~ 教職員の方向け,毎月のいじめ対策 ~ 毎月のいじめ対策 ➄8月
はじめまして!いじめ撲滅委員会代表、公認心理師の栗本顕です。私の専門は「いじめ」です。心理学の大学院で研究もしてきました。現在はいじめの問題を撲滅するべく、研修やカウンセリング活動を行っています。
今回のテーマは「8月のいじめ対策」です。夏休み真っ只中の8月。
一般的に、「教育現場は夏休みで時間があるでしょ」と思われがちですが、そんなことはありません。夏休み中でも学校は大忙しです。そして、家庭では普段学校に行っている子どもたちがいますので、保護者の監督も必要不可欠です。8月のいじめ対策は、9月からの学校生活にも大きく関わります。本記事では8月のいじめ対策について解説していきます。
目次は以下の通りです。
① 保護者の監督が大きな力になる理由
② 夏休み中の様子を慎重に見ていく方法
③ 8月の対処に悩む理由と解決策
④ 9月からの学校生活への影響
夏休みという特別な時期だからこそ必要な対策があります。子どもたちが安心して夏休みを過ごし、元気に2学期を迎えられるようにするための方法をお伝えしていきます。ぜひ最後までご一読ください。 --- ##
保護者の監督が力になる理由
夏休みは、普段とは違う視点でのいじめ対策が必要です。ここでは、保護者の役割の重要性を見ていきましょう。
夏休みの特別な状況
8月は、夏休みといった大型連休の月です。つまり、学校で普段児童生徒を見ている教職員の目がないということです。そのため、いじめ問題はより一層見つけられにくくなり、対処もし辛くなります。学校という守られた空間から離れることで、問題が見えにくくなってしまうのです。
逆に、普段学校に行っている児童生徒は家庭にいる時間が増え、その分保護者が普段以上に児童生徒を見ています。 つまり、長期の休みの間は「児童生徒を見る時間」が普段とは逆になるということです。そのため、いじめ対策については普段とは違ったアプローチの仕方をしなければなりません。
保護者と教職員の連携
定期的に児童生徒の様子を聞いたり、確認するなどのことは今後の予防にも繋がりますので、ぜひ試してほしいと考えています。夏休み中は、保護者が子どもの様子を一番よく見ることができます。だからこそ、保護者と教職員が情報を共有し合うことが、とても大切になるのです。
保護者が気づいた小さな変化を教職員に伝えることで、問題の早期発見につながります。また、教職員が持っている情報を保護者と共有することで、家庭でも適切な対応ができるようになります。 では、実際にはどのようなことをすれば良いのか、どのようなことを確認すればよいのかをご紹介していきます。
夏休み中の役割分担
夏休みは、教職員の目が届かない時間が長くなります。しかし、だからといっていじめ対策をしなくて良いわけではありません。むしろ、見えにくくなる分、より注意が必要なのです。この時期は、保護者が子どもたちの一番近くにいる存在となります。保護者が子どもの様子に気を配り、何か変化があれば教職員に伝える。教職員は、その情報をもとに必要な対応をする。
このような協力体制を築くことが、夏休み中のいじめ対策には欠かせません。 また、保護者自身も、夏休みだからこそできる対話の時間を大切にしてほしいと思います。普段は忙しくてゆっくり話せないことも、夏休みなら時間を取って話すことができます。
夏休み中の様子を見ていく
ここでは、具体的に何を確認すれば良いのか、どのような点に注意すべきかを見ていきましょう。 ###
確認すべきポイント
実際にはどのようなことをすれば良いのか、どのようなことを確認すればよいのかをご紹介していきます。夏休み中に確認すべきポイントは以下になります。
夏休み中の確認ポイント
変わった様子はないか
不安を抱いていないか
学校のことを共有しているか
何か問題が発生していないか
定期的に確認します
学校で教職員が様子を見ているよりも、保護者は児童生徒のちょっとした変化に気付くことがあります。その変化について情報共有をしておくことも、予防に繋がります。
不安の早期発見
児童生徒の抱えている不安について、学校のことが関わっている場合に問題を大きくする前に対処することができます。「9月になったら学校が始まる」「また○○さんに会わなければならない」など、2学期への不安を抱えている子もいます。
このような不安を早めに見つけて対応することで、問題が大きくなる前に解決できます。もちろん、全てを伝える必要はありませんが、情報共有が必要なものは伝えておき、その内容について家庭で困難がないか確認します。 学校で気になっていたことを家族と共有しているだろうか、という視点も大切です。子どもが何か悩んでいても、親に心配をかけたくないと思って黙っていることもあります。
現在の問題の確認
そもそも、現在問題が発生していないか確認する必要があります。教職員側で対処をしなければならない内容の可能性もないとも限りません。夏休み中でも、SNSを通じたいじめや、習い事の場でのトラブルなど、様々な問題が起こる可能性があります。
ひとまずは、この程度で良いと思います。あまり多すぎると時間も取ってしまいますし、お互いに負担が大きくなってしまいます。 本来であれば、夏休み前にチェックシートとして作っておくなどをしておくと、より活用しやすくなるかと思います。定期的に、無理のない範囲で確認していくことが大切です。
問題発見時の対応
では、実際にいじめなどの何か問題が発生した場合にどのように対処をするのかを考えていかなくてはなりません。夏休み中に問題が見つかった時、どう対応すれば良いのか迷ってしまうことも多いでしょう。しかし、問題を放置してしまうと、どんどん悪化していく危険性があります。
だからこそ、すぐに適切な対応を取ることが大切なのです。保護者は一人で抱え込まず、学校に相談することが重要です。夏休み中でも、学校は対応してくれます。 躊躇せずに連絡を取り、一緒に解決策を考えていきましょう。
8月の対処に悩む理由
夏休み中のいじめは、対処に迷うことが多くあります。ここでは、その理由と解決策を見ていきましょう。
対処に迷う要因
長期の休みの場合、いじめがおきるとどのように対処をしたら良いのか、特に保護者は迷ってしまいます。
普段であれば、担任の先生に相談して指導等の対処をお願いする流れが一般的ですが、長期休みは様子が違います。様子が違い、対処に迷う要因は以下になります。
学校内で起きた問題ではない
相手が他の学校の生徒
相手の年齢が違う
習い事先で問題がおきている
部活動内で問題がおきている
いじめなのか判断できない
生徒たちで解決させようと考える
迷わず学校に相談を
等々のことが考えられると思います。では、これらの問題に対してどのような対処ができるかを考えていきます。
場所に関わらず対応する
学校内で起きた問題ではない場合でも、長期の休みは、問題がおきる場所が学校外であることが多いです。実際に学校にわざわざ連れて行っていじめをするとも考えにくいですし、そもそも学校が休みです。ここで、いじめについて考えると、いじめの定義から「起こった場所は学校の内外を問わない」とされています。
そのため、場所は関係なく対処するべきものとして、伝えておくことが良いと考えられますし、実際に教職員が対応しなくてはなりません。 普段と同じように良く話を聞いていきます。夏期講習などの習い事先で問題がおきている場合も同様です。場所は関係なく対処するべきものですので、教職員が対応します。習い事先の管理者にも相談します。
相手が違う学校や年齢でも対応
相手が他の学校の児童生徒の場合、いじめの定義では、「一定の人的関係にある他の児童生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える行為」となっています。つまり、相手が他の学校の児童生徒であろうと、一定の人的関係にあることが重要です。
保護者どうしてはいがみ合いになる危険性が高いため、間に入り相手の学校の先生と協力しながら「問題解決」に向けた対策をします。年齢が違う場合でも、いじめはいじめです。場合によっては犯罪になりえる場合さえあります。 例えば、先輩後輩関係などの場合も考えられるため、間に入って対処していく必要があります。
部活動や判断が難しい場合
部活動内で問題がおきている場合、こちらに関しては、普段行っているいじめ対策と同じと考えても良いと思います。まずは、顧問の先生に相談してもらい、連携を図ります。夏休み中でも部活動は行われていることが多いので、顧問の先生が状況を把握しやすいです。いじめなのか判断ができない場合、保護者の中には、いじめの判断ができず、教職員に判断を任せるケースも少なくありません。
また、「自分が子どもの頃はみんなやっていた。普通のことだ」と誤解してしまっている場合さえあります。 教職員と保護者とで情報共有と帳尻を合わせることの工夫が必要になります。児童生徒たちで解決させようと考える場合も、保護者同士でいがみ合ってしまう危険性があるのと同じように当事者同士でいがみ合ってしまうことさえ考えられます。
迷いへの適切な対処
長期の休みの場合、いじめがおきるとどのように対処をしたら良いのか、特に保護者は迷ってしまいます。普段であれば、担任の先生に相談して指導等の対処をお願いする流れが一般的ですが、長期の休みの場合は迷いが生じます。
その迷いに対して適切に対処していき、連携をしていくことがその時おきているいじめ問題だけではなく、今後の予防にもなります。特に、8月のいじめ対策は9月からの学校生活にも大きく関わります。
夏休み中の対応が、2学期のスタートを左右するのです。 次に、9月からの学校生活に影響を与えることについて、ご紹介します。
9月からの学校生活への影響
8月のいじめ対策は、9月からの学校生活に大きく影響します。ここでは、その重要性を見ていきましょう。
8月下旬から9月上旬の危険性
8月下旬から9月上旬という時期は、教職員やスクールカウンセラー、教育関係者などにとって、かなり気をつけなければいけない時期です。教育関係者であれば、この時点で気づいてください。自殺総合対策推進センター(2018)[1]によれば、
9月1日という特定の日に限らず、夏休み後半から夏休み明けの時期にかけて、児童生徒の自殺防止に向けた取組を進めていくことが求められる
とされています。実際に、内閣府(2015)[2]の18歳以下の日別自殺率を見ると、9月に最も自殺率が跳ね上がっていることがわかります。
この時期は、子どもたちにとって大きなストレスがかかる時期なのです。 長い夏休みが終わり、再び学校生活が始まる。この変化が、子どもたちに大きな負担をかけることがあります。特に、いじめを受けている子にとっては、つらい環境に戻らなければならないという不安が大きくなります。
最悪の事態を防ぐために
この時期は、最悪の事態を阻止、予防しなければなりません。そのためにも、8月中に起きてしまった問題は8月中に解決し、安心して再び学校生活を送ってもらえるようにしなくてはなりません。
休みの間は少人数だったのものが、学校が始まったことで人数が増えたり、状況が悪化することは容易に考えられてしまいます。また、「学校が始まったら○○に会ってしまう」などのことも考えられます。
夏休み中は何とか逃げられていた問題が、学校が始まることで逃げられなくなってしまうのです。 7月のいじめが9月に持ち越されること、8月のいじめが9月に持ち越されることは、何としても阻止しなくてはなりません。
9月の対策は8月から始まる
9月のいじめ対策もすでに始まっているのです。児童生徒の人生がかかっているといっても過言ではないのかもしれません。そのためにも、日ごろから情報の共有や連携を心がけなくてはなりません。夏休み中に起きた問題を放置せず、しっかりと解決しておくこと。
子どもたちが安心して2学期を迎えられるように準備をしておくこと。これらが、9月からの学校生活を守ることにつながります。保護者と教職員が協力し、子どもたちを見守っていくことが何よりも大切です。 夏休みだからといって油断せず、むしろいつも以上に注意を払うことが必要なのです。
継続的な支援の重要性
8月の対策が終わったからといって、安心してはいけません。9月に入ってからも、継続的に子どもたちの様子を見守る必要があります。夏休み明けは、子どもたちが新しい環境に適応するのに時間がかかります。最初の数週間は特に注意深く見守り、何か変化があればすぐに対応することが大切です。
また、夏休み中に起きた問題が本当に解決したのか、確認を続けることも必要です。表面的には解決したように見えても、実はまだ問題が残っていることもあります。 継続的に子どもたちとコミュニケーションを取り、安心して学校生活を送れているか確認していきましょう。
まとめ
8月の夏休みは、子どもたちにとって楽しい時期である一方で、いじめ対策にとっては難しい時期でもあります。学校という守られた空間から離れ、教職員の目が届きにくくなる分、問題が見えにくくなります。しかし、だからといっていじめ対策を怠ってはいけません。むしろ、この時期だからこそ、保護者の役割が大きくなるのです。 夏休み中は、保護者が子どもたちの一番近くにいます。
子どもの様子をよく見て、変わった様子はないか、不安を抱いていないか、何か問題が発生していないか、定期的に確認することが大切です。そして、何か気になることがあれば、すぐに学校に相談しましょう。今日から、できることから始めてみませんか。子どもたちが安心して夏休みを過ごし、元気に2学期を迎えられるように、一緒に見守っていきましょう。
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