~ スクールカウンセラーの方はこちら ~ いじめ加害児童の心理とは?行動を変える支援のポイント
はじめまして!いじめ撲滅委員会代表、公認心理師の栗本顕です。私の専門は「いじめ」です。心理学の大学院で研究もしてきました。現在はいじめの問題を撲滅するべく、研修やカウンセリング活動を行っています。
今回のテーマは「いじめ加害児童のへ支援のポイント」です。
子どもがいじめをしていると知ったとき、どう対応すればよいか悩みますよね。叱るだけでは解決しないことも多いです。実は、いじめをする子どもには心の理由があり、それを理解した支援が必要なのです。
目次は以下の通りです。
① 加害児童の心理状態
② 家庭環境との関係
③ 学校での指導と支援
④ 再発を防ぐ取り組み
この記事では、いじめをする子どもの心の中で何が起きているのか、そしてどのように支援すれば行動を変えられるのかを解説していきます。ぜひ最後までご一読ください。
加害児童の心理状態
いじめをする子どもには共通する心の状態があります。その心理を知ることが支援の第一歩です。
子どもがなぜいじめをしてしまうのか。その背景には、本人も気づいていない心の問題が隠れています。表面的な行動だけを見るのではなく、心の奥にある理由を理解することで、適切な支援の道が開けます。
ストレス発散の手段
いじめをする子どもの多くは、自分の中にたまったストレスをうまく処理できていません。学校での勉強のプレッシャーや友達関係の悩み、家庭での不安など、様々なストレスを抱えています。しかし、それを言葉で表現する力や適切な方法で発散する術を持っていないのです。
そのため、自分より弱い立場の子どもを攻撃することで、一時的にストレスを解消しようとします。これは決して許される行為ではありませんが、子ども自身も苦しんでいる状態なのです。
ストレスの主な原因は以下になります。
勉強の重圧
友達の悩み
家での不安
自分への不満
このように、いじめという行動の裏には、子ども自身が抱える様々なストレスが存在しています。まずはその存在に気づくことが大切です。
自己肯定感の低さ
いじめをする子どもは、実は自分に自信がないケースが多いのです。自己肯定感とは、ありのままの自分を認める気持ちのことです。この感覚が低いと、他人を攻撃することで優位に立とうとします。
「自分はダメな人間だ」「誰も自分を認めてくれない」という思いを抱えているため、他の子どもをおとしめることで、相対的に自分の立場を上げようとするのです。これは一時的に自尊心を満たす方法として機能してしまいます。
自己肯定感が低くなる理由は以下になります。
褒められない
失敗を責める
比べられる
期待が重い
子どもの自己肯定感を高める関わり方が、いじめ行動を減らす鍵となります。
周囲への同調圧力
子どもの世界では、グループの中での立ち位置がとても重要です。いじめの中心人物に逆らえば、次は自分がターゲットになるかもしれない。そんな恐怖から、本当はやりたくなくてもいじめに加わってしまう子どももいます。
また、グループの一員として認められたい、仲間外れにされたくないという気持ちから、いじめに参加してしまうケースもあります。これは「同調圧力」と呼ばれるもので、特に思春期の子どもに強く働きます。
同調圧力を感じる場面は以下になります。
感じる場面
グループ活動
休み時間
SNSやり取り
放課後の時間
周囲の空気に流されてしまう子どもには、自分で判断する力を育てる支援が必要です。
家庭環境との関係
子どもの行動は、家庭での経験に大きく影響を受けます。毎日過ごす家庭が、子どもにとって安心できる場所でなければ、そのストレスが学校でのいじめ行動として表れることがあります。家庭環境を見直すことは、いじめ問題の解決に欠かせません。
親からの批判的な言葉
日常的に親から批判されたり、否定的な言葉をかけられている子どもは、感情のコントロールが難しくなります。「なんでできないの」「ダメな子ね」といった言葉を繰り返し聞くことで、子どもの心は深く傷つきます。
研究によると、親から皮肉やからかいを受けている子どもは、怒りの感情を抑えられなくなり、周囲への敵意が増すことが分かっています。そして、その感情を学校で他の子どもにぶつけてしまうのです。
批判的な言葉の例は以下になります。
言葉の例
何度言えば
他の子はできる
もっと頑張れ
情けない
子どもの行動を変えるには、まず親自身の言葉がけを見直すことが大切です。
過干渉や放任の影響
親が子どもに過度に干渉しすぎたり、逆に無関心で放任したりすることも、いじめ行動につながります。過干渉の場合、子どもは自分の自由を奪われ、強いストレスを感じます。親の理想を押し付けられると「完璧でなければ認めてもらえない」と思い込み、精神的に不安定になります。
一方で、放任されている子どもは、愛情不足を感じています。誰も自分を見てくれない寂しさや不安を紛らわすために、いじめ行動に走ってしまうことがあります。どちらも子どもにとって健全な環境とは言えません。
問題となる親の態度は以下になります。
問題な態度
全て決める
子を無視する
過度な期待
関心が薄い
子どもには適度な距離感を持って、見守る姿勢が求められます。
家庭内の暴力体験
家庭で暴力を目撃したり、自分が暴力を受けたりしている子どもは、暴力を問題解決の手段として学習してしまいます。親が怒って物を投げる、兄弟が暴力でケンカを解決する。そんな環境で育つと、子どもも同じように振る舞うようになります。
また、家庭で虐待を受けている子どもは、その怒りや悲しみを学校で他の子どもにぶつけることがあります。これは「被害者が加害者になる」という連鎖で、深刻な問題です。家庭での暴力体験は、子どもの心に大きな傷を残します。
暴力体験の影響は以下になります。
暴力の影響
暴力を学ぶ
怒りが残る
悲しみ抱える
信頼失う
家庭内の暴力は、子どもの行動に直接的な影響を与えることを理解しましょう。
学校での指導と支援
いじめが起きたとき、学校の対応が子どもの将来を左右します。ただ叱るだけでは、子どもは本当の意味で反省できません。なぜいじめをしてしまったのか、相手がどれだけ傷ついたのか。それを子ども自身が理解できるよう、丁寧に導く必要があります。
叱責ではなく対話
いじめをした子どもを厳しく叱りつけても、それだけでは問題は解決しません。むしろ、叱られた怒りが新たないじめを生むこともあります。大切なのは、子どもと対話をすることです。なぜそのような行動をとったのか、どんな気持ちだったのかを聞き出します。
子どもの話を否定せずに聞くことで、初めて本音が見えてきます。そして、その行動が間違っていることを、子ども自身が気づけるように導きます。教員が一方的に説教するのではなく、子どもが自分で考える時間を作ることが重要です。
対話で大切なことは以下になります。
大切なこと
話を聞く
否定しない
考えさせる
気づかせる
子どもとの信頼関係を築きながら、ゆっくりと心を開いていくことが大切です。
被害者の気持ち理解
いじめをした子どもは、相手がどれだけ傷ついているのかを想像できていないことが多いです。自分では軽い気持ちでやったつもりでも、相手は深く傷ついています。この感覚のずれを埋めることが、指導のポイントです。
具体的には、被害者の立場になって考えさせます。「もし自分が同じことをされたら、どう思う?」と問いかけます。ロールプレイなどを通じて、相手の気持ちを体験させることも効果的です。共感する力を育てることで、再びいじめをする可能性が減ります。
相手の気持ちを知る方法は以下になります。
立場を変える
想像させる
演じてみる
感情を聞く
相手の痛みを理解することが、本当の反省につながります。
自己分析を促す支援
いじめをした子どもには、自分の行動を振り返る力を育てることが必要です。なぜいじめをしてしまったのか、その背景にある自分の感情や状況を分析させます。イライラしていたのか、不安があったのか、周りに合わせただけなのか。
このプロセスを通じて、子どもは自分の行動パターンに気づきます。そして、次に同じような気持ちになったとき、どうすればいじめ以外の方法で対処できるかを一緒に考えます。自己分析の力は、将来の問題行動を防ぐ力にもなります。
自己分析で考えることは以下になります。
考えること
行動の理由
そのとき気持ち
他の選択肢
次の行動
子ども自身が自分を見つめ直すことで、真の成長が始まります。
見守りを続ける
いじめの指導は、一度話をしたら終わりではありません。その後も継続して子どもを見守る必要があります。学校全体で情報を共有し、担任だけでなく、他の教員やスクールカウンセラーも関わる体制を作ります。
定期的に子どもと面談を行い、その後の様子を確認します。また、被害者との関係性もチェックします。再びいじめが起きていないか、子どもの心の状態は安定しているか。長期的な視点で見守ることが、再発防止につながります。
見守りのポイントは以下になります。
情報を共有
定期面談
様子を観察
関係を確認
一人の教員に任せるのではなく、学校全体で子どもを支える体制が大切です。
再発を防ぐ取り組み
いじめを繰り返さないためには、長期的な視点での支援が欠かせません。
いじめは一度やめても、また繰り返してしまう可能性があります。本当の意味でいじめをなくすには、子どもの内面に働きかけ、行動そのものを変える必要があります。そのためには、家庭と学校が協力して、粘り強く支援を続けることが重要です。
行動パターンの認識
いじめをする子どもには、特定の行動パターンがあることが多いです。例えば、ストレスを感じたときに攻撃的になる、自分の思い通りにならないと怒る、といったパターンです。まずは、子ども自身がこのパターンに気づくことが大切です。
「こういう状況になると、いつもこんな行動をとっていないか?」と問いかけます。パターンを認識できれば、次にその状況が来たときに、違う行動を選べるようになります。これは認知行動療法という心理学の手法でも使われる考え方です。
行動パターンの例は以下になります。
イライラ攻撃
思い通り強要
劣等感補償
孤立を回避
自分の行動パターンを知ることが、変化への第一歩となります。
新しい関わり方の習得
いじめ以外の方法で、友達と関わる力を育てることが重要です。これまでいじめを通じてしか人間関係を作れなかった子どもには、新しいコミュニケーションの方法を教える必要があります。相手の気持ちを尊重する話し方、自分の感情を適切に表現する方法などです。
具体的には、ソーシャルスキルトレーニングという手法を使います。ロールプレイなどを通じて、実際の場面を想定した練習をします。新しい関わり方を身につけることで、子どもは健全な人間関係を築けるようになります。
学ぶべきスキルは以下になります。
気持ちを伝える
相手を尊重
協力して行動
感謝を表す
新しいコミュニケーション方法を学ぶことで、いじめに頼らない関係が作れます。
家庭との連携方法
いじめの再発を防ぐには、家庭との連携が欠かせません。学校だけで頑張っても、家庭での関わり方が変わらなければ、根本的な解決は難しいです。定期的に保護者と面談を行い、家庭での様子や親子関係について話し合います。
親にも、子どもへの接し方を変えてもらう必要があります。批判的な言葉を減らし、子どもの良い面を認めて褒める。そんな関わり方をアドバイスします。学校と家庭が同じ方向を向いて支援することで、子どもの行動は確実に変わっていきます。
家庭との連携内容は以下になります。
定期的面談
情報を交換
接し方助言
進捗を共有
学校と家庭が協力することで、子どもを包括的に支えることができます。
まとめ
いじめをする子どもへの支援は、決して簡単ではありません。しかし、その子どもも実は傷つき、助けを求めているのです。叱るだけでなく、心の奥にある理由を理解すること。それが解決への第一歩です。
この記事でお伝えしたように、ストレスや家庭環境、自己肯定感の低さなど、様々な要因がいじめ行動を生み出しています。学校と家庭が協力して、子ども自身が自分の行動を見つめ直せるよう支援することが大切です。対話を重ね、新しい関わり方を教え、長期的に見守る。そうした粘り強い関わりが、子どもの行動を変え、再発を防ぎます。
一人で悩まず、専門家の力も借りながら、子どもの成長を信じて支援を続けていきましょう。いじめのない社会を作るために、大人である私たちができることから始めていきませんか。
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