~ 教職員の方向け,毎月のいじめ対策 ~ 毎月のいじめ対策 ⑨12月
はじめまして!いじめ撲滅委員会代表、公認心理師の栗本顕です。私の専門は「いじめ」です。心理学の大学院で研究もしてきました。現在はいじめの問題を撲滅するべく、研修やカウンセリング活動を行っています。
今回のテーマは「12月のいじめ対策」です。
学校だけではなく、日常生活においてもイベントの多い12月。一般的に、12月と聞くと「テストばっかりだ」「クリスマスがある」「年末だ」「恋人がほしい」などなどいろいろあると思います。ですが、この隙間にいじめ問題が発生します。油断せずに注意して対策していくことが必要です。本記事では12月のいじめ対策について解説していきます。
目次は以下の通りです。
① 12月にも対策が必要な理由
② イベントがいじめのチャンスになる危険性
③ クリスマスとお正月に警戒すべきこと
④ 校舎内外も見回っていく重要性
⑤ テスト期間は心が安定しない
12月は様々な要因が重なる特別な時期です。油断せず、要点を踏まえた対策が必要です。具体的な方法をお伝えしていきます。ぜひ最後までご一読ください。
12月にも対策が必要な理由
12月はもうすぐ1年が終わる時期ですが、だからこそ油断できません。ここでは、12月に対策が必要な理由を見ていきましょう。
油断が招く危険性
あまり深く考えずに、漠然と12月をイメージした場合には、「もうすぐで1年も終わって、テストが終われば児童生徒は休み」と考えるかもしれません。ですが、これは大きな間違いです。油断をしてしまうと、取り返しのつかないことなってしまう場合もあります。
「もう年末だから」
「あと少しで休みだから」
という気持ちが、注意力を低下させてしまうのです。しかし、実際には12月こそ様々な問題が起こりやすい時期なのです。 そもそも、なぜ12月にも「いじめ対策」が必要だと言えるかというと、「さまざまな要因が重なるから」です。
12月に重なる様々な要因
12月になると、児童生徒同士もそうですが、教職員との間も親密な関係ができている場合が多く、その関係に油断して、過度な接し方をして、いじめに発展をする場合があります。4月から始まった関係が深まり、遠慮がなくなってくる時期でもあります。
また、テストも多く行われるため、児童生徒自身の気持ちがとても不安定になってしまっていることも要因となります。受験を控えている生徒にとっては、特にプレッシャーが大きい時期です。
イベントが多いことで「今日は○○だからハメを外そう」などと考えてしまい、今までは予想もしなかったことをしてしまう危険性もあります。 12月にまでなってくると先輩後輩の関係も濃密になっていて、人間関係も広くなっています。これは、決して悪いことではないのですが、いじめが発生してしまうリスクもその分大きくなってしまうことを忘れてはなりません。
一筋縄ではいかない対策
このように、12月にはいじめが起こる危険性のある出来事や要因がさまざまにあり、さらにそれらが重なっている時期なのです。つまり、一筋縄では対策は万全とも言えないのです。そのため、12月でも油断ができません。いじめ問題は、いついかなる時でも発生します。どんなに些細なことでも、それが悪化したり、大きくなってしまう可能性をもっています。
常に油断をしてはいけないというと、なかなか大変ですので、要点を踏まえて、要領よく対策と対処をしていくと児童生徒だけではなく、教職員にとっても気持ちが楽になると思います。 あまり、あれもこれもと手を出してしまうと、空回りしてしまいますし、なにより疲れてしまいます。無理のない範囲で、教職員同士や保護者、関係機関などと連携して対策をしていくことがなにより重要です。
イベントがいじめのチャンスになる危険性
イベントは楽しいものですが、時に問題の原因にもなります。ここでは、その危険性を見ていきましょう。
大人もハメを外す
人は、大人であってもイベントごとがあると「今日はハメを外すぞ~」「今日は無礼講だ!」とある意味、普段できないことをイベントを建前に行うことがあります。しかし、それは時として歯止めが利かなくなる事態にまでなることがあります。
例えば、『渋谷のハロウィーン』もそのうちの一つだと思われます。渋谷区として開催しているわけでもなく、さまざまな集団が誰の統制もなく、行われています。当然のことですが、逮捕者も出ています。 では、その『渋谷のハロウィーン』に参加した人が普段から、そのような振る舞いをしているかというと、そんなことはありません。
集団心理の影響
周りが気分をよくしていると、その周りにいる人も気分が良くなってしまって、普段ならできる判断もできなくなります。この現象は、児童生徒などの子どもにももちろん起こります。そのため、学校現場においても学校内での行事だけではなく、日常生活におけるイベントにも注意の根を広げておく必要があると考えられます。クリスマス、大晦日、お正月など、学校外でのイベントにも目を向ける必要があるのです。
中には、「今日は○○日」「○○日には○○をしても良い」などと自分たちでイベントの日を作っている場合もあるので、普段から児童生徒とコミュニケーションを欠かさずに、事情をよく把握しておくと良いです。 子どもたちの間で、どのようなイベントが流行っているのか、どのような集まりがあるのか、知っておくことが大切です。
実際に起きた事例
実は、事例として、生徒同士でクリスマスパーティーをする集まりを作って、その中でいじめが発生してしまったものがあります。パーティーの中で被害者が一方的に「プレゼント」として暴行や物を投げられたりかけられたりすることがあります。
加害者としては、「その場のノリで」「雰囲気で」などと意見を述べますが、いじめはいじめです。何か良いイベントがあったとしても、決して許されるものではありません。
楽しいはずのパーティーが、誰かを傷つける場になってしまうことがあるのです。 「みんなでやっているから」「楽しんでいるだけ」という言い訳は通用しません。やられている本人がつらいと感じていれば、それはいじめなのです。
クリスマスとお正月に警戒すべきこと
冬休み前後のイベントには、特有の危険性があります。ここでは、クリスマスとお正月について見ていきましょう。
共通するターゲット
イベントごとについて、注意しておくことをご紹介しました。では、今度は中でも「クリスマス」と「お正月」に注目するべきことをご紹介します。この、「クリスマス」と「お正月」に共通するものとして、「お金や物といったターゲット」があることです。クリスマスプレゼントやお年玉など、この時期には子どもたちが普段持っていないような物やお金を持つことが多くなります。
それが、いじめのターゲットになることがあるのです。 まず、「クリスマス」では、その年齢の子どもたちから人気のある物をプレゼントされることが多いと考えられます。ですが、人気があるがゆえに狙われます。
クリスマスプレゼントの危険性
クリスマスに人気のゲーム機やスマートフォンなどをもらう子もいます。それを狙われる危険性は以下になります。
クリスマスに起こる問題
それよこせよと言われる
貸せと強要される
壊されてしまう
隠されてしまう
親に言えない状況
定期的な連絡が必要です
「それよこせよ!」「貸せ!」と強引に取ってしまう子どももいます。中には壊されてしまう場合もあります。そのため、ここもいじめが発生するリスクがあるのです。
気になる児童生徒がいたら、定期的に連絡を取ってあげたりして、状況把握をしてください。「せっかくもらったのに、親に言えない」といった言葉を受け取ってあげてください。
お年玉が狙われる
そして、「お正月」です。想像ができると思いますが、「お年玉」が狙われます。現在は大分減りましたが、「お正月にゲームセンターに行くとお年玉をたかられる」なんてこともあります。私が学生時代にゲームセンターでアルバイトをしていた時は、この時期には巡回を強化した記憶があります。
中には、お年玉があるからと使いすぎてしまうお客さんもいらしたので、場合によっては止めていました。ゲームセンターに限らず、お金は財布に入っていますので狙われる危険は高いです。 冬休み明けに、やけにお金を使っている様子の子がいたら、注意が必要です。
実際に起きた金銭要求
最近では、名古屋市の小学校で小学5年の男子児童が、同級生から「金を持ってこないと一緒に遊ばない」と金銭を要求されるいじめがありました。その上、金額が10万円以上というから驚きです。教育現場に携わらせていただいている身として、同じようなことを今後起こすわけにはいきません。
目を光らせましょう。お年玉の時期は、子どもたちが普段持たないような金額のお金を持つことがあります。それが、いじめのきっかけになることを忘れてはいけません。 冬休み明けには、特に子どもたちの様子を注意深く見守る必要があります。
校舎内外も見回っていく重要性
いじめは教職員の目が届かないところで起こります。ここでは、効果的な巡回方法を見ていきましょう。
12月の巡回の重要性
12月のいじめ問題について、学校の中に目を戻します。いじめ問題を未然に防ぐ、現場をおさえるために校内を巡回していることはもう珍しくないことです。この時期は寒いので室内に児童生徒がいることが多いですが、だからといって巡回を室内に限定するのは避けてください。
寒い時期でも、外にいる子どもたちはいます。また、寒いからこそ、人目につきにくい場所に隠れていることもあります。そもそも、「いじめは教員の目の届かないところで起こる」ことです。 学校の中で「ここなら先生も生徒も来ない」なんて場所がないように心がけてください。
巡回のポイント
効果的な巡回のポイントは以下になります。
巡回のポイント
経路をランダムにする
時間を変える
校舎内外を見回る
トイレも確認する
更衣室にも注意
先読みさせない工夫
巡回する経路もランダムにした方が先読みされません。いじめをする加害者は頭が良いと頭に入れておいてください。教職員の先を読んでいます。そのため、校舎内も外も見回って、見落としのないようにしていくことがカギとなります。
トイレと更衣室への対応
中には、トイレや更衣室でいじめが起こることもありますので、トイレも確認する必要があります。しかし、だからといって男性教職員が女性トイレや更衣室を巡回したり、その逆に女性教員が男性トイレや更衣室を巡回してしまうと、別の問題です。臨機応変に、分担して行動してください。まさに、チーム学校です。男性教職員と女性教職員が協力して、それぞれのエリアを巡回することが大切です。また、複数人で巡回することで、死角を減らすこともできます。 一人で全てをカバーしようとせず、チームで協力することが効果的です。
教職員間のコミュニケーション
児童生徒と教職員間でのコミュニケーションも必須ですが、日ごろから、教職員間でのコミュニケーションも欠かしてはなりません。巡回で気づいたことを共有する、気になる場所があれば伝え合う、怪しい動きがあれば報告し合う。このような情報共有が、いじめの早期発見につながります。
また、巡回の役割分担を決める際も、コミュニケーションが大切です。「今日はこのエリアをお願いします」「あの場所が気になるので見てもらえますか」など、協力し合うことで、より効果的な巡回ができます。 チーム学校として、みんなで協力して子どもたちを見守っていきましょう。
テスト期間は心が安定しない
12月はテスト期間でもあります。ここでは、この時期特有の問題を見ていきましょう。
テスト期間の不安定さ
12月は、学校の中では「定期テスト」があります。そして、受験生にとっては大詰めの時期にもなります。そのため、児童生徒の気持ちは不安定です。ピリピリしている児童生徒もいれば、ビクビクしていたり、諦めていたり、自暴自棄になっているケースも珍しくありません。
テストの点数が悪かったらどうしよう、志望校に合格できるだろうか、親に怒られるかもしれない。様々な不安を抱えながら、子どもたちは過ごしています。この状況の中で、一つの教室に集まっています。揉め事や食い違いが起こっても不思議ではありません。 つまり、いじめが起こる危険性が高いということです。
心の状態の多様性
テスト期間中の子どもたちの心の状態は以下になります。
テスト期間の心の状態
ピリピリしている
ビクビクしている
諦めている
自暴自棄になっている
イライラしている
様々な状態が混在します
このような様々な心の状態の子どもたちが、同じ空間にいるのです。ストレスがたまっている子が、そのストレスを誰かにぶつけてしまうこともあります。また、成績の良し悪しが、いじめのきっかけになることもあります。
教職員の状態にも注意
テスト期間では、児童生徒だけではなく、教職員もピリピリしている場合があります。もちろん、教職員も人間ですので、イライラしてしまうことは仕方ありません。ですが、そのような状態だと、もし何か教職員に相談をしようとしても「先生、忙しそうだから」と遠慮してしまう児童生徒がいることを忘れてはなりません。言えない児童生徒に対して、イライラをぶつけてしまう可能性はとても高いと考えられます。テストの採点、成績の処理、進路指導など、教職員も忙しい時期です。 しかし、だからこそ、子どもたちへの配慮を忘れてはいけません。
忙しい時期の対応
忙しい時期でも、子どもたちが相談しやすい雰囲気を作ることが大切です。「今は忙しいけど、○時なら話を聞けるよ」と具体的な時間を示すことも効果的です。また、教職員同士で協力して、相談を受ける時間を確保することも重要です。
一人が忙しい時は、他の教職員が対応するなど、チームで対応することで、子どもたちを取りこぼさずに済みます。テスト期間だからこそ、心のケアも大切にしましょう。成績も大切ですが、子どもたちの心の健康はそれ以上に大切です。 忙しさの中でも、子どもたちに寄り添う気持ちを忘れないようにしましょう。
まとめ
2月は、学校だけでなく日常生活においてもイベントが多い特別な時期です。テスト、クリスマス、年末、お正月など、様々な出来事が重なる時期だからこそ、いじめが起こりやすくなります。「もうすぐ1年が終わる」という油断が、大きな問題を見逃すことにつながります。12月にも、しっかりとした対策が必要なのです。 様々な要因が重なる12月は、一筋縄ではいかない時期です。
親密になった関係での油断、テストによる不安定な心、イベントでのハメの外し方。これらが複雑に絡み合って、いじめが発生する危険性が高まります。しかし、あれもこれもと手を出すのではなく、要点を押さえた対策をすることが大切です。無理のない範囲で、チーム学校として協力しながら対策を進めていきましょう。
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・いじめにあって苦しい
・いじめの記憶が辛い
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