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毎月のいじめ対策>11月にできるいじめの対策

いじめ撲滅

~ 教職員の方向け,毎月のいじめ対策 ~ 毎月のいじめ対策 ⑧11月

はじめまして!いじめ撲滅委員会代表、公認心理師の栗本顕です。私の専門は「いじめ」です。心理学の大学院で研究もしてきました。現在はいじめの問題を撲滅するべく、研修やカウンセリング活動を行っています。

今回のテーマは「11月のいじめ対策」です。

いじめ撲滅委員会代表栗本顕

11月は「いじめ撲滅月間」「いじめ防止月間」「いじめ対策強化月間」などが実施される特別な月です。一般的に、11月と聞くと「特に行事がない、あったとしても修学旅行」といったもので、何をどう対策するのかわかりづらいです。しかし、実は11月はいじめが増えやすい時期なのです。本記事では11月のいじめ対策について解説していきます。

目次は以下の通りです。

① 防止月間等が実施される理由
② イベントがなくても注意が必要
③ 悪化をする前に対処する方法
④ 我慢をしていた子へのケア
⑤ 教職員と児童生徒との距離感

11月は脳科学的にも心が不安定になりやすい時期です。だからこそ、特別な配慮が必要なのです。具体的な方法をお伝えしていきます。ぜひ最後までご一読ください。

防止月間等が実施される理由

11月に様々な防止月間が実施される理由には、科学的な根拠があります。ここでは、その理由を詳しく見ていきましょう。

理解することの大切さ

11月にはなぜ「防止月間」等が実施されるのか、そのことについて理解したうえで対策や防止に取り組むと、意気込みも変わります。もともと、11月はいじめが増える時期だと言われています。

このことは、諸説あるのですが、今回はその一部をご紹介します。ただ「決まりだから」と取り組むのではなく、理由を理解することで、より効果的な対策ができるようになります。 脳科学の視点からこの11月と児童生徒の異変を見ていきます。大人も同様です。

セロトニンと心の関係

まず、脳の状態から見た11月は、通称「安心ホルモン」であるセロトニンの分泌量が変化する時期と重なります。このセロトニンが不足すると脳の機能の低下が見られたり、心のバランスを保つことが難しくなってしまいます。

適切な対応方法

不安が強まったり、心のバランスが保てなくなった時には、速やかに心身を休ませてあげること、よく気持ちを受け取ってあげることです。無理に明るく振る舞わせようとしたり、「気のせいだ」と決めつけたりせず、その子の気持ちをそのまま受け止めることが大切です。

「最近、何だか元気がないね」
「何か困っていることはない?」

と優しく声をかけてあげましょう。また、ゆっくり休める環境を整えることも重要です。無理に頑張らせるのではなく、その子のペースを尊重することが、この時期には特に大切になります。 11月という時期の特性を理解することで、子どもたちへの適切な対応ができるようになるのです。 

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イベントがなくても注意が必要

11月は大きなイベントが少ない時期ですが、だからこそ注意が必要です。ここでは、その理由を見ていきましょう。

行事がない時期の危険性

11月というと、「特に行事がない、あったとしても修学旅行」といったような時期だと思います。「行事やイベントがないのなら、特に気を付けることはないのでは?」と思うかもしれませんが、そもそもいじめは1年中どんな時にも起こるものです。いじめ問題に気を配らない月はありません。

むしろ、イベントがないからこそ、注意が必要な場合もあるのです。大きなイベントがないと、子どもたちは何をして過ごすのでしょうか。 我々、人は何かやるべきことがあったら、そのことをやります。大人になったら、そのやるべきことを自分で見つけ、行動をしていきます。

子どもたちの行動パターン

しかし、児童生徒はまだその力は発展途上です。何か指示や目標がなければその時々の好きなことを優先して行うことは容易に考えられます。もちろん、そうではない児童生徒もいます。こうなった場合、集団で楽しいことをやっていくと、それが普通となり、仲間外れやいじめが起きてもおかしくはありません。

ここに、先ほどご紹介したセロトニンの問題が入れば、なおさらです。心が不安定な状態で、特にやることもなく、集団で過ごしていると、問題が起きやすくなるのです。 自らある意味、楽しみを作ってしまうのです。その「楽しみ」が、誰かをからかうことや、いじることになってしまうことがあります。

安易な判断は禁物

しかし、「じゃあイベントをたくさんやろう!」としてしまうと、そもそもそういったイベント事で起きてしまういじめを増加しているにすぎません。いじめ問題は、多角的に見ていかなければ、悪化します。安易な判断は控えてください。イベントを増やせば解決するという単純な問題ではありません。

イベントがあればあったで、グループ分けなどで問題が起きることもあります。重要なことは、

学校にいる時間に、児童生徒が自分の時間を大切にできているか

です。 イベントがあってもなくても、子どもたちが安心して過ごせる環境を作ることが大切なのです。 

日常的な対応の重要性

アンケートの実施や定期的な面談、他愛のない会話、それらが必要となるのです。特別なことをするのではなく、日常的に子どもたちの様子を見守り、声をかけることが何よりも大切です。「最近どう?」「困っていることない?」といった何気ない会話が、子どもたちの心を支えます。

また、アンケートを実施することで、声をあげにくい子の気持ちも拾うことができます。定期的な面談では、一人一人とじっくり向き合う時間を作ることができます。 イベントがないからこそ、このような日常的な関わりが重要になるのです。

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悪化をする前に対処する方法

11月は既に起きている問題が悪化しやすい時期でもあります。ここでは、早期対処の重要性を見ていきましょう。

11月の警戒が必要な理由

脳科学からの視点やイベントがないことからの視点についてご紹介したことからわかるように、11月はいじめ問題について警戒をしていかなければならない月です。そして、いじめ問題はこの11月からはじまるものだけにとらわれずに、「今までのもの」についても注意をしていかなければなりません。新しい問題だけでなく、過去の問題にも目を向ける必要があるのです。

これほど、いじめ問題が起きてしまう危険性があるのですから、当然今までにあった些細な問題や解決できなかった問題が大きく深刻化することが考えられます。 心が不安定な時期だからこそ、小さな問題が大きくなりやすいのです。

過去の事例の確認方法

過去にいじめ対応をした事例についても、「その後、どうなったのか」を確認していく必要があります。もちろん、これは被害者に「やってないだろうな」と聞いてしまうことはNGです。もし、その児童生徒が十分に反省していたとしたら、「もう先生には信じてもらえないんだ」と感じます。

加害者に直接問い詰めるような聞き方は、信頼関係を壊してしまいます。かといって、被害者にだけ「その後、どうなった?」と聞くと、周りからの目などを気にすると考えられます。 被害者も、また問題にされることを恐れて、本当のことを言えないかもしれません。

 

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我慢をしていた子へのケア

11月は、今まで頑張ってきた子どもたちが特に注意が必要な時期です。ここでは、そのような子どもたちへのケアを見ていきましょう。

心の配慮の必要性

11月は、児童生徒の気持ち、心の面を普段以上に配慮をしていくことが必要であることがわかりました。この中で、実は「今まで我慢をしてきた児童生徒」にも着目する必要があります。今まで我慢してきた児童生徒にとっても、この時期は普段以上に不安定になります。

ずっと頑張ってきた子が、この時期に限界を迎えることがあるのです。我慢することは、自分の気持ちにゆとりがある時ではないとできません。心に余裕がなくなると、今まで我慢できていたことが我慢できなくなります。 また、「我慢」に限らず、今まで「友達の話をよく聞いていた児童生徒」にも着目する必要もあります。 

聞き役だった子への注意

人の話を聞くことは、自分がいっぱいいっぱいである時にはできません。そのため、「え、この子がこんなことを?」といった事態も起きかねないのです。いつも優しく友達の相談に乗っていた子が、突然キレてしまったり、学校を休むようになったりすることがあります。周りから見れば突然のことに見えますが、実は心の中では限界が近づいていたのです。だからこそ、注目すべき子どもたちがいます。

今まであまり心配していなかった児童生徒、今まで我慢をしてきた児童生徒、友達の話をよく聞いていた児童生徒がいたとしたら、よく見てあげることです。 これらの子どもたちは、11月という時期に特に注意が必要なのです。 

積極的な声かけ

少しでも、「いつもと違うかも」「無理しているかも」と思ったら、迷わずに声掛けをしてあげてください。中には、自分の気持ちがいっぱいいっぱいになっていることに気づけない児童生徒もいます。そんな時には、積極的に教職員の方から声掛けをしてあげることで、手助けをすることができます。「最近疲れてない?」「頑張りすぎてない?」「たまには休んでもいいんだよ」といった言葉をかけてあげましょう。

自分では気づけない心の疲れを、大人が教えてあげることが大切です。 また、話を聞くだけでなく、具体的なサポートも必要です。休む時間を作ってあげる、負担を減らしてあげる、カウンセリングにつなげるなど、その子に合った支援を考えましょう。

見落としがちな子への配慮

問題行動を起こす子や、明らかに困っている様子の子には、自然と目が向きます。しかし、いつも頑張っている子、優等生の子、周りに気を使える子は、見落とされがちです。「この子は大丈夫」という思い込みが、気づきを遅らせることがあります。

11月という特別な時期だからこそ、全ての子に目を向けることが大切です。特に、今まで問題なく過ごしてきた子ほど、注意深く見守る必要があるのです。頑張り屋さんほど、限界まで我慢してしまうからです。 「大丈夫そうに見える子」こそ、実は助けを必要としているかもしれません。

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教職員と児童生徒との距離感

11月は、教職員自身のメンタルヘルスにも注意が必要です。ここでは、その重要性を見ていきましょう。 

距離感への継続的な注意

さらに、9月や10月から連続して警戒することとして少しご紹介もしている、「教職員と児童生徒との距離」についても、11月は気をつけなければなりません。特に、この月には「教職員のメンタル」の問題も関係していきます。

今回ご紹介した内容は、児童生徒といった子どもたちだけではなく、教職員といった大人たちも警戒していかなければならない問題です。セロトニンの問題についても、子どもも大人も同じ人間です。イベントごとについても、同じです。 教職員も、11月の影響を受けるのです。

教職員のメンタルヘルス

だからこそ、教職員のメンタルも大切にしなくてはなりません。適度にストレスを発散して、心身共に健康を維持してください。決して無理はせずに、助け合ってください。教職員が心身ともに健康でなければ、子どもたちを適切に支えることはできません。自分のメンタルが不安定な状態で、子どもたちのメンタルをケアすることは難しいのです。

だからこそ、自分自身を大切にすることが、子どもたちを守ることにつながります。疲れたら休む、辛い時は誰かに相談する、一人で抱え込まない。 これらは、子どもたちに教えていることと同じです。大人も実践しなければなりません。

距離感を誤った時の危険性

もし、この点に警戒しなかった場合、児童生徒との距離で誤りが起こり、いじめ問題だけでは済まない事態にもなりかねません。教職員が心の余裕を失うと、つい感情的になってしまったり、不適切な言動をしてしまったりすることがあります。

普段なら言わないような言葉を子どもに言ってしまったり、必要以上に厳しくしてしまったり、逆に甘くなりすぎてしまったり。距離感を適切に保つことができなくなると、様々な問題が起きる可能性があります。 児童生徒との距離に配慮しながら、自身のメンタルにも気を配ってくださいね。

助け合いの重要性

教職員同士で助け合うことも大切です。一人で全てを抱え込まず、困った時は同僚に相談しましょう。「最近疲れてない?」と声をかけ合うことも重要です。チーム学校として、子どもたちを支えるだけでなく、教職員同士も支え合う環境を作りましょう。管理職の方は、教職員のメンタルヘルスにも気を配ってください。無理をさせない、適切な休暇を取らせる、相談しやすい雰囲気を作る。これらが、結果的に子どもたちを守ることにつながります。 11月という特別な時期だからこそ、大人も子どもも、みんなで支え合うことが大切なのです。

まとめ

11月は「いじめ撲滅月間」「いじめ防止月間」「いじめ対策強化月間」などが実施される特別な月です。これには、科学的な根拠があります。11月は日照時間が短くなることで、安心ホルモンと呼ばれるセロトニンの分泌量が減少する時期です。

以前対応したいじめ問題が再燃していないか、慎重に観察する必要があります。焦らず、慎重に、全体を見ながら対応していくことが求められます。特に注意が必要なのは、今まで我慢をしてきた子、友達の話をよく聞いていた子、あまり心配していなかった子です。これらの子どもたちは、11月という時期に限界を迎えることがあります。 また、教職員自身のメンタルヘルスにも注意が必要です。

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いじめ撲滅委員会では、全国の小~高校生・保護者のかた、先生方にカウンセリングや教育相談を行っています。カウンセラーの栗本は、「いじめ」をテーマに研究を続けており、もうすぐで10年になろうとしています。

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