~ 教職員の方向け,毎月のいじめ対策 ~ 毎月のいじめ対策 ①4月
はじめまして!いじめ撲滅委員会代表、公認心理師の栗本顕です。私の専門は「いじめ」です。心理学の大学院で研究もしてきました。現在はいじめの問題を撲滅するべく、研修やカウンセリング活動を行っています。 今回のテーマは「4月のいじめ対策」です。
新しい環境、新しいクラス、新しい出会い。4月は希望に満ちた季節である一方で、子どもたちにとっても先生たちにとっても不安でいっぱいの時期です。この大切な時期に適切な対応ができなければ、その後1年間のクラス運営やいじめ対策に大きな影響が出てしまいます。
本記事では4月のいじめ対策について解説していきます。
目次は以下の通りです。
① 4月は気持ちが忙しい時期
② 4月に起こりやすい問題とは
③ 4月の問題への対策
④ 4月に欠かせない大切なこと
新年度のスタートである4月を、子どもたちにとって安心できる居場所づくりの第一歩にするための方法を、具体的にお伝えしていきます。ぜひ最後までご一読ください。
4月は気持ちが忙しい時期
新しい年度が始まる4月は、学校全体が大きく動き出す時期です。ここでは、なぜ4月が特別に気をつけなければならない時期なのかを見ていきましょう。
教職員にとっての4月の忙しさ
教職員からすると、4月には新しいクラスを持ったり、新しいカリキュラムを作ることもあります。さらに、
新しい書類の準備
保護者への連絡
年間計画の作成
など、やるべきことが山積みになっています。この状態で児童一人ひとりと向き合い、ぞれぞれに合わせた指導するには負担が大きいのが現状です。
特に、担任を持つ先生は、まだ顔と名前も一致しない子どもたち一人一人を理解しようと必死です。 しかし、だからといって児童生徒たちへの介入を疎かにしてはいけません。
児童生徒にとっての4月の不安
児童生徒からすると、新しいクラスでやっていけるかと不安になることや、新しくできた後輩との関わり方がわからなかったり、進路、友人関係と不安定になってしまうことが山ほどあります。新しい環境に適応するというのは、大人が思っている以上に子どもたちにとって大きなストレスなのです。
特に、仲の良い友達と離れてしまった子や、新入生として全く知らない環境に飛び込んだ子は、毎日が不安でいっぱいです。
4月に起こりやすい問題とは
4月という特別な時期には、どのような問題が起こりやすいのでしょうか。ここでは具体的な問題を見ていきましょう。
4月に多い子どもたちの悩み
児童生徒の中で4月に起こる問題について、これまで私が携わってきた問題の概要を大まかなものに絞り、簡単に挙げていきます。子どもたちが抱える不安や悩みは、実は私たちが想像している以上に深刻で、多岐にわたっています。一見些細に見える悩みでも、子どもにとっては大きな問題なのです。
4月に起こりやすい問題は以下になります。
クラスになじめない
やっていけるか不安
先生と話すのが苦手
先生に話しても意味がない
先生に言ったらどうなるのか
先輩後輩が苦手
進路などが不安
ここに通う気はなかった
友達と一緒のクラスじゃない
一人ぼっちになる
※これらは氷山の一角です
などなど、さまざまだと思います。4月になり、環境が変わったことで不安になることは多くあり、そこから他の事にまで不安な気持ちが広がってしまうことさえあります。
不安が広がるメカニズム
また、その不安定な状態の時の教職員の対応によっても気持ちや今後の関りにも影響が出るため、慎重になる必要があります。一つの不安が解決されないまま放置されると、それが別の不安を呼び、どんどん心が不安定になっていきます。
例えば、「クラスになじめない」という不安が「友達ができない」という不安につながり、さらに「学校に行きたくない」という気持ちにまで発展してしまうのです。
見えにくい問題にも注意が必要
4月の問題の中には、表面には現れにくいものもあります。例えば、「ここに通う気はなかった」という気持ちを抱えている子は、最初から学校に対してネガティブな感情を持っています。しかし、そのような気持ちを自分から先生に話すことは少ないのです。
また、「先生に言ったらどうなるのか」という不安を持っている子も、問題を抱えていても相談してきません。 教職員は、子どもたちが声をあげやすい雰囲気を作るとともに、声なき声に気づく観察力も必要です。
表情が暗い、休み時間に一人でいる、提出物が遅れがちになるなど、小さなサインを見逃さないようにしましょう。
4月のいじめ問題への対策
ここからは、先ほど挙げた問題に対する具体的な解決方法を見ていきます。一つ一つの問題に丁寧に向き合うことが大切です。
クラスになじめない子への対応
一部の元気な子どもたちの意見だけでクラスの雰囲気が決まってしまうと、静かな子や控えめな子は居場所を失ってしまいます。クラス会議などを開いて、すべての子どもたちの意見を聞く機会を作りましょう。また、アンケートなどを活用して、声をあげにくい子の意見も拾い上げることが大切です。
相談への不安を取り除く対応
先生に話したらどうなるのかわからない…という不安を持つ子は、人は、大人子ども問わず、わからないことなどには遠慮したり距離を置いてしまいます。いじめやその他の相談についても同じことです。
「何かあったら先生に相談してください。一緒に解決の道を見つけましょう」などの声掛けを早いうちにしておいてください。
また、いじめ等についても、
「いじめを目撃したり、されたり、してしまったら話しやすい先生にいつでも相談してください。うまく解決する方法を考えます。相談することは迷惑なことではないですよ」
といったようなことを伝えてあげるとベストだと思います。相談した後の流れを具体的に説明することで、安心感を与えることができます。
友達と離れてしまった子への対応
友達と一緒のクラスじゃないという悩みは、児童生徒にとってクラスに友達がいるかどうかはとても大きな問題です。
「新しく作ればいいじゃないか」
「休み時間に他クラスに行けばいいじゃないか」
と考えてしまいがちですが、そんなことはすでに考えた後に悩んでいることです。
クラス替えがあった際には、児童生徒の前の担任の先生から話を聞いておき、情報共有をしておく必要があります。特に、部活動や委員会をしていない児童生徒は交友関係がクラスだけになるので、注意深くなる必要があります。
クラスの中で友達を作るきっかけとなるワークなどを盛り込んでいき、児童生徒の様子を見て介入をしてください。
4月に欠かせない大切なこと
最後に、4月のいじめ対策として絶対に忘れてはいけない大切なことをお伝えします。これが4月対策の核心部分です。
何よりも大切な「全力で向き合う」姿勢
教育現場はただでさえ求められていることが多く、責任も大きいです。ご紹介したものをすべてこなすことはとても難しいことだと思います。しかし、「児童生徒には全力で向き合うこと」これだけは絶対に疎かにしないでください。子どもたちは、大人が思っている以上に敏感です。
先生が自分のことを本気で考えてくれているのか、それとも適当に対応しているのか、すぐに見抜いてしまいます。 たとえ完璧な対応ができなくても、全力で向き合っている姿勢は必ず子どもたちに伝わります。
信頼関係が何よりも重要な理由
児童生徒と教職員の信頼関係が築けることが何よりも必要な4月です。信頼関係があれば、子どもたちは困った時に先生に相談してくれます。いじめの被害を受けた時も、友達関係で悩んだ時も、勉強でつまずいた時も、信頼できる先生がいれば子どもたちは一人で抱え込まずに済みます。
逆に、信頼関係がなければ、どんなに素晴らしいいじめ対策のプログラムを用意しても、子どもたちは活用してくれません。4月に信頼関係を築くことが、その後1年間のすべての教育活動の土台となるのです。
協力し合う大切さ
児童生徒だけではなく、教職員も、さまざまな人と相談し合いながら、時には協力し合いながら教育現場に向き合っていただければと思います。一人ですべてを抱え込む必要はありません。
同じ学年の先生、部活動の顧問、養護教諭、スクールカウンセラーなど、さまざまな立場の人が連携することで、より良い支援ができます。
また、保護者との連携も忘れてはいけません。家庭での様子と学校での様子を共有することで、子どもの全体像が見えてきます。問題が起きてから連絡するのではなく、普段から良好な関係を築いておくことが大切です。
4月の対応がその後を決める
いじめ対策は、クラスの運営にも関係します。4月のクラス運営に注目することで、その後のいじめ対策にも効果が表れます。一見、いじめの対策と関係ないと思えることでも、実はいじめの対策に関わることを忘れないでください。
居心地の良いクラスを作ること、子どもたち一人一人が大切にされていると感じられる環境を作ること。 これらすべてが、いじめを未然に防ぐことにつながります。
4月という大切な時期に、丁寧に子どもたちと向き合い、安心できる居場所を作ることが、その後1年間の平和なクラスづくりの基礎となるのです。
まとめ
4月は新しいスタートの季節です。希望に満ちた時期である一方で、子どもたちにとっても先生たちにとっても不安でいっぱいの時期でもあります。
この大切な時期に適切な対応ができるかどうかが、その後1年間のクラス運営やいじめ対策を大きく左右します。 「クラスになじめない」「友達と離れてしまった」「先生に相談していいのかわからない」など、4月特有の悩みは誰もが抱えるものです。
あなたの4月の対応が、子どもたちの1年間を、そして未来を変える力を持っています。 今日から、できることから始めてみませんか。子どもたちの笑顔のために、そして誰もがいじめのない安心できる学校生活を送れるように、一緒に頑張りましょう。
相談をご希望の方へ
いじめ撲滅委員会では、全国の小~高校生・保護者のかた、先生方にカウンセリングや教育相談を行っています。カウンセラーの栗本は、「いじめ」をテーマに研究を続けており、もうすぐで10年になろうとしています。
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