~ 教職員の方はこちら ~ 先生が見逃しやすいいじめの兆候!教室での早期発見と初期対応の方法
はじめまして!いじめ撲滅委員会代表,公認心理師の栗本顕です。私の専門は「いじめ」です。心理学の大学院で研究もしてきました。
現在はいじめの問題を撲滅するべく、研修やカウンセリング活動を行っています。
いじめ撲滅委員会代表栗本顕今回のテーマは「先生が見逃しやすいいじめの兆候と対応方法」です。毎日子どもたちと接する先生だからこそ、小さな変化に気づけるはずなのに、なぜ見逃してしまうのでしょうか。それは、いじめの兆候が思っている以上に巧妙で、一見すると普通の行動に見えてしまうからです。
目次は以下の通りです。
①いじめの兆候とは何か
②学校で見つけにくい兆候
③身体に現れる兆候
④心の変化を示す兆候
⑤見逃しやすい隠れた兆候
⑥兆候を発見した時の対応
⑦予防のための教室環境づくり
⑧対応時の注意点
⑨専門機関との連携
子どもたちの小さなSOSを見逃さないために、具体的な兆候とその対応方法について、実際の教育現場で役立つ情報をお伝えします。ぜひ最後までご一読ください。
いじめの兆候とは何か
いじめの兆候とは、子どもがいじめを受けているときに見せる様々な変化のことです。これらの変化は、子どもが発する無言のSOSサインともいえます。
学校の義務
文部科学省のいじめ防止対策推進法では、教師がいじめの兆候を発見した場合、速やかに学校いじめ対策組織に報告することが義務づけられています。つまり、先生方は法的にも、子どもたちのいじめの兆候を見つける重要な役割を担っているのです。
いじめの兆候を早期に発見することは、子どもの心と体を守るために欠かせません。いじめは放置すればするほど深刻化し、取り返しのつかない事態になる可能性があります。しかし、適切な時期に適切な対応ができれば、子どもを守ることができます。
いじめの4つの兆候
兆候には大きく分けて、身体的な変化、心理的な変化、行動の変化、学習面の変化があります。これらの変化は単独で現れることもあれば、複数が重なって現れることもあります。重要なのは、普段の子どもの様子をよく知り、「いつもと違う」という変化に敏感になることです。
学校で見つけにくい兆候
学校という環境では、多くの子どもたちがいる中で個々の変化を見つけることは簡単ではありません。特に授業中や休み時間の微妙な変化は見落としがちです。
授業中の変化
授業中に現れるいじめの兆候は、学習面での変化として表れやすく、見逃しやすいサインの一つです。普段は積極的だった子どもが急に消極的になったり、集中力が明らかに落ちたりする場合は注意が必要です。
授業中に現れる具体的な兆候は以下になります。
授業中の変化
忘れ物が急に増える
発表を避けるようになる
ぼーっとすることが多い
成績が急に下がる
宿題を忘れることが増える
これらの変化は一見すると、単なる怠惰や集中力不足に見えがちです。しかし、今まで真面目だった子どもに突然このような変化が現れた場合は、いじめの可能性を考える必要があります。いじめのストレスや不安により、勉強に集中できなくなっているのかもしれません。
休み時間の行動変化
休み時間は子どもたちが自由に過ごす時間ですが、だからこそいじめの兆候が現れやすい時間でもあります。友達関係の変化や孤立の様子が見えやすいのも、この時間の特徴です。
休み時間に見られる行動変化は以下になります。
休み時間の変化
一人でいることが増える
教室の隅にいることが多い
友達と遊ばなくなる
トイレに長時間いる
先生の近くにいたがる
友達関係は子どもにとって学校生活の大きな部分を占めます。これまで楽しそうに友達と過ごしていた子どもが、一人で過ごすようになったら、その理由を探ってみることが大切です。また、特定の場所を避けるような行動も、いじめが起きている場所を避けている可能性があります。
身体に現れる兆候
いじめを受けている子どもは、心の傷だけでなく体にも変化が現れることがあります。これらの身体的な兆候は比較的分かりやすいサインです。
けがや体調不良
身体的ないじめを受けている場合、けがや体調不良として兆候が現れます。しかし、子どもはいじめられていることを隠そうとするため、けがの理由を正直に話さないことも多いのです。
身体に現れる異変は以下になります。
身体の異変
原因不明のけが
頻繁な頭痛や腹痛
保健室通いが増える
食欲がなくなる
疲れやすくなる
「階段で転んだ」「友達とぶつかった」など、けがの説明が不自然だったり、同じような理由を繰り返したりする場合は注意深く観察する必要があります。また、いじめのストレスから心身症状が現れることもあり、頭痛や腹痛を頻繁に訴える子どもにも注意を向けることが重要です。
服装や持ち物の変化
いじめでは、持ち物を隠されたり、壊されたり、汚されたりすることがあります。これらの変化は目に見える形で現れるため、注意深く観察すれば発見しやすい兆候です。
服装や持ち物の変化は以下になります。
物の変化
服が汚れている
持ち物がよくなくなる
教科書が破れている
カバンが汚れている
文房具がなくなる
子どもは「なくした」「自分で汚した」と説明することが多いですが、頻繁に同じようなことが起こる場合は、いじめの可能性を疑う必要があります。特に、大切にしていた物がなくなったり、新品の物がすぐに汚れたり壊れたりする場合は、より注意深く状況を確認することが大切です。
心の変化を示す兆候
いじめを受けている子どもの心には大きな負担がかかり、それが表情や言動の変化として現れます。これらの変化は繊細で見逃しやすいものです。
表情や態度の変化
子どもの表情は心の状態を映す鏡です。いじめを受けている子どもは、表情が暗くなったり、態度が消極的になったりします。これらの変化は日々の観察の中で気づくことができます。
表情や態度の変化は以下になります。
表情の変化
笑顔が少なくなる
元気がない様子
視線を合わせない
うつむいていることが多い
緊張した表情をする
明るく活発だった子どもが急に大人しくなったり、いつも笑顔だった子どもの表情が曇りがちになったりした場合は、何らかの問題を抱えている可能性があります。また、先生や大人と目を合わせたがらない子どもは、助けを求めたい気持ちと恥ずかしさの間で揺れ動いているのかもしれません。
言動の変化
いじめを受けている子どもは、言動にも変化が現れます。普段よりも口数が少なくなったり、学校での出来事を話したがらなくなったりします。これらの変化は、子どもが心の中で抱えている苦痛の表れです。
言動の変化は以下になります。
言動の変化
口数が少なくなる
友達の話をしない
学校の話を避ける
行事を嫌がる
家に帰りたがる
特に、運動会や遠足などの学校行事を嫌がるようになった場合は注意が必要です。これらの行事では普段とは違う活動があり、いじめが起きやすい状況になることがあります。また、子どもが「お腹が痛い」「頭が痛い」と言って学校を休みたがる場合も、心のSOSの可能性があります。
見逃しやすい隠れた兆候
いじめの兆候の中には、一見すると問題がないように見えるものもあります。これらの隠れた兆候は特に注意深く観察する必要があります。
一見普通に見える行動
いじめを受けている子どもの中には、問題を隠そうとして逆に普段以上に明るく振る舞ったり、完璧に見えるよう努力したりする子どもがいます。これらの行動は一見すると良いことのように見えるため、見逃しがちです。
一見普通に見える行動は以下になります。
隠れた行動
無理に明るく振る舞う
完璧にやろうとする
先生にやたら親切
他の子の世話を焼く
常に笑顔でいる
本当は辛いのに、周りに心配をかけまいとして明るく振る舞う子どももいます。また、いじめられないように完璧でいようと努力する子どもや、先生に気に入られようとして過度に良い子を演じる子どももいます。これらの行動の裏には、子どもなりの必死な努力が隠れているのです。
グループ内での立場変化
クラスや友達グループの中での立場の変化も、いじめの重要な兆候の一つです。これまで中心的だった子どもが徐々に仲間外れにされていく過程は、じっくり観察しないと見逃してしまいます。
グループ内での変化は以下になります。
立場の変化
会話に入れない
グループから離れる
役割を与えられない
意見を聞いてもらえない
一人だけ違う扱い
友達グループの中で、一人だけ違う扱いを受けている子どもがいないか、注意深く観察することが大切です。例えば、席替えのときに一人だけ離れた席になったり、グループ活動で一人だけ役割を与えられなかったりする場合は、意図的な排除が行われている可能性があります。
兆候を発見した時の対応
いじめの兆候を発見した場合、適切で迅速な対応が求められます。一人で抱え込まず、組織として対応することが最も重要です。
初期対応の基本原則
いじめの兆候を発見した際の初期対応は、子どもの安全を最優先に考えて行う必要があります。まずは子どもから丁寧に話を聞き、事実関係を正確に把握することから始めます。
初期対応で大切なことは以下になります。
初期対応
子どもの話をよく聞く
安心感を与える
秘密を約束しない
詳細を記録する
速やかに報告する
子どもが勇気を出して相談してきた場合は、まずはその勇気を認めて安心感を与えることが大切です。ただし、「誰にも言わない」という約束はしてはいけません。適切な対応のためには、関係する人たちと情報を共有する必要があるからです。また、話を聞いた内容は詳細に記録し、客観的な事実として残しておくことが重要です。
学校いじめ対策組織との連携
いじめ防止対策推進法により、すべての学校には学校いじめ対策組織の設置が義務づけられています。いじめの兆候を発見した教員は、この組織に速やかに報告し、組織的な対応を行う必要があります。
組織との連携で重要なことは以下になります。
組織連携
速やかに報告する
情報を正確に伝える
対応方針を共有する
役割分担を明確にする
進捗を定期的に確認
一人の教員だけで対応しようとせず、必ず学校いじめ対策組織に報告することが法的にも求められています。組織的な対応により、より適切で効果的ないじめ対策を行うことができます。また、対応の進捗については定期的に確認し、必要に応じて対応方針の見直しを行うことも重要です。
保護者との連携方法
いじめ問題の解決には、保護者との適切な連携が欠かせません。連絡のタイミングや方法、説明の内容について慎重に検討し、保護者との信頼関係を築きながら対応を進める必要があります。
保護者との連携のポイントは以下になります。
保護者連携
早めに連絡する
事実を正確に伝える
今後の対応を説明
定期的に報告する
一緒に子どもを支援
保護者への連絡は、事実が確認できた段階で速やかに行うことが重要です。その際は、憶測や感想ではなく、確認できた事実のみを正確に伝えます。また、学校としてどのような対応を取るのか、保護者にはどのような協力をお願いするのかを具体的に説明し、一緒に子どもを支えていく姿勢を示すことが大切です。
予防のための教室環境づくり
いじめの兆候を早期発見するためには、日頃から子どもたちをよく観察し、相談しやすい環境を作ることが重要です。予防的な取り組みこそが最も効果的な対策です。
日常の観察ポイント
毎日の学校生活の中で、子どもたちの小さな変化に気づけるよう、観察のポイントを明確にしておくことが重要です。定期的なアンケートや面談と合わせて、日常的な観察を行います。
日常観察で注意すべきポイントは以下になります。
観察ポイント
表情の変化
友達関係の変化
学習への取り組み
持ち物の状態
体調の訴え
子どもたちの様子を多角的に観察することで、いじめの兆候を早期に発見できる可能性が高まります。毎日の朝の様子、授業中の態度、休み時間の過ごし方など、様々な場面での子どもたちの様子に注意を向けることが大切です。また、アンケートや個人面談を定期的に実施し、子どもたちが相談しやすい機会を作ることも重要です。
学級経営での工夫
いじめを防ぐためには、すべての子どもが安心して過ごせる学級環境を作ることが何より重要です。お互いを尊重し、違いを認め合える雰囲気作りが、いじめ予防の基礎となります。
安心できる学級環境作りのポイントは以下になります。
環境作り
お互いを尊重する
違いを認め合う
相談しやすい雰囲気
みんなで支え合う
いじめを許さない
学級経営において、「いじめは絶対に許さない」という明確なメッセージを伝えることが重要です。同時に、困ったことがあったら遠慮なく相談できる雰囲気作りも大切です。子どもたち一人一人の良いところを見つけて認めることで、自己肯定感を高め、他の人も大切にできる心を育てることができます。
対応時の注意点
いじめの兆候を発見し、対応を行う際には、絶対に避けなければならない対応があります。適切な対応を行うために、これらの注意点を理解しておくことが重要です。
してはいけない対応
いじめ対応において、絶対に行ってはいけない対応があります。これらの対応は、子どもをさらに傷つけたり、問題を悪化させたりする可能性があるため、十分に注意する必要があります。
してはいけない対応は以下になります。
禁止事項
被害者を責める
一人で抱え込む
様子を見るだけ
秘密にする
軽く考える
「いじめられる側にも原因がある」という考え方は絶対に避けなければなりません。いじめは100%いじめる側が悪いものです。また、「まだ様子を見てみよう」と対応を遅らせることも危険です。いじめは時間が経つほど深刻化する傾向があるため、早期の対応が何より重要です。一人で問題を抱え込むことも避け、必ず組織的な対応を行います。
継続的な支援方法
いじめ問題は一度解決したように見えても、再発する可能性があります。そのため、問題解決後も継続的な支援と見守りが必要です。子どもたちが安心して学校生活を送れるよう、長期的な視点での支援が重要です。
継続的な支援で大切なことは以下になります。
継続支援
定期的な面談
友達関係の見守り
学習面でのサポート
心のケア
再発の防止
いじめが解決した後も、被害を受けた子どもは心に傷を負っている場合があります。定期的に様子を確認し、必要に応じてスクールカウンセラーなどの専門家のサポートを受けられるよう配慮することが大切です。また、加害者となった子どもに対しても、なぜいじめをしてしまったのか理解し、二度と繰り返さないような指導と支援が必要です。
専門機関との連携
いじめ問題の解決には、学校だけでなく様々な専門機関との連携が重要です。それぞれの専門性を活かした支援により、より効果的な問題解決を図ることができます。
スクールカウンセラーとの連携
学校で活用できる専門機関としては、まずスクールカウンセラーがあります。心理の専門家として、子どもや保護者のカウンセリングを行い、心のケアを担当します。
教育委員会との連携
また、教育委員会は学校への指導助言や、より専門的な対応が必要な場合のサポートを行います。さらに、子どもや保護者が気軽に相談できる外部の相談窓口も多数設置されており、24時間対応の電話相談なども利用できます。
これらの専門機関と適切に連携することで、学校だけでは解決が困難な問題にも対応できるようになります。子どもの最善の利益を考え、必要に応じて積極的に専門機関との連携を図ることが重要です。
まとめ
いじめの兆候は、子どもたちが発する大切なSOSサインです。しかし、これらの兆候は時に見つけにくく、見逃しがちなものも多くあります。先生方が日頃から子どもたちをよく観察し、小さな変化にも敏感に気づくことで、いじめの早期発見と適切な対応が可能になります。
もし兆候を発見した場合は、一人で抱え込まず、学校いじめ対策組織と連携して組織的な対応を行うことが何より重要です。また、保護者や専門機関との連携も欠かせません。子どもたちが安心して学校生活を送れるよう、私たち大人が一丸となって支えていきましょう。今日からでも、子どもたちの小さな変化に目を向け、温かい声かけを心がけてください。
相談をご希望の方へ
いじめ撲滅委員会では、全国の小~高校生・保護者のかた、先生方にカウンセリングや教育相談を行っています。カウンセラーの栗本は、「いじめ」をテーマに研究を続けており、もうすぐで10年になろうとしています。
・いじめにあって苦しい
・いじめの記憶が辛い
・学校が動いてくれない
・子供がいじめにあっている
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