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いじめ撲滅

~ これまでのいじめ研究 ~ これまでのいじめ研究②対策は教職課程から始まる

いじめ対策は教職課程から視野へ

はじめまして!
いじめ撲滅委員会代表の栗本顕です。

私は学生時代、そうぜつないじめを体験してきました。その後この問題を世界からなくすことを決意し、心理学の大学院でいじめの防止策を研究してきました。

現在では公認心理師として、いじめの解決策や、教育相談を行っています。

全国の小~高校生・保護者のかた、先生方にカウンセリングや教育相談を行っています。

大学生の頃から、とりわけ「いじめ」をテーマに研究を続けており、もうすぐで10年になろうとしています。
私自身がいじめが原因で不登校になった経験を大いに活かし、今後のいじめ対策に貢献ができればと思います。

今回は、いじめにおける研究のうち、教職課程の学生に焦点を当てた研究をご紹介します。
いじめ問題を取り上げていく中で、現場の学校やその職員、児童・生徒に焦点が当たってしまいがちになります。
しかし、学校内でのいじめ対策の主軸となる教職員の教育にも焦点を当てなければなりません。そうすることで、より効果的にいじめ対策をすることができます。

いじめ撲滅委員会代表栗本顕

教職課程にいじめ対策教育

いじめ対策をしていく中で、どうしてもその現場に直接関与する人たちに注目が集ってしまいます。
しかし、その現場の教職員も教育の仕方を学んだからこそ、教職員ができています。
大学での授業や実習などで経験を積み、教職員になってからも多くの経験をすることで、より効果的な教育ができます。

これは、いじめ対策においても同じことが言えます。
一言で「いじめ対策」と言っても、その方法は多くあり、独学だけでそれらをカバーすることはとても困難なことです。

また、いじめ対策は現場に出たらすぐに必要となるものです。
そのため、「現場での経験」を積む前に実践をしなくてはならないケースがあります。
その場合、不完全な対策をしてしまう危険性や、先輩教員の指示に従ってしまう可能性があります(これは良い場合もあれば悪い場合もある)。

そのため、いじめ対策を十分に行うためには、教職課程の学生にいじめ対策教育をしていく必要性があるのです。

また、現在すでに教職員になっている人も、新しいタイプのいじめへの対策や最新の研究などの実践で役に立つ知識を定期的に得てもらう必要もあります。

これまでのいじめ研究②対策は教職課程から始まる

教職課程の学生への研究

いじめの経験が、持続的にその後の人生に影響を及ぼすことは、将来教員を目指す教職課程のにとっても例外ではありません。
学生自身のいじめの経験は、いじめにおける被害児童・生徒や加害児童・生徒に対しての対応の仕方に少なからず影響を与えてしまう可能性も考えられます。

山崎(2016)は、教職課程の学生を対象にした調査を実施し、自身のいじめ被害・加害の経験が、中学・高校でのいじめ被害者・加害者への対応の認識にどのような影響を及ぼすかを明らかにし、
将来教員になった時にいじめ問題に対応するために、大学の教職課程で何を学ぶ必要があるかの認識を明らかにする研究を行いました。

研究の結果、「参加者自身のいじめ経験の有無は、将来教員になったときのいじめ対策についての認識に影響を及ぼす」ことが示された。

具体的には、中学・高校でのいじめ被害生徒への対応については、被害経験がある学生ほど、
それぞれ「他の教員」や「機関との連携による対応」、「関係機関との連携による対応」の必要性の認識が高まる傾向があったというのです。

また、加害経験がある学生ほど、それぞれ「他の教員」や「機関との連携による対応」及び「被害生徒に対する具体的ケア」、「関係機関との連携による対応」の必要性の認識が低下する傾向があったというのです。

このことから、

加害経験は被害生徒に関与することにネガティブな影響を及ぼす可能性
被害経験あるいは加害経験によって被害者に対する共感的な認知や感情が両者で異なる
いじめの対応への認識が異なる可能性

ということがわかりました。

このことについて、本間(2003)は、いじめ被害者に対する道徳・共感的な認知や感情が、いじめ停止に作用することを明らかにしています。

その他にも研究では、いじめ被害・いじめ加害経験に加え、性別もいじめ対策への認識に違いをもたらすことが示されました。

中学生のいじめ加害生徒への対応については、男性の方が「厳罰的対処」の必要性の認識が高まる傾向があることがわかりました。
また、高校生のいじめ加害生徒への対応については、女性の方が「擁護教諭やスクールカウンセラーによる対応」の必要性の認識が高まる傾向があることがわかりました。

このように、教職課程にある学生では、自身のいじめ経験の有無や性別によって、いじめにおける被害者や加害者に対する対応が異なる可能性が高いということです。
こうなってしまうと、効果的ないじめ対策の方法があったとしても統一がされません。中には、「先生によって対応が違う!」と現場で不信感を抱かれてしまう原因にもなりかねません。

これについて、山崎(2016)は、教員自身のいじめ経験の有無や性別によって、
いじめ被害者・加害者に対する対応が異なることなく有効な対応がなされるためには、教職課程で何を学ぶ必要があるのだろうかといった調査を行いました。

その結果、この質問に対する参加者の回答は、多岐にわたり、中でも60%が「対策」、48%が「実態やケーススタディ」を挙げていました。

山崎(2016)は、教育現場においていじめ問題を教員1人が対応することは困難であることから、

問題に対して多様なアプローチがあること
連携によって問題を解決することの有効性を認識
被害者・加害者の経験を聞くこと
小中高の教員から対応の失敗例、成功例を学ぶ

などは、将来教員になった時のいじめ問題への積極的な取組姿勢を導き、より具体的な気づきが得られると思われると表現しています。

これまでのいじめ研究②対策は教職課程から始まる

教職課程の学生の意識

森住(2004)の研究では、教職課程の学生のいじめの現状認識については、少ないと感じている学生はほとんどおらず、70%弱の学生が多いと感じていることがわかりました。

また、いじめの今後の推移については「減る」と考えている学生は10%弱に止まってしまい、
「増える」と考えている学生は40%弱で、変化なしを加えると男子学生の70%、女子学生の80%になり、いじめについて楽観視はしていないことがわかりました。

さらに、小学校から中学校までの間にいじめ加害経験をした学生はそうでない学生よりも今後いじめが増えると推測する傾向があることがわかったのです。
一般的に、いじめ被害経験がある方が悲観的な評価をすると考えられますが、それ以上に加害状況を体験した場合、その解消の困難さを感じている可能性があります。

次に、いじめ報道に対する関心やその情報への対応では、積極的な関心を向けている学生は20%弱、逆に全く関心がないという学生は5%程度であることがわかりました。
また、情報は受けたままという学生が大半で(70%)、約4分の1弱の学生が友人と話し合ったことがあるという結果でした。

これには男女差があり、女子学生の方が友人と話し合ったりすることが多かったのです(30%)。
報道を受けて図書類を読むようにしている学生はいじめ被害経験者で多く(73%)、加害経験者では少ない(8%)という結果も示されました。

森住(2004)は研究の中で、
教職を志す学生として、かつ、被害経験をもったことから、いじめ問題に関心をもち図書類を読むのであるが、その経験を克服しているかによって友人たちと話し合うかどうかに違いがでると考えられる
と示しています。

また、加害経験の場合、それが深刻なものでないケースが多いためなのか、率直にそうした経験も含め友人たちと話し合うことも多くなると考えられました。
しかし、その認識はそこに止まってしまい、逆に図書類を読むというようには進まない点が問題である可能性があります。

これまでのいじめ研究②対策は教職課程から始まる

教職課程こそいじめ対策教育

適切ないじめ対策を行っていくには、その主軸となる教職員の学生時代に焦点を当てていくことの重要性がわかったかと思います。

つい見落としがちになってしまう視点ではありますが、この視点が後の教職員やその担当となった児童・生徒のいじめ問題に深く関わり、より良い対策ができるのです。

これまでのいじめ研究②対策は教職課程から始まる



<引用文献>

坂西 友秀 1995 いじめが被害者に及ぼす長期的な影響および被害者の自己認知と他の被害者認知の差 社会心理学研究,11,105-115.
本間 友巳 2003 中学生におけるいじめの停止に関連する要因といじめ加害者への対応 教育心理学研究,51,390-400.
岡安 孝弘・高山 巖 2000 中学校におけるいじめ被害者および加害者の心理 的ストレス 教育心理学研究,48,410-421.
森住 宜司 2004 教職課程履修学生のいじめ問題経験と現在のいじめ状況認識 総合福祉 1, 93-101, 2004-03.
山崎 優子 2016 教職課程の学生のいじめ被害生徒/加害生徒への対応の認識と自身のいじめ被害/加害経験との関係 同志社大学教職課程年報 (6), 3-16, 2016.

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