~ 教職員の方向け,毎月のいじめ対策 ~ 毎月のいじめ対策 ③6月
はじめまして!いじめ撲滅委員会代表、公認心理師の栗本顕です。私の専門は「いじめ」です。心理学の大学院で研究もしてきました。現在はいじめの問題を撲滅するべく、研修やカウンセリング活動を行っています。

今回のテーマは「6月のいじめ対策」です。
梅雨の季節となる6月は、雨が多く、子どもたちは室内で過ごす時間が増えます。ジメジメとした天気は人の気持ちを不安定にさせ、いつもなら起こらない問題が起きやすくなります。
また、クラスにも慣れてきた時期だからこそ、気が緩んで起こるトラブルもあります。本記事では6月のいじめ対策について解説していきます。
目次は以下の通りです。
① 6月は天候に注意が必要な理由
② 6月のいじめの特徴とは
③ 6月のいじめへの具体的な対策
④ 体育祭でのいじめ対策
梅雨という特別な季節だからこそ必要な対策があります。天候が不安定な6月を、子どもたちが安心して過ごせるようにするための方法をお伝えしていきます。ぜひ最後までご一読ください。
6月は天候に注意が必要な理由
6月は梅雨の季節です。天候の変化が子どもたちの心や行動にどのような影響を与えるのか、見ていきましょう。
梅雨がもたらす影響
6月は、何といっても梅雨入りのシーズンになります。教育現場では、6月になると天候が不安定になり、普段よりも児童生徒は当然のことながら室内にいることが多くなります。その上、室内はジメジメしてしまい、居心地が悪くなり、苛立ちを露わにする人も少なくありません。
雨が降り続くと、外で体を動かして発散することもできず、ストレスがたまってしまうのです。 そのため、教育現場や家庭では、普段とは少し違った対策が必要になってきます。天気が悪いだけだと軽く考えてはいけません。天候の変化は、子どもたちの心に大きな影響を与えるからです。
今年の梅雨の特徴を知る
梅雨の時期は年によって様子が違うこともあります。気象予報などを参考にしながら、その年の梅雨の特徴を把握しておくことが大切です。例年よりも雨が多い年もあれば、少ない年もあります。また、梅雨入りが早い年や遅い年もあります。
6月のうちから、梅雨の時期に起こりやすいいじめについて対策することで、7月8月の対策にもなる可能性があるということです。 天候に関する情報を事前に知っておくことで、心の準備ができます。
「今年は雨が多そうだから、室内での過ごし方を工夫しよう」と前もって考えることができるのです。それでは、6月のいじめの特徴について解説をしていきます。

6月のいじめの特徴とは
梅雨の時期である6月には、この時期特有のいじめの特徴があります。ここでは、その特徴を詳しく見ていきましょう。
室内で過ごす時間が増える影響
6月のいじめの特徴については、梅雨入りをしたことを想定してご紹介します。学校現場では、児童生徒は雨が降ると当然のことながら、外では活動しません。また、6月にもなるとお互いに慣れが生じてくることにも警戒しなくてはなりません。
4月5月とは違い、クラスメイトとの距離感が近くなり、良い意味でも悪い意味でも関係が変化していく時期なのです。 それらのことから、6月のいじめには特有の特徴が見られます。
これらの特徴を把握し、それぞれの特徴にあった対策をすることで迅速に、かつ適切に対応することができます。これから、それぞれの特徴の解説とその対策についてご紹介します。
6月に起こりやすい問題
6月に起こりやすいいじめの特徴は以下になります。
6月のいじめの主な特徴
苦手な人とも狭い教室
いじめから逃げられない
イライラしている人が多い
過剰な冗談をしてしまう
仲間意識が強くなりすぎる
天候が影響します
などが挙げられます。これらの特徴は、一つ一つは小さなことに見えるかもしれません。しかし、これらが重なり合うことで、大きないじめ問題へと発展してしまう可能性があるのです。
慣れが生む危険性
6月は、4月に新しいクラスになってから2ヶ月が経過した時期です。この頃になると、クラスメイトや先生との関係に慣れが生じてきます。この「慣れ」は、良い面もあれば悪い面もあります。
良い面としては、お互いに気を使いすぎずに自然に過ごせるようになることです。しかし悪い面としては、気が緩んで失礼なことを言ってしまったり、相手の気持ちを考えずに行動してしまったりすることがあります。
特に、仲が良くなったと思い込んで、相手が嫌がることをしてしまうケースが多く見られます。「これくらいなら大丈夫だろう」という油断が、いじめの始まりになることもあるのです。

6月のいじめへの具体的な対策
ここからは、6月のいじめの特徴に対する具体的な対策を一つ一つ見ていきましょう。それぞれの問題に適した対応が必要です。
狭い教室での対策
苦手な関係の生徒とも休み時間でも、狭い教室内にいるという問題について解説します。いじめの被害者、加害者に関わらず、なるべくなら苦手な人とは距離を置きたいものです。しかし、雨が降ってしまい、限られた空間の中に限定されてしまうと、自由に身を守ることができません。
具体的には、図書室を開放することや自由教室を作るなど、児童生徒の行き場所を作ることが良いと考えられます。教室以外の場所を用意することで、子どもたちは自分で居場所を選ぶことができるようになります。
逃げ場を失った子への対策
いじめから逃げようとしても限りがあるという問題について解説します。普段は校庭を逃げたり、校内のどこかに身を潜めて休み時間を過ごす児童生徒がいた場合、その選択肢が一気に半分になると考えてください。
また、校内は走ることが基本的に許されませんので、捕まってしまうリスクが格段に高くなってしまいます。雨の日は、いじめを受けている子にとって特に危険な日なのです。
対策としては、そもそも、いじめがあった場合には教職員に報告するように促すことが必要です。また、校内では他の生徒もいますので、こういった事態を見つけた場合には報告することも促しておくと良いと考えられます。
過剰な冗談への対策
過剰な冗談をしてしまうという問題について解説します。児童生徒同士が、親しくなりそれなりに仲が良くなった頃になります。この頃には、自分にとっては冗談でも相手にとっては冗談では済まされないものがでてきます。信頼関係などができていると思い、4月や5月ではやらなかったことをします。
対策としては、児童生徒も教職員も「親しき中にも礼儀あり」という考えを忘れないようにすることが大前提です。気が緩んでしまう関係になってきている時期だからこそ、改めて伝えておく必要のあることです。6月のホームルームなどで、この言葉の意味について話し合う時間を持つことも効果的です。
7月8月への準備
以上のようなことが、6月のいじめの特徴の解説とその対策になります。また、年によって梅雨の時期は変わることがあります。そのため、今回の内容は7月や8月にも活用ができます。いじめが一つでもこの世からなくなること、一人でも傷つく人が減ることを願っています。
場当たりな対策では、本当の解決にはなりません。6月にしっかりと対策をしておくことで、夏休み前の大切な時期を安心して過ごすことができます。 計画的に、そして継続的に対策を行うことが、いじめのない学校を作る第一歩となるのです

体育祭でのいじめ対策
6月には体育祭を開催する学校も多くあります。ここでは、体育祭で起こりやすいいじめとその対策を見ていきましょう。
体育祭で注意すべきこと
6月といえば、最近では体育祭が開催される時期となってきました。体育祭では、個人の競技もあれば団体の競技もあります。特に、団体の競技ではグループや班決めには注意をしてください。よくある例としては、「騎馬戦で仲の悪い人と組むことになった」というものがあります。
体育祭は楽しい行事であるはずなのに、グループ分けが原因でつらい思いをする子どもたちがいるのです。 こうなってしまった場合、体育祭は楽しくなくなり、競技自体にもやる気が起きなくなります。
もし、この構成が被害者と加害者のグループになってしまった場合のことを考えると、背筋が凍る思いです。せっかくの楽しい行事が、いじめを悪化させる場になってしまう可能性があります。
精神論に頼らない対策
なかには「一緒に何か一つの事を達成すると良好な関係ができる。仲直りができる」とやや精神論的な考えもありますが、児童生徒本人からしてみればたまったものではありません。教職員への信頼もなくなり、そもそも競技に出なくなります。
一緒に頑張れば仲良くなれるという大人の期待は、子どもたちにとっては重い負担になることがあります。いじめを受けている子に、加害者と一緒に活動することを強制するのは、さらなる苦痛を与えることになるのです。 あまり効果のない精神論的考えは控え、より確実に児童生徒が分け隔てなく、平等に楽しめる体育祭を開催できることが何よりだと考えます。
グループ分けでの配慮
体育祭のグループ分けを行う際には、事前に子どもたちの人間関係をしっかりと把握しておくことが大切です。アンケートを取ったり、日頃の観察から得た情報を活用したりして、トラブルが起きないように配慮する必要があります。可能であれば、子どもたち自身にある程度の選択権を与えることも効果的です。
完全に自由にすることは難しくても、「この人とは一緒になりたくない」という希望を聞く仕組みを作ることはできます。 また、グループ分けを発表する前に、一度確認をする時間を持つことも大切です。
問題がありそうなグループがあれば、事前に調整することができます。体育祭は楽しい思い出を作る場であるべきです。すべての子どもたちが安心して参加できるように、細やかな配慮を心がけましょう。
体育祭期間中の見守り
体育祭の準備期間や当日は、いつも以上に子どもたちの様子を注意深く見守る必要があります。練習中に一人だけ離れている子はいないか、グループの中で浮いている子はいないか、常に気を配りましょう。また、体育祭が終わった後も、何かトラブルがなかったか確認することが大切です。
行事の後は、気持ちが高ぶっていたり疲れていたりして、普段は言わないようなことを言ってしまうこともあります。 体育祭という大きな行事を、すべての子どもたちにとって良い思い出にするために、教職員は細心の注意を払う必要があるのです。 -
まとめ
6月は梅雨の季節です。雨が続き、子どもたちは室内で過ごす時間が増えます。ジメジメとした天気は人の気持ちを不安定にさせ、イライラしやすくなります。また、クラスにも慣れてきた時期だからこそ、気が緩んで起こるトラブルもあります。この時期特有の問題を理解し、適切に対応することが大切です。
対策があります。天候の影響を軽く考えず、環境を整え、子どもたちの様子を注意深く見守りましょう。6月にしっかりと対策をしておくことで、7月や8月の対策にもつながります。一つ一つの配慮が、子どもたちの笑顔を守ることにつながります。今日から、できることから始めてみませんか。雨の日も、子どもたちが安心して過ごせる学校を一緒に作っていきましょう。
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いじめ撲滅委員会では、全国の小~高校生・保護者のかた、先生方にカウンセリングや教育相談を行っています。カウンセラーの栗本は、「いじめ」をテーマに研究を続けており、もうすぐで10年になろうとしています。
・いじめにあって苦しい
・いじめの記憶が辛い
・学校が動いてくれない
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<参考文献>
気象庁地球環境・海洋部 2019 向こう3ヶ月の天候の見通し6月~8月 3か月予報(令和元年5月24日発表)の解説 https://www.jma.go.jp/jp/longfcst/pdf/pdf3/001.pdf (2019,6,9,閲覧)




