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いじめによる事件>桐生市小学生いじめ自殺事件

いじめ撲滅

~ いじめによる事件 ~ いじめによる事件②桐生市小学生いじめ自殺事件

はじめまして!いじめ撲滅委員会代表,公認心理師の栗本顕です。私は学生時代、そうぜつないじめを体験して、大学院でいじめの研究をしてきました。

現在はいじめの問題を撲滅するべく、研修やカウンセリング活動を行っています。

いじめ撲滅委員会代表栗本顕

今回のテーマは
「桐生市小学生いじめ自殺事件」
です。

その責任が、我々教育関係者にはあります。

今回の目次は以下の通りです。

・いじめの内容
・学校と教育委員会の対応
・支援活動と中傷被害
・人権侵害に対する裁判 

いじめは事件にも発展する危険のあるものです。今まで起きてしまった悲しき事件の全容を理解し、二度と起こらないようにしていかなくてはなりません。

桐生市のいじめ事件から学び、しっかりと教訓として押さえておきましょう。

 

いじめの内容

桐生市小学生いじめ自殺事件は2010年に起こりました。概要は以下の通りです。

被害者
女子小学生

加害者
同級生(男女5人前後)

いじめの期間
2009年4月~2010年10月23日

場所
群馬県桐生市

 

2009月4月~2010年1月

・発端は外国人差別
被害者は小学4年生の秋に転校をしてきました。5年生の授業参観日、母親がフィリピン人だった事から、いじめが始まります。同級生から「汚い」「臭い」「近寄るな」「プールがばい菌で汚れる」など言葉の暴力を受けました。

・上履きに落書き
3学期が始まると、被害者は上履きに「うざい、死ね」など落書きをされた為、学校にいじめを訴えます。しかし当時の校長は「いじめというのはあなたのカン違いですよ」と言い取り合いませんでした。

2010年4月

・学級崩壊でいじめが加速
6年生になりクラスと担任教諭が替わると、いじめはさらにエスカレートします。

被害者のクラスは4月から、担任教諭に対して児童が「うるせー、くそばばあ」と言ったり、授業中にもかかわらず教室から勝手に出ていく児童がいるような、混乱状態でした。

8月には、児童の反抗的な態度が目立つようになります。9月には、担任教諭の指導を聞かない児童が多くなり、学級崩壊へと進んでいきました。

2010年9月

・一人ぼっちの給食
9月28日、学校生活改善のため席替えが行われました。それ以降、被害者はクラス内で孤立をしていきます。

担任教諭は、給食を班ごとで食べるよう指導しましたが、児童たちが被害者を含む班から勝手に離れていました。そのため被害者は、給食を一人で食べることが多くなっていきました。

・度重なる言葉の暴力
被害者は「あっちへ行け」と言われるなど、度重なる言葉によるいじめを受けていました。しかし担任教諭は、いじめている児童を注意することはありませんでした。

のちに被害者は、いじめを担任教諭が改善してくれない様子から「先生は何を言ってもダメだから」と発言しています。

10月19日~自殺当日

・連続で休む
被害者は10月19日・20日、2日連続で学校を休みました。欠席の電話をする時には「いじめの話はしなくていいよ。先生は何を言ってもダメだから」と、担任教諭に絶望した様子の発言をしています。

一方で担任教諭は電話で「あすは社会科見学があるから、出てくれるかな」と伝えました。

・泣きながら帰宅
10月21日、社会科の校外学習に出席しました。このことで一部の同級生から「なんでこういう時だけ来るの」「普段はずる休み?」などと言われ、泣きながら帰宅しました。

この件で、被害者は母親に「もう学校に行きたくない」と訴えます。父親は、学校にいじめや給食時のグループ分けについて「なんとかしてほしい」と頼み担任教諭は「話し合ってみます」と応じました。

・23日 首吊り自殺
2010年10月23日正午頃、被害者は自宅で首を吊った状態で発見されました。母親にプレゼントするはずだった手編みのマフラーをカーテンレールにかけ、首を吊ったのです。

遺書はありませんでしたが、警察は状況から自殺と判断しました。

自殺後、報道陣の取材に対して父親は「娘は学校でいつも一人ぼっちだった。私が学校に相談に行っても解決策が示されなかった」と述べていました。

被害者の死後、遺品の中から『やっぱり「友達」っていいな』と題する漫画が発見されました。漫画は自殺の直前に書かれたもので、ノート3ページ半にわたっていました。

漫画の中には、転校してきた「関口桜」という主人公が「これからよろしくお願いします」とあいさつし、担任教諭が「転校生なので仲良くしてあげてください」などと紹介する場面が描かれていました。

漫画の主人公は、小学5年生の「関口桜」と「石原美花」の2人です。桜は転校生で、絵の下に「おとなしく恥ずかしがり屋」と書かれていました。

この漫画を見た妹へ、生前に被害者は「美花は私。転校してきた桜と親友になる」と話していました。現実とは逆のストーリーで、父親は「友達と仲良くしたいという願いを託したんだと思う」と推し量りました。

この残された漫画には「児童が反発することなく担任の話に耳を傾けている」学級の様子が描かれており、尾木直樹は、これが「彼女の理想の世界」であったと分析し「現実があまりに違っていたため、続きを書くことができなかった」と指摘していました。

また「学級崩壊が起きている時点で、管理職は早急に担任を替えるべきだった。態勢がしっかりしておらず、彼女を見殺しにしたようなもの」と、学校側の対応の不備を批判しました。

また投函されなかった手紙が居間のテレビゲーム機の下から発見され、

「みんなのことわすれるはずないよ!だってすごく楽しかったんだもん」

と愛知県の小学校での生活を振り返り、

「中学になったら大阪に行くんだ。だから愛知県を通るかもしれない。だから、できたら会いにいくね!楽しみにしていてね!」

などと書かれていました。

さらに給食時の孤独を気遣う同級生からの手紙も自宅で見つかり、手紙には「金曜日、はん(給食)さみしかった??ゴメンネ!!」と記されていた。

 

学校と教育委員会

この事件に対して学校と教育委員会はどのように対応したのでしょうか。

校長と担任教諭、発言の違い

事件発生後の2010年10月31日、校長や教頭、担任教諭が被害者宅を訪れ、担任教諭は「私の指導力不足で申し訳ありません」と述べています。

ところが後日開かれた会見で、校長は

5年生の時に母親から『いじめられた』という訴えがあったことは確認できたが、勘違いだった。いじめに関する特別な相談はなかった

と説明しています。一方で担任教諭は

無視したり、給食時に避けて座るなどのいじめがあった

など、被害者へのいじめがあったと断言し、具体的な内容を明らかにしました。

校長と担任教諭、発言の違いは、情報共有がされていないのか、隠したかったのかどちらなのでしょうか。

管理監督者への処分見送り

自殺事件について桐生市教育委員会は「いじめはあった」と認めています。

これを受け群馬県の福島金夫教育長は、該当小学校の校長について「起こったことに対する管理責任はある。処分の可能性はある」という見解を示しました。

加えて校長に対し、被害者が自殺した日に連絡が取れなかったことについて

普通はない。その時に(携帯電話に)出られなくても、その日のうちに確認を取れるような形にすべきで、管理監督者としての役割の一つだ

と述べています。しかし最終的には、校長と担任教諭の処分は見送られたのです。

 

支援活動と中傷被害

いじめ予防教育の強化

高木義明文部科学大臣(当時)は2010年11月9日、桐生市小学生いじめ自殺事件を受け、

学校がいじめの兆候を早期に把握して対応することが重要だ

と述べて、いじめ防止に教職員が連携して取り組むよう各教育委員会に求める考えを示しました。このことはいじめの予防教育の強化と言えるでしょう。

そして2011年8月6日には、被害者両親を支援する「桐生市いじめ自殺裁判を支援する会」が結成されました。

遺族は2011年10月23日、生きていれば13歳の亡娘のために、ローソク1本と細いローソク3本を立てたケーキを遺骨の前に置きました。

また被害者の母親がキリスト教徒だったことから、桐生カトリック教会で追悼ミサが行われました。ミサでは、被害者の名前が読み上げられ、母親と同じく日本で生活するフィリピン人約20人が互いの考えをあったそうです。

担当司祭のバルトロメオ・マクマホン神父は説教のなかで

差別されている人たちに神の憐れみのまなざしを注ぐこと。無関心でなく関心を持つこと

を強調し、被害者の安息を祈りました。

 

遺族への中傷

2011年の秋、遺族の一家は群馬県外への引っ越しをします。温かい支援の声がある一方で、周囲から

「裁判はカネ目当て」
「(一家の住む)部屋のお祓いをして!」

など心ない嫌がらせを受けていた為です。また被害者の妹が、登校を渋るような状況もあったことから、やむなく引っ越しをしたのです。被害者がさらに被害にあってしまう悲惨な出来事と言えるでしょう。

 

人権侵害に対する裁判

いじめの賠償請求

2013年7月5日、遺族は桐生市と群馬県を相手に、損害賠償を求めた民事訴訟の弁論準備手続きを前橋地方裁判所で行いました。

2013年8月9日の証人尋問では、被害者が通った小学校の元校長がいじめの存在を認めています。

しかし桐生市は「教員らはいじめの問題について真摯に取り組み、注意義務を尽くしてきた」と主張し「自殺がいじめの結果、引き起こされたものとは即断できない」として請求の棄却を求め、群馬県とともに争う姿勢を示したのです。

いじめとの因果関係が認定

2014年3月14日、前橋地方裁判所の原道子裁判長は「自殺の原因は校長と担任教諭にある」と認定し、桐生市と群馬県に450万円の支払いを命じました。つまり、自殺といじめとの因果関係を認めたのです。

 

・2013年10月4日
前橋地方裁判所桐生支部において、加害女子児童の保護者の監督責任を問う民事訴訟の第一回公判が開かれました。

被害者の担当教諭と校長がいじめの事実を認めているにもかかわらず、被告の元同級生側は「いじめの事実はなかった」と主張し争う姿勢を見せていました。

・2013年12月6日
桐生市と群馬県を相手に、民事訴訟の最終弁論が行われました。

・2014年 3月14日
前橋地方裁判所の原道子裁判長は、判決理由で「『臭い』『きもい』など、継続的な悪口や仲間はずれなどのいじめを受けていたにもかかわらず、学校側が適切な指導をしなかったため絶望的な状況に追い込まれた」と指摘しました。

 

メッセージ

桐生市小学生いじめ自殺事件は、差別問題や教育現場における対応の遅さ、鈍さが露骨に表れている事件といえます。

いじめを最小限に、そして「0」に近づけるためには、いじめの「予防」が大切です。

いじめの加害者の多くは、加害の意識がないと経験から感じています。いじめが発生するリスクや可能性を考慮し、予防的に動かなければ間に合わなくなってしまいます。

いじめ問題には「予防教育・適切な対応・抜かりのないケア」が欠かせません。いじめ解決のために動くことができる教育、環境を作っていくことが非常に重要です。

お知らせ

いじめ撲滅委員会では、いじめのない社会を実現するべく、以下のような取り組みを行っています。

保護者へのカウンセリング

また私もご両親向けのいじめ撲滅カウンセリングを行っています。有料となってしまいますが気軽に相談ください。

教育関係者向け講演,指導

教育関係者、学校向けのコンサルテーションも行っています。研修や講演に興味がある方は下記ページをご覧ください。

いじめコンサルテーション,研修,講演依頼-いじめ撲滅委員会



<主な参考文献>

加野 芳正 2011 『なぜ、人は平気で「いじめ」をするのか? 透明な暴力と向き合うために』 日本図書センター.
藤川 大祐 2012 『いじめで子どもが壊れる前に』 角川学芸出版.
冷泉 彰彦 2010 「宝塚の事件から群馬の事件へ「定住外国人へのいじめ」はどう乗り越えれば良いのか?」 ニューズウィーク 12,10.
辻本 久夫 2011 「外国にルーツを持つ子どもたちの悩み」 関西学院大学 人権研究15.
北澤 毅 2012 「『教育と責任』の社会学序説 – 因果関係責任問題の考察」 立教大学 教育社会学研究 90.

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1件の相談

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    • 相 談
    • わたし
    • 2022年11月7日 10:33 AM

    私の隣の席の子はほとんど毎日学校に来ていません。その子の家に行って、聞いてみたら
    「俺いじめられてるから行きたくない」と言っていました。
    何日か前その子の机に消毒液をかけている人がいました。
    先生になぜその子は学校来ないの?と聞いたら先生は「知らん」とめんどくさそうにいっていました。

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