~ 教職員の方向け,毎月のいじめ対策 ~ 毎月のいじめ対策 ④7月
はじめまして!いじめ撲滅委員会代表、公認心理師の栗本顕です。私の専門は「いじめ」です。心理学の大学院で研究もしてきました。現在はいじめの問題を撲滅するべく、研修やカウンセリング活動を行っています。

今回のテーマは「7月のいじめ対策」です。
月は夏休みを目前に控え、テストや面談、成績付けなど、学校現場は大忙しの時期です。しかし、忙しさの中でも見逃してはいけないことがあります。それは、長い夏休みに向けた準備です。学校が休みでもいじめは起こります。むしろ、大人の目が届きにくい分、問題が深刻化する危険性があるのです。
本記事では7月のいじめ対策について解説していきます。
目次は以下の通りです。
① 夏休みに備えたいじめ対策
② 保護者との関係を深める大切さ
③ 問題把握と状況理解の方法
④ 8月も視野に入れた準備
夏休みという長い休みを安心して過ごせるように、7月のうちにしっかりと準備をしておくことが大切です。具体的な方法をお伝えしていきます。ぜひ最後までご一読ください。
夏休みに備えたいじめ対策
7月は夏休み前の大切な準備期間です。ここでは、長い休みに向けてどのような対策が必要なのかを見ていきましょう。
7月の忙しさと見落とし
7月は、何といっても夏休みを目前として、いろいろと詰め込まれた月です。そのため、教育現場では大忙しといえます。テストの採点、成績の集計、面談の準備、夏休みの課題の作成など、やるべきことが山積みです。しかし、その中でも決して疎かにしては危険なものがあります。
それは、「夏休みにおけるいじめ対策」です。忙しさのあまり、この大切な準備を見落としてしまう教職員も少なくありません。 夏休みは子どもたちにとって楽しみな時期ですが、いじめを受けている子にとっては不安な時期でもあります。学校という守られた空間から離れ、問題が見えにくくなるからです。
休み中もいじめは起こる
このように断言できるのは、「学校が休みでもいじめは発生する」からです。部活動や補習、特別授業だけでなく、SNS上でも、テキストコミュニケーションによって、動画によっていじめは発生します。むしろ、SNSでのいじめは24時間続く可能性があり、学校にいる時よりも深刻になることさえあります。
厄介なのは、学校が休みな分、その問題が発生していることに気付きにくいという点です。 さらに、大人の目が届きにくいからと急速に問題が悪化することさえ考えられます。
また、被害者は「誰に相談すればいいんだ」と助けを求められなくなる悪循環が起きます。学校に行けば先生に相談できたのに、夏休みはその機会もなくなってしまうのです。
夏休みに起きる問題
夏休みに起きやすい問題は以下になります。
夏休みに起きる主な問題
いつでもいじめ発生する
大人が気づきにくい
問題が悪化する危険性
相談相手を見つけにくい
教職員が指導しづらい
早めの準備が必要です
これらの問題を解決させるためには、以下のような点について夏休みに入る前に徹底しておく必要があります。これから一つ一つ具体的に見ていきましょう。
相談先を明確にしておく
いじめが起きた場合に誰に相談するかを教えておくことが大切です。「何か問題が起きた時には学校の○○に相談して」と伝えておくだけでも道しるべになります。また、教職員間で夏休み中のいじめ問題への連携を準備しておくと、よりスムーズになります。
「○○先生に伝えたのに何で知ってもらえていないの」というのを防げます。複数の先生が情報を共有できる仕組みを作っておくことで、子どもたちは安心して相談できるようになります。
夏休み中でも連絡が取れる先生の電話番号やメールアドレスを伝えておくことも効果的です。ただし、教職員のプライベートな時間も大切ですので、学校として対応できる体制を整えておくことが望ましいです。
外部の相談窓口を紹介する
電話相談やSNS相談の窓口を告知することも重要です。児童生徒が、教職員に相談し辛い時に使うように勧めてあげてください。いつでも味方になってくれる存在があるというだけでも支えになります。教職員ではカバーしきれないところをカバーするためにも必要不可欠なツールだと思います。
24時間対応している相談窓口もありますので、それらの情報をまとめたプリントなどを配布しておくと良いでしょう。 また、相談窓口を利用することは恥ずかしいことではないと伝えることも大切です。困った時に助けを求めることは、とても勇気のある行動なのだと教えてあげましょう。
人間関係を把握しておく
児童生徒の関係図を作っておくことも効果的です。児童生徒の関係が目に見える状態になっていることで、そこから予想される問題が見えてきます。すると、休みの間に起こるかもしれない問題を未然に防ぐことも、早いうちに対応することもある程度可能になります。
誰と誰が仲が良いのか、誰と誰の関係が微妙なのか、グループの中で孤立している子はいないかなど、視覚的に把握できることで対策も立てやすくなります。 ただし、この関係図は個人情報ですので、取り扱いには十分注意してください。教職員間で共有する際も、情報管理を徹底する必要があります。

保護者との関係を深める大切さ
夏休み中に問題が起きた時、最も近くにいるのは保護者です。ここでは、保護者との信頼関係を築く重要性と方法を見ていきましょう。
保護者の役割と重要性
休みの間に問題が起きた場合、何よりも近くにいる存在である保護者が問題に立ち向かうことになります。しかし、このような問題は決して一人で抱え込まないことです。そのためにも、保護者との関係を築いておく必要があります。保護者と教職員が協力することで、子どもを守る力が何倍にも大きくなります。
そもそも、保護者に信頼されていない教職員がいじめ問題について対策することは、効果が半減すると考えてもおかしくないかもしれません。 信頼関係がなければ、保護者は学校に相談することをためらってしまいます。また、学校側から連絡をしても、素直に受け入れてもらえないこともあります。だからこそ、日頃から信頼関係を築いておくことが大切なのです。
保護者との関係を深める方法
保護者と関係を築くことは、普段の人間関係を築くこととは少し違います。そのためのキーワードは以下になります。
関係を深めるキーワード
児童生徒のことを気に掛ける
変化があった時には共有する
保護者が気にしていること
それを共有する
子どものことが中心です
共通していえることは「児童生徒のこと」です。保護者は我が子を安心して学校に送りだしたいです。「この人なら家の子のことをちゃんと見てくれている」と思ってもらうことです。
本当に大切なもの
保護者が求めているのは、自分の子どもをしっかりと見てくれる先生です。どんなに立派な経歴があっても、子どものことを見ていなければ信頼されません。逆に、経験が浅くても、一生懸命子どもと向き合っている姿勢は必ず伝わります。
日ごろからの連絡や面談の時によく話をしていきましょう。小さなことでも連絡をする、子どもの良いところを伝える、心配なことがあれば早めに相談する。そのような積み重ねが、信頼関係を作っていくのです。
7月の面談を活かす
7月には多くの学校で保護者面談が行われます。この機会を最大限に活かしましょう。成績の話だけでなく、子どもの様子、友人関係、学校での過ごし方など、幅広く話をすることが大切です。また、保護者の悩みや心配事にもしっかりと耳を傾けましょう。
面談の時間は限られていますが、その中で保護者との信頼関係を深めることができます。 夏休み中の連絡方法についても、この面談の時に確認しておくと良いでしょう。何かあった時にすぐに連絡が取れる体制を整えておくことで、保護者も安心できます。

問題把握と状況理解の方法
7月までに起きた問題を整理し、これから起こりうる問題を予測することが大切です。ここでは、その方法を見ていきましょう。
3ヶ月を振り返る
児童生徒にしてみるとその学年やクラスになってから3ヶ月が経ちました。その中では様々なことが起こり、解決をしてきました。しかし、今もなお続いているものやこれから起こりえることはこれまで以上のことがあります。4月には見えなかった問題が、今になって見えてくることもあります。
また、小さな問題だと思っていたことが、実は大きな問題に発展する兆しだったということもあります。 そのため、起きていることだけに捉われず、これから起こるであろうことも予想しておくと良いです。それを可能にするために少し考えてみましょう。過去を振り返り、現在を理解し、未来を予測する。この3つの視点が大切なのです。
問題を把握するポイント
問題を把握するためのポイントは以下になります。
問題把握のポイント
今起きている問題を把握
問題を解決していく
いじめになるかもと感じること
一人一人が抱えている問題
児童生徒の目線で見ます
大切なことは、「児童生徒の目線で把握する」ことです。児童生徒間で起きていることは児童生徒が一番よく知っています。大人の目線では些細に見えることでも、子どもにとっては大きな問題だったりします。 ###
情報収集の方法
児童生徒が現在抱えていること、これから抱える可能性のあることを把握しておくと対策も対応もよりはやくできるようになります。これらのことをすると、自然と信頼関係も築け、長期の休みにも準備することができます。情報収集の方法としては、日頃の観察、個別の面談、アンケート、日記やノートのやり取りなど、様々な方法があります。
一つの方法だけでなく、複数の方法を組み合わせることで、より正確に状況を把握することができます。 また、子どもたちが話しやすい雰囲気を作ることも大切です。「何でも話していいんだよ」「先生は味方だよ」というメッセージを日頃から伝え続けることで、子どもたちは安心して相談できるようになります。
焦らず慎重に
一方で、
信頼関係を築きたい
はやく問題把握をしたい
はやく問題解決をしたい
と焦ってしまうと距離を置かれてしまうことや誤った判断をする危険性が高まります。大切に扱わなければならないことであるからこそ、慎重に行動していかなくてはなりません。
焦らずに他の教職員とも連携して問題解決と把握に向けて行動してください。焦る気持ちは分かりますが、子どもたちのペースを尊重することも大切です。 無理に話を聞き出そうとしたり、問題を解決しようと急いだりすると、かえって子どもたちは心を閉ざしてしまいます。じっくりと時間をかけて、信頼関係を築いていくことが、結果的には一番の近道なのです。
8月も視野に入れた準備
7月のうちに、8月の夏休みに向けた準備もしておきましょう。ここでは、少し違った視点からの対策を見ていきます。
夏休みの過ごし方を知る
8月の大型連休に向けて少し普段とは違う視点から問題の対策をしてみます。夏休み中は大人にとっても子どもにとってもイベントが多くあり、逆に何もない日が少なくなっているように感じます。その点について、少し視点を向けることも実は重要なことです。
夏休み中に児童生徒が何をするのか、どこに行くのか、どんなイベントに参加するのかを事前にリサーチしておくと、予想ができます。 だからといって逐一休みの間の児童生徒の行動を把握していたら気持ち悪がられてしまいます。程々にするのが良いです。面談の際に「夏休みは何か予定あるの?」と軽く聞く程度で十分です。
情報を活かした対策
このことを知っておくと、何か問題が起きた時に状況把握がスムーズにできることや、予想される問題もわかります。予想される問題については、夏休みに入る前に注意事項として伝えておくと良いでしょう。例えば、夏祭りや花火大会など、子どもたちが集まるイベントでトラブルが起きやすいことを事前に伝えておけば、未然に防げることもあります。
また、SNSの使い方についても改めて注意を促すことが大切です。 夏休みは開放的な気分になりやすく、普段はしないようなことをしてしまうこともあります。楽しい思い出を作るための夏休みが、トラブルの原因にならないように注意を促しましょう。
教職員同士の情報共有
中には、開催されるイベントについて詳しく知っている教職員もいると思います。事前に少し教えてもらい、教職員とも関係を深めていきましょう。地域のイベント情報、子どもたちが集まる場所、トラブルが起きやすいスポットなど、教職員同士で情報を共有することで、より効果的な対策ができます。
また、夏休み中の連絡体制についても、教職員間で確認しておくことが大切です。 誰がいつ対応できるのか、緊急時にはどう連絡を取り合うのかなど、具体的に決めておくことで、いざという時にスムーズに動けます。
自分自身のリフレッシュも大切
時には、自分の息抜きのためにイベントに参加してもいいのではないでしょうか。いろいろな経験をしてこそ、人に教えることができるものだと私は思っています。教職員も人間です。夏休みは自分自身をリフレッシュさせる大切な時期でもあります。
しっかりと休んで、心と体を整えることで、2学期からまた元気に子どもたちと向き合うことができます。自分を大切にすることも、良い教育をするためには必要なことなのです。 また、地域のイベントに参加することで、子どもたちの普段とは違う一面を見ることができることもあります。学校の外での姿を知ることで、より深く子どもたちを理解することができるかもしれません。

まとめ
7月は夏休み前の大切な準備期間です。テストや成績付け、面談など忙しい時期ですが、その中でも夏休みに向けたいじめ対策を疎かにしてはいけません。学校が休みでもいじめは起こります。むしろ、大人の目が届きにくい分、問題が深刻化する危険性があるのです。
夏休みに備えるために、相談先を明確にしておく、外部の相談窓口を紹介する、人間関係を把握しておく、家庭環境を理解しておくなど、具体的な準備が必要です。そして何よりも、保護者との信頼関係を築いておくことが大切です。
そして、教職員自身のリフレッシュも忘れないでください。しっかりと休んで、2学期からまた元気に子どもたちと向き合える準備をしましょう。今日からできることから始めてみませんか。子どもたちが安心して夏休みを過ごせるように、一緒に準備を進めていきましょう。
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