~ 教職員の方向け,毎月のいじめ対策 ~ 毎月のいじめ対策 ⑩1月
新年、明けましておめでとうございます。はじめまして!いじめ撲滅委員会代表、公認心理師の栗本顕です。私の専門は「いじめ」です。心理学の大学院で研究もしてきました。現在はいじめの問題を撲滅するべく、研修やカウンセリング活動を行っています。
今回のテーマは「1月のいじめ対策」です。
「冬休み明け」や「お正月明け」など、児童生徒にとってはイベント後になる1月。一般的に、1月と聞くともうすぐで受験や卒業、学年が終わるなど、さまざまなことを考える月です。クリスマスやお正月という大きなイベントの後だからこそ、注意が必要な時期なのです。本記事では1月のいじめ対策について解説していきます。
目次は以下の通りです。
① イベント後は危険が多い理由
② お正月明けにあるいじめ
③ 冬休み明けの盲点
④ 引き継ぎを視野に入れる
⑤ 受験勉強はストレスになる
1月はイベント後であり、受験の大詰めでもあります。様々な要因が重なる時期だからこそ、適切な対策が必要です。具体的な方法をお伝えしていきます。ぜひ最後までご一読ください。 --- ##
イベント後は危険が多い理由
楽しいイベントの後には、思わぬ危険が潜んでいます。ここでは、その理由を見ていきましょう。 ###
イベントとトラブルの関係
これまで、児童生徒には学校や家庭でさまざまなイベントがありました。毎月のいじめ対策でもご紹介しているように、イベントにはトラブルもつきものです。例えば、体育祭や文化祭などといったものでは、児童生徒の関係性を考えてグループを作らないと、トラブルが起きたり、いじめが起きるといったものがありました。
実は、1月は大きな2つのイベントの後になります。1つはクリスマス、もう1つはお正月です。 お正月については次にご紹介をします。では、なぜクリスマスという楽しいイベントの後が危険かをご紹介します。
プレゼントが狙われる
それは、ずばり「プレゼント」です。実は、そのプレゼントをネタにいじめをしてくる子たちがいます。クリスマスプレゼントで起こる問題は以下になります。
プレゼントで起こる問題
値段をいじってくる
プレゼントを貶す
プレゼントを奪おうとする
プレゼントを壊そうとする
様子を見る必要があります
などがあります。「安いプレゼントだね」「そんなものもらって嬉しいの?」などと言われることもあります。
プレゼントを禁止してはいけない
ただ、ここで誤解をしてほしくないことは「じゃあプレゼントはなしだ!」というのではありません。そうすることは、避けてください。プレゼントは物の価値というものは、その人自身で判断するものです。受け取った人が「嬉しい」と思える物なら、良いんです。
値段が高いか安いかは関係ありません。大切なのは、気持ちなのです。教育現場では、しばしばこのようなことが起こるため、特に休み時間などは児童生徒の様子を見ておく必要があります。 また、物の価値観についても、話をしておくと良いと思います。
価値観の教育
物の価値は、値段だけで決まるものではないことを、子どもたちに伝えることが大切です。誰かがくれたプレゼントは、どんなものでも気持ちがこもっています。それを馬鹿にすることは、相手の気持ちを傷つけることだと教えましょう。また、人それぞれ家庭の事情があることも、理解させる必要があります。
高価なプレゼントをもらえる家庭もあれば、そうでない家庭もあります。それは当たり前のことで、恥ずかしいことではありません。 このような価値観を、冬休み明けのホームルームなどで話しておくと効果的です。
お正月明けにあるいじめ
お正月の後にも、特有の問題があります。ここでは、お年玉に関する問題を見ていきましょう。 ###
お年玉が狙われる
先ほどは、「クリスマス後」について、ご紹介をしました。次は、その次にある「お正月」について、ご紹介します。なぜお正月という喜ばしいイベントの後が危険かをご紹介します。それは、ずばり「お年玉」です。実は、そのお年玉をネタにいじめをしてくる子たちがいます。お年玉で起こる問題は以下になります。
お年玉で起こる問題
金額をいじる
使わせようとする
恐喝
財布を盗む
金銭問題は深刻です
などがあります。お年玉は、金銭が関わる問題です。金額については、それぞれの家庭で決めていることなので、個人の自由です。
特に注意すべき行為
特に、注意しなくてはならないのが「お金を使わせようとする」「恐喝」です。この2つはとても似ています。「お金を使わせようとする」については、自分の物や相手の物を無理に買わせることです。「お金持ってるんだから買っちゃいなよ」「持ってるなら買ってよ」といった具合です。もちろん、これは応じなくて良いことです。友達だからといって、無理にお金を使わせる権利は誰にもありません。
そして、さらに注意をしておかなくてはならないのが「恐喝」「財布を盗む」です。 恐喝は犯罪です。今日までに、恐喝についてはさまざまな事件が起きてきました。「起きてきた」ということは、起きる可能性が高いことを意味します。
財布の管理と予防
さらに、財布を盗むについては、例えば体育の時間などに気をつけなければなりません。事前に教職員の方で預かることやカギのついているロッカーなどがあれば活用を促しておくことが良いと思います。金銭の関わる問題は深刻なケースに発展する可能性が高いため、慎重に様子を見ていかなくてはなりません。時には、児童生徒間だけではなく、大人も関与してしまう場合もあります。
警察や弁護士が介入するケースも珍しくはありません。それほど、大きなことになります。 こちらについても、「じゃあ、お年玉はなし!」としてしまうのは避けてください。問題の根本的な解決にはなりませんし、何より児童生徒がかわいそうだと思います。
見守りと予防のポイント
いかに自分を守るか、守ってあげられるか、見守りができるかがポイントです。冬休み明けには、お金の管理について改めて指導することが大切です。多額のお金を学校に持ってこないこと、財布の管理に気をつけること、もし何か要求されたら断ること、困ったら先生に相談することなどを伝えましょう。
また、体育の時間などには、貴重品の管理を徹底することが重要です。教職員が預かる、ロッカーに鍵をかけるなど、盗難を防ぐ工夫が必要です。 そして何よりも、子どもたちの様子をよく観察することが大切です。急にお金を使うようになった子、逆にお金を持っていないはずなのに物を買っている子など、不自然な点があれば注意が必要です。
冬休み明けの盲点
冬休みは短いからこそ、見落としがちな問題があります。ここでは、その盲点を見ていきましょう。 ###
休めたという思い込み
冬休みは文字通り「休みの期間」です。学校生活で疲弊してしまった児童生徒にとっては、本来なら心身共に休める期間になります。そのため、「休めていたんだから、もう学校行けるでしょ」「嫌な噂や出来事もおさまったでしょ」と思ってしまうケースがあります。しかし、残念ながら冬休みは短いです。
そのため、事がおさまるには短いのです。夏休みと違い、冬休みは2週間程度しかありません。この短い期間で、心の傷が癒えるとは限りません。 そのため、安易に「休めた」とも言い難いのです。休み明けや休みが明ける間際に、普段と様子が違う時などは、じっくり話を聞いていくことを心がけていく必要があります。
休み前の関係性を確認
学校現場では、休みの前の児童生徒同士の関係を照らし合わせながら、行動を観察していくことが必要ではないかと考えられます。冬休み前にトラブルがあった子同士が、休み明けにどのような様子なのか。距離を置いているのか、また同じように接しているのか。よく観察することが大切です。
長期休暇のその後については、夏休みの時にもご紹介をしていますが、長期休暇が終わった後やその付近は、いじめの被害者にとっては落ち着いていられる時期ではありません。 「また学校が始まる」「また会わなければならない」という不安が、休み明けには大きくなります。
全体への影響
また、直接加害者や被害者になっていない児童生徒でも、同じクラスの中で問題が生じている時に「学校には何の問題もなく行ける」とは言い難いです。クラスの中にいじめ問題があると、直接関係していない子も、何となく居心地の悪さを感じます。
「自分もいつかターゲットになるかもしれない」という不安を抱えている子もいます。早期発見、早期解決のためにも全体を見ていくことが改めて必要です。 一人一人の様子だけでなく、クラス全体の雰囲気にも注意を払いましょう。
引き継ぎを視野に入れる
1月は次年度への準備も始まる時期です。ここでは、いじめ問題の引き継ぎについて見ていきましょう。
3学期の意味
1月になると、3学期制の学校では最後の学期になります。そこで、いじめの問題解決について、「引き継ぎ」を視野に入れていかなくてはなりません。もともと、いじめ問題はすぐに解決はせず、その後の対応にも注目しなくてはならないものです。
だからといって、「来年度に任せよう」というものではありません。新年度を迎える時には「解決」していることを前提にしなくては、何より児童生徒やその保護者がかわいそうです。 ここで言う「引き継ぎ」とは、「いじめ問題解消後のケア」のことです。
心のケアの継続
いじめ問題が過ぎ去ったと思っても、実は児童生徒の心の中では今もなお起きている問題ということは少なくありません。表面上は解決したように見えても、心の傷は残っています。1月から3月にかけて、状況や経緯をまとめておくと、引き継ぎがスムーズになります。
どのような問題があったのか、どう対応したのか、現在の状況はどうか、今後注意すべき点は何かなど、詳しく記録しておくことが大切です。何よりも、児童生徒が安心して学校生活が送れることが一番です。 次の担任に適切に引き継ぐことで、継続的なケアが可能になります。
引き継ぎの伝え方
くれぐれも、児童生徒やその保護者に「引き継ぎをします」と言うことは、この段階では避けてください。「見捨てられた」と思う可能性がとても高いです。そうなってしまうと、大切な信頼関係が失われてしまいます。「来年度も先生たちがしっかり見守るよ」という安心感を与えることが大切です。
引き継ぎは、教職員間での情報共有であり、子どもたちを見捨てることではありません。そのことを、子どもたちや保護者にしっかりと伝える必要があります。 「ずっと支えていくよ」というメッセージを伝え続けることが重要です。
記録の重要性
引き継ぎのためには、詳細な記録が欠かせません。いつ、どこで、誰が、何をしたのか。どのように対応したのか。その後の様子はどうか。これらを時系列で記録しておくことが大切です。また、保護者とのやり取りや、関係機関との連携についても記録しておきましょう。
次年度の担任が、スムーズに状況を把握できるように、分かりやすくまとめることが求められます。記録は面倒に感じるかもしれませんが、子どもたちを守るためには必要不可欠なものなのです。
受験勉強はストレスになる
1月は受験シーズンです。ここでは、受験生特有の問題を見ていきましょう。
受験生の不安
1月と言えば、受験生にとっては大詰めの時期です。受験生本人もその保護者もピリピリしています。実は、受験生にとって、いじめ被害は相談がし難いものなんです。受験生が抱える不安は以下になります。
受験生が抱える不安
受験に影響が出る
推薦に響いてしまう
内申書はどうなるか
進路が心配
相談しにくい状況です
「受験に影響が出てしまうのではないか」「推薦に響いてしまうのではないか」「内申書はどうなるんだろう」と、さまざまなことを考えてしまいます。 ###
不安定な心
また、気持ちが不安定にもなっているため、加害をしてしまう場合もあります。受験のプレッシャーから、イライラして誰かに当たってしまうこともあります。また、受験で失敗した時の不安から、自暴自棄になることもあります。このような状態の時には、普段はしないような行動を取ってしまうことがあるのです。
そのため、クラスに受験生がいる場合には、よく様子を見てあげてください。児童生徒の気持ちを察して、未然防止をしていくことも必要です。 児童生徒が不安定になる時だからこそ、先回りして準備をしておいていきたいところです。
受験生へのケア
受験生には、特別な配慮が必要です。いじめを受けていても、「今は受験に集中しなければ」と我慢してしまうことがあります。だからこそ、教職員から積極的に声をかけることが大切です。「最近どう?」「困っていることない?」と気軽に話しかけることで、相談のきっかけを作りましょう。
また、受験のストレスで加害行為をしてしまう可能性がある子にも、注意を払う必要があります。イライラしている様子があれば、話を聞いたり、ストレス発散の方法を一緒に考えたりすることも効果的です。 受験生だからこそ、より丁寧なケアが求められるのです。
まとめ
1月は、冬休み明けであり、お正月明けでもあります。クリスマスとお正月という2つの大きなイベントの後だからこそ、特有の問題が起こりやすい時期です。クリスマスプレゼントを馬鹿にされたり、奪われたりすること。お年玉を無理に使わせられたり、恐喝されたりすること。これらは、楽しいはずのイベントの後に起こる、とても悲しい出来事です。 しかし、だからといってプレゼントやお年玉を禁止するのは解決にはなりません。
大切なのは、物の価値観を教えること、お金の管理を徹底すること、そして何よりも子どもたちの様子をよく見守ることです。また、冬休みは短いため、「休めたから大丈夫」と思い込むのは危険です。短い休みでは、心の傷は癒えきりません。休み明けには、特に注意深く子どもたちを見守る必要があります。 1月は3学期の始まりであり、次年度への準備も始まる時期です。いじめ問題の引き継ぎも視野に入れる必要がありますが、決して「見捨てる」ことではありません。
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