかを一緒に考えます。
スクールソーシャルワーカーは、家庭環境に問題がある場合に、福祉機関との連携を支援します。専門家の知見を借りることで、より適切な対応ができます。
地域と連携する
いじめ問題対策連絡協議会など、地域の関係機関と連携することも大切です。児童相談所や法務局、医療機関などと情報を共有し、総合的な支援を行います。
地域との連携では、以下の機関が役立ちます。
連携できる機関
児童相談所
法務局人権擁護機関
医療機関
NPO団体
平時から関係機関との連携を深めておくことで、いざというときに迅速に支援を受けられます。校長は学校と地域をつなぐ役割を果たしてください。

まとめ
いじめ発覚時の校長の対応は、被害児童の未来を左右する重要な責任です。組織で動き、迅速に判断し、事実を記録することが基本姿勢となります。
最初の24時間で情報を集め、対策会議を開き、教育委員会に報告してください。被害児童の安全確保と心のケアを最優先にし、加害児童には毅然とした指導を行います。重大事態の可能性がある場合は、速やかに調査体制を整え、文部科学省への報告も忘れずに行ってください。
校長のリーダーシップが、いじめのない安心できる学校を作ります。本記事で紹介した対応を実践し、子どもたちの笑顔を守っていきましょう。あなたの勇気ある行動が、多くの子どもたちを救います。
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