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毎月のいじめ対策>9月にできるいじめの対策

いじめ撲滅

~ 教職員の方向け,毎月のいじめ対策 ~ 毎月のいじめ対策 ➅9月

はじめまして!いじめ撲滅委員会代表、公認心理師の栗本顕です。私の専門は「いじめ」です。心理学の大学院で研究もしてきました。現在はいじめの問題を撲滅するべく、研修やカウンセリング活動を行っています。

いじめ撲滅委員会代表栗本顕

今回のテーマは「9月のいじめ対策」です。大型連休が終わり、暑さの残る9月。一般的に、9月と聞くと文化祭や体育祭、進路決めなど学校生活の中では大きな出来事があります。

夏休みが終わり、再び学校生活が始まる時期は、子どもたちにとって大きな節目となります。この時期に適切な対策をすることで、これまでの予防の効果が現れます。本記事では9月のいじめ対策について解説していきます。

 

① これまでの予防の効果が出る時期
② 9月から予防を始める方法
③ 親しい中にも礼儀ありの大切さ
④ 気持ちをできる範囲で把握する

 

9月は、これまでの取り組みの成果が見える時期です。そして、新たに対策を始めるにも良い時期でもあります。具体的な方法をお伝えしていきます。ぜひ最後までご一読ください。

これまでの予防の効果が出る時期

9月は、4月から続けてきたいじめ予防の効果が現れる時期です。ここでは、なぜ9月が重要な時期なのかを見ていきましょう。

9月の特別な状況

9月は、休み明けで気が緩みがちになる他、休みの間に起こったことなどもあり、悩みが多様化します。さらに、中には「そろそろ進路を決めないと」と不安を抱え始めている児童生徒もいます。

夏休みという長い休みが終わり、再び学校生活が始まる。この変化は、子どもたちにとって大きなストレスとなります。このように、悩みや不安が多くなると当然のことながら人間関係において、問題が生じてしまう可能性が高くなります。

普段なら何ともないことが、心の余裕がないことで受け止められないということも大人の社会にもありますが、児童生徒も同じです。疲れていたり不安だったりすると、些細なことで傷ついたり、イライラしたりしてしまうのです。

これまでの予防が活きる

そこで、大切になってくることが「今までのいじめ予防」です。この「今までのいじめ予防」があること、何かトラブルが生じても「○○の時はどうすればいいんだ」と考えることができます。

4月から積み重ねてきた取り組みが、ここで力を発揮するのです。また、「○○先生に相談しよう」と児童生徒の方から教職員に相談がある場合も考えられます。これは、児童生徒と教職員間で信頼関係ができている証拠です。

カウンセリングで考えると「ラポールが形成されている」ということです。ラポールとは、信頼関係や心の通い合いを意味する言葉です。この関係があれば、子どもたちは困った時に自然と相談してくれるようになります。

相談できるタイミングの提示

そのため、日々の業務の中に「児童生徒が話をできるタイミング」を提示してあげると、その促しにつながります。もちろん、児童生徒からの相談を待つだけではなく、今までのようにいじめの予防や対処、ケアは疎かにしてはいけません。

相談を受ける準備をしながら、こちらから声をかけることも大切です。9月は忙しい時期ですが、子どもたちとの対話の時間を確保することが何よりも重要なのです。

それでは、この時期まであまり予防ができていなかったり、何らかの事情で児童生徒との信頼関係ができていない場合はどうすればいいのか。ご紹介をしていきます。

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9月から予防を始める方法

9月から新たに予防を始める場合でも、遅すぎることはありません。ここでは、具体的な方法を見ていきましょう。

信頼関係を築く第一歩

9月には、今までの予防や信頼関係がとても大切なことがわかりました。そこで、この時期まであまり予防ができていなかったり、何らかの事情で児童生徒との信頼関係ができていない場合については、まずは以下のことが必要ではないかと考えられます。

相談のタイミングを作る
失敗談や経験談を語る
対応できることを伝える
前任者から情報をもらう
年代層の話題を収集する
今からでも遅くありません

それぞれ詳しく見ていきましょう。

相談のタイミングを作る

児童生徒が相談のできるタイミングを作ることが大切です。児童生徒から教職員に相談をしやすくするための工夫です。よく言われるものが「オフィスアワー」というものです。ホームルームの時間などに「今日は何時から何時が空いています」と児童生徒に伝えておくと良いと考えられます。具体的な時間を示すことで、子どもたちは相談しやすくなります。また、「いつでもどうぞ」と言うよりも、具体的な時間を示す方が、実際に相談に来てくれる確率が高くなります。

放課後の10分間だけでも良いので、相談を受ける時間を設けてみましょう。継続することが大切です。

失敗談や経験談を語る

教職員の失敗談や経験談を語ることも効果的です。人からその人の失敗談や経験談を聞くと、距離が縮まります。心理学的には「自己開示」の一種です。教職員と児童生徒との距離を縮めることに有効だと考えられます。完璧な先生よりも、失敗もする人間らしい先生の方が、子どもたちは親しみを感じやすいのです。しかし、自分の失敗談や経験談を強要してはいけません。一人一人違う人間なのですから。

「先生も昔、こんな失敗をしたよ」という話は、子どもたちの心を開くきっかけになります。ただし、失敗談を話した後に「だから君もこうしなさい」と押し付けるのではなく、子どもたち自身に考えさせることが大切です。

対応できることを明確にする

相談をしてもらったらどのような対応ができるかを伝えることも重要です。相談を受けていると、

「先生に話したところで」
「話しても悪化すると思う」
「先生に話しても無駄でしょ」

といった生の声をよく聞きます。これは「相談するとどうなるか」が明白でないことが原因の一つです。また、それがわかっていることで、いじめの抑止力にも繋がります。相談した後の流れを具体的に説明することで、子どもたちは安心して相談できるようになります。

「相談してくれたら、まず一緒に状況を整理して、どうすれば良いか考えよう。君の気持ちを一番大切にするよ」というメッセージを伝えましょう。

前任者からの情報収集

前任の教職員から情報を教えてもらうことも有効です。児童生徒から情報をもらうことが困難な場合は、やはりすでに知っている人に教えてもらうことが良いです。その情報をもとに、自身が見てきた今までの児童生徒の気持ちの変化を考察していくと、支援の手掛かりになります。前の担任の先生や、部活動の顧問の先生など、その子をよく知っている人から話を聞くことで、より深く理解することができます。

ただし、先入観を持ちすぎないように注意が必要です。過去の情報は参考にしながらも、今の子どもの姿をしっかりと見ることが大切です。

話題の収集

担当している年代層の話題を収集することも大切です。人は、共通点などがあると親しみやすくなり、話をするきっかけにもなります。アニメやアイドル、ゲームなどさまざまなものがあります。無理のない範囲で把握しておくことで、児童生徒との繋がりを作るきっかけになります。全てを知る必要はありませんが、子どもたちが興味を持っているものについて少し知識があるだけで、会話が弾みます。

「そのアニメ、最近流行ってるんだね」と一言声をかけるだけでも、子どもたちは嬉しく感じるものです。

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親しい中にも礼儀あり

9月は、クラスが始まって半年が経つ時期です。ここでは、距離が近くなったからこそ気をつけるべきことを見ていきましょう。

半年経った関係性の変化

9月になると、すでにそのクラスになってから約半年になります。すると、初めて会った頃の距離感がなくなり、とても近い距離の関係になっています。人との距離が近くなることは、大変良いことです。距離が近くなったことで連帯感も生まれ、協調性も増します。時には、助け合うことさえあります。お互いのことをよく知り、安心して過ごせる関係になることは素晴らしいことです。

しかし、近くなったことで問題もおこります。それは、社会生活の中でも起こることですが、「親しくなったからと礼儀を忘れてしまう」ことです。

児童生徒同士で起こる問題

これは、児童生徒同士の間や児童生徒と教職員との間においても気をつけなければならないことです。児童生徒同士で起こりやすい問題は以下になります。

児童生徒同士で起こる問題
冗談が過激になる
境界線がわからなくなる
言葉遣いが悪くなる
強要がましくなる
仲間意識が強くなりすぎる
距離感に注意が必要です

などのことが多くあると考えられます。仲が良くなると、つい調子に乗って相手が嫌がることを言ってしまったり、やってしまったりすることがあります。

教職員と児童生徒間で起こる問題

児童生徒と教職員の間でも、同様の問題が起こります。教職員側で起こりやすい問題は以下になります。

教職員側で起こる問題
油断が生まれてしまう
冗談で言ってはいけないこと
児童生徒のえこひいきをする
偏見が生まれてしまう
プライベートに干渉する
教職員も気をつけます

などのことが多くあると考えられます。仲が良くなったからといって、教職員としての立場を忘れてはいけません。

問題の深刻さ

これらのことが原因で、いじめに発展することやクラスの雰囲気にさえ影響を与えてしまいます。そして、距離が近くなったことで起きた問題はなかなか相談や解決に向けた動きがやり辛いのです。

「友達だから」
「仲のいい人だから」
「ちょっとやりすぎただけだから」

と考えてしまい、解決に向けて動けないのです。仲が良い相手だからこそ、傷ついても「これくらい我慢しなきゃ」と思ってしまうことがあります。

だからこそ、「親しき中にも礼儀あり」という言葉を伝えていかなくてはなりません。また、自身も気を付けていかなければならないのです。この言葉の意味を、具体例を交えながら子どもたちに伝えていきましょう。

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気持ちをできる範囲で把握する

9月は様々なイベントがある時期です。ここでは、子どもたちの気持ちをどのように把握していくかを見ていきましょう。

9月のイベントと気持ちの揺れ

9月はさまざまなイベントがあると同時に、気持ちの揺れもあります。何かのイベントがあるのであれば、その度に児童生徒の気持ちの揺れを敏感に感じ取らなければなりません。文化祭や体育祭などの大きなイベントは、楽しみである一方で、大きなプレッシャーにもなります。イベント以外にも、時期として進路選択なども関わっていきます。中学3年生や高校3年生にとっては、進路を決める大切な時期です。

そのため、児童生徒一人一人の気持ちをできる範囲で把握していくことがカギとなります。全員の気持ちを完璧に理解することは難しいですが、できる範囲で把握することが大切なのです。

事前の準備と予測

何年生の担当なのか、年齢特有のものはどんなものがあるかなど、事前に予想して準備しておく必要があります。その準備したものと今までの関係、個人の特性を加味して考察していくことが必要となっていきます。例えば、中学1年生なら初めての文化祭で緊張している子が多いかもしれません。高校3年生なら進路への不安を抱えている子が多いでしょう。このように、学年ごとの特徴を理解しておくことが大切です。

また、個人の性格や家庭環境なども考慮に入れる必要があります。同じイベントでも、楽しみにしている子もいれば、不安に感じている子もいます。

観察と対話の重要性

気持ちを把握するためには、日頃からの観察と対話が欠かせません。表情、言葉遣い、友人関係、提出物の状況など、様々な面から子どもたちの様子を見ていきましょう。また、定期的に個別面談の時間を設けることも効果的です。イベント前後には特に注意深く見守り、変化があればすぐに声をかけることが大切です。「最近どう?」「何か困っていることない?」と気軽に声をかけることで、子どもたちは話しやすくなります。

一人で全てを把握しようとせず、他の教職員とも情報を共有しながら、チームで子どもたちを見守っていきましょう。

無理のない範囲での対応

「できる範囲で」という言葉が大切です。教職員も人間ですから、全ての子どもの全ての気持ちを理解することは不可能です。しかし、できる範囲で、できることを続けていくことが大切なのです。完璧を目指すのではなく、継続することを目指しましょう。毎日少しずつでも良いので、子どもたちとの対話の時間を持つこと。それが、気持ちを把握する第一歩となります。

また、自分一人で抱え込まず、養護教諭やスクールカウンセラーなど、他の専門職とも連携することが大切です。チーム学校として、みんなで子どもたちを支えていきましょう。

まとめ

9月は、夏休みが終わり再び学校生活が始まる大切な時期です。この時期は、4月から続けてきたいじめ予防の効果が現れる時期でもあります。これまでに信頼関係を築いてきた子どもたちは、困った時に自然と相談してくれるようになります。「○○の時はどうすればいいんだ」と考えられる力が育っているのです。

9月は、これまでの取り組みの成果が見える時期であり、新たな一歩を踏み出す時期でもあります。子どもたちが安心して学校生活を送れるように、今日からできることを始めてみませんか。一人一人の小さな努力が、いじめのない学校を作る大きな力となります。子どもたちの笑顔のために、一緒に頑張っていきましょう。

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