~ いじめの定義 ~ いじめの第三者委員会とは?設置から調査までの流れと保護者が知るべきこと
はじめまして!いじめ撲滅委員会代表、公認心理師の栗本顕です。私の専門は「いじめ」です。心理学の大学院で研究もしてきました。現在はいじめの問題を撲滅するべく、研修やカウンセリング活動を行っています。

今回のテーマは「いじめ第三者委員会」です。お子さんがいじめで苦しんでいるとき、学校の対応だけでは不安を感じることがあります。そんなときに力になるのが第三者委員会です。
目次は以下の通りです。
①いじめ第三者委員会って何?
②重大事態と認定される条件
③第三者委員会の設置まで
④委員会のメンバー構成
⑤調査の進め方と期間
⑥保護者ができること
⑦調査結果に納得できない時
⑧第三者委員会の問題点
この記事では、第三者委員会がどのような組織なのか、どうすれば設置してもらえるのか、調査の流れや保護者として知っておくべきポイントを詳しく解説していきます。ぜひ最後までご一読ください。
いじめ第三者委員会って何?
第三者委員会は、いじめの重大事態が起きたときに設置される調査組織です。学校や教育委員会から独立した立場で、何が起きたのかを調べます。
第三者委員会の役割
第三者委員会には大きく3つの役割があります。1つ目は、いじめの事実を明らかにすることです。いつ、どこで、誰が、何をしたのかを詳しく調べます。2つ目は、被害を受けた子どもや加害側の子どもへの対応を考えることです。
どんなケアが必要か、どんな指導が必要かを検討します。3つ目は、同じことが起きないように再発防止策を提案することです。学校の体制に問題がなかったか、どう改善すべきかを示します。ただ事実を調べるだけでなく、今後の安全を守るための具体的な提案まで行うのが第三者委員会の大切な仕事です。
学校調査との違い
学校が行う調査と第三者委員会の調査には大きな違いがあります。学校の調査は、学校の先生や管理職が中心となって行います。しかし、関係者が身内である分、どうしても客観性に欠ける面があります。
一方、第三者委員会は学校とは関係のない専門家で構成されます。弁護士や臨床心理士、大学教授などが入り、専門的な知識を持って調査します。学校側に不都合な事実があっても、それをしっかりと明らかにする独立性があります。
また、調査の内容や方法についても、被害者の保護者が意見を言うことができる点も大きな違いです。

重大事態と認定される条件
第三者委員会が設置されるのは「重大事態」と認められたときです。どんな状況が重大事態になるのか、具体的に見ていきましょう。
生命や心身への被害
いじめによって子どもの生命や心身、財産に重大な被害が出た場合は重大事態となります。具体的には、自殺を考えたり実際に試みたりした場合です。また、けがをして病院での治療が必要になった場合も該当します。精神的な病気を発症してしまった場合、たとえばうつ病やPTSDと診断された場合も重大事態です。
お金や大切なものを取られた場合も含まれます。大切なのは「疑いがある」という段階で重大事態として扱われることです。確定していなくても、その可能性があれば学校は調査を始めなければなりません。
長期欠席の基準
いじめが原因で学校を長く休んでいる場合も重大事態となります。基準は年間30日程度の欠席とされていますが、これはあくまで目安です。30日に達していなくても、連続して学校を休んでいる状況があれば、学校の判断で重大事態として調査を始めることができます。
また、保護者や子ども本人から「いじめで学校に行けなくなった」という申し立てがあった場合は、学校は重大事態として扱わなければなりません。欠席日数だけでなく、子どもの状態を総合的に見て判断されます。休みがちになってきたら、早めに学校に相談し、記録を残しておくことが大切です。
第三者委員会の設置まで
重大事態だと思ったら、どのように動けばよいのでしょうか。設置までの流れを確認しましょう。
重大事態の申し立て方
まず、学校の設置者に重大事態の申し立てを行います。公立学校の場合は市区町村の教育委員会、私立学校の場合は学校の理事会が窓口です。申し立ては口頭ではなく、必ず書面で行うことをお勧めします。
弁護士に依頼して内容証明郵便で送ると、後から証拠として残ります。書面には、いつからどんないじめを受けているのか、その結果どんな被害が出ているのかを具体的に書きます。
診断書や欠席の記録なども一緒に提出すると説得力が増します。申し立てを受けた学校側は、速やかに地方公共団体の長に報告し、調査組織を設置する義務があります。

設置までの期間
実際には、申し立てから設置までかなりの時間がかかることが多いです。ある事例では、いじめの相談から重大事態と認定されるまで1年半もかかりました。さらに、そこから第三者委員会が実際に設置されるまでにも時間がかかります。
この間、被害を受けた子どもの苦しみは続いています。設置が遅れる理由は、学校側が重大事態と認めたがらないことや、委員の人選に時間がかかることなどです。もし申し立てをしても動きが遅い場合は、繰り返し要望を出すことが大切です。
弁護士に相談して、法的な面からもプレッシャーをかけることも検討しましょう。
委員会のメンバー構成
第三者委員会は、どんな人たちで構成されるのでしょうか。メンバーの選び方はとても重要です。
どんな専門家が入るか
第三者委員会のメンバーは、いじめ問題に関する専門家で構成されます。一般的な構成は以下の通りです。
弁護士
臨床心理士
大学教授
精神科医
弁護士は法律の専門家として、何が法律上のいじめに当たるのかを判断します。臨床心理士は子どもの心のケアに詳しく、被害者や関係者の心理状態を理解します。大学教授は教育学や社会学の視点から、学校の体制や環境を分析します。
精神科医は医学的な視点で、子どもの心身の状態を評価します。これらの専門家が集まることで、多角的にいじめの問題を調査できます。委員は通常4人から5人程度で構成されます。

中立性の確保
委員の選び方には注意が必要です。過去には、学校長と大学の同窓生が委員に選ばれそうになった事例もあります。これでは公平な調査ができません。被害者側は委員の選定について意見を言う権利があります。どんな専門分野の人が何人必要か、具体的に要望を出すことができます。
ただし、他県の弁護士やNPO法人の関係者を入れることには抵抗されることもあります。それでも、中立性を確保するために粘り強く交渉することが大切です。教育委員会とつながりのある人が委員に入ると、調査が不十分になる可能性があります。遺族側から推薦できる仕組みもあるので、積極的に活用しましょう。
調査の進め方と期間
実際の調査はどのように進むのでしょうか。どれくらいの時間がかかるのかも気になるところです。
調査の具体的な内容
第三者委員会の調査は、まず関係者への聞き取りから始まります。被害を受けた子ども本人、いじめをしたとされる子ども、目撃した子どもたち、担任の先生などから話を聞きます。学校が行ったアンケートや記録も詳しく調べます。
場合によっては、学校の現場を訪れて状況を確認することもあります。調査では、いつ、どこで、誰が、何をしたのかを細かく確認していきます。また、学校の対応に問題がなかったかも調べます。いじめの報告を受けたとき、学校はどう動いたのか、対応は適切だったのかを検証します。調査は月に2回程度のペースで会議を開いて進められます。
報告書が出るまで
調査が終わると、委員会は報告書をまとめます。この報告書には、認定された事実、学校の対応の問題点、再発防止策などが書かれます。報告書が完成するまでには、委員会が設置されてから最低でも1年はかかると言われています。
事案が複雑な場合は、さらに時間がかかることもあります。報告書は学校の設置者に提出され、被害者の保護者にも提供されます。内容について説明を受ける機会もあります。
ただし、調査に時間がかかりすぎると、子どもが卒業してしまうこともあります。実際に、調査の結果が出るのが卒業後になってしまった事例もあります。
保護者ができること
調査が始まったら、保護者はどのように関わればよいのでしょうか。できることを確認しましょう。
調査への関わり方
保護者は調査に積極的に関わることができます。まず、調査の方針について説明を受ける権利があります。いつまでに何を調べるのか、どんな方法で調査するのかを確認しましょう。子どもへの聞き取りがある場合は、保護者が同席することもできます。子どもの心理状態に配慮した聞き取りになっているか、見守ることが大切です。
また、委員会に提出してほしい資料や、聞き取りをしてほしい人について要望を出すこともできます。調査の進み具合について定期的に報告を受けることも求められます。ただ待っているだけでなく、疑問に思うことがあれば積極的に質問しましょう。弁護士に相談しながら進めると安心です。
証拠の準備と記録
調査がスムーズに進むように、保護者として準備できることがあります。日頃からの記録がとても重要です。準備すべきものは以下の通りです。
子どもの様子の記録
学校との連絡記録
医療機関の診断書
写真やメッセージ
子どもがいつからどんな様子になったのか、日記のように記録しておきます。学校への相談内容や学校からの回答も、日付とともに残しておきましょう。通院している場合は、診断書や治療の記録を取っておきます。
けがの写真や、SNSでのいじめのメッセージなども証拠になります。これらの記録は、いじめの事実を証明する大切な材料です。調査が始まってから慌てて集めるのではなく、日頃から意識して残しておくことが大切です。
証拠の集め方を詳しく知りたい方は以下をご覧ください。
調査結果に納得できない時
報告書が出ても、内容に納得できないことがあります。そんなときはどうすればよいのでしょうか。
再調査の申し立て
調査結果に納得できない場合は、再調査を求めることができます。再調査は市長や知事などの地方公共団体の長に申し立てます。たとえば、調査が不十分だった場合や、事実認定に明らかな誤りがある場合です。
京都府のある事例では、被害を受けた子ども本人への聞き取りが行われなかったため、再調査となりました。再調査では新しい委員会が作られ、もう一度調査が行われます。
再調査の申し立ては被害者側の権利として認められているわけではありませんが、報告書への意見書を通じて強く訴えることができます。再調査でも最低1年程度の時間がかかります。長い道のりですが、納得できない結果を受け入れる必要はありません。
弁護士への相談
いじめの問題は、専門家のサポートを受けることが大切です。特に弁護士は法律の専門家として、大きな力になります。弁護士に依頼すると、重大事態の申し立て書類を適切に作成してもらえます。委員の選定についても、法的な観点からアドバイスをもらえます。調査の進め方に問題があれば、指摘してもらうこともできます。
また、第三者委員会の調査とは別に、加害者や学校に対して損害賠償を請求することも検討できます。弁護士費用が心配な場合は、法テラスの利用も考えられます。いじめ問題に詳しい弁護士を選ぶことが重要です。一人で抱え込まず、専門家と一緒に戦うことで、より良い結果につながります。

第三者委員会の問題点
第三者委員会にも限界や問題点があります。現実を知っておくことも大切です。
設置の遅れ
第三者委員会の大きな問題は、設置までに時間がかかりすぎることです。重大事態の申し立てをしても、学校側がなかなか認めないことがあります。学校の評判が下がることを恐れたり、責任を問われることを避けたりするためです。
また、委員の人選にも時間がかかります。適切な専門家を探し、スケジュールを調整するだけでも数か月かかることがあります。その間、いじめを受けた子どもは苦しみ続けています。
学校に行けない日々が続き、心の傷は深くなっていきます。法律では「速やかに」設置することになっていますが、実際には1年以上かかることも珍しくありません。この遅れは被害者にとって大きな負担です。
委員選定の課題
委員の選び方にも課題があります。第三者委員会という名前ですが、必ずしも完全な第三者ではないことがあります。教育委員会が主体となって委員を選ぶため、教育委員会とつながりのある人が選ばれることもあります。
大津市のいじめ事件でも、当初は教育委員会とつながりのある人が委員に予定されていました。公平性が疑われる状況です。また、第三者委員会には警察のような強制力がありません。
学校がアンケート結果などの資料を出し渋っても、強制的に提出させることはできません。過去には、警察が資料を押収してくれたおかげで調査が進んだ事例もあります。委員の独立性と調査の実効性、この2つが確保されないと、本当の意味での第三者委員会にはなりません。
まとめ
お子さんがいじめで苦しんでいるとき、保護者は何とかして助けたいと思うものです。第三者委員会は、学校とは独立した立場で真実を明らかにしてくれる大切な仕組みです。ただし、設置までには時間がかかることも多く、委員の選定にも注意が必要です。
保護者としてできることは、日頃から記録を残すこと、書面で申し立てを行うこと、委員の選定に積極的に関わること、そして必要に応じて弁護士などの専門家に相談することです。一人で抱え込まず、使える制度はしっかりと活用しましょう。お子さんの苦しみに寄り添い、真実を明らかにするために、あきらめずに行動を続けることが大切です。
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